ニコンから、同社のフルサイズミラーレスカメラとしては初となるファインダーレス機「Z5IIC」が登場しました。ファインダーを省いたフラットトップデザインにすることで携帯性を高めつつ、上位機譲りのAFやボディ内5軸手ブレ補正など、充実した基本性能を備えています。そんな本機の実力を、兄弟モデル「Z5II」との違いを交えながら詳しくレビューします。
2026年10月23日発売の「Z5IIC」。カラーバリエーションとして画像のブラックのほかにシルバーも用意されています
ニコンのフルサイズミラーレスは、2018年に初代モデル「Z7」「Z6」が登場して以降、すべての機種に電子ビューファインダー(EVF)を搭載してきました。しかも、いずれもボディ中央にファインダーを配置する一眼レフスタイルというこだわりようです。
EVF搭載と一眼レフスタイルを徹底してきたのは、フィルムカメラ時代から長年にわたり高品位な一眼レフを手がけてきたニコンらしい点と言えるでしょう。しかも、ファインダーの光学系にこだわり、下位モデルであってもクリアで自然な見えを実現しているのがポイント。ニコンのミラーレスは本格的なファインダー撮影が楽しめる点で評価されてきました。
よりカジュアルにフルサイズを楽しむことをコンセプトに設計された「Z5IIC」。ファインダーを省略し、より小型・軽量なボディに仕上がっています
しかし近年、撮影スタイルは多様化しています。「スマートフォンのカメラが初めての撮影体験」という人にとって、写真は「モニターを見ながら撮る」のが当たり前です。また、スナップや旅行など日常の撮影においては、ファインダー部のある一眼レフスタイルは、携帯性の点で「バッグへの収まりが悪い」と敬遠されるケースもあるでしょう。
カメラはできる限り邪魔にならないようにしたい。とはいえ、フルサイズならではの画質やボケ味をもっと気軽に使いたい。
そうしたユーザーの声に応えて商品化されたのが、今回紹介する「Z5IIC」です。ニコンのフルサイズミラーレスとして初のファインダーレス機で、「C」の文字には「Casual(カジュアル)」の意味が込められています。普段使いで気軽に持ち出せることをコンセプトに、「ニコンの新しいフルサイズ」を提案した機種となっています。
「Z5IIC」にはコンパクトなレンズが似合います。この画像は、薄型の広角・単焦点レンズ「NIKKOR Z 26mm f/2.8」を装着したイメージです
「Z5IIC」の外観で目を引くのは、ファインダーを搭載しないことによって、よりすっきりとしたフォルムになった点です。フラットトップデザインの筐体は、これまでのニコンのフルサイズミラーレスにはなかった新鮮さがあります。
本体のサイズは約134.0(幅)×80.5(高さ)×72.0(奥行)mmで、重量は約620g(バッテリー、SDメモリーカードを含む)。兄弟モデルとなるファインダー搭載機「Z5II」と比較すると、高さが約20mm低くなり、約80gの軽量化を実現しています。
ファインダー部の突起がなくなったことで、バッグからの出し入れがしやすくなりました。いかにも本格的なカメラという見た目ではないので、被写体(家族や友人などの人物)の自然な表情を引き出しやすいというメリットもあるでしょう。
フラットトップ仕様のシンプルな筐体デザイン。ボディの一部にマグネシウム合金を採用し、コンパクトながらもニコンらしい堅牢性を確保しています。防塵・防滴に配慮した設計も施されています
ファインダーを搭載しないミラーレスは、小型・軽量化を追求しつつ、よりカジュアルに使えるように、シンプルな操作性を採用することが多いです。
その点、「Z5IIC」はベースモデルの「Z5II」から多くの操作性を継承しており、比較的充実した内容になっています。前後のコマンドダイヤルやシャッターボタン周辺のボタンなど、ほぼすべて「Z5II」と同じレイアウトを採用。各種機能をボタン操作で呼び出して設定できるようになっています。ニコンの上位機とも親和性の高いレイアウトですので、サブ機としても使いやすいと思います。
上面の操作性は右手側に集中しています
特筆すべきは、グリップの形状を妥協しなかった点です。小型・薄型化を最優先してグリップを平坦にしてしまうと、どうしてもホールド感が損なわれます。しかし、「Z5IIC」は指をしっかりと掛けられる大きくて深いグリップを採用。少し大きめのレンズを付けたときも安定した構えでシャッターが切れます。
大きくて深い形状のグリップを採用
操作性で1点省略されているのが、AFフレームをダイレクトに移動できる背面のサブセレクターです。「Z5IIC」はこのセレクターがないため、AFフレームの移動はモニターのタッチ操作で行うのが基本となります(背面のマルチセレクター/十字キーでも操作可能)。背面のスペースを見るとサブセレクターをそのまま搭載できそうなのですが、よりカジュアルな使い方を重視したことと、価格を抑えるということもあって、この仕様を採用したと思われます。
背面の操作性も「Z5II」譲りです。ただし、AFフレーム移動用のサブセレクターは省略されています
グリップ脇にファンクションボタンが2つ備わっているのも「Zシリーズ」ならでは
3.2型のバリアングル液晶モニター(タッチパネル対応)を採用。解像度は約104万ドットで「Z5II」の約210万ドットからスペックダウンしています
底面。三脚穴はレンズの光軸上に配置されています
「Z5IIC」は「Z5II」の基本性能を継承しており、コンパクトなファインダーレス機として中身は充実しています。主な特徴をまとめます。
「Z5IIC」の主な基本性能
・撮像素子:有効2450万画素の裏面照射型CMOSセンサー
・画像処理エンジン:EXPEED 7
・感度:ISO100〜64000(ISO50相当までの減感、ISO204800相当までの増感)
