ダイヤルやリングなど操作感の違いや、オートフォーカスの使い勝手など、両モデルを使い比べてみてわかった点をレポートする。
PowerShot G7 Xのボディサイズは103.0(幅)×60.4(高さ)×40.4(奥行)mmで、重量は約304g(バッテリーおよびメモリーカード含む)。RX100 IIIは101.6(幅)×58.1(高さ)×41.0(奥行)mmで重量約290g(バッテリーとメモリースティックPROデュオを含む)。両モデルとも小型・軽量なカメラで、携帯性は互角
いずれもグリップのないシンプルなボディ。表面加工に違いがあり、PowerShot G7 Xは表面にシボ加工が施されている部分がある
両モデルの操作性で大きな違いとなるのは、ボディ上面右側にあるダイヤルだ。PowerShot G7 Xは、「PowerShot G」シリーズらしい特徴でもあるのだが、撮影モードダイヤルと露出補正ダイヤルの2段ダイヤルを搭載している。露出補正ダイヤルが独立しているので、右手親指のダイヤル操作で、ダイレクトに露出補正が行える。いっぽうのRX100 IIIは、撮影モードダイヤルのみ。露出補正を行うには、十字キーの下を押して機能を呼び出してから操作する必要がある。
撮影モードダイヤルと露出補正ダイヤルの2段ダイヤルを採用するPowerShot G7 X
RX100 IIIは、ボディ上面に撮影モードダイヤルを搭載する
両モデルとも、レンズ部に、クルクルと回することで設定を変更できるリングを装備しているが、操作感が異なっており、PowerShot G7 Xは、「PowerShot S」シリーズの従来モデルと同じように、カチカチとクリック感のあるリングになっている。RX100 IIIは、クリック感がなく、なめらかな動きのリングだ。好みの分かれるところだが、絞り値やシャッタースピードなど段階的に値を変更したい場合は、クリック感のあるPowerShot G7 Xのほうが操作しやすいと感じるだろう。
また、PowerShot G7 Xでは、背面のリング機能切り替えボタンを押して、リングで操作する機能をダイレクトに変更することが可能。いっぽう、RX100 IIIでは、メニューのカスタムキー設定での変更となっている。
両モデルともレンズ部にリングを装備。PowerShot G7 Xはクリック感があり、RX100 IIIはクリック感がないリングとなっている
PowerShot G7 Xは、リング機能切り替えボタンが用意されており、このボタンを押すことで、リングで操作する機能をダイレクトに変更することができる
電子ビューファインダー(EVF)の有無も、両モデルの大きな違いだ。PowerShot G7 XはEVF非搭載(外付けオプションもなし)で、RX100 IIIはEVFを内蔵している。RX100 IIIが搭載するEVFは、ボディ内蔵タイプなのがユニークなところで、ポップアップでファインダー部を上げて、その後に接眼部を引き出すことで利用できる。携帯性を犠牲にせずに、利用したいときだけポップアップして使えるのが便利なところだ。また、EVFは、明るい屋外でモニターが見にくいときに威力を発揮するほか、動く被写体を追いかけながらの撮影もやりやすい。
液晶モニターの仕様も異なっており、PowerShot G7は約104万ドットの3.0型タッチパネル(3:2)を、RX100 IIIは約122.9万ドットの3.0型(4:3) を採用。両モデルともにチルト可動式モニターになっているが、PowerShot G7 Xは上方向に180度回転するタイプで、RX100 IIIは上方向に180度+下方向にも45度動くようになっている。ハイアングルからの撮影については、下向きにモニターを動かせるRX100 IIIのほうがやりやすい。
さらに、PowerShot G7 Xはタッチパネル対応で、RX100 IIIはタッチパネル非対応なのも大きな違いだ。PowerShot G7 Xでは、タッチ操作でオートフォーカスを使えるほか、メニュー周りの操作も、モニターをタッチすることで行える。
PowerShot G7 Xは、タッチパネル対応モニターを採用
RX100 IIIは、144万ドットの0.39型有機ELファインダー「OLED Tru-Finder」をコンパクトボディに内蔵。モニターは上下方向に動かせる
オートフォーカスの合焦速度は、体感的には、RX100 IIIのほうがわずかに速いと感じることもあったが、両モデルで極端な差はない。使い勝手の面では、PowerShot G7 Xは、先に紹介したようにタッチパネルモニターを採用しており、画面をタッチすることでオートフォーカスの位置を自由に移動できるタッチフォーカスに対応しているのが便利(タッチした位置でピント合わせを行い、シャッターを切るタッチシャッターにも対応)。いっぽうのRX100 IIIは、フレキシブルスポットによってオートフォーカス枠を自由に移動できるほか、枠のサイズをS/M/Lの3段階で変更することができる(PowerShot G7 Xは標準/小の2段階)。特に、Sサイズの小さな枠を選択できるのがポイント。マクロ撮影時など、より厳密な位置でピント合わせが行いたい場合に便利だ。
左はPowerShot G7 Xでオートフォーカスの枠のサイズを小にした場合の画面。右はRX100 IIIでSを選択した場合。RX100 IIIのほうが小さな枠でピント合わせが行える
