富士フイルムは2025年6月12日、ライブ配信イベント「X Summit Shanghai 2025」にて、「Xシリーズ」のAPS-Cミラーレスカメラ「X-E5」を発表した。ボディ左上に電子ビューファインダー(EVF)を搭載するレンジファインダースタイル「X-Eシリーズ」の新モデルだ。その特徴をいち早くレビューしよう。
・発売日:2025年8月
・市場想定価格(税別)
ボディ:224,000円前後
「XF23mmF2.8 R WR」レンズキット:256,000円前後
・カラーバリエーション:ブラックとシルバー
※シルバーのレンズキットには「XF23mmF2.8 R WR」のシルバーモデルが付属
「X-E5」のブラックモデルに、同時発表の単焦点レンズ「XF23mmF2.8 R WR」を装着したイメージ(付属フードを付けた状態)。「XF23mmF2.8 R WR」は、35mm判換算で焦点距離35mm相当の画角となる薄型パンケーキレンズだ
「X-E5」の特徴としてまず押さえておきたいのが基本性能の高さだ。「X-H2」や「X-T5」「X-T50」など、EVFがボディ中央に配置されている一眼レフスタイルの現行モデルと同様、撮像素子に有効約4020万画素の裏面照射型「X-Trans CMOS 5」センサーを、画像処理エンジンに最新「X-Processor 5」を搭載。第5世代の最新デバイスを採用することで、画質やAFを中心に性能が底上げされている。
さらに注目したいのが、「X-Eシリーズ」として初めてボディ内5軸手ブレ補正機能を搭載したこと。「X-Eシリーズ」のファンにとっては待望の機能追加だ。しかも、新規アルゴリズムの採用によって、最大で中央7.0段/周辺6.0段という高い補正効果を実現している。
有効約4020万画素の裏面照射型「X-Trans CMOS 5」センサーを搭載。ボディ内5軸手ブレ補正機能も備わっている
第5世代デバイスを採用する他モデルと同様、「動物」「鳥(+昆虫)」「クルマ」「バイク&自転車」「飛行機(+ドローン)」「電車」の被写体検出に対応
「X-Eシリーズ」の魅力として外せないのが、携帯性にすぐれたコンパクトなボディだ。2012年発売の初代モデル「X-E1」から、APS-Cサイズの撮像素子とEVFを搭載するミラーレスとして小型・軽量を追求してきており、その伝統は「X-E5」にもしっかり受け継いでいる。
「X-Eシリーズ」らしい小型・軽量ボディを実現。EVFは倍率0.62倍/約236万ドットの有機ELファインダーだ
X-E5
124.9(幅)×72.9(高さ)×39.1(奥行)/33.0(最薄部)mm
約445g
X-E4
121.3(幅)×72.9(高さ)×32.7(奥行 ※最薄部)mm
約364g
X-T50
123.8(幅)×84(高さ)×48.8(奥行)/34.2(最薄部)mm
約438g
※いずれも重量はNP-W126Sバッテリーとメモリーカードを含む
「X-E5」と従来モデル「X-E4」を比べてみると、「X-E5」は、ボディ内5軸手ブレ補正機能を搭載しながらも薄型・軽量であることがわかる。奥行の最薄部は33.0mmで、フラットデザインの「X-E4」とそう変わらないスペックだ。撮影時の重量は450gを切っている。さすがに「X-E4」と同等とまでは言えないが、ボディ内手ブレ補正/EVF内蔵のAPS-Cミラーレスとしてクラス最小級のコンパクトなボディに収まっている。
チルト式の3.0型液晶モニター(約104万ドット)を採用。上方向に180度回転させての自分撮りも行える
「X-E5」は、「Xシリーズ」のカメラらしく、クラシックな雰囲気の高品位なデザインも魅力だ。「Xシリーズ」として初めてアルミ削り出し加工のトッププレートを採用し、質感にこだわっているのも見逃せないポイントである。
アルミ削り出し加工のトッププレートを採用。上限右側にはシャッタースピードダイヤルと露出補正ダイヤルが配置されている
上面の操作性では、「Xシリーズ」ではおなじみのシャッタースピードダイヤルと露出補正ダイヤルのほかに、仕上がり設定の「フィルムシミュレーション」のモードを切り替えられる「フィルムシミュレーションダイヤル」を搭載するのが大きなトピック。「フィルムシミュレーションダイヤル」自体は「X-T50」や「X-M5」にも備わっているが、「X-E5」では、窓付きの新しいデザインに変更。指標プレートをアルミ削り出し加工で仕上げるという、こだわった仕様のダイヤルに進化している。
