特別企画

ソニーとシグマのどっちを選ぶ? Eマウント用の大口径・望遠ズーム頂上対決!

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

大口径・望遠ズームといえば、一般的には、開放絞り値がF2.8通しで、焦点距離がおおむね70〜200mmの高性能なズームレンズのことを指します。大口径・広角ズーム、大口径・標準ズームと並び立つことで、いわゆる“大三元レンズ”を構成する一角でもありますね。

ソニーEマウント用の大口径・望遠ズームレンズに目を向けると、2023年12月に、シグマから「70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports」(以下、「70-200mm F2.8 DG DN OS」)が登場したことで、本レンズとソニー純正の「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」を選べる状況になりました。Eマウントユーザーとしては、どちらを選ぶべきか悩ましいところです。

そこで今回、ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」とシグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」の基本的な性能を徹底比較。どういう違いあるのかをレポートします。

左がソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」で、右がシグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」。カメラボディには、高画素フルサイズミラーレスカメラ「α7R V」を使用しました

左がソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」で、右がシグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」。カメラボディには、高画素フルサイズミラーレスカメラ「α7R V」を使用しました

両レンズの概要とサイズ感の比較

まずは、今回比較する2本の大口径・望遠ズームレンズの概要から紹介していきます。

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」 軽量化とAF高速化を実現したII型

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」は、2021年11月に発売されたモデル。II型の名称からもわかるように、2016年9月発売の「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」の後継モデルです。

I型は「美しいぼけ味と高い解像性能の両立」をうたった「G Master」シリーズの先駆けとなった1本でしたが、II型は「G Master」ならではの描写性能はそのままに、約435gの軽量化とI型比で最大約4倍というAF速度の高速化を達成。軽量化とI型比で最大約4倍というAF速度の高速化を達成。別売の1.4倍テレコンバーター「SEL14TC」、2倍テレコンバーター「SEL20TC」の装着にも対応しています。

2024年3月29日時点での価格.com最安価格は約318,000円(税込)。

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」と「α7R V」の組み合わせ。小型・軽量な白レンズです

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」と「α7R V」の組み合わせ。小型・軽量な白レンズです

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」 シグマの技術が詰め込まれたフラッグシップモデル

対するシグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」は、2023年12月に発売されたばかりの最新モデル。意外なことに、シグマがミラーレスカメラ専用の70-200mm/F2.8ズームをラインナップするのは、本製品が初めてです。ソニーEマウント用とライカLマウント用が用意されています。

光学性能はもちろんのこと、AF性能、光学式手ブレ補正の効果(最大7.5段)、ボディの剛性など、あらゆる点においてシグマの技術が詰め込まれた「フラッグシップ」に位置づけられています。非常に気合の入ったレンズで、鳴り物入りでの登場というわけですね。ライカLマウント用はテレコンバーターの装着に対応しています(ソニーEマウント用は非対応)。

2024年3月29日時点での価格.com最安価格は210,246円(税込)。

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」と、ソニー「α7R V」の組み合わせ。重厚感のある黒レンズなところが印象的

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」と、ソニー「α7R V」の組み合わせ。重厚感のある黒レンズなところが印象的

両レンズのサイズ・重量は以下のとおりです。

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」
サイズ(最大径×全長):88×200mm
重量:約1045g(三脚座を含まず)

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」
サイズ(最大径×全長):90.6×207mm
重量:約1335g(三脚座を含む)
※ソニーEマウント用

いずれも、開放F2.8通しの望遠ズームレンズとしてはコンパクトに収められています。スペックを厳密に比較するとソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」のほうが小型・軽量ですが、三脚座を外した状態でのサイズ感は両者でそれほど変わりません。また、いずれもインナーズーム方式を採用しているので、ズーミングしても全長の変化はありません。

なお、三脚座については、ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」はノブ・レバーの操作で取り外せます。シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」は六角レンチを使って取り外すことが可能です。

