レビュー

最新型「FE 50mm F1.4 GM」を含む、ソニーの大口径・標準レンズ3本撮り比べ!

ソニーの「α7 IV」に「FE 50mm F1.4 GM」を組み合わせたイメージ。本レンズは大口径ながらコンパクトで、最新のソニー製フルサイズミラーレスカメラと組み合わせた際の全体的なデザインのバランスにすぐれます

ソニーの「α7 IV」に「FE 50mm F1.4 GM」を組み合わせたイメージ。本レンズは大口径ながらコンパクトで、最新のソニー製フルサイズミラーレスカメラと組み合わせた際の全体的なデザインのバランスにすぐれます

ソニー「FE 50mm F1.4 GM」は、2023年 4月21日に発売されたフルサイズ対応の大口径・標準レンズ。同社の「α7シリーズ」や「α9 II」「α1」などのフルサイズミラーレスカメラと組み合わせると、焦点距離50mmの標準画角をダイレクトに楽しめます。

本レンズは、ソニーが最高の設計水準で設計する最高峰レンズ「G Master」シリーズの1本ですので、描写性能は悪かろうはずもありません。しかし、標準レンズの王道中の王道とも言える「50mm F1.4」のスペックは、同社からはすでに「カールツァイス」ブランドの「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」が発売されていますし、さらに上を行く大口径モデルとして「FE 50mm F1.2 GM」も用意されています。ソニーには、ほかにも「FE 50mm F1.8」や「FE 50mm F2.5 G」といった標準レンズもありますが、それらはひとまず置いておいて、今回は、これらソニーの大口径・標準レンズ3本を撮り比べてみました。

3本ともソニーが誇る高性能な標準レンズだけあって、決して安い買いものではない、というよりはとっても高い買いものになってしまいます。気軽にどれかひとつを選ぶなんてことは、普通はなかなかできないでしょう。ぜひ本記事を読んで、1本に絞り込む参考にしてもらえればと思います。

外観デザインと操作性をチェック

まずは、今回の主役「FE 50mm F1.4 GM」のサイズ感を、「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」「FE 50mm F1.2 GM」と比べてみましょう。

左から「FE 50mm F1.4 GM」「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」「FE 50mm F1.2 GM」。3本の中で最も小さいのが「FE 50mm F1.4 GM」です。こうして3本を並べると「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」の大きさが目立ってしまいますが、少し前まで高性能な大口径レンズと言えばこれくらいが普通でした

左から「FE 50mm F1.4 GM」「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」「FE 50mm F1.2 GM」。3本の中で最も小さいのが「FE 50mm F1.4 GM」です。こうして3本を並べると「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」の大きさが目立ってしまいますが、少し前まで高性能な大口径レンズと言えばこれくらいが普通でした

FE 50mm F1.4 GM
80.6(最大径)× 96(全長)mm/重量516g

Planar T* FE 50mm F1.4 ZA
83.5(最大径)× 108(全長)mm/重量778g

FE 50mm F1.2 GM
87(最大径)× 108(全長)mm/重量778g

並べてみると「FE 50mm F1.4 GM」の小ささが際だっていることに気づきますね。近ごろの高画素対応の50mm F1.4レンズとしては破格に小さく軽いです。往年の50mm F1.4レンズと比べれば大きくて重いですが、現代的に見ると「高性能なG Masterレンズでよくぞここまで小さく!」と納得できるサイズ感です。

「FE 50mm F1.4 GM」の操作性では、筐体側面と上面に「フォーカスホールドボタン」を備えているのがポイント。フォーカスをホールドするためだけでなく、ほかにもさまざまな機能を好みで割り当てられるのが便利です。

「フォーカスモードスイッチ」の上に「フォーカスホールドボタン」を装備

「フォーカスモードスイッチ」の上に「フォーカスホールドボタン」を装備

「フォーカスホールドボタン」は側面だけでなく上面にも備え、計2つの布陣。この位置にあるのは、縦位置撮影時や、より多くの機能を割り当てたいときに便利です

「フォーカスホールドボタン」は側面だけでなく上面にも備え、計2つの布陣。この位置にあるのは、縦位置撮影時や、より多くの機能を割り当てたいときに便利です

さらに「FE 50mm F1.4 GM」は絞りリングも搭載しています。今回比較する3モデルはいずれも絞りリングを備えていますが、これはソニー製の高性能レンズでほぼ共通する仕様。上位モデルや最新モデルのレンズを多く使う人なら、視覚性にすぐれ動画撮影時にも便利な絞りリング搭載レンズのほうが使い方に差がなく、扱いやすいのではないでしょうか。

