「FE 16-25mm F2.8 G」は、ソニーが2024年5月17日に発売した、Eマウント用のフルサイズ対応・超広角ズームレンズ。大きな特徴は、開放F2.8通しの大口径ながら驚くほど小さくて軽いこと。しかも、高性能ラインの「Gレンズ」です。どのくらい写るのか気になっているEマウントユーザーも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、この新しい超広角ズームの特徴を紹介しつつ、最上位「GMレンズ」(「G Masterレンズ」)の「FE 16-35mm F2.8 GM II」と解像性能や最短撮影性能を比較してみました。
ソニーの新しい超広角ズームレンズ「FE 16-25mm F2.8 G」
「FE 16-25mm F2.8 G」の特徴として押さえておきたいのは、何と言ってもコンパクトなサイズ感です。サイズは74.8(最大径)×91.4(全長)mm、重量は約409g。ズーム全域で開放F2.8通しの大口径で、フルサイズに対応する超広角ズームレンズとしては非常に小型・軽量です。
パッと見では標準ズームと見間違えてしまうくらいの大きさに収まっています。価格.comで調べた限り、2024年6月27日時点において、広角16mmスタート/開放F2.8通しのフルサイズ対応・超広角ズームとしては最も小さくて軽いレンズです。
実際にカメラに装着してみると、そのコンパクトさを実感できます。小型・軽量なフルサイズミラーレス「α7C II」と組み合わせても、バランスの悪さを感じることはまったくありません。というよりは、「α7Cシリーズ」との組み合わせを意識して設計されたのかもしれません。
高画素フルサイズミラーレス「α7R V」と組み合わせたイメージ。本レンズのコンパクトさが際立ちます
小型・軽量な「α7C II」と組み合わせても、まったく違和感がありません。これでフルサイズ用なのですからうれしいですね
「大口径ながら小型・軽量」というのは、少し前(2024年4月)に発売された標準ズーム「FE 24-50mm F2.8 G」と同じコンセプトです。「FE 16-25mm F2.8 G」と「FE 24-50mm F2.8 G」は、最大径が74.8mm、全長が92mm前後、重量が400g台前半でサイズ感が揃えられていて、兄弟関係にあると言っていいでしょう。両レンズとも、少し変わったズーム域を採用していますが、この関係がわかると納得できるというものです。
「FE 16-25mm F2.8 G」
74.8(最大径)×91.4(全長)mm/約409g
「FE 24-50mm F2.8 G」
74.8(最大径)×92.3(全長)mm/約440g
「FE 16-25mm F2.8 G」(左)と「FE 24-50mm F2.8 G」(右)はコンセプトをともにする兄弟レンズ。大口径かつ小型・軽量なズームレンズです
「FE 16-25mm F2.8 G」の操作系は、兄弟レンズ「FE 24-50mm F2.8 G」と同様で、レンズ先端から、フォーカスリング、ズームリング、絞りリングの順で並びます。絞りリングを採用しているのは動画撮影を意識してのことでしょう。これは、最近のほかの「GMレンズ」や「Gレンズ」と同じです。
操作系も「FE 24-50mm F2.8 G」と同じです
鏡筒左側には、「フォーカスホールドボタン」と「フォーカスモードスイッチ」が備えられています。被写界深度が深い超広角ズームということで「フォーカスホールドボタン」をそのままフォーカスホールドとして使うことは少ないと思いますが、ほかにもさまざまな機能を割り当てられるので、このボタンはあると何かと便利です。筆者は試用中に「フォーカスモード」を割り当てて使っていました。
さまざまな機能を割り当てられる「フォーカスホールドボタン」を装備しています
レンズ右側には「絞りリングクリック切り換えスイッチ」が配置されています。オンにするとクリックがあって、オフにするとクリックがなくなります。静止画撮影ではクリックありのほうが使いやすいですが、動画撮影ではクリックなしのほうが撮影中に絞り値をスムーズに変更できます。
動画撮影にも配慮して「絞りリングクリック切り換えスイッチ」が搭載されているのも「FE 24-50mm F2.8 G」と同じ
「FE 24-50mm F2.8 G」と共通のレンズフード「ALC-SH178」が同梱します。レンズフードは広角でこそ重要性が増しますので、超広角ズームである本レンズでは必ず正しく装着して使用したいところです(もちろん広角以外でも重要です)
ここからは、「FE 16-25mm F2.8 G」の解像性能を確認していきたいと思います。今回は、同じくソニー製の大口径・超広角ズーム「FE 16-35mm F2.8 GM II」と比較してみました。より高額な最上位「GMレンズ」との比較ですので、「FE 16-25mm F2.8 G」がどこまで迫れるのかに注目してください。
「FE 16-25mm F2.8 G」(左)と「FE 16-35mm F2.8 GM II」(右)で撮り比べ。ズーム域が違うとはいえ、サイズ感は結構な差があります
「FE 16-25mm F2.8 G」
