レビュー

タムロン「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」のXマウント用をいち早くレビュー!

2023年5月30日に、富士フイルムのAPS-Cミラーレスカメラ「Xシリーズ」用の大口径・超広角ズームレンズとして、タムロン「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」のXマウント用が発売されます。2021年6月にソニーEマウント用として登場したレンズの“Xマウント版”です。

実はこのレンズ、富士フイルムユーザーの筆者としては、待望の超広角ズームなんです。大口径ながら、妥当なズーム域で、妥当なサイズ感なのがその理由で、これで妥当な描写性能と使用感を持ち合わせてくれていれば言うことなし! 今回は、その辺を重点的に見ていきたいと思います。

APS-C用として評判のよいタムロン「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」にXマウント用が追加されました

APS-C用として評判のよいタムロン「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」にXマウント用が追加されました

外観デザインと操作性をチェック

「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」の特徴のひとつとして押さえておきたいのが小型・軽量なこと。35mm判換算で焦点距離16.5〜30mm相当の画角を開放絞り値F2.8でカバーする大口径・超広角ズームレンズながら、最大径73mm、全長86.5mm、重量約335gのコンパクトなサイズ感に収まっています。APS-C用の開放F4通しの超広角ズームレンズと比べても小さく軽いことに驚かされますね。

ほかの同スペックのレンズとサイズ感を比較したいところですが、APS-C用でF2.8通しの本格的な超広角ズームは本レンズ以外にありません。つまり唯一の存在ということになりますが、それでいて驚きの小型・軽量化を達成しているのだから本当にすばらしいです。

大口径・超広角ズームレンズとは思えないほど軽く小さいことが大きな特徴。ボタン類は一切なく非常にシンプルなデザインです

大口径・超広角ズームレンズとは思えないほど軽く小さいことが大きな特徴。ボタン類は一切なく非常にシンプルなデザインです

ちなみに富士フイルムの純正レンズでは、超広角ズームレンズとして「XF8-16mmF2.8 R LM WR」と「XF10-24mmF4 R OIS WR」の2本が用意されています。ただ、「XF8-16mmF2.8 R LM WR」は本レンズと比べて画角が広いですし、「XF10-24mmF4 R OIS WR」は開放F4通しですので大口径とまでは言えません。冒頭で「富士フイルムユーザーの筆者としては、待望の超広角ズーム」と述べたのは、こうしたところにあります。

富士フイルム「X-H2」と組み合わせてみました。「X-H2」でもよいのですが、より小型なカメラと組み合わせたほうが小型・軽量な本レンズの本領を楽しめるかもしれません

富士フイルム「X-H2」と組み合わせてみました。「X-H2」でもよいのですが、より小型なカメラと組み合わせたほうが小型・軽量な本レンズの本領を楽しめるかもしれません

本レンズはいわゆるインナーズームではないので、ズーミングすると全長が変わります。とはいっても、繰り出し量はわずかですので、焦点距離を変えてもバランスが大きく変わることはありません。静止画撮影でも動画撮影でも取り回しやすい仕様です。

いわゆるインナーズームではありませんが、ズーミングによるバランスの変化はわずかです

いわゆるインナーズームではありませんが、ズーミングによるバランスの変化はわずかです

本レンズは、35mm判換算で焦点距離16.5mm相当スタートの本格的な超広角ズームレンズですが、前玉が突出するタイプではないので、通常のねじ込み式フィルターが使えるのもよいところです。しかもフィルター径は、ほかの多くのタムロン製ズームレンズと同じく67mm。サイズ違いのフィルターを揃える必要がなく便利です。

67mm径のフィルターの装着が可能です。タムロンは、ミラーレスカメラ用のレンズのフィルター径をできる限り67mmで統一していますが、本レンズもそれにならっています

67mm径のフィルターの装着が可能です。タムロンは、ミラーレスカメラ用のレンズのフィルター径をできる限り67mmで統一していますが、本レンズもそれにならっています

付属のレンズフードを装着したイメージ

付属のレンズフードを装着したイメージ

超広角ズームで肝となる解像性能

ここからは肝心かなめの描写性能を確認していきたいと思います。

広角端11mm/絞り値F2.8で撮影

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、11mm(35mm判換算16.5mm相当)、ISO125、F2.8、1/1250秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、22.5MB)

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、11mm(35mm判換算16.5mm相当)、ISO125、F2.8、1/1250秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、22.5MB)

