「Z fc」と準広角・単焦点レンズ「NIKKOR Z DX 24mm f/1.7」
連載「今日も、カメラと一緒に」第4回の相棒は、ニコンのAPS-Cミラーレスカメラ「Z fc」。往年のフィルム一眼レフを彷彿とさせるレトロなデザインがグッとくる、かわいらしいカメラと、DXフォーマット用の単焦点レンズ「NIKKOR Z DX 24mm f/1.7」(2023年6月発売)をお供に、このカメラに似合うレトロな雰囲気を感じさせる場所を訪れました。
こんにちは、写真家の金森玲奈です。
今回の相棒カメラはニコンの「Z fc」です。「Z fc」は「Zシリーズ」のAPS-Cミラーレスの中でも他機種とは一線を画すビジュアルが特徴で、私が写真学生だったころ、大学の貸し出し用カメラとして活躍していたフィルム一眼レフ「FM2」にとてもよく似たデザインをしています。
写真初心者だった私は自分でピントを合わせて写真を撮るなんて絶対無理と思い、AFが搭載されたカメラを買いましたが、デザイン的にはかわいいなと密かに思っていたカメラのひとつでした。
20数年の時を経て、往年のレトロデザインに念願だったAF機能を搭載した「Z fc」をお供に、このカメラが似合いそうな場所を訪ねました。
魅惑のバナナスプリット
Z fc、NIKKOR Z DX 24mm f/1.7、F1.7、1/200秒、+1.3、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(5568×3712、6.9MB)
目的地に行く途中で立ち寄ったのは、こちらもずっと来てみたいと思っていたアメリカンテイストがすてきなカフェ。古いアメリカ映画に出てくるダイナーなどで知った「バナナスプリット」というレトロなビジュアルがかわいいスイーツを食べてエネルギーチャージは完了。目的地を目指して出発です。
道すがら見つけたマンションのブロック塀や小さな出入り口もどことなく昭和な雰囲気
Z fc、NIKKOR Z DX 24mm f/1.7、F1.7、1/400秒、ISO100、+2.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
Z fc、NIKKOR Z DX 24mm f/1.7、F1.7、1/1250秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(5568×3712、6.6MB)
レトロと言えば何だろう? と考えたときに思い浮かんだのは安直ですが、古い建物でした。
今回訪れたのは、昭和初期に建てられた邸宅。都心の近くにありながら、木立に囲まれた静かな空間にひっそりと存在していて、周囲の喧騒を忘れさせてくれます。邸内もほとんど当時のままで、1つひとつ部屋を巡っていくと次第にタイムスリップしたような気分に。
Z fc、NIKKOR Z DX 24mm f/1.7、F1.7、1/320秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(5568×3712、9.6MB)
Z fc、NIKKOR Z DX 24mm f/1.7、F1.7、1/100秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(3712×5568、6.4MB)
Z fc、NIKKOR Z DX 24mm f/1.7、F1.7、1/140秒、ISO2000、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(5568×3712、7.4MB)
Z fc、NIKKOR Z DX 24mm f/1.7、F1.7、1/4000秒、ISO100、-0.6EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(5568×3712、6.6MB)
邸内を歩いていて目にとまったのは、使い込まれた手すりや床が持つ、風格すら感じさせる色合いと質感でした。経年によるものだけでなく、人の手が触れたことによって鈍く光る手すりや床から、かつてここで暮らしていた人たちの気配を感じられるような気がしました。
Z fc、NIKKOR Z DX 24mm f/1.7、F1.7、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(5568×3712、4.9MB)
Z fc、NIKKOR Z DX 24mm f/1.7、F1.7、1/60秒、-1.0EV、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(5568×3712、5.7MB)
Z fc、NIKKOR Z DX 24mm f/1.7、F1.7、1/320秒、-1.0EV、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(5568×3712、6.6MB)
Z fc、NIKKOR Z DX 24mm f/1.7、F1.7、1/100秒、ISO100、+0.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(5568×3712、7.2MB)
帰り道に見つけた個性的な植物が目を引くお花屋さんのショーウィンドウにカメラを向けていたらお店の人が帰ってきて中へと誘われました。
店舗のディスプレイなども手掛けるお花屋さんだそうですが、1本からでも買えるとのことでゴッホのひまわりのようなフサフサひまわりをお買い上げ。
自転車のカゴに花が入っているとなんだかウキウキします
Z fc、NIKKOR Z DX 24mm f/1.7、F1.7、1/640秒、ISO100、+1.3EV、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(5568×3712、7.4MB)
地元に戻り、この連載の第1回で紹介した団地を通っていたら、ちょうどチェリーセージが咲いていた植え込みの近くで木漏れ日に照らされる花を発見。きれいだなとカメラを向けていると、前回のマダムとは別のマダムにまたしても「持っていっていいわよ」と声をかけられました。
花の名前を聞きそびれてしまったのですが、少しずつ花びらが色づいて夕方には落ちてしまうとのことで、「せっかくならまた今度朝に持っていらっしゃい」と言ってさっそうと去って行かれる姿が数か月前のマダムと重なって、デジャヴかな……なんて思いつつお見送り。
フランクにお花をおすそ分けしようとしてくれるこの団地の人たちの心遣いにまた触れられて、じんわりあたたかい気持ちに。来年は紫陽花の時期に会いたいな、なんて若干図々しいことを考えながら帰路に就きました。
君の名は?
