特別企画

キヤノンのマクロレンズを使って「花のマクロ写真」をきれいに撮るコツ!

花は撮り方によってさまざまな表情を見せてくれる魅力的な被写体だ。今回は、キヤノンの「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」と「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」を用いて、花の撮影で欠かせない「マクロレンズ」の撮影テクニックを解説しよう。

左が「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」(フルサイズミラーレス「EOS R6 Mark II」に装着した状態)で、右が「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」

左が「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」(フルサイズミラーレス「EOS R6 Mark II」に装着した状態)で、右が「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」

掲載する写真作例について
JPEG形式(最高画質)で撮影。すべての作例で、周辺光量補正:オン、歪曲収差補正:オート、デジタルレンズオプティマイザ:標準に設定しています。

汎用性にすぐれた中望遠マクロレンズ「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」

「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」は、焦点距離100mmの中望遠マクロレンズ。マクロレンズとしては、少し距離を取った状態でも被写体を大きく写せるのがポイントだ。

もちろん、中望遠域ならではのボケを生かした撮影も可能で、花だけでなくテーブルフォトやポートレートなど幅広いシーンで活躍する、利便性の高いレンズである。

性能面では、13群17枚の新規光学設計を採用し、最大撮影倍率が1倍から1.4倍に向上したのが特徴。さらに、ボケ方を調整できる「SAコントロールリング」を新たに搭載するのも見逃せない進化点だ。

本レンズのサイズは81.5mm(最大径)×148mm(全長)で、重量は約685g。「EF100mm F2.8 L MACRO IS USM」と比べて少し大きく重くなった。筐体左側面に「フォーカスリミッター」「フォーカスモードスイッチ」「手ブレ補正スイッチ」といったスイッチ類を搭載している

本レンズのサイズは81.5mm(最大径)×148mm(全長)で、重量は約685g。「EF100mm F2.8 L MACRO IS USM」と比べて少し大きく重くなった。筐体左側面に「フォーカスリミッター」「フォーカスモードスイッチ」「手ブレ補正スイッチ」といったスイッチ類を搭載している

操作リングは3種類で、レンズ前面から「コントロールリング」「フォーカスリング」「SAコントロールリング」。「EF100mm F2.8 L MACRO IS USM」と比べるとリングが2つ増えているので、操作に慣れるには少し時間がかかるかもしれない

操作リングは3種類で、レンズ前面から「コントロールリング」「フォーカスリング」「SAコントロールリング」。「EF100mm F2.8 L MACRO IS USM」と比べるとリングが2つ増えているので、操作に慣れるには少し時間がかかるかもしれない

小型・軽量な準広角ハーフマクロレンズ「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」

「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」は、最大撮影倍率0.5倍のハーフマクロ撮影に対応する準広角マクロレンズ。全長62.8mm/重量約305gと軽量コンパクトなのが魅力だ。

焦点距離35mmという画角は、花々を撮るのにほどよい広さで扱いやすい。パースを付けながら、背景を広く入れ込んだダイナミックな描写が楽しめる。

「EOS R6 Mark II」と「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」の組み合わせ。本レンズは約74.4mm(最大径)×62.8mm(全長)/約305gと軽量コンパクトなので携帯しやすい

「EOS R6 Mark II」と「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」の組み合わせ。本レンズは約74.4mm(最大径)×62.8mm(全長)/約305gと軽量コンパクトなので携帯しやすい

花の撮影では単焦点マクロレンズが大変重宝するのだが、1本だけでは描写がどうしても似てくる。できれば焦点距離の異なる2本を用意して、バリエーションを出したいところ。その点、「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」と「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」は中望遠と準広角ということで描写にメリハリを出せるので、非常によい組み合わせと言える。

また、「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」はやや大ぶりのレンズのため、サブで扱うのは軽くて持ち運びしやすい「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」のようなものが適している。マクロレンズで花を撮影するうえで、この2本の組み合わせはひとつのモデルケースになるだろう。

さらに、「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」と「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」は、角度ブレとシフトブレを同時に補正する「ハイブリッドIS」に対応しており、接写時にも強力に手ブレを補正できるのも押さえておきたい。今回使用したカメラ「EOS R6 Mark II」との組み合わせだと、「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」は最大8.0段分、「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」は最大6.5段分の手ブレ補正効果を発揮する。

