「GFXシリーズ」の新しいフラッグシップモデル「GFX100 II」。この画像では、同時に発表された新しい標準・単焦点レンズ「フジノンレンズ GF55mmF1.7 R WR」を装着している
35mm判(フルサイズ)の約1.7倍の大きさを誇るラージフォーマットセンサーを採用する、富士フイルムのミラーレスカメラ「GFXシリーズ」。2023年9月12日、同シリーズの新しいフラッグシップモデル「FUJIFILM GFX100 II」(以下、「GFX100 II」)が発表された。
今回、このカメラの試作機をいち早く手にする機会を得た。実際に試してわかった点を含めながら進化点をレビューしよう。
※本レビューで使用した「GFX100 II」は開発中の試作機です。製品版とは仕様が異なる場合があります。
■「GFX100 II」の主な特徴
・新開発の撮像素子「GFX 102MP CMOS II HS」(有効約1億200万画素)
・最新の画像処理エンジン「X Processor5」
・「Xシリーズ」と同じ被写体検出AFを搭載
・CFexpress Type BカードとSDカードのデュアルスロット
・最高約8.0コマ/秒の連写性能
・常用感度の下限値がISO80
・補正効果8.0段のボディ内5軸手ブレ補正
・約4億画素の画像が得られる「ピクセルシフトマルチショット」
・倍率1.0倍/約944万ドットの着脱式電子ビューファインダー
・新フィルムシミュレーション「REALA ACE」
・8K/30p記録、4:2:2 10bitでの4K/60p記録に対応
・3種類のProResコーデック(ProRes 422 HQ、ProRes 422、ProRes 422 LT)に対応
・動画撮影時のタッチ操作/トラッキングAFに対応
「GFX100 II」は、従来モデル「GFX100」や小型・軽量な1億画素機「GFX100S」と比べて読み出し速度が2倍に向上した新開発のイメージセンサー「GFX 102MP CMOS II HS」(有効約1億200万画素)と、最新の画像処理エンジン「X-Processor 5」を搭載し、カメラとしてあらゆる点が進化している。
なかでも、試作機を使ってみて特に大きな進歩を感じたのがAFだ。最新のAF予測アルゴリズムによってトラッキング性能が向上したうえ、「Xシリーズ」の最新APS-Cミラーレスと同じ被写体検出AFの利用が可能に。従来モデルと比べるとAFの使い勝手は大幅に改善されている。
以下に、「GFX100 II」のAF動作を記録した動画を掲載する。素早く動く人物に対してピントが追従する様子をご確認いただきたい。
素早く動く人物を被写体に「GFX100 II」のAFの追従性をテストしてみた。窓から強い光が入る、被写体を認識しにくい状況ながら、瞳にピントを合わせ続けているのがわかる。AF枠の表示遅延もほぼ見られない。※AF枠を見やすくするためキャプチャーした映像からコントラストと明るさを大幅に調整しています
人物の顔・瞳のほか、「動物」「鳥(+昆虫)」「クルマ」「バイク&自転車」「飛行機(+ドローン)」「電車」の被写体検出に対応。「X-H2S」などと同じ内容だ
「GFX100 II」の性能面では、連写速度が従来モデルの最高約5.0コマ/秒から最高約8.0コマ/秒(いずれもメカシャッター)に向上したのも見逃せない。CFexpress Type Bメモリーカードの採用とバッファメモリーの増強もあって、CFexpress Type Bカード使用時は、連写後の書き込みの待ち時間が少なく、思ったよりもテンポよく連写撮影を行えた。
メカシャッターで最高約8コマ/秒の連写が可能。電子シャッター時は最高約5.3コマ/秒
CFexpress Type BメモリーカードとSDメモリーカードのデュアルスロットを採用
操作のレスポンスも改善しており、撮影直後の画像の再生や送り・戻りの操作もスムーズに行えるようになった。試作機だからかもしれないが、露出補正時のダイヤル操作の反応がもうひとつだったのは少し気になったが、それ以外の撮影に関する操作は「GFX100」や「GFX100S」よりもスピーディーだ。
画質面では、画素数は有効約1億200万画素で据え置きだが、新しいイメージセンサーによって細かいところが進化している。
具体的には、画素構造の改良によって飽和電子数(フォトダイオードが蓄えられる電子の最大値)が向上したことで、常用感度のスタートがISO100からISO80に下がった。従来モデルもダイナミックレンジの広さとノイズの低さでは定評があったが、さらに磨きがかかっている。
また、新センサーではマイクロレンズを改良し、センサー縁部の光の利用効率が向上。周辺部での画質やAF精度を従来モデルよりも高めているという。
ISO80が常用感度として利用できるようになった
富士フイルム独自の仕上がり設定「フィルムシミュレーション」には「REALA ACE」が追加された。適度なコントラストと正確な色再現性で人気を集めたネガフィルム「REALA ACE」(2012年に販売終了)の名を冠したモードだ。
今回、この新しいモードを集中的に試してみたが、適度にメリハリがあって「PROVIA」よりもハイライトの抜けがよく、シャドウ側の階調も豊かな印象。また、色被りが少なく、「PROVIA」よりも忠実な色再現性に感じられた。
「フィルムシミュレーション」に新モード「REALA ACE」が追加された