上面左側の「フィルムシミュレーションダイヤル」。円形の窓越しに選択中のモードを確認できるようになっている
この新しい「フィルムシミュレーションダイヤル」には、「PROVIA」「Velvia」「ASTIA」「クラシッククローム」「REALA ACE」「ACROS」の計6種類の固定ポジションのほか、メニュー操作でフィルムシムレーションを設定する「C」ポジションと、「FS1」「FS2」「FS3」の3つのカスタムポジションが用意されている。
注目したいのは「FS1」「FS2」「FS3」のカスタムポジション。これらのポジションには、全20種類(モノクロフィルターを含む)の「フィルムシミュレーション」のモードに加えて、「FSレシピ」として各種画質設定を個別に設定・登録できるようになっている。仕上がりを追い込んで撮りたい場合に便利なモードだ。
「FS1」「FS2」「FS3」のカスタムポジションを利用できる
カスタムポジションごとに「FSレシピ」の登録が可能
「FSレシピ」の設定画面。「カラークローム・エフェクト」などを登録できる
「FSレシピ」にはトーンカーブ、カラー、シャープネスなども登録できる
撮影画面の表示にも面白い仕掛けが追加された。「X-E5」は、ラージフォーマット機「GFX100RF」に採用された「サラウンドビュー」を搭載しており、アスペクト比(3:2、4:3、16:9、5:4、1:1)ならびにデジタルテレコンの倍率(1.4倍、2.0倍)に応じて記録範囲をライン(白線)で表示するモードと、半透明で表示するモードを選べるようになった。
アスペクト比16:9/デジタルテレコン1.4倍時のライン表示モードの画面
同じくアスペクト比16:9/デジタルテレコン1.4倍時の半透明表示モードの画面
さらに、EVF専用の新しい表示モードとして、古いフィルム一眼レフの光学ファインダーをイメージした「クラシック」モードが追加されたのもトピック。このモードは、画面の右側に露出針を模した露出表示を配置するなどして、アナログ感のあるクラシックスタイルを採用しているのが特徴だ。背面のDISP/BACKボタンを押すことでこのモードに切り替えられる。「サラウンドビュー」のライン表示と組み合わせることも可能だ(※半透明表示には非対応)。
「クラシック」モード時のEVF画面。画面右側の露出針を模した露出表示がユニークだ
「クラシック」モードでは「サラウンドビュー」のライン表示を重ねることが可能。この画面はアスペクト比3:2/デジタルテレコン1.4倍時のライン表示と組み合わせている
操作性では、「X-Eシリーズ」として初めて、前面のフロントダイヤルの横に「コントロールレバー」を搭載するのも特徴だ。このレバーは左右に倒せる仕様で、「短く倒す」「長く倒す」の2段階で異なる機能を設定できる。初期設定では、右側(フロントダイヤル側)の「短く倒す」に「サラウンドビューの切り替え」が、「長く倒す」に「アスペクト比の選択」が、左側(レンズマウント側)の「短く倒す」に「デジタルテレコンの選択」が割り当てられている。このレバーをうまく活用することで、さまざまな表示スタイルで撮影を楽しむことが可能だ。
前面のフロントダイヤルの横に「コントロールレバー」を搭載
「コントロールレバー」は、左右ごとの「短く倒す」「長く倒す」の操作に対して呼び出す機能を設定できる
底面。フィルム巻き戻しボタンのように見えるのはBluetoothボタンだ。付属バッテリーは「X-T50」「X-M5」などと同じ「NP-W126S」。対応する記録メディアはSD/SDHC/SDXCメモリーカード(UHS-II対応)
左側面のインターフェイス部。3.5mmステレオミニジャック(マイク、リモートレリーズ兼用)、USB Type-C端子、HDMIマイクロ端子(Type D)が並んでいる
ロープタイプのショルダーストラップが付属
X-E5、XF23mmF2.8 R WR、アスペクト比1:1、F4、1/1900秒、ISO125、-0.3EV、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド、カラークローム・エフェクト:弱、カラークローム ブルー:強、JPEG