花を接写する際に役立つテクニック

それでは、「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」と「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」を使って、花を接写する際に役立つテクニックを解説していこう。手持ち撮影を想定し、ピント合わせに主軸を置いて具体的な方法を紹介する。

1.絞りの開きすぎに注意しよう

接写時はピントの合っている範囲を示す被写界深度が狭くなり、通常撮影時よりも、狙いどおりの場所にピントを合わせにくくなる。特に、「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」のような中望遠レンズは被写界深度が狭くなるので注意が必要だ。

通常撮影の感覚で絞りを開いてしまうと、ピントが浅すぎて何を撮っているのかわからなくなったり、ピント自体も合わせにくくなったりする。表現したい内容によっては、接写時は適度に絞ったほうがよい

ただし、被写体が植物の場合、花びらや葉は風に揺れて動くことが多く、シャッタースピードが遅いと被写体ブレが発生することは覚えておきたい。絞りを絞るのと同時に、シャッタースピードが遅くならないように注意を払いたい。

絞り値F2.8で撮影

「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」を使い、開放F2.8で接写した。ピントの合う範囲が非常に狭いことがわかる。花は立体的な被写体なので、ここまで被写界深度を浅くする場合は、ピントを合わせるポイントをしっかり吟味することも大事だEOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/400秒、ISO400、ホワイトバランス:色温度(4800K)、ピクチャースタイル:風景撮影写真(6000×4000、5.1MB)

「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」を使い、開放F2.8で接写した。ピントの合う範囲が非常に狭いことがわかる。花は立体的な被写体なので、ここまで被写界深度を浅くする場合は、ピントを合わせるポイントをしっかり吟味することも大事だ
EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/400秒、ISO400、ホワイトバランス:色温度(4800K)、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(6000×4000、5.1MB)

絞り値F4で撮影

「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」を使い、F4まで絞って撮影。絞りはそれほど開いていないが、中望遠での接写になると、ここまで被写界深度は浅くなるEOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F4、1/500秒、+1EV、ISO400、ホワイトバランス:太陽光(A2、G2)、ピクチャースタイル:風景撮影写真(6000×4000、5.1MB)

「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」を使い、F4まで絞って撮影。絞りはそれほど開いていないが、中望遠での接写になると、ここまで被写界深度は浅くなる
EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F4、1/500秒、+1EV、ISO400、ホワイトバランス:太陽光(A2、G2)、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(6000×4000、5.1MB)

絞り値F5で撮影

「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」を使い、F5で撮影。絞りを絞っていくことで、しべのラインをボカしすぎずに描写できたEOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F5、1/250秒、ISO400、ホワイトバランス:白色蛍光灯、ピクチャースタイル:ディテール重視撮影写真(6000×4000、6.7MB)

「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」を使い、F5で撮影。絞りを絞っていくことで、しべのラインをボカしすぎずに描写できた
EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F5、1/250秒、ISO400、ホワイトバランス:白色蛍光灯、ピクチャースタイル:ディテール重視
撮影写真(6000×4000、6.7MB)

2.「サーボAF」をうまく活用しよう

キヤノンのカメラを使って手持ちで花を撮る際にうまく活用したいのが「サーボAF」だ。いわゆる「コンティニュアスAF」と呼ばれるもので、シャッターボタンを半押ししている間、継続して被写体にピントを合わせ続けてくれる機能だ。

「サーボAF」は、通常、前後に動く被写体に効果的なAFモードだか、接写時などピント合わせがシビアな場面でも利便性が高い。接写時はわずかな手の動きもピンボケにつながりかねないが、「サーボAF」を利用することで、手先が前後に動いてもピントを合わせ続けながら撮影に臨めるのだ。風で動く植物などの撮影でも威力を発揮する。

なお、キヤノンのミラーレスでは、「コンティニュアスAF」という設定が独立して用意されているが、これはシャッターボタンを押していない状態でも常に被写体に対しておおまかにピントを合わせ続ける機能。シャッターボタン半押し中に、狙った被写体にピントを合わせ続けるのは、「AF動作」に用意されている「サーボAF」なので注意したい。

キヤノンのミラーレスでは、「AF動作」で「サーボAF」を選択する。今回使用した「EOS R6 Mark II」には、通常のAFと「サーボAF」が自動で切り替わる「AIフォーカスAF」も搭載されている。この機能を利用するのもひとつの手だ