「FE 50mm F1.4 GM」の絞りリングはクリック感がしっかりしているので、希望の絞り値を外すことなく設定しやすいなど、操作感も向上しています。絞りリングの誤操作を防止する「アイリスロックスイッチ」と、クリックの有無を切り替えられるスイッチも備わっており、動画撮影を含めて多彩な使い方に対応できます。

「アイリスロックスイッチ」は、絞りオート「A」からF16に不用意に入ってしまう、またその逆のミスを未然に防いでくれる、地味だけど実は大変お役立ちなスイッチです

「アイリスロックスイッチ」は、絞りオート「A」からF16に不用意に入ってしまう、またその逆のミスを未然に防いでくれる、地味だけど実は大変お役立ちなスイッチです

絞りリングはクリックの有無をスイッチで変更可能。動画撮影時には明るさの調整を、無段階の絞り設定で自然にスウ〜っと行いたいもの。主に動画撮影に対して配慮されたスイッチですが、こうしたところに、先を見据えたソニーらしさを感じてしまいます

絞りリングはクリックの有無をスイッチで変更可能。動画撮影時には明るさの調整を、無段階の絞り設定で自然にスウ〜っと行いたいもの。主に動画撮影に対して配慮されたスイッチですが、こうしたところに、先を見据えたソニーらしさを感じてしまいます

付属のレンズフード(ALC-SH173)を装着したイメージ。かなりシッカリしたフードで、ここは前世代の「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」との違いを明確に感じるところです

付属のレンズフード(ALC-SH173)を装着したイメージ。かなりシッカリしたフードで、ここは前世代の「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」との違いを明確に感じるところです

比較する「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」と「FE 50mm F1.2 GM」の特徴も簡単に説明しておきます。

「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」は、ソニー独自の「Gレンズ」や「G Master」レンズの新製品が数多くラインアップする今となっては、貴重な「ソニーツァイスレンズ」として称賛されるべき存在かもしれません。2016年7月の発売です。最新のカメラボディとのデザイン・バランスは決して悪くありませんが、もはや誰もが忘れかけている初期「αシリーズ」のコンセプト「筒と板」のイメージをわずかに引きずっているようにも感じます。新型「G Master」レンズに対してどれだけ健闘できるのかが楽しみなところです。

「α7 IV」に「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」を組み合わせたイメージ

「α7 IV」に「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」を組み合わせたイメージ

「FE 50mm F1.2 GM」は、「FE 50mm F1.4 GM」の上位に位置する「G Master」シリーズの大口径レンズ。2021年4月発売の製品です。開放F1.2の大口径ながら、「αシリーズ」のボディとバランスが取れるサイズ感が魅力ですね。とは言っても、「FE 50mm F1.4 GM」との開放F値の違いは1/3段。「FE 50mm F1.4 GM」とどちらを選ぶかは、この開放F値の違いが描写にどのくらい影響するのかが争点になると思います。

「α7 IV」に「FE 50mm F1.2 GM」を組み合わせたイメージ

「α7 IV」に「FE 50mm F1.2 GM」を組み合わせたイメージ

遠景撮影で3本のレンズを比較

まずは3本のレンズの解像性能を見てみたいと思います。「FE 50mm F1.4 GM」「FE 50mm F1.2 GM」「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」の順に掲載していきます。

「FE 50mm F1.4 GM」の絞り開放F1.4で撮影

「FE 50mm F1.4 GM」で撮影。あえて絞り開放F1.4で遠景を撮ってみましたα7 IV、FE 50mm F1.4 GM、ISO100、F1.4、1/6400秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(7008×4672、31.4MB)

「FE 50mm F1.4 GM」で撮影。あえて絞り開放F1.4で遠景を撮ってみました
α7 IV、FE 50mm F1.4 GM、ISO100、F1.4、1/6400秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(7008×4672、31.4MB)

初めに「FE 50mm F1.4 GM」の開放F1.4から見ていきましょう。中央部は拡大してみても非常に解像感が高く、コントラストもしっかりしています。驚くのは、これが周辺部、さらには隅まで見ても、ほとんど描写性能が落ちないところにあります。まさに絞り開放から画面全体で安定した解像感を実現していると言えるでしょう。さすがは最新設計の「G Master」レンズです。

「FE 50mm F1.2 GM」の絞り開放F1.2で撮影

「FE 50mm F1.2 GM」で撮影。あえて絞り開放F1.2で遠景を撮ってみましたα7 IV、FE 50mm F1.2 GM、ISO100、F1.2、1/8000秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(7008×4672、29.3MB)