74.8(最大径)×91.4(全長)mm/約409g
価格:14万円台
「FE 16-35mm F2.8 GM II」
87.8(最大径)×111.5(全長)mm/約547g
価格:27万円台
※価格は2024年6月27日時点での価格.com最安価格
α7R V、FE 16-25mm F2.8 G、16mm、F2.8、1/1250秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、30.9MB)
「FE 16-25mm F2.8 G」は、コンパクトながら「Gレンズ」らしい見事な解像性能を見せてくれています。特に画面中央部の解像感は非常に優秀で、文句の言いようがありません。周辺部はいくらか解像感が低下しますが、それでも焦点距離が16mmで絞り値がF2.8ということを考えれば立派な画質を維持していると思います。
α7R V、FE 16-35mm F2.8 GM II、16mm、F2.8、1/1250秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、26.8MB)
画面中央部の解像感こそ「FE 16-25mm F2.8 G」と同等レベルですが、周辺部でも高い性能を維持しているのはさすが。「Gレンズ」の上をいく「GMレンズ」だけに、広角端/絞り開放での解像性能は「FE 16-25mm F2.8 G」を上回っています。
α7R V、FE 16-25mm F2.8 G、25mm、F2.8、1/250秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、23.4MB)
広角端と同様、「Gレンズ」らしく、望遠端でも見事な解像性能を持っていることが見てとれます。画面中央部の解像感が特に高く、周辺部ではやや低下するものの、全体的には満足できる画質だと感じました。
α7R V、FE 16-35mm F2.8 GM II、25mm、F2.8、1/250秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、23.8MB)
「FE 16-35mm F2.8 GM II」の望遠端は35mmですが、「FE 16-25mm F2.8 G」と比較するために焦点距離を25mmに揃えています。そして、25mmの比較でも、やはり「GMレンズ」のほうが解像感にすぐれる結果になりました。周辺部までシャープさを維持しています。
解像性能の比較では、広角端と望遠側(焦点距離25mm)の両方で、「FE 16-25mm F2.8 G」よりも「FE 16-35mm F2.8 GM II」のほうがよい結果になりました。「FE 16-35mm F2.8 GM II」はさすがに高価なだけあって、より広いズーム域ですばらしい光学性能を持っています。
ただし、これは絞り開放で撮った画像を100%拡大して確認した結果です。実際には、「FE 16-25mm F2.8 G」も十分に高画質で実用的なレンズだというのが筆者の感想ですので、そこはご理解いただければと思います。
超広角レンズは画角が広い分、撮影距離を長くするとどうしても被写体が小さくなります。メインの被写体を大きく写しながら、遠近感を強調したダイナミックな構図で撮るには、被写体にどのくらい寄れるかが重要です。ここでは、「FE 16-25mm F2.8 G」と「FE 16-35mm F2.8 GM II」の最短撮影性能の違いを、実写画像を見ながら確認していきます。
α7R V、FE 16-25mm F2.8 G、16mm、F2.8、1/1250秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、12.8MB)
「FE 16-25mm F2.8 G」の広角端16mmでの最短撮影距離は、AF時で18cm、MF時で17cm。AFとMFで1cmの差がありますが、いずれの場合でもフルサイズ用の超広角ズームとしては、かなり近づいて撮れると言えると思います。被写体を大きく写しながら背景を広く取り入れることができます。
α7R V、FE 16-35mm F2.8 GM II、16mm、F2.8、1/1250秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、13.2MB)
「FE 16-35mm F2.8 GM II」の広角端16mmでの最短撮影距離は、AF/MFのいずれも22cm。「FE 16-25mm F2.8 G」に比べると最短撮影距離が長く、撮影倍率もそれほど高くはありません。
α7R V、FE 16-25mm F2.8 G、25mm、F2.8、1/1000秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、13.9MB)
「FE 16-25mm F2.8 G」の望遠端25mmでの最短撮影距離は、AF時で24m、MF時で22cm。広角端時ほどは寄れませんが、それでも焦点距離25mmでこの性能は立派だと言えます。面白いのは、被写体の大きさが広角端時とそれほど変わらないこと。焦点距離を変えても撮影倍率はほとんど変わらず、写りこむ背景の広さが変化する仕様のようです。