キヤノンのミラーレスでは、「AF動作」で「サーボAF」を選択する。今回使用した「EOS R6 Mark II」には、通常のAFと「サーボAF」が自動で切り替わる「AIフォーカスAF」も搭載されている。この機能を利用するのもひとつの手だ

最短撮影距離近くまで寄って撮影。手持ちのため、完全には手元を静止できない場面だが、「サーボAF」にすることで、中心部にしっかりピントを合わせ続けながら狙いどおりに撮影できたEOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/320秒、ISO800、ホワイトバランス:太陽光(B1、G3)、ピクチャースタイル:風景撮影写真(6000×4000、6.3MB)

最短撮影距離近くまで寄って撮影。手持ちのため、完全には手元を静止できない場面だが、「サーボAF」にすることで、中心部にしっかりピントを合わせ続けながら狙いどおりに撮影できた
EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/320秒、ISO800、ホワイトバランス:太陽光(B1、G3)、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(6000×4000、6.3MB)

ウサギノオと呼ばれる植物。風に揺れ、ピント合わせが難しい場面だったが、「サーボAF」を利用することで構図に集中して撮影に臨めたEOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/250秒、ISO500、ホワイトバランス:太陽光(G2)、ピクチャースタイル:風景撮影写真(6000×4000、4.7MB)

ウサギノオと呼ばれる植物。風に揺れ、ピント合わせが難しい場面だったが、「サーボAF」を利用することで構図に集中して撮影に臨めた
EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/250秒、ISO500、ホワイトバランス:太陽光(G2)、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(6000×4000、4.7MB)

3.よりシビアなピント合わせに有効な「MF+連写」

最大撮影倍率近くまで被写体をクローズアップする場合などは、AFでは狙った位置になかなかピントが合わないことも多い。こんなときはMFに切り替え、みずからフォーカスリングを回してピントを合わせてみよう

また、手が動いたり、被写体が動いたりしてピントを合わせた状態をキープしにくいのなら、ドライブモードを連続撮影に切り替えるのもおすすめだ。連写することで、ピントの確実性を上げることができる。

なお、「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」と「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」は、いずれもフルタイムMFに対応している。フルタイムMFは、ワンショットAF後にフォーカスリングを回すだけでピント位置を調整できるのが便利だ。

「MF+連写」で撮影した3枚

1枚目の撮影写真(6000×4000、6.3MB)
2枚目の撮影写真(6000×4000、6.3MB)
3枚目の撮影写真(6000×4000、6.2MB)

この3枚は一見、どれも同じように見えるが、微妙にしべのピントの合い具合が異なっている。連続で撮影しておくことで、後で最良の1枚をセレクトできる。

「サーボAF+連写」でハチを撮影した中の1枚。接写時に動く被写体をとらえる際にも「サーボAF」と連写の組み合わせは重宝するEOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F5.6、1/400秒、ISO400、ホワイトバランス:色温度(4800K)、ピクチャースタイル:風景撮影写真(6000×4000、5.0MB)

「サーボAF+連写」でハチを撮影した中の1枚。接写時に動く被写体をとらえる際にも「サーボAF」と連写の組み合わせは重宝する
EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F5.6、1/400秒、ISO400、ホワイトバランス:色温度(4800K)、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(6000×4000、5.0MB)

4.フォーカスリミッターも使ってみよう

フォーカスリミッターとは、指定した撮影距離内でしかピント合わせを行わないように制御する機能だ。主に望遠系のマクロレンズや望遠レンズに搭載されることが多い。うまく活用できると、接写時のピント合わせがよりスムーズに行える。

「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」では、「FULL」「0.5m-∞」「0.26m-0.5m」の3つから撮影距離を選択できる。被写体に近づいて撮ることが多ければ、近接撮影用の「0.26m-0.5m」を利用しよう。ピント合わせの初動が速くなり、よりスピーディーにピントを合わせられる。

「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」のフォーカスリミッター。通常は「FULL」でよいが、撮影距離に応じてうまく選択してみよう。意図しない動作を制限できる

「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」のフォーカスリミッター。通常は「FULL」でよいが、撮影距離に応じてうまく選択してみよう。意図しない動作を制限できる