レンズには「GFX100 II」と同日に発表された「GF55mmF1.7 R WR」を使用。35mm判換算で焦点距離44mm相当の画角の標準・単焦点レンズで、周辺まで高い解像性能を実現している。「GFレンズ」として初めて11枚羽根絞りを採用したのも特徴だ。
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F8、1/320秒、ISO80、-0.7EV、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:REALA ACE、ダイナミックレンジ:100%、JPEG
撮影写真(11648×8736、23.3MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F1.7、1/1400秒、ISO80、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:REALA ACE、ダイナミックレンジ:100%、JPEG
撮影写真(11648×8736、32.5MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F11、1/42秒、ISO80、-0.7EV、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:REALA ACE、ダイナミックレンジ:100%、JPEG
撮影写真(11648×8736、46.3MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F4、1/600秒、ISO80、-0.7EV、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:REALA ACE、ダイナミックレンジ:100%、JPEG
撮影写真(11648×8736、44.0MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F11、1/42秒、ISO100、-1.3EV、ホワイトバランス:晴れ、フィルムシミュレーション:REALA ACE、ダイナミックレンジ:100%、JPEG
撮影写真(11648×8736、49.8MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F1.7、1/640秒、ISO80、-1.3EV、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:REALA ACE、ダイナミックレンジ:100%、JPEG
撮影写真(11648×8736、42.2MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F1.7、1/140秒、ISO80、-0.7EV、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:REALA ACE、ダイナミックレンジ:100%、JPEG
撮影写真(11648×8736、42.0MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F8、1/42秒、ISO800、-2.7EV、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:REALA ACE、ダイナミックレンジ:100%、JPEG
撮影写真(11648×8736、42.0MB)
GFX100 II、GF55mmF1.7 R WR、55mm(35mm判換算44mm相当)、F1.7、1/75秒、ISO80、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:REALA ACE、ダイナミックレンジ:100%、JPEG
撮影写真(11648×8736、41.6MB)
今回追加された「REALA ACE」と、スタンダードなフィルムシミュレーション2種類「PROVIA」「PRO Neg. Std」の比較作例を横並びで掲載する。それぞれの仕上がりの違いを確認してほしい。
「GFX100 II」のボディは、従来モデル「GFX100」の縦位置グリップ一体型ではなく、縦位置グリップのないタイプに変更された(※別売オプションとして外付けの縦位置グリップ「VG-GFX100 II」を用意)。これによってボディは全体的にコンパクトになり、小型・軽量な1億画素機「GFX100S」に迫るサイズ感に収まっている。
縦位置グリップのないボディを採用
電子ビューファインダー(EVF)は「GFX100」と同様に着脱式
EVFを外して付属のカバーを付けた状態
EVF装着時
サイズ:152.4×117.4×98.6mm
重量:約1030g
EVF非装着時
サイズ:152.4×103.5×73.5mm
重量:約948g
サイズ:150.0×104.2mm×87.2mm
重量:約900g
※いずれもサイズは幅×高さ×奥行。重量はバッテリー、メモリーカードを含む
左が「GFX100 II」で、右が「GFX100S」。ボディの高さは、EVFを装着した状態だと「GFX100 II」のほうが約13.2mm高く、外した状態だと「GFX100 II」のほうが約0.7mm低い。重量は「GFX100 II」のほうが重く、EVFを付けた状態で比較するとその差は約130g。外した状態でも「GFX100 II」のほうが約48g重い