操作性の比較

続いて、両レンズの操作性を見ていきましょう。

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」の操作性の特徴としては、I型では非搭載だった絞りリングを採用していることがあげられます。最近の「G Master」ではほぼ標準に搭載されている、クリックのオン・オフを切り替えられるタイプです。レンズ先端から順に、フォーカスリング、ズームリング、絞りリングと、高性能なズームレンズとしては一般的な配置を採用しています。

レンズ先端から、フォーカスリング、ズームリング、絞りリングという配置

レンズ先端から、フォーカスリング、ズームリング、絞りリングという配置

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」のほうも、これまたしっかりと絞りリングを採用していることに目がいきます。シグマのスチール向けズームレンズでは初めての絞りリング搭載モデルです。さすが気合の入ったレンズだけあります。

レンズ先端から順に、ズームリング、フォーカスリング、絞りリングと、ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」とはズームリングとフォーカスリングが逆の並びになっていますが、これは単純に仕様上の問題であり、ユーザーにとっては好みと慣れの問題でしかないと思います。

レンズ先端から、ズームリング、フォーカスリング、絞りリングという配置。シグマのスチーム向けズームレンズとしては初めて絞りリングを搭載しています

レンズ先端から、ズームリング、フォーカスリング、絞りリングという配置。シグマのスチーム向けズームレンズとしては初めて絞りリングを搭載しています

ボタン・スイッチ類については、ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」は、3つの「フォーカスフォールドボタン」のほかに、鏡筒左手側に「フルタイムDMFスイッチ」や「フォーカスレンジリミッター」「アイリスロックスイッチ」などを、右手側に「絞りリングクリック切り換えスイッチ」を装備しています。

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」も負けず劣らず、任意の設定を割り当てられる「AFLボタン」を3か所に搭載するほか、鏡筒左手側に「フォーカスリミッタースイッチ」や「カスタムモードスイッチ」「絞りリングクリックスイッチ」などを装備。右手側には「絞りリングロックスイッチ」が備わっています。

両レンズとも非常に多彩なスイッチ類を用意しており、まさに高性能レンズにふさわしい内容と言えるでしょう。

鏡筒左手側に搭載された数々のスイッチ類。大三元の一角を担う望遠ズームだけに気合の入り方がうかがえます

鏡筒左手側に搭載された数々のスイッチ類。大三元の一角を担う望遠ズームだけに気合の入り方がうかがえます

ソニー製レンズに負けず劣らず、鏡筒左手側に搭載された数々のスイッチ類。シグマがみずからフラッグシップを名乗るだけあって、こちらも気合が入っています

ソニー製レンズに負けず劣らず、鏡筒左手側に搭載された数々のスイッチ類。シグマがみずからフラッグシップを名乗るだけあって、こちらも気合が入っています

付属品のレンズフードも確認してみましょう。

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」に付属するレンズフードは「ALC-SH167」。ロックスイッチを備え、先端部に保護用のラバー素材を施すなど、高性能レンズにふさわしい立派な作りの丸形フードです。

さらに、開閉式のフィルター窓も備えているため、PLフィルターや可変式NDフィルターの操作も、フードをつけたままでやりやすいというすぐれものです。

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」に付属するレンズフード「ALC-SH167」。本体と同じホワイトカラーです

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」に付属するレンズフード「ALC-SH167」。本体と同じホワイトカラーです

「ALC-SH167」はレンズロックスイッチとフィルター窓を備えているのが特徴

「ALC-SH167」はレンズロックスイッチとフィルター窓を備えているのが特徴

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」に付属するレンズフードは「LH860-01」。こちらも先端部に保護用のラバー素材が装備されています。

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」と異なるのは、いわゆるかぶせ式を採用していること。定位置を気にせず、どこからでもフードを装着できるのがうれしいところです。あわただしい現場でも間違えずに操作できる大型のロック用ダイヤルが頼もしく感じられます。フィルター窓はありませんが、装着のしやすさは抜群です。

