ニコンのミラーレスカメラ「Zシリーズ」は、すぐれた画質と性能、そして高品位な操作性を備え、目の肥えた写真愛好家やカメラファンから支持を集めています。その高画質を支えているのが、ニコン純正の交換レンズ「NIKKOR Zレンズ」です。
今回の特別企画では、長年にわたってニコンを使い続けている写真家のJimaさんが、「NIKKOR Zレンズ」のなかでも特に性能と価格のバランスにすぐれた単焦点レンズ「開放F1.8シリーズ」3本(35mm/50mm/85mm)の魅力を語ります。
「初めての単焦点レンズ」としても選びやすい、「開放F1.8シリーズ」の3本を紹介します
皆さん、こんにちは。写真家のJimaでございます。
今回は、「NIKKOR Zレンズ」から3本の単焦点レンズ「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」をピックアップして、その魅力を掘り下げてご紹介します。
「NIKKOR Zレンズ」の単焦点レンズを見ると、開放絞り値がF1.2の大口径モデル「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」や、開放絞り値がF2.8のコンパクトモデル「NIKKOR Z 26mm f/2.8」「NIKKOR Z 28mm f/2.8」など、実にさまざまなタイプが用意されていることがわかります。この充実したラインアップのなかで、特に「ズームレンズからのステップアップ」「初めての単焦点レンズ」にぴったりなのが今回紹介する3本なのです。
開放絞り値がF1.8の単焦点レンズはどのメーカーも定番品として販売していますが、「NIKKOR Zレンズ」では、焦点距離20mm/24mm/35mm/50mm/85mmの5本が「開放F1.8シリーズ」として用意されています(※「NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena」を含めると6本)。このなかから、扱いやすい画角と価格を考慮すると、やはり「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」が“鉄板”の3本と言えると思います。
左から「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」
まず、「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」の魅力として押さえておきたいのが、写りのよさです。3本とも、「NIKKOR Zレンズ」のなかでも特に優秀な「S-Line」に属しており、「Zシリーズ」ならではの高品位な写りを存分に楽しめます。
「S-Line」レンズは外観に「NIKKOR S」のロゴが入っています
「NIKKOR Z レンズ」は、一眼レフ用の「NIKKOR Fレンズ」と比べると、どのレンズも絞り開放からシャープで、かつ画像全域で解像力が向上しています。これは、大口径・ショートフランジバックの「Zマウント」によって、光学設計の自由度が増したことが大きく寄与しているのですが、そのなかでも「S-Line」のレンズは、写りのレベルがワンランク(以上)違います。「Zシリーズ」を使うなら「S-Line」レンズを1本は持っておきたいところです。
「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」の3本については、軸上色収差を含めて各収差が徹底的に抑制されており、シンプルに「きれいに写る」という感覚を楽しめますよ。
「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」の絞り開放で撮影したポートレート作例。ピントを合わせた目の部分がとてもシャープに写っています
Z 8、NIKKOR Z 35mm f/1.8 S、F1.8、1/200秒、ISO200、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャースタイル:リッチトーンポートレート、アクティブD-ライティング:より強め1、ヴィネットコントロール:しない、外部フラッシュ使用
Z 8、NIKKOR Z 35mm f/1.8 S、F1.8、1/200秒、ISO100、+1.7EV、ホワイトバランス:5880K、ピクチャースタイル:ポートレート、アクティブD-ライティング:強め、ヴィネットコントロール:標準、外部フラッシュ使用
Z 8、NIKKOR Z 35mm f/1.8 S、F1.8、1/1000秒、ISO64、ホワイトバランス:オート1(雰囲気を残す)、ピクチャースタイル:風景、アクティブD-ライティング:より強め1、ヴィネットコントロール:しない
撮影写真(8356×5504、25.3MB)
Z 8、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/200秒、ISO400、ホワイトバランス:オート0(白を優先する)、ピクチャースタイル:リッチトーンポートレート、アクティブD-ライティング:より強め1、ヴィネットコントロール:標準、外部フラッシュ使用
Z 8、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/160秒、ISO100、+1.7EV、ホワイトバランス:オート0(白を優先する)、ピクチャースタイル:ディープトーンモノクローム、アクティブD-ライティング:より強め2、ヴィネットコントロール:標準、外部フラッシュ使用
Z 8、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/250秒、ISO180、ホワイトバランス:オート0(白を優先する)、ピクチャースタイル:スタンダード、アクティブD-ライティング:より強め1、ヴィネットコントロール:標準
撮影写真(8356×5504、18.0MB)
Z 8、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S、F1.8、1/200秒、ISO100、+1.7EV、ホワイトバランス:5880K、ピクチャースタイル:リッチトーンポートレート、アクティブD-ライティング:より強め1、ヴィネットコントロール:標準、外部フラッシュ使用
Z 8、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S、F1.8、1/200秒、ISO800、ホワイトバランス:オート0(白を優先する)、ピクチャースタイル:リッチトーンポートレート、アクティブD-ライティング:より強め1、ヴィネットコントロール:標準、外部フラッシュ使用
