“弾丸”試乗レポート
デザイン、室内空間、走りを比べてわかった両車の違いとは?

人気のミニバンを比較試乗、トヨタ「シエンタ」vs.ホンダ「フリード」

手ごろで扱いやすい車両サイズとラゲッジスペース、6人乗りと7人乗りが選べる使い勝手のよさで高い人気を維持するトヨタ「シエンタ」(写真左)と、ホンダ「フリード」(写真右)。その特徴を、デザイン、室内空間、走りの3点から迫った

手ごろで扱いやすい車両サイズとラゲッジスペース、6人乗りと7人乗りが選べる使い勝手のよさで高い人気を維持するトヨタ「シエンタ」(写真左)と、ホンダ「フリード」(写真右)。その特徴を、デザイン、室内空間、走りの3点から迫った

【内外のデザインを比較】
ポップでアクティブな「シエンタ」と、オーソドックスな「フリード」

トヨタの最小ミニバンであるシエンタ。その最新モデルは2015年7月に発売開始された。この現行モデルの特徴はデザインだ。「ミニバンは四角い箱」という既成概念を打ち破るユニークなデザインが採用されている。エクステリアは、まるでトレッキングシューズのよう。インテリアも鮮やかなオレンジの挿し色を利用するなど、相当に意欲的だ。このデザインは好き嫌いの分かれるところだが、「これが好き!」という人にとっては、ライバル関係なしに購入したくなる、強い魅力となるだろう。個人的には「クルマはオーナーのキャラクターを示すひとつ」と考えているので、デザイン優先でクルマを選ぶのは十分にアリだと思う。

シエンタのエクステリアは、丸みのあるシルエットや隈取りを思わせる樹脂パーツなど、今見てもかなり斬新なものだ

この角度から見るシエンタのデザインはは、直線が少ない。リアコンビネーションランプ周辺のデザインも独特だ

ダッシュボードには挿し色として横にオレンジのステッチが入る。造形自体も曲面を多用しており、どことなく有機的な印象だ

いっぽう、2016年9月に発売となった現行フリードのデザインはオーソドックス。3列シートが基本であるフリードに対して、2列シート+荷室のモデルは従来の「フリードパイクス」から「フリード+(プラス)」と名称が変更になった。しかし、顔つきはどちらも同じ。同社の「フィット」に連なるホンダイメージの強いものとなっている。インテリアは、ウッド調のパネルを採用するなど、ぐっと落ち着いた雰囲気だ。メーター周りに数多くの収納を用意しているのが美点。ルームミラー部に後席の様子をうかがえるミラーがあるのも便利だ。センスというよりも、ミニバンらしい使いやすさを優先させたインテリアとなっている。

スクエアなシルエットはミニバンらしい。グリルやライトなどフロント周りのデザインは、ホンダ車共通のモチーフだ

シエンタのような個性には乏しいが、それでもサイドからリアに流れる複雑なラインが躍動感を演出している

シエンタのような個性には乏しいが、それでもサイドからリアに流れる複雑なラインが躍動感を演出している

試乗車は明るいベージュの内装だった。ダッシュボードの白いウッド調パネルの効果か、清潔な印象を受ける

試乗車は明るいベージュの内装だった。ダッシュボードの白いウッド調パネルの効果か、清潔な印象を受ける

ダッシュボードの、ハンドルとメーターの間のスペースにまで収納が用意されている

ダッシュボードの、ハンドルとメーターの間のスペースにまで収納が用意されている

後席を一望できるミラー。ベビーシートに寝かせている子どもの様子を確認するのにも役立つ

後席を一望できるミラー。ベビーシートに寝かせている子どもの様子を確認するのにも役立つ

【シートアレンジおよびラゲッジスペースを比較】
シエンタは低床で荷室が広く、フリードは3列目が広い

4235mmの全長にホイールベースが2750mmのシエンタに対して、フリードは全長4265mmでホイールベースは2740mmと、2台のサイズ感はほぼ同等。室内の広々感も、同じようなものだが、3列目シートの収納に違いがある。シエンタは3列目シートを床下に畳むが、フリードはボディ側面に上げる。空間として見れば、スクエアな空間ができるシエンタのほうが利便性は高そうだ。ただし、3列目シートの居住性は、幅も前後寸法もフリードが勝っている。荷室優先であればシエンタだろうし、3列目シート優先ならフリードだろう。ただし、フリードには荷室の広い2列シートの「フリード+」という存在もある。ちなみに、フロアの高さはシエンタのほうが低い。小さな子どもやシニアにとっては低床であればあるほど、乗り降りはしやすいだろう。