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」には、レンズフード「LH860-01」が同梱されています

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」には、レンズフード「LH860-01」が同梱されています

「LH860-01」はいわゆるかぶせ式のレンズフード。装着時にどこからでも固定できるので操作性は上々です

「LH860-01」はいわゆるかぶせ式のレンズフード。装着時にどこからでも固定できるので操作性は上々です

望遠ズームのレンズフードは、遮光性の観点から装着率が高く、その分操作性のよさが問われるところです。フィルター窓を備えたソニー製のレンズフードか、着脱性にすぐれたシグマ製のレンズフードのどちらに軍配が上がるかと言えば……、かなり難しいところですが、やはり個人の好みによるところが大きいでしょう。

解像性能の比較

続いて、開放絞り値(F2.8)での解像性能を確認していきましょう。風景撮影などでもよく使われるズーム域のレンズですので、暗所で撮影する機会も多く、絞り開放での写りは重要なところだと思います。

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」 広角端/絞り開放で撮影

α7R V、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、70mm、ISO100、F2.8、1/640秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、61.1MB)

α7R V、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、70mm、ISO100、F2.8、1/640秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、61.1MB)

さすがII型の「G Master」レンズと言いたくなるような、すばらしい解像感です。絞り開放だというのに、中心部から周辺部まで淀むことなく最高に高い解像性能を見せてくれています。階調性やヌケのよさも秀逸で、文句のつけようがありません。

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」 広角端/絞り開放で撮影

α7R V、70-200mm F2.8 DG DN OS、70mm、ISO100、F2.8、1/640秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、56.0MB)

α7R V、70-200mm F2.8 DG DN OS、70mm、ISO100、F2.8、1/640秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、56.0MB)

こちらも文句のつけようがなく、普通に高精細でキリリと気持ちのよい描写を見せてくれています。なのですが、ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」の作例を見た後だと、今ひとつシャッキリしていないようにも見えます。

もちろん、これはソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」と比べればというだけで、高性能レンズの描写としては十分に及第点なのでお間違いなく。それにしても、ピント位置が微妙に異なっているためか? もしかしたら少しブラしてしまったか?(三脚使用で撮影しました)などといろいろ考えましたが、どうも違うようです。今ひとつ腑に落ちません……。

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」 望遠端/絞り開放で撮影

α7R V、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、200mm、ISO100、F2.8、1/200秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、55.6MB)

α7R V、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、200mm、ISO100、F2.8、1/200秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、55.6MB)

拡大すると、厳密にピントの合ったところとそうでないところが見て取れますが、ピントの合ったところは気持ちよく高解像で、シャープネスも十分です。ただし、広角端で撮影した画像に比べると、いまひとつ精彩に欠けるような……。単純に望遠端よりも広角端が得意なレンズなのかもしれませんが、やはりどうも腑に落ちません。

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」 望遠端/絞り開放で撮影

α7R V、70-200mm F2.8 DG DN OS、200mm、ISO100、F2.8、1/200秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、58.8MB)

α7R V、70-200mm F2.8 DG DN OS、200mm、ISO100、F2.8、1/200秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、58.8MB)

気持ちがよいほど細部を描き分けた解像感の高さとヌケのよさがあって、すばらしい画質と言えるのではないでしょうか。さすがシグマのフラッグシップレンズを名乗るだけの実力があると、この画像からは素直に感じられます。

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」の広角端と真逆の結果? こちらも、ピント位置が微妙に異なっているためか? もしかしたら少しブラしてしまったか? などと考えましたが、結論としては悩むべくもないほどの解像性能を持った高性能レンズと言って間違いないでしょう。

比較まとめ

今回の結果からは、広角端はソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」のほうが、望遠端はシグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」のほうが優秀と受け止めてしまうかもしれません。ただ、今回の結果は、微妙な光の違いなど、わずかな撮影条件の違いによるものかもしれませんし、レンズの個体差によるものかもしれません。

