レビュー

キヤノン「EOS R8」の魅力を徹底解説! フルサイズなのにこんなに軽くてびっくり

「EOS R8」は、この春にキヤノンが新たに投入するフルサイズミラーレスで、昨年2022年に発売された「EOS R6 Mark II」から多くの性能を引き継いだ小型機。いわばフルサイズ機のエントリーモデルだ。ここではその特徴からどんな人たちをターゲットにしたカメラなのかを解説しながら、実際の使用感をレビューしていく。

※本記事は発売前の試作機を使用して作成しています。製品版では、仕様が変更される場合がありますのでご了承ください。

「EOS R8」と、こちらも新発売の標準ズームレンズ「RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM」との組み合わせ。本レンズも小型・軽量で「EOS R8」との相性は抜群だ

「EOS R8」と、こちらも新発売の標準ズームレンズ「RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM」との組み合わせ。本レンズも小型・軽量で「EOS R8」との相性は抜群だ

基本的な特徴をチェック

まず、「EOS R8」の特徴を確認しておこう。

「EOS R8」の主な特徴
・撮像素子:有効最大約2420万画素の35mmフルサイズCMOSセンサー
・映像エンジン:「DIGIC X」
・常用感度:ISO100〜102400
・連写性能:最高約40コマ/秒(電子シャッター時)、最高約6コマ/秒(電子先幕時)
・約30コマ/秒でのAF追従プリ撮影が可能な「RAWバーストモード」
・HDRモード撮影で「動体優先」が可能
・ディープラーニング技術を活用した高精度なトラッキング機能
・被写体検出AFは「人物(瞳/顔/頭部/胴体)」「動物優先(犬/猫/鳥/馬)」「乗り物優先(モータースポーツ/鉄道/飛行機)」に対応
・低輝度合焦限界:EV-6.5
・6Kオーバーサンプリングによる高画質な4K/60p動画撮影
・防塵防滴構造
・サイズ:約132.5(幅)×86.1(高さ)×70.0mm(奥行)mm
・重量:約461g(バッテリー、SDカード含む)/約414g(本体のみ)
・価格.com最安価格237,336円(税込、2023年4月20日現在)

「EOS R8」の撮像素子や画像処理エンジンといった心臓部のスペックは、「EOS R6 Mark II」とほぼ同程度だ。同じフルサイズ機のエントリーモデルとしては「EOS RP」も存在するが、正直「EOS RP」と比較してここがよくなった、進化したという話はナンセンスな気がする。

「EOS RP」は2019年4月発売のモデルであって、「EOS Rシリーズ」は、「EOS RP」発売後におそるべき速度で進化を遂げてきた。APS-C機のラインアップも増えた現在では、4年も前に発売された「EOS RP」と比較するよりも、新しいアプローチで商品化された意欲的なエントリーフルサイズとして本機を見るほうがしっくり来るように思う。

では、個別に主要な部分をチェックしてこう。

「EOS R8」の上面。右にモードダイヤルと電源スイッチがあり、左に静止画撮影と動画撮影の切り替えスイッチがある。この仕様は「EOS R6 Mark II」と同じ

「EOS R8」の上面。右にモードダイヤルと電源スイッチがあり、左に静止画撮影と動画撮影の切り替えスイッチがある。この仕様は「EOS R6 Mark II」と同じ

「EOS R8」の背面。上面や背面を見ると、非常にシンプルなボタン構成だということがよくわかる。指先で直感的に操作できるマルチコントローラーはなく、十字キーも電子ダイヤルになっていない。つまり、搭載する電子ダイヤルは上面のメイン電子ダイヤルとサブ電子ダイヤルのみ。モニターは3.0型(約162万ドット)のバリアングル式で、これは「EOS R6 Mark II」と同じだ

「EOS R8」の背面。上面や背面を見ると、非常にシンプルなボタン構成だということがよくわかる。指先で直感的に操作できるマルチコントローラーはなく、十字キーも電子ダイヤルになっていない。つまり、搭載する電子ダイヤルは上面のメイン電子ダイヤルとサブ電子ダイヤルのみ。モニターは3.0型(約162万ドット)のバリアングル式で、これは「EOS R6 Mark II」と同じだ