5.広角マクロは背景をうまく入れ込もう

「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」など広角系のマクロレンズによる接写は、ピントを合わせた主題の被写体に対して入り込む背景が多くなる。背景をうまく副題として取り込むことで、世界観を広げられるのが面白いところだ

また、広角マクロ撮影は、遠近感が強調されるのも意識したい要素だ。花のフォルムを歪ませてダイナミックに撮影してみたり、ローアングルから空を入れ込み開放感のある描写を狙ってみたりなど、望遠マクロとは異なり、躍動感のある画作りが楽しめる。

以下に掲載する作例は、いずれも「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」で撮影している。画作りの参考例としてご覧いただきたい。

最短撮影距離付近まで近づき撮影。ややローアングルから背景をダイナミックに入れ込み、遠近感を強調しながら撮影したEOS R6 Mark II、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、F2、1/640秒、ISO200、ホワイトバランス:太陽光(A4、M3)、ピクチャースタイル:風景撮影写真(6000×4000、5.4MB)

最短撮影距離付近まで近づき撮影。ややローアングルから背景をダイナミックに入れ込み、遠近感を強調しながら撮影した
EOS R6 Mark II、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、F2、1/640秒、ISO200、ホワイトバランス:太陽光(A4、M3)、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(6000×4000、5.4MB)

ぐっと寄ることで、フォルムを歪ませながら撮影した。これも広角マクロによる描写の特徴だEOS R6 Mark II、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、F3.5、1/60秒、ISO200、ホワイトバランス:太陽光(B1、G3)、ピクチャースタイル:風景撮影写真(6000×4000、4.1MB)

ぐっと寄ることで、フォルムを歪ませながら撮影した。これも広角マクロによる描写の特徴だ
EOS R6 Mark II、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、F3.5、1/60秒、ISO200、ホワイトバランス:太陽光(B1、G3)、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(6000×4000、4.1MB)

「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」は開放F1.8の明るさも魅力。大きな背景ボケを楽しめるEOS R6 Mark II、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、F1.8、1/640秒、ISO200、ホワイトバランス:太陽光(A4、M3)、ピクチャースタイル:風景撮影写真(6000×4000、5.6MB)

「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」は開放F1.8の明るさも魅力。大きな背景ボケを楽しめる
EOS R6 Mark II、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、F1.8、1/640秒、ISO200、ホワイトバランス:太陽光(A4、M3)、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(6000×4000、5.6MB)

焦点距離35mmの画角を生かしながらの撮影も楽しめるEOS R6 Mark II、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、F1.8、1/250秒、ISO400、ホワイトバランス:くもり(A4、M3)、ピクチャースタイル:風景撮影写真(6000×4000、7.7MB)

焦点距離35mmの画角を生かしながらの撮影も楽しめる
EOS R6 Mark II、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、F1.8、1/250秒、ISO400、ホワイトバランス:くもり(A4、M3)、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(6000×4000、7.7MB)

番外編 「SAコントロールリング」を調整してボケ方を変えてみる

最後に、「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」の独自機能「SAコントロールリング」の使いこなし方を解説しよう。

「SAコントロールリング」は球面収差を調整できるリングで、プラス方向に回すと後方のボケの輪郭が硬くなり、手前のボケの輪郭がやわらかくなる。逆に、マイナス方向に回すと後方のボケの輪郭がやわらかくなり、手前のボケの輪郭が硬くなる。

解像力は、球面収差が最も少ない「SAコントロールリング」の目盛りが中心にあるとき(通常時)がピーク。リングの値を大きくしていくと解像力が落ちていき、ソフトフォーカスのような効果が得られる。また、ソフトフォーカス効果は絞り開放で最大化される。このあたりの特性を考慮したうえで、うまく利用してみたい機能だ。

「SAコントロールリング」は±2の範囲で効果の度合いを調整できる。なお、リングを調整すると、画角や露出も変化する。撮影時は、最初にリングの値を設定してから、構図を決めるのがおすすめだ

「SAコントロールリング」は±2の範囲で効果の度合いを調整できる。なお、リングを調整すると、画角や露出も変化する。撮影時は、最初にリングの値を設定してから、構図を決めるのがおすすめだ