撮影写真(5152×5152、13.4MB)
X-E5、XF23mmF2.8 R WR、アスペクト比5:4、F2.8、1/2200秒、ISO125、-1.0EV、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:REALA ACE、カラークローム・エフェクト:弱、JPEG
撮影写真(6432×5152、16.3MB)
X-E5、XF23mmF2.8 R WR、アスペクト比3:2、F6.4、1/1100秒、ISO125、-1.0EV、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:クラシッククローム、JPEG
撮影写真(7728×5152、17.4MB)
X-E5、XF23mmF2.8 R WR、アスペクト比1:1、F2.8、1/15秒、ISO320、-1.3EV、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:クラシックネガ、JPEG
撮影写真(5152×5152、11.0MB)
X-E5、XF23mmF2.8 R WR、アスペクト比1:1、デジタルテレコン2.0倍、F2.8、1/1500秒、ISO125、+0.3EV、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:クラシックネガ、JPEG
撮影写真(2592×2592、4.0MB)
X-E5、XF23mmF2.8 R WR、アスペクト比3:2、F2.8、1/30秒、ISO200、-0.3EV、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト、JPEG
撮影写真(7728×5152、16.4MB)
X-E5、XF23mmF2.8 R WR、アスペクト比3:2、F2.8、1/15秒、ISO125、-0.7EV、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:クラシックネガ、JPEG
撮影写真(7728×5152、18.9MB)
X-E5、XF23mmF2.8 R WR、アスペクト比3:2、F2.8、1/13秒、ISO125、-0.7EV、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:クラシックネガ、JPEG
撮影写真(7728×5152、16.9MB)
X-E5、XF23mmF2.8 R WR、アスペクト比3:2、F5.6、1/15秒、ISO320、-0.7EV、ホワイトバランス:オート、フィルムシミュレーション:ACROS、グレイン・エフェクト(強度:強、粒度:大)、JPEG
撮影写真(7728×5152、19.9MB)
「X-E5」は、第5世代の撮像素子・画像処理エンジンとボディ内手ブレ補正機能を搭載したことで、基本性能が大きく向上している。記事では触れなかったが、連写は、有効約4020万画素の高画素ながら電子シャッター時に最高約13コマ/秒(1.29倍クロップだと最高約20コマ/秒)に対応。動画は、最大6.2K/30pでの記録が可能だ。性能面では「Xシリーズ」の最新ミラーレスとして順当な進化を遂げたと言える。
加えて、「GFX100RF」と同じように、「サラウンドビュー」での多彩な表示モードと、「コントロールレバー」による直感的な操作性を採用。新デザインと機能性の「フィルムシミュレーションダイヤル」や、EVFの新しい表示モード「クラシック」も新鮮だ。ミニマルデザインを追求した従来モデル「X-E4」とは趣が異なっていて、実用性と趣味性のバランスがさらに高まったカメラに進化したと言えるだろう。
市場想定価格はボディ単体が224,000円前後、「XF23mmF2.8 R WR」が付属するレンズキットが256,000円前後(いずれも税別)。基本スペックがほぼ同等の「X-T50」とほぼ同じ価格帯だ。撮影のスタイルによって「X-E5」と「X-T50」を選択できるようになったのがうれしい。どちらを選んでも「フィルムシミュレーション」を使った高画質な撮影を存分に楽しめることだろう。