システムの拡張性にすぐれたマルチアクセサリーシューに対応。今夏発売予定の最新のクリップオンストロボ「スピードライト EL-5」にも対応するはずだ

システムの拡張性にすぐれたマルチアクセサリーシューに対応。今夏発売予定の最新のクリップオンストロボ「スピードライト EL-5」にも対応するはずだ

インターフェイスではUSB Type-C端子を搭載。充電と給電に対応する

インターフェイスではUSB Type-C端子を搭載。充電と給電に対応する

対応バッテリーは「EOS RP」や「EOS R10」、「EOS Kissシリーズ」などで使われる「LP-E17」(写真左)。「EOSシリーズ」のフルサイズ機で広く利用される「LP-E6NH(LP-E6N/LP-E6)」(写真右)ではないので注意。バッテリーを小さくすることで、ボディの小型化を実現している。なお、SDカードはシングルスロットでバッテリー収納部に設けられている

対応バッテリーは「EOS RP」や「EOS R10」、「EOS Kissシリーズ」などで使われる「LP-E17」(写真左)。「EOSシリーズ」のフルサイズ機で広く利用される「LP-E6NH(LP-E6N/LP-E6)」(写真右)ではないので注意。バッテリーを小さくすることで、ボディの小型化を実現している。なお、SDカードはシングルスロットでバッテリー収納部に設けられている

「EOS R8」は、上位機種と同等スペックの電子ビューファインダーを搭載しているのもポイントが高い。約236万ドットのOLED(有機EL)を表示パネルに採用。ファインダー倍率は約0.70倍だ。光学ファインダーのような自然な見えを再現する「OVFビューアシスト」機能も搭載されている。

そして、「EOS R8」の最も注目すべき点は、やはりその小型・軽量ボディだろう。“気軽に持ち運べるフルサイズ”「EOS RP」とほぼ同じサイズながら、バッテリーとSDカードを含めた重量は約461gで、「EOS RP」よりも24gほど、ミドルクラスのAPS-C機「EOS R7」よりも151gほど軽い。フルサイズ機で、かつ実装されている機能性の高さを考えると、この小型・軽量は本当にすばらしい。

なお、「EOS R8」にはボディ内手ブレ補正が搭載されていない。このあたりは撮影スタイルによってデメリットになるが、常用感度が最高ISO102400と高いこともあり、感度を上げて低速シャッターを回避する方法が有効だろう。もちろんレンズ側の手ブレ補正もうまく活用したい。

左が「EOS R8」で、右が「EOS R6」。全体のサイズ感を見比べても、「EOS R8」はかなりスタイリッシュなボディであることがわかる。私のような手の大きな撮影者のために、ホールド性を高めるエクステンショングリップ「EG-E1」も利用可能だ

左が「EOS R8」で、右が「EOS R6」。全体のサイズ感を見比べても、「EOS R8」はかなりスタイリッシュなボディであることがわかる。私のような手の大きな撮影者のために、ホールド性を高めるエクステンショングリップ「EG-E1」も利用可能だ

ボディ内手ブレ補正は非搭載だが、動画撮影時の電子手ブレ補正は用意されている

ボディ内手ブレ補正は非搭載だが、動画撮影時の電子手ブレ補正は用意されている

今回の撮影では「EOS R8」のキットレンズである標準ズームレンズ「RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM」も使用した。重量約210gで軽量コンパクトなのが魅力で、レンズ単体で4.5段分の手ブレ補正効果を発揮する(カメラボディとの協調制御では最大7.0段分)。価格.com最安価格は45,342円(税込、2023年4月20日現在)

今回の撮影では「EOS R8」のキットレンズである標準ズームレンズ「RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM」も使用した。重量約210gで軽量コンパクトなのが魅力で、レンズ単体で4.5段分の手ブレ補正効果を発揮する(カメラボディとの協調制御では最大7.0段分)。価格.com最安価格は45,342円(税込、2023年4月20日現在)

「RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM」のレンズフードを外した状態。沈胴式なので、利用時にズームリングを回してセットアップする。フォーカスリングはコントロールリングとしても利用できる

「RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM」のレンズフードを外した状態。沈胴式なので、利用時にズームリングを回してセットアップする。フォーカスリングはコントロールリングとしても利用できる

超望遠ズームレンズ「RF100-400mm F5.6-8 IS USM」との組み合わせ。今回は動物や乗り物を撮る際に使用した。400mmの焦点距離をこの気軽さ、機動力で利用できるのだからありがたい

超望遠ズームレンズ「RF100-400mm F5.6-8 IS USM」との組み合わせ。今回は動物や乗り物を撮る際に使用した。400mmの焦点距離をこの気軽さ、機動力で利用できるのだからありがたい

フルサイズ機ならではのボケ感を確認するために、単焦点レンズ「RF24mm F1.8 MACRO IS STM」「RF50mm F1.8 STM」も携行した。この写真は「RF50mm F1.8 STM」との組み合わせ。「EOS R8」の小型ボディによくマッチしている

フルサイズ機ならではのボケ感を確認するために、単焦点レンズ「RF24mm F1.8 MACRO IS STM」「RF50mm F1.8 STM」も携行した。この写真は「RF50mm F1.8 STM」との組み合わせ。「EOS R8」の小型ボディによくマッチしている

まずは「RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM」とともに軽快にスナップしてみる

キットレンズとして用意されている新しい標準ズームレンズ「RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM」は、初めてフルサイズミラーレスを使う人たち(つまり、「EOS R8」を使う人たち)に焦点を当て作られている。そういった意味では、ごくごく標準的な開放F値を備える汎用性の高い小型ズームレンズとしてとらえがちだ。

もちろんこのレンズには、そうした側面もあるのだが、最新カメラボディとの組み合わせで、すぐれた描写力を発揮するその特性こそ見落としてはいけない重要なポイントだろう。しかもそのパフォーマンスが、この小ささと価格で実現されているのだ。

今回は、桜が咲き誇る東京・吉祥寺の井の頭公園をスナップしてみたが、こんなふうに気軽に使えるフルサイズミラーレスカメラは、確実に表現の幅を広げてくれると感じた。

掲載する作例について
JPEG形式(最高画質)で撮影。すべての作例で、周辺光量補正:オン、歪曲収差補正:オート、デジタルレンズオプティマイザ:標準に設定している。今回は詳細な性能評価が不可の試作機を使用しているため、写真は縦横50%にリサイズして掲載する。

EOS R8、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、50mm、F7.1、1/800秒、ISO640、ホワイトバランス:太陽光(B2、G1)、ピクチャースタイル:スタンダード縮小写真(3000×2000、7.8MB)

EOS R8、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、50mm、F7.1、1/800秒、ISO640、ホワイトバランス:太陽光(B2、G1)、ピクチャースタイル:スタンダード
縮小写真(3000×2000、7.8MB)

EOS R8、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、50mm、F6.3、1/200秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(B3、G5)、ピクチャースタイル:風景縮小写真(3000×2000、5.3MB)

EOS R8、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、50mm、F6.3、1/200秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(B3、G5)、ピクチャースタイル:風景
縮小写真(3000×2000、5.3MB)

EOS R8、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、50mm、F6.3、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:色温度(4600K)、ピクチャースタイル:風景縮小写真(3000×2000、6.8MB)

EOS R8、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、50mm、F6.3、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:色温度(4600K)、ピクチャースタイル:風景
縮小写真(3000×2000、6.8MB)

「EOS R8」はフルサイズなので被写界深度を浅くしやすい。開放F値がそれほど小さくなくても、望遠端をうまく使って寄り引きすることで、桜の花びらも背景をぼかして描写できたEOS R8、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、50mm、F6.3、1/125秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先/B5、G4)、ピクチャースタイル:ディテール重視縮小写真(3000×2000、3.1MB)