「FE 50mm F1.2 GM」で撮影。あえて絞り開放F1.2で遠景を撮ってみました
α7 IV、FE 50mm F1.2 GM、ISO100、F1.2、1/8000秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(7008×4672、29.3MB)

次に「FE 50mm F1.2 GM」の開放F1.2で撮影した写真です。絞りF1.4を超える大口径レンズの絞り開放ですので、さすがに厳しいだろうと思いきや、中央部や周辺部は「FE 50mm F1.4 GM」とほとんど変わらないすばらしい解像感が得られています。隅になるといくらか像の乱れが発生しており、そこが「FE 50mm F1.4 GM」の絞り開放にわずか及ばないところではありますが、スペックを考えれば十分に絞り開放から実用的な性能にあると言えると思います。

「FE 50mm F1.2 GM」のF1.4で撮影

「FE 50mm F1.2 GM」で撮影。ほかの2本の開放絞り値と合わせるために、絞り値をF1.4にして同じ遠景を撮ってみましたα7 IV、FE 50mm F1.2 GM、ISO100、F1.4、1/6400秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(7008×4672、29.6MB)

「FE 50mm F1.2 GM」で撮影。ほかの2本の開放絞り値と合わせるために、絞り値をF1.4にして同じ遠景を撮ってみました
α7 IV、FE 50mm F1.2 GM、ISO100、F1.4、1/6400秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(7008×4672、29.6MB)

さらに「FE 50mm F1.2 GM」を使って、ほかの2本のレンズと条件を合わせるために、絞り値をF1.4にして撮影してみました。すると急激に周辺部の画質は向上し、「FE 50mm F1.4 GM」の絞り開放と同程度、あるいはそれ以上の解像感となりました。1/3段絞っただけなのに、実にすばらしい結果です。これまたさすがは「G Master」レンズと言ったところです。

「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」の絞り開放F1.4で撮影

「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」で撮影。あえて絞り開放F1.4で遠景を撮ってみましたα7 IV、Planar T* FE 50mm F1.4 ZA、ISO100、F1.4、1/6400秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(7008×4672、27.1MB)

「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」で撮影。あえて絞り開放F1.4で遠景を撮ってみました
α7 IV、Planar T* FE 50mm F1.4 ZA、ISO100、F1.4、1/6400秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(7008×4672、27.1MB)

最後に「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」の絞り開放をチェックします。中央部は……「FE 50mm F1.4 GM」のF1.4よりも、「FE 50mm F1.2 GM」のF1.2よりも、わずかではありますが解像感が甘く、フレアのせいかコントラストもやや低い結果でした。これが周辺部から隅まで行くとわかりやすく解像感が低下してしまいます。総合的には「G Master」レンズとの性能差は歴然としていると言わざるを得ません。普通に見ればよく写る高性能なレンズですのであまり言いたくはありませんが、新しい「G Master」レンズの描写性能がすごすぎます。

以下に、上記で掲載した比較写真の中央部と周辺部を切り出した画像を掲載しておきます。

■比較写真・中央部の切り出し画像

左から「FE 50mm F1.4 GM」のF1.4、「FE 50mm F1.2 GM」のF1.2、「FE 50mm F1.2 GM」のF1.4、「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」のF1.4

左から「FE 50mm F1.4 GM」のF1.4、「FE 50mm F1.2 GM」のF1.2、「FE 50mm F1.2 GM」のF1.4、「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」のF1.4

■比較写真・周辺部の切り出し画像

左から「FE 50mm F1.4 GM」のF1.4、「FE 50mm F1.2 GM」のF1.2、「FE 50mm F1.2 GM」のF1.4、「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」のF1.4

左から「FE 50mm F1.4 GM」のF1.4、「FE 50mm F1.2 GM」のF1.2、「FE 50mm F1.2 GM」のF1.4、「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」のF1.4

3本のレンズでボケ味を確認

50mm F1.4や50mm F1.2のレンズと言えば、大口径ならではの大きなボケ味も魅力です。というわけで、3本のレンズのボケ味を比較してみました。

「FE 50mm F1.4 GM」のボケ味は?(F1.4で撮影)

「FE 50mm F1.4 GM」で撮影。絞りは開放のF1.4にしてボケ味を確認してみましたα7 IV、FE 50mm F1.4 GM、ISO100、F1.4、1/6400秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(7008×4672、17.8MB)

