デジタル一眼カメラは、多彩な撮影をサポートするために数多くの機能を搭載している。ただ、初めて一眼カメラを使う初心者のなかには、「数が多すぎてどの機能を設定すればよいのかわからない……」という人も少なくないのではないだろうか。
そこで本記事では、一眼カメラを購入したばかりの人に知ってほしい、操作性に関する重要な機能を14項目厳選して紹介しよう。これらをうまく設定することで、より快適に撮影を楽しめるはずだ。
ニコンのAPS-Cミラーレスカメラ「Z fc」を例に、操作性関連で押さえておきたい14機能を紹介する
デジタル一眼カメラは基本的に、メーカーが最も標準的だと考える設定が施された状態で出荷されている。いわゆる初期設定と呼ばれる状態だ。より多くの人が使い始めから撮影でつまずくことがないように、細かいところまでいろいろと考えて設定されている。
しかし、カメラの使い方は人それぞれなので、初期設定のままだと意外に使いにくいと感じることも多い。自分の撮影スタイルに合わせて設定変更(カスタマイズ)を行うことで、より快適に撮影が行えるようになる。
次項以降で紹介する操作性関連の14機能は、一眼カメラを使い始めたときにまずカスタマイズしておきたいものばかり。誤って設定してしまいがちな機能もあるので、故障を疑う前のチェックリストとしても役立つはずだ。
ライブビュー撮影時に、画面をタッチするだけでピント合わせから撮影までを自動で行ってくれるのがタッチシャッターだ。
とても便利な機能なのだが、「撮影自体はシャッターボタンを押して行いたい」という人や、意図せず画面に触れてしまい誤操作することを嫌う人もいるだろう。そういう場合は、タッチした際の動作を自分好みに切り替えてみよう。
主に以下の3つを選択できる。
・ピントを合わせてシャッターを切る(タッチシャッター)
・ピントを合わせるだけにする(タッチAF)
・触っても反応しないようにする(無効)
「Z fc」では、赤く囲った部分をタッチして機能を切り替えられる。「タッチシャッター」「タッチAF」「無効」「フォーカスポイント移動」の4種類から選択できる
ピントを合わせた際にピピっと音が鳴る電子音の設定も切り替えられる。毎回ピントを合わせるたびに音が出るのがわずらわしければ、設定を無効にしてみよう。有効のまま音量を小さくすることも可能だ。
「Z fc」は、電子音を無効にすると、AF動作時だけでなくセルフタイマー時やタッチパネル操作時の電子音も鳴らなくなる。音量や音の高さも設定できる
撮影直後に、画像を自動的にモニターやファインダーに表示するかどうかを設定できる機能。これを有効にしておくと、画像を確認したいときに、わざわざ再生ボタンから操作する手間を省ける。
撮影テンポを大事にしたいポートレートやスナップの撮影で便利だ。画像表示の秒数も自分好みに選択できる。非常に有効な機能だが、初期設定では無効になっているカメラが多い。
画像確認はモニターとファインダーの両方、またはモニターのみなどから設定できる
モニターやファインダーが自動的に消灯するまでの時間を変更できる。バッテリーの消耗をなるべく遅らせたいときは表示時間を短くしよう。
項目ごとに細かくパワーオフ時間を選べる機種が多い。「Z fc」では、前述の「撮影直後の画像確認」の秒数もここで変更できる
モニターとファインダーで表示の仕方を切り替えられる機能。初期設定では大抵「自動切り替え」になっていて、ファインダー横のアイセンサーによって、顔を近づけると自動的にモニター表示からファインダー表示へと切り替わるようになっている。
通常はこの状態でよいと思うが、モニターで人に写真を見せる際などに、手先がアイセンサーに反応し、モニターが暗転してしまうことがある。これはファインダー表示に自動的に切り替わっているためだ。こんなときはモードを「モニターのみ」の表示に変更すると解消できる。
もうひとつ注意したいのは、意図せずにこのボタンを押してしまい、「自動切り替え」から「モニターのみ」もしくは「ファインダーのみ」に設定が変わってしまっているとき。ファインダーを覗いても反応しない場合は、この設定を疑おう。
「Z fc」の場合、赤く囲ったボタンでモニターモードの切り替えを行う。「モニターのみ」に変更すると、ファインダーに顔を近づけてもファインダーには何も表示されなくなる
自分の視力に合わせてファインダー内のピントを調節できる機能。ファインダーに表示されるライブビュー映像や撮影情報(数字や記号)がぼやけて見えるようなら、ファインダーの横に付いている視度調節ダイヤルを操作してみよう。写真はきちんと写っているのに、ファインダーから覗くといつもピントが合っていない……。そんなときは視度が合っていない可能性があるのでチェックしてほしい。
赤く囲った部分が視度調節ダイヤル。通常ファインダーの横に搭載されている
モニターの明るさは、周囲の明るさにあわせて自動調整する「オート」、もしくは標準的な明るさのどちらかが初期設定に採用されていることが多い。
これらの初期設定で使っていて、特にモニターが見にくいと感じやすいのは、晴天下の海辺など屋外の明るいシーンだ。周囲が明るい状況のときは、モニターの輝度を上げてみるとよいだろう。ただし、モニターを明るくすると、その分バッテリーの消耗が早まる。必要なときだけ調整するのがおすすめだ。
「Z fc」はモニターの明るさを±5段階で変更できる
ファインダーの明るさも調整できる。これもあまり明るくすると、バッテリーの消耗が早まるので注意しよう。