α7R V、FE 16-25mm F2.8 G、35mm、F2.8、1/1000秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、12.1MB)
「FE 16-35mm F2.8 GM II」の特徴は、ズーム全域で最短撮影距離が22cmで変わらないこと。そこで、上記の作例は、焦点距離25mmでなく望遠端の35mmで撮影してみました。35mm時の最大撮影倍率は0.32倍。広角端の16mm時と比べて断然大きく被写体を写せることがわかります。
広角端16mmでは「FE 16-25mm F2.8 G」のほうが被写体を大きく写すことができ、望遠側では焦点距離35mmまでズームできる「FE 16-35mm F2.8 GM II」のほうが被写体を大きく写すことができるという結果でした。
この結果は、「FE 16-25mm F2.8 G」は焦点距離によらず最大撮影倍率があまり変わらない、「FE 16-35mm F2.8 GM II」は焦点距離によらず最短撮影距離が変わらないという仕様によるもの。どちらも最短撮影性能にすぐれる超広角ズームですが、超広角でよりパースを効かせるには「FE 16-25mm F2.8 G」、より大きく被写体をとらえるには「FE 16-35mm F2.8 GM II」といったように強みが異なっています。
ここまでは、「FE 16-25mm F2.8 G」と「FE 16-35mm F2.8 GM II」の比較で話を進めてきましたが、ここからは「FE 16-25mm F2.8 G」のそのほかの特徴を、作例を交えて紹介していきます。
α7R V、FE 16-25mm F2.8 G、25mm、F8、1/640秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、12.5MB)
「FE 16-25mm F2.8 G」の逆光性能は非常に優秀です。今回の試写では、強い光源(太陽)の位置をさまざまに変えて、いろいろなパターンを試しましたが、光源の位置によっては虹色の小さなゴーストがまれに発生する程度でした。シチュエーションによりますが、「FE 16-35mm F2.8 GM II」より逆光性能にすぐれていると言える場合もあったくらいです。
α7R V、FE 16-25mm F2.8 G、22mm、F8、1/125秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、26.5MB)
解像性能については「FE 16-35mm F2.8 GM II」に一歩譲るところがありましたが、それは絞り開放での話。少し絞り込めば、周辺の隅々まで均質性にすぐれたクリアでヌケのよい画質を提供してくれます。風景写真などでは絞り込んで撮影することが通常ですので、「実用上問題のない高画質」という評価はこうしたところに表れると思います。
α7R V、FE 16-25mm F2.8 G、16mm、F2.8、1/100秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、27.7MB)
超広角レンズでAF速度を評価する機会はそれほど多くないと思います。しかし、本レンズは最適化されたリニアモーターを2基搭載していますので、AFは非常に高速(かつ高精度)で、はっきり言って破格です。静粛性にもすぐれていますので、動画撮影とも相性がよいです。
α7R V、FE 16-25mm F2.8 G、18mm、F2.8、1/800秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、15.0MB)
砂浜に芽吹いた植物を、広い背景を交えながらローポジションで撮ってみました。超広角レンズは情報量が多いため、作画に慣れるのにちょっと苦労するところがありますが、本レンズは小型・軽量ですので取り回しが楽です。「α7R V」のフレキシブルな4軸マルチアングル液晶モニターとの組み合わせによって、ロー/ハイポジションでも安定した姿勢で撮影できました。撮影の自由度が高く、まさにミラーレス時代の超広角ズームと言えるのではないかと思います。
「FE 16-25mm F2.8 G」は、焦点距離16〜25mmの超広角域に対応しながら、開放F2.8通しの明るさと小型・軽量化を両立した超広角ズーム。高性能ラインの「Gレンズ」で最新の光学設計を採用し、操作性も優良です。
光学性能については、大口径と小型・軽量の両立という事情もあって、「GMレンズ」に譲るところこそありますが、実際に使う分には十分に高画質です。最短撮影性能や逆光耐性についても、「FE 16-35mm F2.8 GM II」に勝るとも劣らないものが確かにある、本当に優秀な超広角ズームと言えます。
25mmまでというズーム域が気になるかもしれませんが、兄弟レンズの「FE 24-50mm F2.8 G」と組み合わせれば、焦点距離の隙間をスムーズに埋められ、快適に使うことができるでしょう。こうなると、これら2本と同じく「大口径ながら小型・軽量」というコンセプトで設計された望遠ズームの登場が待ち遠しくなりますね。