Z fc、NIKKOR Z DX 24mm f/1.7、F1.7、1/2000秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(5568×3712、6.3MB)
今回、ちょっとレトロな場所を探すのに連れ出した「Z fc」。前述したとおり、ニコンのフィルムカメラ「FM2」とビジュアルがとてもよく似ており、デジタルカメラではあまり見られなくなった少し存在感のあるダイヤルも「FM2」の面影を色濃く感じさせます。
「FM2」などのフィルム一眼レフのカメラ上部に搭載されていたフィルムの巻き上げレバー部分は露出補正と感度のダイヤルに、感度を設定していたダイヤル部分は撮影モードダイヤルに変更されています。往年のカメラのデザインを踏襲しつつ、最新のデジタル一眼カメラとしての操作性もよく考えられていて、使いやすさでも、持ち歩く楽しさという点でも好印象でした。
細かい操作性を見ると、感度ダイヤルは中央のロックボタンを押しながら回す必要があったり、オート感度に設定するには「Zシリーズ」の他機種と同じようにメニューを呼び出す必要があったりと、ちょっとしたところに不便さを感じる人もいるかもしれません。ただ、私個人としては、ちょっと不便に感じるこの仕様も、フィルムカメラライクさを感じてむしろ萌えポイントでした。
ダイヤルを回して感度を設定するという行為自体がもはやエモいと思う半面、感度の上限がISO51200というフィルムカメラ時代には想像もできなかった数値に技術の進歩と時の流れを感じました……
レトロでかわいい「Z fc」に組み合わせたレンズは、2023年6月23日に発売されたDXフォーマット用の「NIKKOR Z DX 24mm f/1.7」。コンパクトなサイズ感のこの単焦点レンズは、華奢なデザインの「Z fc」との相性もバッチリです。
「NIKKOR Z DX 24mm f/1.7」を装着した「Z fc」。付属のレンズフード「HN-42」も取り付けています
「NIKKOR Z DX 24mm f/1.7」でさりげない進化を感じたのは、付属するレンズフードの形状です。ねじ込み式のレンズフードで、バヨネット式よりも安定感があって、レンズに装着したときのサイズ感もちょうどよく、さらに「Z fc」装着時のデザイン的な一体感も心地よいものでした。レンズフードとしての役目をしっかりと果たしつつ、レンズやカメラの持つ世界観をじゃましない心遣いのようなものを感じました。
ねじ込み式のレンズフード「HN-42」
近年のカメラ技術の進歩はすごいものがあります。ソフト面だけでなく、ダイヤルやボタンの位置、カメラのデザインなども常によりよいもの、使いやすいものにしていこうという各カメラメーカーの気概と努力を感じます。
けれど、それと比例するようにボディデザインにおけるカメラの個性が少しずつ失われているように感じるときもあります。そんななかで「Z fc」は久しぶりに肩から提げて一緒に街を歩くのが楽しく感じられたカメラでした。
技術の進歩もユーザーとしてはもちろんありがたいですが、ただの道具ではなく、ともに人生を記録する大切な相棒として長く使いたいと思える愛着の持てるデザインや、所有する楽しさもカメラの持つ魅力のひとつだと思います。
各カメラメーカーの往年のデザイン復刻が続いたらいいなと思った「Z fc」との出会いでした。
さて、次の相棒と今度はどこへ行こう。
Z fc、NIKKOR Z DX 24mm f/1.7、F1.7、1/640秒、+2、ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(5568×3712、6.0MB)
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