「EOS R8」はフルサイズなので被写界深度を浅くしやすい。開放F値がそれほど小さくなくても、望遠端をうまく使って寄り引きすることで、桜の花びらも背景をぼかして描写できた
EOS R8、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、50mm、F6.3、1/125秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先/B5、G4)、ピクチャースタイル:ディテール重視
縮小写真(3000×2000、3.1MB)

今回使用した「EOS R8」は発売前の試作機ではあるが、フルサイズ機ならではの余裕のある解像感を確認できた。今回暗所での撮影は行っていないが、高感度側の画質がすぐれているのも本カメラの魅力。これは後述する高速シャッター利用時にも大きな役割を発揮する。

高速・高精度AFを高速連写との組み合わせで試してみる

冒頭でも述べたように「EOS R8」の機能性は「EOS R6 Mark II」譲りで、クラスを超える充実度だ。特筆すべきはAF性能だろう。ディープラーニング技術を活用した被写体検出とトラッキング機能が、狙いを定めた被写体をしっかり捕捉して離さない。この安定感と精度の高さは、もはやキヤノンにとって“このくらいは当たり前”の標準レベルになりつつある。

また、「EOS R8」は、最新の映像エンジン「DIGIC X」を搭載しており、電子シャッター下で最高約40コマ/秒の高速連写が可能だ。高精度AFを実践するにあたり、この高速連写機能も併用してみた。

クイック設定画面。AFエリアは8種類から選択可能。この中のフレキシブルゾーンでは、ゾーンの範囲を自由に変更・設定できる。私は基本動きものを撮る際はこのフレキシブルゾーンをやや広めに設定して利用している

クイック設定画面。AFエリアは8種類から選択可能。この中のフレキシブルゾーンでは、ゾーンの範囲を自由に変更・設定できる。私は基本動きものを撮る際はこのフレキシブルゾーンをやや広めに設定して利用している

検出する被写体もクイック設定画面から選択できる。「人物(瞳/顔/頭部/胴体)」「動物優先(犬/猫/鳥/馬)」「乗り物優先(モータースポーツ/鉄道/飛行機)」に対応。ちなみに、左端のオートも便利な機能。カメラが追尾する主被写体を自動で選択してくれる

検出する被写体もクイック設定画面から選択できる。「人物(瞳/顔/頭部/胴体)」「動物優先(犬/猫/鳥/馬)」「乗り物優先(モータースポーツ/鉄道/飛行機)」に対応。ちなみに、左端のオートも便利な機能。カメラが追尾する主被写体を自動で選択してくれる

今回人物は撮影していないが、瞳検出機能もしっかり搭載されている。自動/右目優先/左目優先の選択が可能だ

今回人物は撮影していないが、瞳検出機能もしっかり搭載されている。自動/右目優先/左目優先の選択が可能だ

通常利用する電子先幕時の連写は最高約6.0コマ/秒でそれほど速くはないが、シャッター方式を電子シャッターに切り替えることで、約40コマ/秒の高速連写が可能になる

通常利用する電子先幕時の連写は最高約6.0コマ/秒でそれほど速くはないが、シャッター方式を電子シャッターに切り替えることで、約40コマ/秒の高速連写が可能になる

以下に、電子シャッターでの高速連写を用いて撮影した連写写真を3つ掲載しよう。

一連の連写写真をチェック1

動物園の猿山の猿を撮影。望遠レンズを使用しているが、AFが猿の顔を瞬時にとらえ、ピントを常に合わせながら追尾してくれた。最高約40コマ/秒で撮ると、まるでパラパラ漫画のようにつぶさに状況を記録できる。

EOS R8、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、214mm、F7.1、1/250秒、ISO320、ホワイトバランス:くもり、ピクチャースタイル:風景縮小写真(3000×2000、3.6MB)

EOS R8、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、214mm、F7.1、1/250秒、ISO320、ホワイトバランス:くもり、ピクチャースタイル:風景
縮小写真(3000×2000、3.6MB)