・シャッタースピード:1/4000〜30秒(メカ)、1/2000〜30秒(電子先幕)、1/8000〜30秒(電子)
・メカシャッター時の連写速度:約7.8コマ/秒(JPEG)
・電子先幕時の連写速度:約9.4コマ/秒(JPEG)
・電子シャッター時の連写速度:約14コマ/秒(JPEG)、サイレントモードON時は約15コマ/秒、約30コマ/秒の「ハイスピードフレームキャプチャー+」(プリキャプチャー対応)
・連続撮影枚数:200コマ(RAW/JPEGともに)
・記録メディア:SD/SDHC/SDXCメモリーカード×1(UHS-II対応)
・被写体検出:新設の「魚検出」を含めた計10種類
・ボディ内5軸手ブレ補正:最大7.5段の補正効果
処理性能面では、有効2450万画素のフルサイズCMOSセンサーと、「Z9」「Z8」と同じ画像処理エンジン「EXPEED 7」を搭載しているのがポイント。連写速度は「Z5II」と同じ仕様で、電子シャッター時に最大約14コマ/秒の連写が可能(サイレントモードON時は最大約15コマ/秒)。JPEGでの超高速連写機能「ハイスピードフレームキャプチャー+」では、最大約30コマ/秒の撮影が可能で、シャッターボタンを押す前の状態を記録できるプリキャプチャーにも対応しています。連続撮影枚数もRAW/JPEGとも200コマで「Z5II」と同等です。
AFは、上位モデル「Z9」「Z8」譲りの、「EXPEED 7」による高度な追尾性能や被写体検出機能を継承しています。さらに本機では「Z5II」からのアップデートとして、被写体検出に「魚」が追加されました。水族館などで不規則に泳ぐ魚を撮影する際にも役立つ機能です。
新たに「魚」検出に対応。このほか人物、犬、猫、鳥、車、バイク、自転車、列車、飛行機の検出が可能です
性能面ではボディ内5軸手ブレ補正機能を搭載しているのも見逃せません。その効果は中央最大7.5段(周辺6.0段)。ファインダーを使わない撮影では両手と顔の3点でカメラを固定できないため手ブレが起きやすくなりますが、ボディ内5軸手ブレ補正が撮影の幅を広げてくれます。
また、ファインダーレスのミラーレス機ではコストや筐体内スペースの兼ね合いで電子シャッター専用となるケースがありますが、「Z5IIC」はメカシャッターをしっかりと搭載しているのもポイント。ただし、メカシャッターの最高速度は、「Z5II」が1/8000秒に対応するのに対して1/4000秒に抑えられています。
対応する記録メディアはSD/SDHC/SDXCメモリーカード(UHS-II対応)。「Z5II」はダブルスロット仕様でしたが、本機はシングルスロットです
外部インターフェイスとして、USB Type-C、HDMI(Type D)出力、外部マイク入力、ヘッドホン出力(リモートコードMC-DC3使用可能)が備わっています
付属バッテリーは「EN-EL15c」。撮影可能コマ数は「パワーセーブ(静止画モード)」がONの場合で約390コマ
「Z5IIC」には、より気軽にクリエイティブな撮影を楽しめる機能が備わっています。
特に注目したいのは、ニコン独自の「イメージングレシピ」です。この機能は、著名なクリエイターが作成した特製の「ピクチャーコントロール」設定をカメラに直接ダウンロードして利用できるというもの。フィルム調の懐かしいトーンや、淡く透明感のあるパステル調、コントラストの効いたモノクロームなど多彩なレシピが用意されています。
「イメージングレシピ」が便利なのは、撮った後の画像編集を前提とせずに、カメラの撮って出しでさまざまな表現が楽しめること。初心者にとって使いやすいというだけでなく、プロが作り込んだ色やトーンを体験できるという点においても有益です。
「イメージングレシピ」は、スマホやパソコンのWebブラウザーからアクセスする無料クラウドサービス「Nikon Imaging Cloud」上に用意されています。本サービス内で好みのレシピを選択してカメラに直接ダウンロードできます
カメラ側では「ピクチャーコントロール」の設定の中に「イメージングレシピ」が追加されます
ボディ上面に「ピクチャーコントロールボタン」が用意されています。このボタンを押すことで「ピクチャーコントロール」の設定画面をダイレクトに呼び出せます
初心者向けの機能としては、オート撮影モードに加えて、15種類のシーンモードを搭載するのがトピックです。ニコンのフルサイズ機にシーンモードが搭載されるのは、2014年発売の一眼レフ「D750」以来のことになります。
かつてシーンモードを備えていたフルサイズ一眼レフ(D750やD600系)はいずれも内蔵ストロボを搭載しており、ニコンでは伝統的に「内蔵ストロボ非搭載機=シーンモード不要の中上級機」という線引きがなされてきました。内蔵ストロボを持たないフルサイズ機にシーンモードが組み込まれたのは、一眼レフを含めて本機が初となります。従来の慣例を崩してでも、エントリー層やライトユーザーに寄り添った仕様と言えるでしょう。
「ポートレート」や「風景」など撮影シーンに合わせた設定を選べるシーンモードを搭載
シーンモードでは、「桜」「紅葉」「料理」「こどもスナップ」「パーティー」「海・雪」といったユニークなモードも選べます
機能面では、ファームウェアアップデートで「Zf」に追加された「フィルムグレイン」を搭載しています。写真に粒状感を加えることで、アナログ感のある仕上がりを再現する機能です。一部制限はありますが動画撮影でも利用できます
動画機能も充実しており、4K UHD/60p(DXクロップ)や4K UHD/30p(フル画角)の記録に対応。さらに、12bitのN-RAW内部記録やN-Log記録にも対応しており、ショート動画から本格的なシネマティックVlogまで幅広い撮影をカバーできます。
4K UHD/60p(DXクロップ)記録に対応しています