「SAコントロールリング」は右側面のロックスイッチを解除して利用する。使用しないときは、ロックしておけば誤操作を防げる

「SAコントロールリング」は右側面のロックスイッチを解除して利用する。使用しないときは、ロックしておけば誤操作を防げる

「SAコントロールリング」+1で撮影

「SAコントロールリング」を+1に設定して撮影。背後のボケの輪郭部が明瞭に描写されている。右下の前ボケはやわらかいEOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/1250秒、ISO200、ホワイトバランス:色温度(4800K)、ピクチャースタイル:風景、SA コントロールリング:+1撮影写真(4000×6000、6.4MB)

「SAコントロールリング」を+1に設定して撮影。背後のボケの輪郭部が明瞭に描写されている。右下の前ボケはやわらかい
EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/1250秒、ISO200、ホワイトバランス:色温度(4800K)、ピクチャースタイル:風景、SA コントロールリング:+1
撮影写真(4000×6000、6.4MB)

「SAコントロールリング」-2で撮影

「SAコントロールリング」を-2に設定して撮影。全体的に非常にやわらかい描写に。ソフトフォーカス効果も高まっているEOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/160秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(B1、G3)、ピクチャースタイル:風景、SA コントロールリング:-2撮影写真(6000×4000、3.9MB)

「SAコントロールリング」を-2に設定して撮影。全体的に非常にやわらかい描写に。ソフトフォーカス効果も高まっている
EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/160秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(B1、G3)、ピクチャースタイル:風景、SA コントロールリング:-2
撮影写真(6000×4000、3.9MB)

絞り値F2.8 「SAコントロールリング」+2で撮影

開放F2.8に設定することで印象的なソフトフォーカス効果が得られたEOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/200秒、ISO400、ホワイトバランス:太陽光(A4、M3)、ピクチャースタイル:風景、SA コントロールリング:+2撮影写真(4000×6000、4.8MB)

開放F2.8に設定することで印象的なソフトフォーカス効果が得られた
EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/200秒、ISO400、ホワイトバランス:太陽光(A4、M3)、ピクチャースタイル:風景、SA コントロールリング:+2
撮影写真(4000×6000、4.8MB)

絞り値F8 「SAコントロールリング」+2で撮影

上記と同じ被写体をF8で撮影。ソフトフォーカス効果が抑えられていることがわかるEOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F8、1/25秒、ISO400、ホワイトバランス:太陽光(A4、M3)、ピクチャースタイル:風景、SA コントロールリング:+2撮影写真(4000×6000、4.9MB)

上記と同じ被写体をF8で撮影。ソフトフォーカス効果が抑えられていることがわかる
EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F8、1/25秒、ISO400、ホワイトバランス:太陽光(A4、M3)、ピクチャースタイル:風景、SA コントロールリング:+2
撮影写真(4000×6000、4.9MB)

そのほかの作例

EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/1000秒、ISO400、ホワイトバランス:太陽光(A4、M3)、ピクチャースタイル:風景撮影写真(6000×4000、5.5MB)

EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/1000秒、ISO400、ホワイトバランス:太陽光(A4、M3)、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(6000×4000、5.5MB)

EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/640秒、ISO400、ホワイトバランス:太陽光(A4、M3)、ピクチャースタイル:風景撮影写真(6000×4000、5.8MB)

EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/640秒、ISO400、ホワイトバランス:太陽光(A4、M3)、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(6000×4000、5.8MB)

EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/800秒、ISO100、ホワイトバランス:くもり(A2、G2)、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(4000×6000、4.4MB)

EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/800秒、ISO100、ホワイトバランス:くもり(A2、G2)、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(4000×6000、4.4MB)

EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/250秒、ISO100、ホワイトバランス:くもり(A2、G2)、ピクチャースタイル:スタンダード撮影写真(6000×4000、5.0MB)

EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/250秒、ISO100、ホワイトバランス:くもり(A2、G2)、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、5.0MB)

EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F8、1/100秒、ISO800、ホワイトバランス:くもり、ピクチャースタイル:ディテール重視撮影写真(6000×4000、8.2MB)

EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F8、1/100秒、ISO800、ホワイトバランス:くもり、ピクチャースタイル:ディテール重視
撮影写真(6000×4000、8.2MB)

「SA コントロールリング」を+2にして撮影。輪郭部のにじみ方が個性的な仕上がりになったEOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:色温度(4800K)、ピクチャースタイル:ディテール重視、SA コントロールリング:+2撮影写真(6000×4000、6.1MB)