一連の連写写真をチェック2

続いて、リス園でリスを撮影。手前に障害物があってリスをとらえづらい場面だったが、見よ! この追尾精度! 前後でややピントが甘くなるところもあったが、つぶらな瞳にしっかりピントを合わせてくれた。リスの動き回るシーンの撮影は、かなり難易度が高い。とっさの場面で、リスを画角に収め続けるだけでも難儀だが、これだけ追尾しながら記録できることに感動を隠せない。ここでも最高約40コマ/秒の連写機能が威力を発揮した。

EOS R8、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、214mm、F8、1/1000秒、ISO6400、ホワイトバランス:くもり、ピクチャースタイル:風景縮小写真(3000×2000、4.8MB)

EOS R8、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、214mm、F8、1/1000秒、ISO6400、ホワイトバランス:くもり、ピクチャースタイル:風景
縮小写真(3000×2000、4.8MB)

一連の連写写真をチェック3

電車も撮ってみた。もはや期待を裏切ることはない。手前に余計なものがあっても迷うことなく、しっかり電車の先頭部分を検出・追尾してくれた。ちなみに、本機のAFフレーム選択可能ポジションは最大4897ポジション。AFエリアの分割数は最大1053分割。このあたりのスペックも「EOS R6 Mark II」と同じだ。

EOS R8、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、214mm、F8、1/2500秒、ISO1600、ホワイトバランス:くもり、ピクチャースタイル:風景縮小写真(3000×2000、5.5MB)

EOS R8、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、214mm、F8、1/2500秒、ISO1600、ホワイトバランス:くもり、ピクチャースタイル:風景
縮小写真(3000×2000、5.5MB)

フルサイズ機ならではのボケ表現を確認してみる

フルサイズ機を用いる醍醐味としてボケ描写がある。ここではリーズナブルな価格帯の単焦点レンズを使ったが、これらも「EOS R8」の小型・軽量ボディにピッタリ。「RFレンズ」は本当にラインアップが増えた。軽量コンパクトな単焦点レンズと組み合わせることで、フルサイズ機ならではの浅い被写界深度が気軽に利用できるのはうれしい。

「RF50mm F1.8 STM」で撮影。早朝の公園のベンチを、背景をぼかして入れながら、しっとりとやや暗めのトーンで切り取った。こうしたやや引き気味のカットも、フルサイズ機と単焦点レンズの組み合わせであれば、気軽にボケを演出できるEOS R8、RF50mm F1.8 STM、50mm、F2.2、1/1600秒、ISO200、ホワイトバランス:太陽光(B3,0)、ピクチャースタイル:ディテール重視縮小写真(3000×2000、4.6MB)

「RF50mm F1.8 STM」で撮影。早朝の公園のベンチを、背景をぼかして入れながら、しっとりとやや暗めのトーンで切り取った。こうしたやや引き気味のカットも、フルサイズ機と単焦点レンズの組み合わせであれば、気軽にボケを演出できる
EOS R8、RF50mm F1.8 STM、50mm、F2.2、1/1600秒、ISO200、ホワイトバランス:太陽光(B3,0)、ピクチャースタイル:ディテール重視
縮小写真(3000×2000、4.6MB)

「RF24mm F1.8 MACRO IS STM」で撮影。ピントを合わせた主題に対し、背景をダイナミックにぼかしながら広く取り込めるのがこのカテゴリーのレンズの魅力。滑らかな階調がフルサイズ機ならではと言えるEOS R8、RF24mm F1.8 MACRO IS STM、24mm、F1.8、1/1600秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(B3,0)、ピクチャースタイル:ディテール重視縮小写真(3000×2000、5.1MB)

「RF24mm F1.8 MACRO IS STM」で撮影。ピントを合わせた主題に対し、背景をダイナミックにぼかしながら広く取り込めるのがこのカテゴリーのレンズの魅力。滑らかな階調がフルサイズ機ならではと言える
EOS R8、RF24mm F1.8 MACRO IS STM、24mm、F1.8、1/1600秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(B3,0)、ピクチャースタイル:ディテール重視
縮小写真(3000×2000、5.1MB)