どのような条件でレンズの性能が最大限に発揮されるかについては、正直、試用した筆者も迷ってしまったというのが本音です。ですが、作品として写真を鑑賞するうえでは、どちらも最高の解像性能であることは確かだと思います。両レンズとも高性能ラインにふさわしい高い解像性能を持っていることは確実です。

AF性能の比較

AF性能は、それぞれのレンズがもつ駆動力だけでなく、カメラボディ側との連携が大きく影響するため差が出やすいところだと思います。

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」 望遠端で撮影

α7R V、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、200mm、ISO100、F2.8、1/250秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、35.7MB)

α7R V、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、200mm、ISO100、F2.8、1/250秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、35.7MB)

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」は、ソニー独自のXD(extreme dynamic)リニアモーターを4基搭載し、AF速度が前モデルよりも最大で約4倍も高速化しているそうです。動体の追従性能も向上しているとのことで、実際に試写して見てもAFは非常に速く正確なことを実感できます。この作例のように、レッサーパンダの木登り程度の動きならまったく問題を感じることなくピントを合わせられました。

α7R V、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、200mm、ISO100、F2.8、1/1600秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、35.2MB)

α7R V、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、200mm、ISO100、F2.8、1/1600秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、35.2MB)

ちょこまかとせわしなく動き回るカワウソでも、正確にピントを合わせてくれます。あくまで今回の試用した限りにおいての感想ですが、犬や猫などの動物、あるいは人物の動き程度でしたら、何ら不足を感じることなく使用できるAF性能だと思いました。

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」 望遠端で撮影

α7R V、70-200mm F2.8 DG DN OS、200mm、ISO100、F2.8、1/250秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、35.6MB)

α7R V、70-200mm F2.8 DG DN OS、200mm、ISO100、F2.8、1/250秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、35.6MB)

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」は、2つのフォーカス群それぞれにシグマ独自のリニアモーターHLA(High-response Linear Actuator)を配置するなど、AF性能に力を入れて開発されています。最新設計のリニアモーターはかなりの推力があるようで、こちらもレッサーパンダの動きはまったく問題なく、素早くかつ正確にピントを合わせてくれました。

α7R V、70-200mm F2.8 DG DN OS、200mm、ISO100、F2.8、1/1600秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、33.9MB)

α7R V、70-200mm F2.8 DG DN OS、200mm、ISO100、F2.8、1/1600秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、33.9MB)

カワウソの不規則な動きに対しても、キチンとピントを合わせ続けてくれました。とても秀逸なAFというのが素直な感想で、カメラボディとの通信に関して有利なはずの純正レンズと比べても、AFの速度・精度にそん色があるようには思えませんでした。

比較まとめ

AF性能の比較結果としては、両レンズともすぐれた性能であることは間違いありません。いずれもリニアモーターを採用しているので、ほとんど無音のまま、目標(被写体に)向かってシュパッ!と進み、ピタッ!とピントを合わせるさまには気持ちよさすら感じました。犬や猫などの動物、あるいは人物撮影くらいでしたら、どちらのレンズでもすばらしいAF性能を味わえるはずです。風景やネイチャーといった分野での撮影なら、なおさらのことでしょう。

なお、シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」を選ぶ場合は、AF-C時の連写速度には少し注意が必要です。特に、フラッグシップモデル「α1」やハイスピードモデル「α9 III」など超高速連写が可能なモデルでは、AF-C時に最大の連写速度が出ない可能性があります。

近接撮影性能の比較

最近は、望遠ズームでもすぐれた近接撮影性能を持つものが増えています。近接撮影性能が高いと、それだけ撮影や表現の自由度が高くなるので便利ですが、今回の2本のレンズはどうでしょうか?