まずは広角端11mm(35mm判換算17mm相当)/絞り開放F2.8の写真作例です。この写真を見ると、開放でも画面の中心部はシャープでコントラストが高く、十分に高い解像感があることが読み取れます。周辺部になると若干、解像性能の甘さを感じますが、絞り値が開放のF2.8であることを考えれば、文句なくすぐれた描写性能だと思います。

広角端11mm/絞り値F8で撮影

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、11mm(35mm判換算16.5mm相当)、ISO125、F8、1/140秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、25.4MB)

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、11mm(35mm判換算16.5mm相当)、ISO125、F8、1/140秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、25.4MB)

絞り込んでいけば解像感はさらに増し、F8まで絞り込むと画面全体での安定性が高まります。ただ、画面の四隅には外に向かって流れるような像の乱れがあり、これがいくら絞り込んでも消失しないところが少し気になりました。とはいっても、画面を100%に拡大してようやく気づく程度の像の乱れですので、実際にはそれほど気にする必要はないと思います。

望遠端20mm/絞り値F2.8で撮影

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、20mm(35mm判換算30mm相当)、ISO125、F2.8、1/1250秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、24.7MB)

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、20mm(35mm判換算30mm相当)、ISO125、F2.8、1/1250秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、24.7MB)

続いて、望遠端20mm(35mm判換算30mm相当)/絞り開放F2.8の写真作例をご覧ください。広角端と同じく、絞り開放でも画面の中心部は十分に高い解像感が得られています。周辺部も広角端よりシャープで、画面全体の像の安定性が高いです。こちらも絞り開放F2.8の描写であることを考えると、描写性能は非常に高く、実用性は十分だと言えると思います。

望遠端20mm/絞り値F8で撮影

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、20mm(35mm判換算30mm相当)、ISO125、F5.6、1/350秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、25.0MB)

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、20mm(35mm判換算30mm相当)、ISO125、F5.6、1/350秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、25.0MB)

四隅の画質は、望遠端で絞り込んでもなかなか完全には改善しきれませんが、全体的にはF5.6まで絞れば、画面全体で安定した高い解像感を得られるようになります。

少々細かすぎる評価をしてしまいましたが、総じて言わせてもらえば、本レンズは絞り開放から高い描写性能を持った高性能な超広角ズームであると言って問題ないと思います。「X-H2」や「X-T5」のような高画素機の登場時、富士フイルムは「40MP推奨レンズ」といったものをアナウンスしていましたが、そうしたレンズと比べても本レンズはそん色ないすぐれた性能を持っていると実感しました。

驚異的な最短撮影性能で描く広角マクロの世界

タムロンのレンズといえば、ズームレンズ・単焦点レンズともに、近接撮影性能にすぐれたレンズが多いことで有名です。本レンズもご多分に漏れず、驚異的な近接撮影が可能です。

広角端11mmの最短撮影距離で撮影

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、11mm(35mm判換算16.5mm相当)、ISO400、F2.8、1/160秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、15.7MB)

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、11mm(35mm判換算16.5mm相当)、ISO400、F2.8、1/160秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、15.7MB)

この写真作例は、広角端11mm(35mm判換算16.5mm相当)の最短撮影距離で撮影しています。本レンズの広角端での最短撮影距離は15cmで、前玉に被写体が接触するくらいまで接近できます。このときの撮影倍率は実に0.25倍。超広角ズームレンズとしてはまさに驚異的と言っていい性能です。被写体を大きく、かつ背景を広く写し、遠近感を強調するのがいわゆる広角マクロ撮影の醍醐味ですが、本レンズほどわかりやすくそれを体験できるレンズはそうそうないと思います。

望遠端20mmの最短撮影距離で撮影

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、20mm(35mm判換算30mm相当)、ISO400、F2.8、1/350秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、19.1MB)

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、20mm(35mm判換算30mm相当)、ISO400、F2.8、1/350秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、19.1MB)

いっぽうで、望遠端20mm(35mm判換算30mm相当)の最短撮影距離は24cmと広角端ほど強烈ではありません。撮影倍率も約0.13倍で、比べてしまうと控えめなため、上の写真を一見すると、こちらのほうが広角なのかと錯覚してしまいそうです。ただし、35mm判換算の焦点距離が30mm相当で24cmまで寄れれば、一般的にはとても立派な近接撮影能力です。広角端があまりに驚異的なので平凡に感じてしまいますが、ズーム全域ですぐれた近接撮影性能を持ったレンズと言えるでしょう。