電子シャッター利用時はシャッター速度を1/16000秒まで高速にできる(電子先幕時は1/4000秒)。これも最新の映像エンジン「DIGIC X」の効果。ここでは1/8000秒に設定することで、自分好みの開放値と露出での撮影が実現できた。この機能は明るいレンズを晴天下で使いたい場面などで重宝するEOS R8、RF50mm F1.8 STM、50mm、F1.8、1/8000秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(B3、0)、ピクチャースタイル:ディテール重視縮小写真(3000×2000、3.4MB)

電子シャッター利用時はシャッター速度を1/16000秒まで高速にできる(電子先幕時は1/4000秒)。これも最新の映像エンジン「DIGIC X」の効果。ここでは1/8000秒に設定することで、自分好みの開放値と露出での撮影が実現できた。この機能は明るいレンズを晴天下で使いたい場面などで重宝する
EOS R8、RF50mm F1.8 STM、50mm、F1.8、1/8000秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(B3、0)、ピクチャースタイル:ディテール重視
縮小写真(3000×2000、3.4MB)

そのほかの機能も使って撮ってみる

「EOS R8」には最新モデルにふさわしい機能がいくつか搭載されているので紹介しよう。ダイナミックレンジを広げて撮影できる「HDRモード」には「動体優先」が追加された。動体ブレを起こすことなく、1回の露光で広い階調を再現できる。ほかにも、RAW画像を高速で連続撮影できる「RAWバーストモード」も面白い機能。シャッターボタンを押す直前から記録を開始できる。

フルサイズ機という意味では、デジタルテレコンの機能も有効に活用したい。デジタル処理で、撮影倍率を約2倍または4倍にして静止画撮影できる機能だ。「RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM」であれば、望遠端50mmの場合は100mm相当、または200mm相当で切り取れる。画像を拡大して記録するため画質は相対的に低下するが、元々が高解像。むしろ、約2420万画素のフルサイズCMOSセンサーの威力を存分に体感できるのではないだろうか。

動体優先の「HDRモード」で撮影。空のハイライトやスワンボートのシャドウの階調が互いに補われて再現されている。スワンボートは動いているがぶれていない。「HDRモード」はやや仕上がりがわざとらしくなりがちなので場面を選ぶが、ここは何となくいい感じになじんで仕上がったEOS R8、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、50mm、F6.3、1/2500秒、ISO800、ホワイトバランス:太陽光(0、G2)、ピクチャースタイル:スタンダード縮小写真(3000×2000、5.3MB)

動体優先の「HDRモード」で撮影。空のハイライトやスワンボートのシャドウの階調が互いに補われて再現されている。スワンボートは動いているがぶれていない。「HDRモード」はやや仕上がりがわざとらしくなりがちなので場面を選ぶが、ここは何となくいい感じになじんで仕上がった
EOS R8、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、50mm、F6.3、1/2500秒、ISO800、ホワイトバランス:太陽光(0、G2)、ピクチャースタイル:スタンダード
縮小写真(3000×2000、5.3MB)

通常の撮影モードで撮影。「HDRモード」との違いがよくわかるEOS R8、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、24mm、F6.3、1/640秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(0、G2)、ピクチャースタイル:風景縮小写真(3000×2000、4.5MB)

通常の撮影モードで撮影。「HDRモード」との違いがよくわかる
EOS R8、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、24mm、F6.3、1/640秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(0、G2)、ピクチャースタイル:風景
縮小写真(3000×2000、4.5MB)

「HDRモード」はメニューから選択・設定する。通常の「Dレンジ優先」は露出を変えながら3枚撮影して合成するが、「動体優先」は1枚撮影でダイナミックレンジを調整して仕上げてくれるのがポイント

「HDRモード」はメニューから選択・設定する。通常の「Dレンジ優先」は露出を変えながら3枚撮影して合成するが、「動体優先」は1枚撮影でダイナミックレンジを調整して仕上げてくれるのがポイント