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」 望遠端での近接撮影

α7R V、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、200mm、ISO100、F2.8、1/60秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(6336×9504、32.9MB)

α7R V、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、200mm、ISO100、F2.8、1/60秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(6336×9504、32.9MB)

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」の、望遠端200mm時の最短撮影距離は0.82m。大口径・望遠ズームで1.0mを切る最短撮影距離というのは、けっこう被写体に寄れる部類で、なかなかのものだと思います。最大撮影倍率は0.3倍と高く、「寄って大きく写す」ことのできるレンズと言えるでしょう。圧縮効果の効いた大きな背景ボケの中に浮き上がる花はとても印象的に見えます。

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」 望遠端での近接撮影

α7R V、70-200mm F2.8 DG DN OS、200mm、ISO100、F2.8、1/60秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(6336×9504、32.9MB)

α7R V、70-200mm F2.8 DG DN OS、200mm、ISO100、F2.8、1/60秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(6336×9504、32.9MB)

いっぽう、シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」の、望遠端200mm時の最短撮影距離は1.0m、最大撮影倍率は約0.19倍です。ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」と比べると少し見劣りしてしまうかもしれませんが、実はこの仕様、現行の大口径・望遠ズームとしてはきわめてオーソドックスです。つまり、驚くほどではないまでも、十分に納得できるくらいには寄って大きく写せるレンズということになります。

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」 広角端での近接撮影

α7R V、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、70mm、ISO100、F2.8、1/60秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(6336×9504、33.0MB)

α7R V、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、70mm、ISO100、F2.8、1/60秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(6336×9504、33.0MB)

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」の「寄って大きく写す」性能は広角端70mmでも有効です。広角端の最短撮影距離は0.4mなので、テーブルフォトなどでも使いやすい距離感を保つことができます。シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」の望遠端200mm時の作例と比べてみると、おおむね同じくらいのサイズで被写体を写せていることがわかると思います。

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」 広角端での近接撮影

α7R V、70-200mm F2.8 DG DN OS、70mm、ISO100、F2.8、1/60秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(6336×9504、33.2MB)

α7R V、70-200mm F2.8 DG DN OS、70mm、ISO100、F2.8、1/60秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(6336×9504、33.2MB)

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」の広角端70mm時の最短撮影距離は0.65mです。この時の撮影倍率は公表されていませんが、作例を見る限りではそれほど高くなさそうです。

とはいっても、決して近接撮影性能が低いわけではなく、大口径・望遠ズームとしては一般的な仕様と考えて問題ありません。実際に撮影していて感じたことですが、近接撮影時でも合焦部のシャープネスが非常に高く、これは本レンズのよいところと言えます。

比較まとめ

近接撮影性能で両レンズを比較すると、ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」のほうがすぐれていることは明らかです。ここは、ズーム全域で最大撮影倍率0.5倍を実現した「FE 70-200mm F4 Macro G OSS II」など、近接撮影能力の高いレンズをリリースしているソニーだけのことはあります。

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」の近接撮影性能も決して低くはないのですが、大口径・望遠ズームで、できるだけ被写体に寄って大きく写したいという希望がある人にとっては、ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」の近接撮影性能の高さは心強い味方となってくれることと思います。

ボケ味の比較してみる

大口径・望遠ズームといえば、ボケ味の良否も重要なチェックポイントでしょう。近距離と中距離で撮影した作例を見ながら、両レンズのボケ味の傾向を確認してみたいと思います。

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」で撮影(近距離)

α7R V、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、200mm、ISO400、F2.8、1/125秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、34.7MB)

α7R V、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、200mm、ISO400、F2.8、1/125秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、34.7MB)

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」で撮影(中距離)

α7R V、70-200mm F2.8 DG DN OS、200mm、ISO400、F2.8、1/125秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、34.2MB)

α7R V、70-200mm F2.8 DG DN OS、200mm、ISO400、F2.8、1/125秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、34.2MB)

近距離で撮った場合のボケ味の違いをチェックすべく、両レンズでランの花を撮ってみました。ピントを合わせた手前の花から、少し奥の花、さらに奥の花へと被写体の位置が移動し、距離によるボケ具合の違いが見て取れると思います。

