フルサイズミラーレスカメラ「EOS R6 Mark II」と大口径・単焦点レンズ「NOKTON 50mm F1 Aspherical」の組み合わせ
連載「今日も、カメラと一緒に」第8回は、私が普段プライベートで使っている“リアル相棒カメラ”として、キヤノンのフルサイズミラーレス「EOS R6 Mark II」と、このカメラの“目”として最近コンビを組み始めたMFレンズ「NOKTON 50mm F1 Aspherical」をご紹介します。
このカメラとレンズの組み合わせで撮影した写真をいくつか掲載しながら、フィルム時代からキヤノンのカメラを使い続けている理由や、「NOKTON 50mm F1 Aspherical」にひと目ぼれしてしまった理由、デジタルカメラの便利さ・楽しさなどに触れていきたいと思います。
こんにちは、写真家の金森玲奈です。
この連載では毎回違った相棒カメラとレンズで写真を撮りながら、私の写真への想いや写真を通した思い出などをお話しさせてもらっています。今回の相棒として紹介するのは、私が日常使いしているキヤノンの「EOS R6 Mark II」です。
まず、私の初めての相棒カメラの話を少しだけ。私が初めて買ったカメラはキヤノンの「EOS 55」というフィルム一眼レフでした。連載第4回でもお話ししましたが、写真初心者だった私にはカメラが自動でピントを合わせてくれるAF機能はなくてはならないものだったため、AF搭載の一眼レフのなかで、値段が手ごろでピント合わせもフィルムの巻き上げも自動でやってくれるからという何とも他力本願な理由で決まった初相棒が「EOS55」でした。
あれから約25年間、中判カメラや他社のカメラを併用していた時期もありましたが、それでも私の歴代の相棒はずっとキヤノンのカメラでした。その理由は、私にとっての「使い勝手のよさ」に尽きると思います。
まず、同じメーカーだからこそ多少の違いはあれど、ボタン位置や操作性がカメラによって劇的に違うということがあまりなく、カメラを乗り換えても比較的早い段階で撮ることに集中する環境が整うという点があげられます。そしてもうひとつはレンズを引き継げることです。フィルムからデジタルに変わってもEFマウントのレンズをそのまま使えるため、初期投資を抑えられるのが大きなメリットでした。
そして、いちばん大きな理由としてお伝えしたいのが、キヤノンのカメラが持つ自然な色味とふんわりとしたレンズの描写が個人的に好きだからです。これはデジタルになってから特に感じるようになりました。フィルムカメラ時代はフィルムメーカーが担っていた「色」での差別化が、デジタルカメラ時代となった現在はカメラの持つ特徴のひとつになったように思います。
普段使っているというなじみ深さのアドバンテージもあったかもしれませんが、それでも他社のカメラの「色」と比べたとき、自分の撮りたい写真の「色」はこれだ、という確信を持ちました。だからこそ、何代かの代替わりを経て「EOS R6 Mark II」が現在の相棒となっています。
開放F1.0が描き出す空気感にほれた「NOKTON 50mm F1 Aspherical」
さて、この連載のタイトルは「今日も、カメラと一緒に」ということで、自分の分身とも言えるカメラが主役なのはもちろんですが、そんなカメラに欠かせないまさにカメラの“目”とも言えるレンズも同じくらい大事な存在です。
カメラメーカー純正のレンズはもちろん、近年はサードパーティー製のレンズも増え、レンズそのものが持つ描写を楽しめる選択肢が増えてきました。とはいえ、以前にも少しお話ししたとおり、私はカメラやレンズにそこまでこだわりを持っているほうではなく、自分の撮りたいものをストレスなく撮れればそれで十分と考えていたので、明るい単焦点レンズに多少の憧れはあっても積極的に増やすことはありませんでした。
そんな私がひと目ぼれし、ついには手に入れてしまったのが、今回使ったコシナ「フォクトレンダー(Voigtlander)」ブランドの大口径・単焦点レンズ「NOKTON 50mm F1 Aspherical」です。キヤノンのライセンスを受けた初のサードパーティー製レンズとして話題になったこのレンズ、価格.comマガジンでレビューを担当したことがきっかけで、私もすっかりその魅力の虜になってしまいました。
AFが使えるメーカー純正レンズ一択だった私にとっては、いくら描写がすばらしいとはいえ、マニュアルフォーカスのレンズが欲しいと思う日がきたことが本当に驚きでした。ですが、このレンズの持つ空気感にほれ込んでしまい、悩みに悩んでついに我が家に迎えることになりました。
とろけるようなボケ味にホレボレ
EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/1000秒、ISO100、+2.0EV、ピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:オート、RAW現像
撮影写真(6000×4000、19.2MB)
マニュアルでピントを合わせる「NOKTON 50mm F1 Aspherical」の開放F1.0でのピント合わせは、まさに薄紙1枚に焦点を合わせるような繊細さを必要とするものでした。ほんの少しピント位置が変わるだけでもまったく違った表情になるモニター上の世界に目を凝らし、今だと思った瞬間にシャッターを切る。そうして写しとめた写真には、ピント合わせのために被写体と向かい合った時間も写っているようで、より愛おしさが増すように感じました。
夫の上着をかけてもらってご満悦な次男
EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/60秒、ISO500、+1.0EV、ピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:オート、RAW現像
撮影写真(6000×4000、10.3MB)
EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/2000秒、ISO100、+0.3EV、ピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:オート、RAW現像
撮影写真(6000×4000、9.7MB)
デジタルカメラで写真を撮るようになって、フィルムカメラ時代に比べてカメラ内でできることがたくさんあることに驚かされました。1台のカメラでカラーとモノクロを瞬時に切り替えられることから始まり、写真の色味を簡単に変えられるホワイトバランスの存在や、フィルムカメラでは仕上がりのイメージを想像して撮るしかなかった多重露光(デジタルカメラの設定では多重露出と呼ぶことが多いですね)など。
私も中判カメラで一時期ハマっていたことのある多重露光ですが、フィルムカメラでは手間と少しの技術が必要だった撮り方も、カメラの機能で簡単にできるようになったのはものすごく大きな進化と言えます。撮り方が難しそうだからとためらう気持ちを後押ししてくれる機能の存在は、写真の楽しさを伝えるのに一役も二役も買っているとも言えるでしょう。
雪が積もったようなクリスマスツリーを撮影。ホワイトクリスマスな雰囲気を高めたくてRAW現像でホワイトバランスを調整しました
EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/60秒、ISO250、+2.0EV、ピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:カスタム、RAW現像