Z5IIC、NIKKOR Z MC 50mm f/2.8、F3.3、1/2500秒、ISO100、ホワイトバランス:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:より強め、ヴィネットコントロール:弱め、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4032、9.6MB)
Z5IIC、NIKKOR Z MC 50mm f/2.8、F4.5、1/800秒、ISO100、ホワイトバランス:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:オート、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4032、9.8MB)
Z5IIC、NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3、38mm、F6.3、1/160秒、ISO1600、ホワイトバランス:曇天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:オート、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4032、11.8MB)
Z5IIC、NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3、29mm、F5、1/3秒、ISO400、ホワイトバランス:白色蛍光灯、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:より強め、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4032、13.2MB)
Z5IIC、NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3、35mm、F8、1/800秒、ISO100、ホワイトバランス:自然光オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4032、9.6MB)
Z5IIC、NIKKOR Z MC 50mm f/2.8、F8、1/320秒、ISO100、ホワイトバランス:自然光オート、イメージングレシピ使用(CineBiasOffset)、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4032、7.4MB)
Z5IIC、NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3、27.5mm、F8、1/320秒、ISO100、ホワイトバランス:自然光オート、イメージングレシピ使用(CineBiasOffset)、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4032、9.7MB)
Z5IIC、NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3、24mm、F8、1/320秒、ISO100、ホワイトバランス:自然光オート、イメージングレシピ使用(CineBias-BB)、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、JPEG
Z5IIC、NIKKOR Z 26mm f/2.8、F2.8、1/250秒、ISO100、ホワイトバランス:オート1、イメージングレシピ使用(VINTAGE_FILM_Ludwig)、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、JPEG
撮影写真(4032×6048、8.5MB)
ニコン初のファインダーレスフルサイズ機として登場した「Z5IIC」。フラットトップデザインのためバッグへの収まりがよく、街歩きや旅行など普段使いで気兼ねなく持ち出せるカジュアルさを備えています。
いっぽうで、ボディのサイズ感だけを比較すると、もっと小さくて軽いフルサイズ機は存在します。約620g(バッテリー、SDメモリーカードを含む)という重量は、ファインダーレスフルサイズ機として驚くほど軽量というわけではありません。
それでも「Z5IIC」を選ぶべき理由は、携帯性を高めつつもカメラとして必要となる操作性や基本性能を削ぎ落としていない点にあります。
指がしっかりとかかる深い形状のグリップ、「魚」検出に対応した最新のAF性能、補正効果最大7.5段のボディ内5軸手ブレ補正、信頼性の高いメカシャッターなど、ニコンらしい堅実な作り込みをキープしたまま、ファインダーレス仕様を実現しているのです。
このような特徴をまとめると、本機は「ただ小さくて軽いフルサイズ」なのではなく、「カメラとしての使いやすさとフルサイズの高画質を、日常使いのサイズ感に落とし込んだモデル」と評せるでしょう。「イメージングレシピ」やシーンモードなどの撮影機能も用意されているので、初心者を含めて幅広いユーザーにフィットする1台となっています。
2026年10月22日時点の価格.com最安価格はボディ単体が214,830円(税込)、標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」が付属する「24-50レンズキット」が251,460円(税込)。発売直前の現時点では、ファインダーを搭載する兄弟モデル「Z5II」との価格差はそれほど大きくありません(ほぼ同等)。
今後の価格推移にも注目したいところですが、現時点では、軽快にニコンのフルサイズを楽しみたいなら「Z5IIC」、ファインダーを使った撮影を重視したいなら「Z5II」といったように、スタイルで選び分けるとよいでしょう。