“初めてのフルサイズ”ということで、エントリー層を意識した機能も搭載されている。「クリエイティブフィルター」はその代表的なものだろう。全10種類から選択できる。この写真は「HDR油彩調」で撮影したEOS R8、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、50mm、F6.3、1/60秒、ISO800、ホワイトバランス:色温度(4600K)、ピクチャースタイル:風景縮小写真(3000×2000、5.2MB)

“初めてのフルサイズ”ということで、エントリー層を意識した機能も搭載されている。「クリエイティブフィルター」はその代表的なものだろう。全10種類から選択できる。この写真は「HDR油彩調」で撮影した
EOS R8、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、50mm、F6.3、1/60秒、ISO800、ホワイトバランス:色温度(4600K)、ピクチャースタイル:風景
縮小写真(3000×2000、5.2MB)

ここからはほかの作例も見ていただこう。

小さな鳥もしっかり被写体検出して撮影できる。動物全般、ピント合わせのストレスがないEOS R8、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、281mm、F8、1/400秒、ISO640、ホワイトバランス:太陽光(B2、G1)、ピクチャースタイル:スタンダード縮小写真(2000×3000、5.7MB)

小さな鳥もしっかり被写体検出して撮影できる。動物全般、ピント合わせのストレスがない
EOS R8、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、281mm、F8、1/400秒、ISO640、ホワイトバランス:太陽光(B2、G1)、ピクチャースタイル:スタンダード
縮小写真(2000×3000、5.7MB)

EOS R8、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、183mm、F8、1/250秒、ISO200、ホワイトバランス:太陽光(B2、G1)、ピクチャースタイル:スタンダード縮小写真(2000×3000、3.8MB)

EOS R8、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、183mm、F8、1/250秒、ISO200、ホワイトバランス:太陽光(B2、G1)、ピクチャースタイル:スタンダード
縮小写真(2000×3000、3.8MB)

EOS R8、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、400mm、F8、1/500秒、ISO6400、ホワイトバランス:くもり、ピクチャースタイル:風景縮小写真(3000×2000、4.0MB)

EOS R8、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、400mm、F8、1/500秒、ISO6400、ホワイトバランス:くもり、ピクチャースタイル:風景
縮小写真(3000×2000、4.0MB)

EOS R8、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、300mm、F8、1/400秒、ISO640、ホワイトバランス:くもり、ピクチャースタイル:風景縮小写真(3000×2000、3.7MB)

EOS R8、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、300mm、F8、1/400秒、ISO640、ホワイトバランス:くもり、ピクチャースタイル:風景
縮小写真(3000×2000、3.7MB)

今年は気まぐれに春が早めに訪れ、桜を散らしてしまったEOS R8、RF50mm F1.8 STM、50mm、F3.2、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:色温度(4600K/B5、G4)、ピクチャースタイル:ディテール重視縮小写真(3000×2000、2.8MB)

今年は気まぐれに春が早めに訪れ、桜を散らしてしまった
EOS R8、RF50mm F1.8 STM、50mm、F3.2、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:色温度(4600K/B5、G4)、ピクチャースタイル:ディテール重視
縮小写真(3000×2000、2.8MB)

EOS R8、RF24mm F1.8 MACRO IS STM、24mm、F4、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:色温度(4600K/B3、G5)、ピクチャースタイル:風景

EOS R8、RF24mm F1.8 MACRO IS STM、24mm、F4、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:色温度(4600K/B3、G5)、ピクチャースタイル:風景

EOS R8、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、141mm、F6.3、1/160秒、ISO100、ホワイトバランス:色温度(4600K/B3、G5)、ピクチャースタイル:ディテール重視縮小写真(2000×3000、5.9MB)

EOS R8、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、141mm、F6.3、1/160秒、ISO100、ホワイトバランス:色温度(4600K/B3、G5)、ピクチャースタイル:ディテール重視
縮小写真(2000×3000、5.9MB)

EOS R8、RF24mm F1.8 MACRO IS STM、24mm、F2、1/800秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(B3、G5)、ピクチャースタイル:風景縮小写真(3000×2000、3.1MB)