「FE 50mm F1.4 GM」で撮影。絞りは開放のF1.4にしてボケ味を確認してみました
α7 IV、FE 50mm F1.4 GM、ISO100、F1.4、1/6400秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(7008×4672、17.8MB)

初めに「FE 50mm F1.4 GM」でのボケ味を確認。絞り開放のF1.4です。ピント面はしっかりと高い解像感を示しながら、そこからなだらかに美しくボケています。ボケのつながり方もよく、さすがは「解像感と美しいボケ味を両立」した「G Master」レンズです。

「FE 50mm F1.2 GM」のボケ味は?(F1.2で撮影)

「FE 50mm F1.2GM」で撮影。絞り開放のF1.2にしてボケ味を確認してみましたα7 IV、FE 50mm F1.2 GM、ISO100、F1.4、1/8000秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(7008×4672、17.5MB)

「FE 50mm F1.2GM」で撮影。絞り開放のF1.2にしてボケ味を確認してみました
α7 IV、FE 50mm F1.2 GM、ISO100、F1.4、1/8000秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(7008×4672、17.5MB)

「FE 50mm F1.4 GM」のボケ味が大変すばらしかったので、これ以上は望めないだろうと思いましたが、「FE 50mm F1.2GM」の絞り開放F1.2では、さらにやわらかく美しいボケ味を見せてくれました。F1.4とF1.2は、絞り値としてそれほど大きな差がないのでボケ味もそれほど変わらないだろうと予想していましたが、思ったより大きな違いがありました。さすが開放F1.2の大口径レンズです。

「FE 50mm F1.2 GM」のボケ味は?(F1.4で撮影)

「FE 50mm F1.2GM」で撮影。ほか2本のレンズと合わせるために、絞り値をF1.4にしてボケ味を確認してみましたα7 IV、FE 50mm F1.2 GM、ISO100、F1.4、1/6400秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(7008×4672、17.5MB)

「FE 50mm F1.2GM」で撮影。ほか2本のレンズと合わせるために、絞り値をF1.4にしてボケ味を確認してみました
α7 IV、FE 50mm F1.2 GM、ISO100、F1.4、1/6400秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(7008×4672、17.5MB)

などと思っていたのですが、ほかの2本の開放F値と合わせるために、絞り値をF1.4にして撮影してみたところ、絞り開放F1.2のときと同じようにやわらかく美しいボケ味が得られました。つまりこれは大口径レンズだからというわけでなく、「FE 50mm F1.2GM」が本来的にきれいなボケ味を持っているということでしょう。「FE 50mm F1.4 GM」と比べると、拡大しなければわからない程度のわずかな差でしかありませんが、そのわずかな差が、「FE 50mm F1.2GM」を手に入れたときに、大きな満足感となって帰ってくるのではないかと思います。

「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」のボケ味は?(F1.4で撮影)

「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」で撮影。絞り開放F1.4でのボケ味を確認してみましたα7 IV、Planar T* FE 50mm F1.4 ZA、ISO100、F1.4、1/6400秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(7008×4672、17.7MB)

「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」で撮影。絞り開放F1.4でのボケ味を確認してみました
α7 IV、Planar T* FE 50mm F1.4 ZA、ISO100、F1.4、1/6400秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(7008×4672、17.7MB)

「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」でのボケ味を確認してみましたが、なかなか判断が難しいところがあります。ピント面との距離によって少しだけ硬くなったりやわらかくなったりと、「G Master」レンズと比べるとやや素直さに欠けるところもありますが、総合的にはいわゆるやわらかくて美しいボケ味を十分に表現できていると思います。場合によっては、わずかに甘い解像感(あくまで「G Master」レンズと比べてです)のおかげで、ボケ味に関しては「G Master」レンズに勝るシーンもあるといった印象です。拡大してみないとわからない程度の違いですので、実用的にはそれほど気にすることもないかと思います。

「FE 50mm F1.4 GM」でいろいろ撮ってみました

α7 IV、FE 50mm F1.4 GM、ISO100、F2、1/2000秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(7008×4672、16.6MB)

α7 IV、FE 50mm F1.4 GM、ISO100、F2、1/2000秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(7008×4672、16.6MB

絞り値をF2にしての撮影。よく見るとミツバチが写っています。大口径レンズを使うとつい絞り開放ばかり使いたくなりますが、必要なときに必要な被写界深度を得られるように調整はしたほうがよいと考えています。その意味ではもう少し絞ったほうがよかったかなとも……。絞り値の違いによる表現の違いを楽しめるのも大口径レンズならではですね。

α7 IV、FE 50mm F1.4 GM、ISO100、F1.4、1/3200秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(7008×4672、18.2MB)