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」は、ボケ味を大切にする「G Master」のレンズだけあって、自然でやわらかく、とても美しいボケ味が演出されている印象です。ここまできれいなボケ味なら大満足というもの。

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」は、「G Master」に比べれば、さすがにボケ味は劣るのではないかと思い確認してみました、正直言って全然違いがわかりません。ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」のボケ味と比べても、大変に美しく、やわらかく、きれいです。ほんの少しだけボケが硬いかな? とも思いましたが、それは先入観でしかないような気もします。

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」で撮影(中距離)

α7R V、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、133mm、ISO100、F4、1/1250秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、32.2MB)

α7R V、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、133mm、ISO100、F4、1/1250秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、32.2MB)

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」で撮影

α7R V、70-200mm F2.8 DG DN OS、136mm、ISO100、F4、1/1250秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、35.0MB)

α7R V、70-200mm F2.8 DG DN OS、136mm、ISO100、F4、1/1250秒、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、35.0MB)

撮影距離を少し長くし、かつ絞り値をF4にして比較してみました。望遠レンズのランクによっては、背景のボケ味が硬く雑になりがちな条件での撮影です。

ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」は、背景のボケを自然にまとめており、主要被写体(鳥)のイメージをじゃますることがありません。これもさすがボケ味を大切にする「G Master」のレンズだなと感心しました。

シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」も非常に自然なボケ味です。ボケ味の評価は定量化できないだけに難しいのですが、それにしてもソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」との差異を見つけるのは難しいです。同じように自然で、主要被写体のイメージをじゃますることはないと感じました。

検証前は、「G Masterとの比較だけにボケ味については見てわかるだけの違いが出るだろう」と考えていましたが、実際には、両レンズで違いがほとんど(というかまったく)わかりませんでした。ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」のボケ味がすばらしいのは間違いありませんが、シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」のボケ味も負けず劣らず高い水準にあるということなのだと思います。

まとめ 近接性能などに差はあるが価格差を考慮すると甲乙つけがたい

まず、今回取り上げた両レンズの価格を改めて把握しておきましょう。価格.com最安価格(2024年3月29日時点)は、ソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」が約320,000円で、シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」が約220,000円(いずれも税込)です。

近接撮影性能にすぐれていることを考えると、総合性能はどうしてもソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」に軍配が上がりますが、約10万円という価格差を考えれば、これは当然のことではないでしょうか。むしろ、解像性能、AF性能、ボケ味に関して、シグマ「70-200mm F2.8 DG DN OS」がソニー「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」とほとんど差がない、あるいは好みの問題に過ぎないというレベルにまで拮抗していることに驚かされました。

こうなってくると、どちらのレンズを選ぶかは、撮影目的に対してどこまで妥協できるかに関わってくるでしょう。一般的な大口径・望遠ズームの使用目的を考えれば、本当のところ、どちらであっても十分に用途を満たしてくれますし、作品撮りにも影響はないはず。どちらを選ぼうとも安心して愛用していただけると思います。

なお、今回は触れませんでしたが、両レンズとも、手ブレ補正機能の性能がすぐれているのも特徴です。望遠レンズは暗所撮影でなくとも、常に手ブレとの闘いにさらされるものですが、両レンズの手ブレ補正は非常にすぐれており、十分に実用的といってよいかと思います。

曽根原 昇
Writer
曽根原 昇
信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌などで執筆もしている。
記事一覧へ
真柄利行(編集部)
Editor
真柄利行(編集部)
フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣とこだわりを持っています。フォトグラファーとしても活動中。パソコンに関する経験も豊富で、パソコン本体だけでなく、Wi-Fiルーターやマウス、キーボードなど周辺機器の記事も手掛けています。
記事一覧へ
記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
本ページはAmazonアソシエイトプログラムによる収益を得ています
関連記事
SPECIAL
ページトップへ戻る
×