外観は、ボディ上面が手前側に少し角度の付いたデザインになり、よりシンプルでシャープな印象に。外装のラバーが「BISHAMON-TEX」という新しいテクスチャーに変更され、カメラをグリップした際のフィーリングがよくなったのもトピックだ。
ボディ上面が少し角度のついた形状になるなど、デザインは全体的に見直されている
新しいテクスチャー「BISHAMON-TEX」のラバーを採用。規則的に細かい凹凸が入ったデザインで指がかりがよく、しっかりとグリップできる印象を受けた
左が「GFX100 II」で、右が「GFX100S」。テクスチャーが変わったことがわかるだろう
着脱式のEVFは、倍率が約0.86倍から約1.0倍(いずれも35mm判換算)に、ドット数が約576万ドットから約944万ドットに向上している。さらに、瞳の位置ずれによって発生する像の流れ・歪みも抑制しており、ファインダーの視認性はかなり高い。表示フレームレートが約120フレーム/秒のブーストモードも備わっている。
倍率約1.0倍(35mm判換算)/約944万ドットの高性能なEVFを採用。背面の操作性は従来モデルと変わらない
操作性は、従来モデルの仕様を踏襲しつつ、ボディ上面のシャッターボタン近くに横並びの3連ファンクションボタンを新たに配置。この3連ボタンは、人物の顔・瞳検出機能のオン/オフ、被写体検出のオン/オフ、露出補正がそれぞれ初期設定で割り当てられているが、割り当てを変更することも可能だ。
シャッターボタン近くに3つのファンクションボタンを新設
上面右側のサブ液晶は従来モデルよりも大型化。GUIデザインも変更されている。ストラップ取り付け部は、「X-H2S」などと同じ平紐を通すタイプだ
サブ液晶は従来モデルと同様、背景を白地に変更できる(左)。ヒストグラムを表示したり(右)、ダイヤルを模した「バーチャルダイヤルモード」に切り替えたりできる
液晶モニター(3.2型、約236万ドット)は3方向チルト式を継承
底面。別売オプションの縦位置グリップ「VG-GFX II」を装着するための端子部が備わっている
「GFX100 II」は動画撮影機能も進化している。「GFXシリーズ」として初めて8K/30p記録に対応するほか、4:2:2 10bitでの4K/60pカメラ内カード記録も可能。センサー読み出し速度の高速化によってローリングシャッター歪みが抑えられており、動きのある被写体も違和感なく表現できるようになったのも大きい。
8K/30p記録に対応
使い勝手では、動画撮影時のタッチ操作とトラッキングAFに対応するのも見逃せない。 AF-C+ワイド/トラッキングAF使用時に、追従したい被写体を画面でタッチして指定できるようになった。
また、ダイナミックレンジを14+stopに広げた「F-Log2」の利用が可能。「X-H2S」などと同様、ProRes 422 HQ、ProRes 422、ProRes 422 LTといった3種類のProResコーデックに対応し、ProRes撮影時にはProRes 422 Proxyなどのプロキシ撮影が行える。
14+stopの「F-Log2」を利用可能
ProResでの撮影にも対応している
さらに、「GFX100 II」では、「動画フォーマット」という新モードを搭載。このモードを使えば、ラージフォーマットよりもサイズの小さい3種類レンズ(「Premista」「35mmフォーマットレンズ」「アナモフィックレンズ 35mm」)をマウントアダプター経由で装着した際に最適なフォーマットで動画を撮影できる。
3種類のレンズを選択できる「動画フォーマット」を新たに搭載
このほか、HDMI経由で最大8K/30P 12bitの動画RAWデータ出力が可能。ATOMOS社製モニター「NINJA V+」でProRes RAWとして、Blackmagic Design社製モニター「Video Assist 12G」でBlackmagic RAWとして記録できる。
「X-H2S」などと同じく、外付けの冷却ファン「FAN-001」(別売オプション)をボディ背面に装着し、動画の連続記録時間を延ばすことが可能。冷却ファン用の設定も用意されている
左側面にEthernetポートやHDMI(Type A)端子、USB Type-C端子などを装備。USB経由で外付けSSDを接続して、写真や動画をSSDに直接記録することもできる
「GFX100 II」は、イメージセンサーを刷新したことで、AF性能と連写速度が大きく向上した。何よりレスポンスがよくなったのがすばらしい。「GFX100」や「GFX100S」はお世辞にもレスポンスがよいカメラとは言えなかったが、「GFX100 II」では、その点が大きく改善されており、格段に撮影しやすくなった。
新しいフィルムシミュレーション「REALA ACE」や充実した動画撮影機能も魅力的で、従来モデルのユーザーにとって買い替えたくなるカメラと言えそうだ。
「GFX100 II」の発売は2023年9月28日。市場想定価格は1,270,500円前後(税込)。縦位置バッテリーグリップが別売オプションとはいえ、発売時点での想定価格は「GFX100」より7万円ほど安い。
同時発表の標準・単焦点レンズ「GF55mmF1.7 R WR」の発売も2023年9月28日が予定されている。こちらの希望小売価格は402,600円(税込)。
フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣を持つ。フォトグラファーとしても活動中。