Z 8、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S、F1.8、1/1000秒、ISO64、ホワイトバランス:オート0(白を優先する)、ピクチャースタイル:スタンダード、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:標準
撮影写真(8356×5504、17.9MB)
「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は、開放絞り値がF1.8と十分な明るさなので、絞りを開けて大きなボケのある写真を楽しむことが可能です。それでいてサイズ感が手ごろなのがいいところ。決して超コンパクトというわけではないのですが、写りのよさと開放F1.8の明るさを考慮すると、ハンドリングしやすい大きさに収まっていると思います。
3本の単焦点レンズのサイズ/重量
NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
約73(最大径)×86(全長)mm/約370g
NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
約76(最大径)×86.5(全長)mm/約415g
NIKKOR Z 85mm f/1.8 S
約75(最大径)×99(全長)mm/約470g
左のカメラは「Z 8」で、レンズは左から「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」。使用時のサイズ感が伝わりやすいように、逆さの状態でフードを取り付けています
さらに、「S-Line」のレンズとしては比較的安く手に入れられるのもポイントです。価格.com最安価格(2024年4月24日時点)は「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」が10万円台で、「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」が7万円台。コストパフォーマンスは高いと言えるでしょう。
「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」の3本を含めて「NIKKOR Zレンズ」の「開放F1.8シリーズ」では、「統一されたカラーバランス」も大きな魅力です。
レンズはそれぞれの設計思想に基づいて作られています。そのため、レンズによって色味やトーンなどの個性は微妙に異なるものなのですが、「NIKKOR Zレンズ」の「開放F1.8シリーズ」はそういったことがなく、カラーバランスが揃っている印象。どのレンズを使っても仕上がりに違和感がなく、撮影後の画像編集(ポストプロダクション)もスムーズに行えます。
「開放F1.8シリーズ」はカラーバランスが揃っているので、レンズを交換しても同じような色味・トーンが得られます
「NIKKOR Z レンズ」全般に言えることなのですが、AF駆動にSTM(ステッピングモーター)を採用しているのも見逃せません。AFの動作音が小さいことに加えて、フォーカスブリージング(手前から奥/奥から手前にフォーカスを移動させる際に発生する画角変動)が抑制されているのがポイントで、動画撮影でも使いやすいです。
特に、フォーカスブリージングは一眼レフ用のレンズとは比べものにならないくらい抑えられています。動画撮影中にフォーカスを動かしても画面がカクつくようなことはなく、スムーズに追従してくれますよ。
「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」の3本をコンプリートすれば準広角から中望遠までをひと通りカバーできますが、いきなりすべて揃えるのはなかなか難しいでしょう。
まずは「最初の1本」としてこの3本から好きなものを選ぶとよいでしょう。どれも写りがよく、カラーバランスも似ているため、単純に「好きな画角」や「よく使う画角」で選択してみてください。
「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」は、視界よりもわずかに広い画角で、背景を含めて広く撮ることが可能。広角レンズ特有の遠近感(パースペクティブ)を生かした撮影が可能で、スナップ撮影に適しています。
「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」で撮影した作例
「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」は、人間の視界に近い自然な画角(情報量)で撮れるのが特徴です。35mmほどは遠近感が強調されず、見たままを切り取れるので扱いやすいです。写真撮影の基本として50mmを好む人も多く、私も愛用しています。
「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」で撮影した作例
「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は、視界よりも少し狭い画角で、背景を少し引き寄せて(圧縮して)撮ることができます。35mmや50mmと比べると写る範囲が狭いため、切り取り効果を生かすのが使いこなしのポイントです。
「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」で撮影した作例
なお、「Z fc」や「Z 50」「Z 30」といったDXフォーマット(APS-C)機での利用も考えるなら、DXクロップ時の画角も考慮しておきましょう。DXクロップ時は35mm判換算での画角がレンズ焦点距離の1.5倍相当になるため、「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」は焦点距離52.5mm相当の標準レンズ、「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」は焦点距離75mm相当の中望遠レンズ、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は焦点距離128mm相当の中望遠レンズに変わります。
左がDXフォーマット(APS-C)機の「Z 30」で、右がFXフォーマット(フルサイズ)機の「Z 8」。同じZマウントですが撮像素子のサイズが異なっています
「NIKKOR Zレンズ」の単焦点レンズ「開放F1.8シリーズ」は、性能と価格のバランスがよいのが魅力です。なかでも、今回紹介した「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」の3本は、特に使ってみての満足度が高いレンズだと思います。
ぜひ、これら3本のレンズを選んで、「NIKKOR Zレンズ」だからこその撮影体験を味わっていただきたいです。
なお、今回の内容は、私のYouTubeチャンネル(以下の動画)でも紹介しておりますので、ぜひチェックしてみてください。