PowerShot G7 Xは、タッチフォーカスに対応。タッチ操作でピントを合わせたい位置を自由に変更できる
このほか、両モデルで使い比べてみて気になった点をいくつか紹介しよう。
PowerShot G7 Xを使っていて少し気になったのが、露出補正を行った場合のモニター画面の仕様だ。露出補正ダイヤルで補正値を変えてから約3秒間、もしくはシャッターボタンを半押ししている間のみ、露出補正の効果がモニターの表示に反映される仕様になっている。コンデジでは他メーカーの一部機種で似たような動きをするものを目にしたことがあるが、どちらかといえば珍しい仕様だ。露出補正の結果が常にモニターに反映されるわけではないため、使い始めは、シャッターボタンを半押しして露出が反映された状態になって、露出補正を「0.0」に戻していないことに気づくことが何度かあった。慣れの問題もあるのだが、露出補正を多用する場合にはやや使いにくいと感じるかもしれない。なお、RX100 IIIは、露出補正の結果は常時モニターに反映される仕様で、露出設定の反映のオン・オフもメニューで切り替えられるようになっている。
RX100 IIIは、露出設定の反映のオン・オフをメニューで切り替えられる
また、両モデルとも、シャッタースピードは最速1/2000秒で、レンズの開放F値は広角端F1.8、望遠端F2.8となっており、明るい屋外にて開放付近でシャッターを切りたいときに露出オーバーになりやすい。露出オーバーを防ぐために、両モデルともNDフィルター機能を搭載しているが、PowerShot G7 Xは、NDフィルターのオン・オフの切り替えに対して、RX100 IIIは、オン・オフのほか、オートを選択することができる。オートでは、露出オーバーになるとNDフィルターが自動的にオンになるのが便利なところ。NDフィルターをオンにしたことを忘れて撮影を続けてしまい、意図せずに光量を抑えてしまうことを防ぐことができる。
PowerShot G7 Xは、NDフィルターのオン・オフが可能(左)。RX100 IIIには、NDフィルターのオート設定が用意されている
ボタンに当てられる機能を見ると、RX100 IIIのほうがカスタマイズ性は高い。ファンクションメニューで表示する機能を変更できるほか、中央ボタンや左右ボタンに割り当てる機能を変えることもできる。いっぽう、PowerShot G7 Xは、ファンクションメニューで表示する機能の並び替えや、表示のオン・オフが可能だ。ボタンをカスタマイズして自分好みの操作性を追及するのなら、RX100 IIIのほうがやりやすいと感じるかもしれない。
RX100 IIIは、ファンクションメニューに割り当てる機能を変更可能。各種ボタンの機能も設定できる
PowerShot G7 Xは、ファンクションメニューの機能を並び替えたり、表示のオン・オフを変更できる
本特集では、1インチセンサーを搭載するPowerShot G7 XとRX100 IIIの画質と操作性を比較した。
画質については、優劣があるというよりも、両モデルで傾向が異なっているという印象。PowerShot G7 Xは、35mm判換算で24mm〜100mmの画角に対応する光学4.2倍ズームレンズ(開放F値は広角端でF1.8、望遠端でF2.8)を採用し、ズーム全域で、キヤノンらしい自然で発色のよい色が得られるのが特徴だ。また、どらかというと標準〜望遠にかけて解像感が高まる傾向にあるが、注意したいのは開放でのマクロ撮影時の描写。特に、広角での開放マクロでは、ソフトフォーカスがかかったような感じになる。RX100 IIIと比べるとズーム倍率が高いため、開放時にやや甘い描写となるのは致し方ないところだ。いっぽうのRX100 IIIは、35mm判換算で広角24mm〜望遠70mmの画角に対応する光学2.9倍ズームレンズ(カールツァイスブランドの「バリオ・ゾナーT*」レンズ)を採用。ズーム全域で高い解像力を発揮するが、特に、広角での描写がよい。色味については、やや青みが強くなる傾向にあり、PowerShot G7 Xと比べると発色も抑え気味だ。
操作性も、両モデルで特徴が異なっている。PowerShot G7 Xは、タッチパネルモニターを採用し、タッチ操作が可能なのがポイント。モニターで被写体を確認しながら、タッチフォーカスで撮影ができるのは便利だ。露出補正ダイヤルが独立しているのも特徴である。RX100 IIIは、内蔵EVFを搭載するほか、モニターの可動域も広く、ボタンのカスタマイズ性も高い。ハイエンド志向が強く、細かいところの使い勝手ではPowerShot G7 Xを上回っていると感じた。
このように、画質と操作性で特徴の異なる2モデルだが、同価格帯の製品というわけではない。価格.com最安価格(2015年5月1日時点)をチェックすると、PowerShot G7 Xは53,000円程度、RX100 IIIは73,000円程度と、およそ2万円の価格差がある。どちらを選ぶかは、なかなか難しい選択ではあるが、得られる画質のみで評価するなら、PowerShot G7 Xのほうがコストパフォーマンスは高いのではないだろうか。ただし、より本格的な撮影を行いたいのであれば、EVFを搭載するRX100 IIIのほうが扱いやすいと感じることだろう。