α7 IV、FE 50mm F1.4 GM、ISO100、F1.4、1/3200秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(7008×4672、18.2MB)

今度は絞り開放F1.4での撮影。組み合わせて使ったボディ「α7 IV」は瞳AF機能を備えており、当然その機能は純正レンズである本レンズで問題なく使えます。大口径レンズで生き物の瞳にピントを合わせるなんて、ひと昔前は至難の業でしたが、今ではカメラとレンズの性能進化でなんの苦もなく撮れるようになりました。今こそ大口径レンズを使うときかもしれません。

α7 IV、FE 50mm F1.4 GM、ISO100、F5.6、1/8000秒、ホワイトバランス:日陰、クリエイティブルック:ST撮影写真(7008×4672、16.7MB)

α7 IV、FE 50mm F1.4 GM、ISO100、F5.6、1/8000秒、ホワイトバランス:日陰、クリエイティブルック:ST
撮影写真(7008×4672、16.7MB)

F5.6まで絞ると解像性能が高まり、キリリと心地よい描写が得られます。薄曇りの条件で菜の花を逆光で撮影してみました。ソニーお得意の「ナノARコーティング II」が、本レンズにも採用されているとのことで、逆光でもゴーストやフレアなどの発生もなく、クリアでヌケのよい画が得られます。あまりにも強い真逆光だと、さすがにこぼれるようにゴーストが発生することもありましたが、焦点距離50mmの画角で画作りすることを考えれば、まったく気にする必要のない高いレベルの逆光耐性を実現していると思います。

α7 IV、FE 50mm F1.4 GM、ISO100、F4、1/60秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(7008×4672、20.9MB)

α7 IV、FE 50mm F1.4 GM、ISO100、F4、1/60秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(7008×4672、20.9MB)

打って変わって石像の集合写真を撮ってみました。絞り値はF4です。標準レンズは、寄って望遠レンズのように、引いて広角レンズのように撮れるクセのない画角が魅力。こうした自然な雰囲気の写真を撮る際にも大変重宝します。その場合、個人的には絞り値F4の被写界深度が最も自然で好ましく、レンズ性能とボケ味の調和を楽しめると思っています。

α7 IV、FE 50mm F1.4 GM、ISO100、F2、1/500秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(7008×4672、16.5MB)

α7 IV、FE 50mm F1.4 GM、ISO100、F2、1/500秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(7008×4672、16.5MB)

何気なく鉢植えの花を撮影してみましたが、ピント面の際だった立体感の再現性に驚かされました。美しいボケの中に自然な雰囲気で花が浮き上がっています。これは、最新の「G Master」レンズだからこその、高い解像感ときれいなボケ味の両立があってこそではないでしょうか。50mm F1.4なんてどれもたいして変わらない、なんて頭のどこかで思うこともありますが、ますます進化するカメラの性能を目の当たりにすると、交換レンズの高性能化も相応に大切なことなのだなと実感します。

まとめ 小型・軽量・高性能な標準レンズなら断然「FE 50mm F1.4 GM」

50mm F1.4レンズは標準レンズの王道とも言えるレンズです。そんな王道レンズも、デジタルカメラが高画素化する流れの中で大型化が進行していましたが、本レンズ「FE 50mm F1.4 GM」は、最新の高性能レンズながら徹底して小型・軽量化に努めているところが、まず大変よろしいです。

今回は同じソニー製の大口径・標準レンズ3本を比べてみましたが、うち2本はソニーが誇る最新の「G Master」レンズというだけあって、使用感と描写性能には歴然とした「よさ」が確かにありました。2016年発売の「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」との差は残念なことに大きいです。目を見張るほど進化するレンズ設計技術に対して、7年間という期間はあまりにも長いということでしょう。

価格.comで3本のレンズの最安価格を見ると、2023年4月24日時点では「FE 50mm F1.4 GM」が185,000円、「FE 50mm F1.2GM」が246,000円、「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」が166,000円(いずれも税込)です。「FE 50mm F1.4 GM」と「FE 50mm F1.2GM」はどこまでスペックと性能を追求するかの違いですが、「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」とほか2本の「G Master」レンズの違いは、新品を購入するという条件において、正直、明確です。時の流れとは、なかなかにして残酷なものなのですね。

曽根原 昇

曽根原 昇

信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌などで執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に直ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)、「冬に紡ぎき −On the Baltic Small Island−」(ソニーイメージングギャラリー銀座)、「バルトの小島とコーカサスの南」(MONO GRAPHY Camera & Art)など。

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