「SA コントロールリング」を+2にして撮影。輪郭部のにじみ方が個性的な仕上がりになった
EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:色温度(4800K)、ピクチャースタイル:ディテール重視、SA コントロールリング:+2
撮影写真(6000×4000、6.1MB)

EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/250秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(B1、G3)、ピクチャースタイル:風景撮影写真(6000×4000、5.0MB)

EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/250秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(B1、G3)、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(6000×4000、5.0MB)

EOS R6 Mark II、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、F4、1/30秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:風景撮影写真(6000×4000、4.7MB)

EOS R6 Mark II、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、F4、1/30秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(6000×4000、4.7MB)

EOS R6 Mark II、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、F3.5、1/30秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(B1、G3)、ピクチャースタイル:風景撮影写真(6000×4000、5.0MB)

EOS R6 Mark II、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、F3.5、1/30秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(B1、G3)、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(6000×4000、5.0MB)

EOS R6 Mark II、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、F2、1/250秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(B1、G3)、ピクチャースタイル:風景撮影写真(6000×4000、6.9MB)

EOS R6 Mark II、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、F2、1/250秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光(B1、G3)、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(6000×4000、6.9MB)

花々の撮影では、前ボケも効果的なアクセントになる。前後に被写体を配置できるシーンでうまく狙ってみようEOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/2500秒、ISO800、ホワイトバランス:太陽光(B1、G3)、ピクチャースタイル:風景撮影写真(4000×6000、12.5MB)

花々の撮影では、前ボケも効果的なアクセントになる。前後に被写体を配置できるシーンでうまく狙ってみよう
EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/2500秒、ISO800、ホワイトバランス:太陽光(B1、G3)、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(4000×6000、12.5MB)

EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/2500秒、ISO800、ホワイトバランス:太陽光(G2)、ピクチャースタイル:風景撮影写真(6000×4000、5.0MB)

EOS R6 Mark II、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、F2.8、1/2500秒、ISO800、ホワイトバランス:太陽光(G2)、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(6000×4000、5.0MB)

EOS R6 Mark II、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、F1.8、1/8000秒、ISO500、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:ディテール重視撮影写真(4000×6000、6.5MB)

EOS R6 Mark II、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、F1.8、1/8000秒、ISO500、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:ディテール重視
撮影写真(4000×6000、6.5MB)

まとめ “寄れればいい写真が撮れる”わけではないのが「奥が深い」

花は形状も色合いも千差万別で、ピントを合わせるポイントによって、またはどの程度までボカしていくかによって、同じ構図でも印象が大きく変化していく。必ずしも“寄れればいい写真が撮れる”わけではない。ここが花のマクロ写真の奥が深いところだ。

マクロレンズは、“寄り切る”ために使うアイテムというよりも、寄れる領域を広げられるアイテムである。通常のレンズを使っていて、“もう少し寄れたら……”と思う部分を解消できるのが魅力。うまく活用することで、寄り引きの自由度を上げ、画作りの幅を飛躍的に広げることができる。

今回紹介した中望遠マクロレンズ「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」は、最大撮影倍率が1.4倍と非常に高いが、これはもはや顕微鏡からの眺めのようで、通常の画作りではそこまで寄り切る必要はないだろう。

花の接写はピントが浅くなる分、手持ちで撮るには根気が求められる。だが、その分、写真ならではの描写を追求できる面白さがある。ぜひ本記事で紹介したテクニックを活用して撮影を楽しんでほしい。

最後に、三脚の話を少しだけしておこう。花の撮影でも、シビアなピント合わせには、三脚が大いに活躍する。

花を撮る際の三脚は、小型・軽量なものでも十分効果を発揮する。また、三脚の高さを高くできるものよりも低くできるもののほうが、背の低い花々を撮るのには便利だ。

いっぽう、三脚を使うと機動力が落ちるし、フラワーガーデンなどではほかの人のじゃまにもなりやすい。手持ちにするか三脚を使うかは、適材適所でうまく選択していきたい。

河野鉄平

河野鉄平

フォトグラファー。写真家テラウチマサト氏に師事後、2003年独立。ポートレートを中心に活動。2022年1月に新著『上手い写真は構図が9割』(玄光社)発売。ポーラミュージアムアネックス(2015年/銀座)など写真展も多数。Profoto公認トレーナー。
Instagram:teppei_kono_eye
Twitter:@teppei_kono

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