さまざまな被写体を撮影してみた

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、11mm(35mm判換算約17mm相当)、ISO125、F8、1/125秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、21.2MB)

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、11mm(35mm判換算約17mm相当)、ISO125、F8、1/125秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、21.2MB)

焦点距離11mm(35mm判換算16.5mm相当)というのは、肉眼の視角を超えた本格的な超広角域です。それだけに、なかなか広大な画角にあった被写体を見つけるのに苦労はしますが、ハマれば強烈なパースペクティブによる印象的な写真を撮ることができ、気づいてみれば病みつきになる画角でもあります。画面上の豊富な情報量を、いかに整理するかに挑戦してみたくなります。

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、19.3mm(35mm判換算約29mm相当)、ISO125、F5.6、1/680秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、18.7MB)

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、19.3mm(35mm判換算約29mm相当)、ISO125、F5.6、1/680秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、18.7MB)

本レンズで「よかった!」と思えるのが、望遠端を20mm(35mm判換算30mm相当)にまで広げてくれたこと。35mm判換算で焦点距離28mm相当以上というのは、普段使いでなじみのある画角のため、ヒット率の低い広角端に対して常用できるというものです。

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、20mm(35mm判換算約30mm相当)、ISO800、F4、1/320秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、19.8MB)

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、20mm(35mm判換算約30mm相当)、ISO800、F4、1/320秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、19.8MB)

小型・軽量で明るいレンズは、あまり撮影距離を自由にとれない室内での使用にも最適です。最新の「Xシリーズ」のミラーレスカメラの被写体認識AFにも対応しているため、人物やペットなどに対して素早く正確にピントを合わせてくれます。ステッピングモーターユニット「RXD」を搭載しているので、AFは速く、正確で、静かです。

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、13.7mm(35mm判換算21mm相当)、ISO125、F5.6、1/3000秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、15.0MB)

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、13.7mm(35mm判換算21mm相当)、ISO125、F5.6、1/3000秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、15.0MB)

ご存じない人もいるかもしれませんが、タムロンのレンズと言えば逆光耐性が非常に高いことでも知られています。コーティングと内面反射処理の技術がすぐれているということでしょうが、画角が広いために強い光源を拾いやすい超広角ズームレンズにおいて、これは強力な武器となってくれます。

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、16mm(35mm判換算約24mm相当)、ISO125、F4、1/300秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、19.6MB)

X-H2、11-20mm F/2.8 Di III-A RXD、16mm(35mm判換算約24mm相当)、ISO125、F4、1/300秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、19.6MB)

ここまであまり触れませんでしたが、本レンズのボケ味はなかなかに優秀です。ピント面からの距離によって、二線ボケらしき影がでることもありますが、それも決して目立つものでなく、総じてやわらかく自然なため、主要被写体をじゃますることはありません。それがズーム全域に共通しており、ボケ味がギスギスしがちな超広角ズームレンズとしては大変優秀だと言えると思います。

まとめ 期待を裏切らない性能で「言うことなし!」

大切なことですので何度も述べさせていただきますが、2023年5月18日時点では、「XF8-16mmF2.8 R LM WR」と「XF10-24mmF4 R OIS WR」以外に、富士フイルム純正の超広角ズームレンズはラインアップされていません。サードパーティーからも超広角ズームレンズは登場しておらず、「タムロンにはAPS-C用の大口径・超広角ズームレンズがあるのに、なぜXマウント用はないのだ?」というのが、ここしばらく残念なところだったのであります。

つまり、「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」のXマウント用は、筆者を含めて「Xシリーズ」ユーザー待望のレンズというわけですね。満を持して登場した本レンズは、小型・軽量で使い勝手がよく、光学性能も大変すばらしく、AF性能も十分に満足できるのだから、もう何も言うことはありません。

もちろん純正レンズには純正ならではのボディとのマッチングのよさがあるため、絶対的に本レンズに選択肢を絞ることはできません。かくいう筆者も「フジノンレンズ」のファンです。しかし、2023年5月25日時点の価格.com最安価格が95,040円ということを考慮すれば、本レンズが魅力的な選択肢のひとつなのは間違いないと思います。

曽根原 昇

曽根原 昇

信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌などで執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に直ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)、「冬に紡ぎき −On the Baltic Small Island−」(ソニーイメージングギャラリー銀座)、「バルトの小島とコーカサスの南」(MONO GRAPHY Camera & Art)など。

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