撮影写真(6000×4000、17.1MB)
EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/80秒、ISO125、+2.3EV、ピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:オート、RAW現像
撮影写真(6000×4000、12.4MB)
デジタルの恩恵をいちばん感じたのは実は簡単に多重露光(多重露出)ができることだったりします
EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/80秒、ISO125、+0.7EV、ピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:オート、多重露出
撮影写真(4000×6000、15.9MB)
フィルム交換の手間なくカラーとモノクロを切り替えられるのも「デジタルさまさま」といったところ
EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/60秒、ISO500、-0.7EV、ピクチャースタイル:モノクロ、ホワイトバランス:オート、RAW現像
昨年2023年12月の初めにやって来た「NOKTON 50mm F1 Aspherical」。私のカメラの新しい“目”でいつもの日常を見つめました。
姪っ子たちへのクリスマスプレゼントは母直伝のクッキー
EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/100秒、ISO100、+2.3EV、ピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:オート、RAW現像
撮影写真(6000×4000、9.7MB)
EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F2、1/80秒、ISO400、+2.0EV、ピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:オート、RAW現像
撮影写真(6000×4000、12.4MB)
冬になるとベランダから富士山がよく見えます
EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F4、1/400秒、ISO100、+1.0EV、ピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:オート、RAW現像
撮影写真(6000×4000、8.5MB)
近所の畑にポツンと残された白菜
EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/1250秒、ISO100、+1.3EV、ピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:オート、RAW現像
撮影写真(6000×4000、9.7MB)
EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F2、1/1000秒、ISO100、+3.0EV、ピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:オート、RAW現像
撮影写真(6000×4000、9.0MB)
2023年最後の日は夫と連れ立って海へ。それぞれにカメラを片手にぼんやり海を見て、たまにシャッターを切って、静かに暮れていくお陽さまを見ながら心穏やかに1年を締めくくろうと思っていたのですが、波打ち際ギリギリでカメラを構えていた私は、迫ってきた波を避けようと後ずさりしたところに運悪く岩があってド派手に転倒。買ったばかりのレンズフードを凹ませるというまさかの大失態を演じたのでした……。
2024年の元日、北陸地方を大きな地震が襲いました。被害の大きかった能登半島は、今は亡き母方の祖母と母と一緒に旅行に行った思い出の場所です。そのときは、祖母が曽祖母と行ったことがあるという旅館に泊まりました。そんなほんの少しご縁のある土地へ何かできることはあるだろうかと考えていたときに、お気に入りの花屋さんがチューリップ募金をするというのをSNSで目にして、少しだけ協力させてもらいました。
能登地方へ心を寄せて
EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1、1/640秒、ISO100、+3.0EV、ピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:オート、RAW現像
撮影写真(6000×4000、8.3MB)
どうしても気持ちが沈み、年始に体調を崩したこともあり、引きこもりがちな数週間を過ごしていましたが、こんなときだからこそ私は自分の日常をしっかり過ごさなければと思い立ち、少しずつ外に出るようになりました。
連載第2回で、私の趣味のひとつに1人カフェ巡りがあるというお話をしましたが、今年初のカフェ訪問は、我が家の猫の常用薬をもらいに行った帰りに、延々続く坂道を自転車で登った先にある笑顔がすてきな店員さんのいるお店で、サクサクのメレンゲがおいしいイチゴのイートンメスをいただきました。おいしい思い出収集は今年もひっそり続けていきたいと思います。
おいしいものは目で見てもおいしい
EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/4000秒、ISO2500、+2.0EV、ピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:オート、RAW現像
撮影写真(6000×4000、9.6MB)
冬は床暖の虜
EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F2、1/20秒、ISO2500、+0.3EV、ピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:オート、RAW現像
撮影写真(6000×4000、13.2MB)
デジタルカメラの登場は、写真という存在をより身近なものにしてくれました。フィルムカメラのように撮れる残り枚数を気にしながら写真を撮ることはほぼなくなり、暗いところでもきれいに写る画像エンジンや多彩なフィルターなど、記録のための写真だけでなく、表現のための写真の可能性が飛躍的に向上したと思います。
それでも、残したい瞬間にシャッターを切るという行為や、撮りたいという想いは今も昔もきっと変わらないもので、その想いをカタチにするために進化を続けるカメラのなかで、自分の分身とも言える1台と出会えたら、それはとてもしあわせなことなのかもしれません。
「EOS R6 Mark II」と「NOKTON 50mm F1 Aspherical」の組み合わせは、今の私には最高の相棒たちです。これからもこのコンビと日々を紡いでいきたいと思います。
EOS R6 Mark II、NOKTON 50mm F1 Aspherical、F1.0、1/2500秒、ISO100、+2.0EV、ピクチャースタイル:スタンダード、ホワイトバランス:オート、RAW現像
撮影写真(6000×4000、12.6MB)