モニター/ファインダーの明るさ調整で覚えておきたいのは、「一時的に明るくした場合は必ず元の設定に戻すのを忘れない」ということ。たとえば、モニター/ファインダーの輝度を上げた状態のまま、屋外から屋内に移って撮影を続けると、ライブビュー映像が必要以上に明るくなってしまう。結果、適正な明るさで撮ったつもりなのに実際の写真は暗い仕上がりなんてことも。モニター/ファインダーからの眺めが妙に明るい、または暗いと感じたら、明るさの設定を確認してみよう。
「Z fc」の場合、ファインダーに関してはオートとマニュアルから選択できる。マニュアルを選ぶと、±で明るさを調整できるようになる
構図を確認するのに使用するのが格子線だ。自然風景で要素をバランスよく配置したいときや、ポートレートで空間を演出したいときなどに重宝する。筆者は格子線が苦手なほう。表示しっぱなしでは被写体に集中できないため、必要なときだけ表示するようにしている。
「Z fc」の格子線表示は9分割と16分割から選択できる
このように格子線を表示できる。モニターとファインダーの両方に表示は反映される
露出や色設定などの撮影設定をモニターやファインダーの撮影画面に反映させるかどうかが選べる機能。これを有効にしておくと、仕上がり結果を見ながら撮影が行える。
この機能は、ほぼ例外なく初期設定で有効になっているので、基本的にはそのまま使えばよい。もし撮影中のイメージと撮影結果で明るさが大きく異なるようなことがあったら、この機能の設定を確認するとよいだろう。ちなみに、反映をオフにしたほうが使いやすくなるのは、スタジオや夜景などでストロボを使って人物を撮影する場合や、風景を長時間露光で撮る場合などだ。
また、この機能はメーカーや機種で名称が異なっているので注意したい。たとえば、ニコンでは「ビューモード設定」や「Lvに撮影設定を反映」、キヤノンでは「露出(表示)Simulation」、ソニーでは「ライブビュー表示」といった具合だ。
「Z fc」では、「Lvに撮影設定を反映」という項目から設定変更を行う
左は、「Lvに撮影設定を反映」を「しない」に設定した状態。色を変え、かなり明るめに露出補正を行っているが、モニターにはそれが反映されていない。右は、「Lvに撮影設定を反映」を「する」に設定した場合で、撮影設定がそのまま反映されている
本機能を有効にすると、ピント合わせを行うフォーカスポイントをよりスピーディーに上下左右に循環しながら移動できるようになる。フォーカスポイントを直感的に動かしながら撮影したい場面で重宝する機能だ。
この機能は初期設定では無効になっていることが多い。「Z fc」でも初期設定は「しない」だ
循環設定を有効にすると、たとえば、フォーカスポイントが画面の左端にある状況から右端に移動させるのに、左側にフォーカスポイントをひとつ進めるだけでよくなる
自らピントリングを調整してピント合わせを行うマニュアルフォーカス時は、本当にピントが合っているのかわかりにくいときがある。これを補助するのがフォーカスピーキングだ。この機能を有効にすると、ピントの合った部分の輪郭に色を付けて表示できる。テーブルフォトや小物などの撮影で重宝する機能だ。
「Z fc」のフォーカスピーキングは、ピーキングの感度も調整できる。高感度にすると、ピントが合っていると判断される範囲が広くなる
ピーキングの色も設定できる。これは被写体の色に合わせて変更してみたい
フォーカスピーキングを有効にした状態。感度を高感度に、色を青に設定した。ピントの合っている範囲がわかりやすく示されている
画像の再生時は、撮った写真だけでなく、撮影設定や画像情報なども合わせて表示して確認できる。ただし、初期設定では必要最低限のデータしか表示されない機種も多い。確認したいものが出てきていなければ、再生画面設定で表示項目を選び、自分好みにカスタマイズしてみよう。
ニコンの場合、このようにチェックを入れて再生時に表示したい項目を選択できる
こんなふうに画像情報を細かく表示することも可能。ヒストグラムを表示したり、画像のみを表示したりといったように、いくつかのパターンを切り替えられる
ファンクションメニューとは、利用頻度の高い機能だけを集めて表示し、ダイレクトに設定変更できるメニュー画面のこと。ニコンのカメラでは「iメニュー」と呼ばれている。
メーカーによって名称は異なるが、ファンクションメニューはどの一眼カメラにも搭載されていて、カスタマイズできる。ほとんど使わない機能が初期設定で登録されているようなら、自分の撮影スタイルに合わせて入れ替えてみよう。このメニュー画面は本当に便利なので、より自分好みにブラッシュアップすることをおすすめする。
「iメニュー」のカスタマイズ画面。「iメニュー」では12項目が並び、それぞれを設定できるようになっている。ここでは「Wi-Fi通信機能」を選択してみた
同じく「iメニュー」のカスタマイズ画面。入れ替えたい機能を選んでいく
「Wi-Fi通信機能」を「多重露出」に変更した状態。利用する機会の多い項目はどんどん差し替えてみよう
今回は、初心者向けに、うまく活用してみたい操作性関連の機能を紹介した。これらは、どのカメラにも大抵搭載されており、カスタマイズするのが必須とも言える機能だ。ここではニコン「Z fc」を利用したが、ぜひ自分のカメラで同様の効果を確認してみてほしい。
なお、通常、メニュー内にはカメラを使いやすくするための「セットアップメニュー」という項目が用意されている。電子音の設定やモニター/ファインダーの明るさの設定などは、この項目から行えることが多い。カメラを最初に触る際は、この「セットアップメニュー」にも注目してみよう。
昨今のミラーレスはエントリー機でも非常に多機能でどれも優秀だ。便利機能を自分で探し出すのも楽しい。ぜひ、自分好みにカメラをカスタマイズしてほしい。