EOS R8、RF24mm F1.8 MACRO IS STM、24mm、F2、1/800秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(B3、G5)、ピクチャースタイル:風景
縮小写真(3000×2000、3.1MB)

EOS R8、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、50mm、F6.3、1/250秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(0、G2)、ピクチャースタイル:風景縮小写真(2000×3000、3.1MB)

EOS R8、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、50mm、F6.3、1/250秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(0、G2)、ピクチャースタイル:風景
縮小写真(2000×3000、3.1MB)

まとめ いくつか気になる点はあるもののAFを中心に期待を裏切らない仕上がり

ここまで解説してきたとおり、「EOS R8」はその小型ボディに最新機能がぎっしり詰まっているのが最大の魅力だ。特にAFはすばらしい。いっぽう、不便さを感じるポイントも。少し列記してみよう。

1.バッテリーの持ちが悪い
多くの人が思っていることだと思うが、ボディを小さくする弊害が最も如実に出るのがここだ。上位モデルと比べるとバッテリーが小さいため、朝から本気で撮っていると3時間もしないでバッテリーがなくなる。個人的には、本気で丸1日撮るならば予備バッテリーは3つ必要と感じた。

2.ボディ内手ブレ補正がない
日常的なシーンでは困ることは少ないが、ボディ内手ブレ補正がないことは、超望遠での撮影時などに少し心許なさを感じるかもしれない。ただ、常用感度は最高ISO102400と高く、レンズ側の手ブレ補正で十分に対応できるシーンも多い。

3.連写が約6.0コマ/秒
電子先幕時の連写速度が少し遅い印象。電子シャッター時は高速連写が可能だが、動く被写体に対しては、像が歪んで写ってしまうローリングシャッター現象に注意する必要がある。

4.フルサイズだけどシングルスロット
シングルスロットなのを気にする人もいるだろう。初めてのフルサイズミラーレスというくくりで言うとうなずけるが、サブで購入を検討する人は事前に把握しておきたいスペックだ。

5.エントリー機にしては価格が高め
搭載機能を考えると致し方ないところだが、ボディ単体が20万円を超える価格帯は、どれだけ安価なレンズを揃えても、簡単には手が出せない。ステップアップ層を含む“初めてのフルサイズ機”としては、多少度胸が入る。

申し訳程度の記載になって恐縮だが、「EOS R8」は動画性能も最新だ。6Kオーバーサンプリングによる高画質な4K/60pでの記録が可能。ハイクオリティな動画を気軽に撮りたい層にもアプローチしているカメラなのも踏まえておく必要があるだろう。

本機はフルサイズ機の入り口としても申し分なく、むしろ、こんな便利で扱いやすいカメラを“最初の1台”にできることがうらやましく思うくらいだ。エントリー向けかというと、そこはフルサイズ。積んでいる機能をきちんと使いこなすためにそれなりの知識も必要で、だからこそ本機は、キヤノンのラインアップとしてはエントリー機ではなく、ミドルクラスに位置付けられている。APS-Cのミラーレスや一眼レフを使ってきた人にとってはなじみやすく、期待を裏切らない仕上がりのカメラになるだろう。価格の部分はその自信の表れかもしれない。

私個人としては、「EOS R6 Mark II」のサブ機として利用するのもいいと感じた。軽いし、かさばらない。バッテリーは仕方ないが、それに見合う仕上がりだと思う。キヤノンはレンズを含めてミラーレスカメラのラインアップを凄まじい勢いで増やしてきた。さあ、どれ買おう。キヤノンユーザーにとってはうれしい悲鳴かもしれない。

河野鉄平

河野鉄平

フォトグラファー。写真家テラウチマサト氏に師事後、2003年独立。ポートレートを中心に活動。2022年1月に新著『上手い写真は構図が9割』(玄光社)発売。ポーラミュージアムアネックス(2015年/銀座)など写真展も多数。Profoto公認トレーナー。
Instagram:teppei_kono_eye
Twitter:@teppei_kono

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