シエンタは、2列目シートを前方に倒し、3列目シートを床下に畳むことで凹凸の少ないラゲッジスペースが現れる

フリードは3列目シートを側面に跳ね上げて収納する

フリードは3列目シートを側面に跳ね上げて収納する

フリードは、2列5人乗りの「フリード+」と、3列6人乗りまたは7人乗りフリードの3種類が用意される。なお、3列目シートは立体的な造形でクッションも厚く、座り心地は比較的よい

フロアの高さはフリードのほうが高く見晴らしはよい。ただ、シニアや子どもの乗り降りなら、シエンタのほうがラクだろう

取り回しの面だが、バックギヤに入れると、2台共に、ナビ画面に車両後方の映像が映し出された。ただしフリードは、それにプラスして、メーターモニター部に前輪の向きが表示される。駐車時にステアリングを操作していて、「今、タイヤがどっちに向いているのか?」とわからなくなったときに、非常に助かる機能だ。

フリードは、メーターモニター部に前輪の向きが表示される。車庫入れなどで、タイヤの向きがわからなくなったときに便利だ

ナビ&オーディオは、どちらも通信機能付きのナビを選ぶことができる。ただし、USBポートについては、シエンタは、USB1系統+HDMI1系統のコネクターがオプションとして用意されるものの、試乗車にはUSBポートが用意されていなかった。いっぽう、フリードのUSBポートも、カーナビとセット扱いだが、2系統のUSBポート+HDMIという構成だ。移動中の空いた時間に家族のスマホやデジカメなどをまとめて充電しておけるので、USBポートは複数欲しい。この点、シエンタにオプションで用意されるUSBポート1系統というのは少々物足りなさを感じる。

さらにフリードは、iPhoneなどをUSB接続するとアップルの「CarPlay」が使用できる。CarPlayは、iPhoneなどに保存した音楽をナビから操作して再生できたり、最新の地図データを使ったカーナビ機能を使えるなど、スマホをクルマで活用する注目の技術だ。この点では、フリードのほうが一歩進んでいると言えそうだ。

シエンタの助手席前のダッシュボード。上下2か所のグローブボックス、フック、カップホルダー、ポケットなど利便性を高める工夫が凝らされている。なお、USBポート(2.1A対応)とHDMIポートはオプション扱いだ

フリードはカーナビとのオプションで、1.5Aと1AのUSBポートが搭載される。さらにHDMIポートも備わる

フリードはカーナビとのオプションで、1.5Aと1AのUSBポートが搭載される。さらにHDMIポートも備わる

【走行感覚の違いを比較】
街中が得意なシエンタと、高速走行がラクチンなフリード

デザインや室内空間の違いもあるが、走らせると、さらにはっきりとした違いが出た。比較した2台は、どちらも1.5リッターエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド車。気になる燃費性能は2台共にJC08モード燃費27.2km/lと互角。システムは異なっており、シエンタは、プリウスなどにも使用するリダクション機構付きTHSU。システム全体の最高出力は73kW(100馬力)だ。いっぽう、フリードはモーター内蔵の7速DCTを使ったスポーツハイブリッドi-DCD。こちらは81kW(110馬力)のエンジンと、22kW(29.5馬力)の組み合わせだから、スペックは上になる。しかし、パワーはどちらも必要十分以上あって、さほどパワー感の違いは感じられなかった。

シエンタは、ガソリンエンジンとハイブリッドの2種類のパワートレインを用意。試乗車はハイブリッドのTHSUで、システム全体で73kWのパワーがある

フリードもパワートレインはガソリンエンジンとハイブリッドの2種類。試乗車はハイブリッドのスポーツハイブリッドi-DCDで、出力は81kW+22kW

しかし、走行フィールは相当に異なる。シエンタは、ゆったりとアクセルを踏み込めば、時速40〜50kmまでモーターだけでのEV走行が可能だ。いっぽう、フリードは時速10kmを超えたあたりでエンジンが始動する。そのため低速域から街中をゆっくり流すというシーンでの静粛性やスムーズさではシエンタが勝る。足回りのセッティングもシエンタは、低速の街中をターゲットにしているのだろう。路面の段差からの衝撃も上手にいなしていた。

シエンタは低速域でのEV駆動が多く、街乗りに比較的適している。また、低床フロアによる低めのシートポジションのため、セダンやステーションワゴンなど乗用車に近い走行感覚だ

いっぽう、フリードは高速走行で本領を発揮してくれた。乗り心地はフラットでパワー感も十分。なによりも前走車に追従する「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」やステアリング操作のアシストのある「LKAS(車線維持支援システム)」を備えた「ホンダ・センシング」がある。もちろん衝突被害軽減自動ブレーキもついている。安心感が高いだけでなく、疲労度も非常に少ない。高速道路を使った移動が多いならば、間違いなくホンダ・センシング付きのフリードをおすすめしたい。

フリードにオプションで用意される運転支援システム「ホンダ・センシング」は、高速道路走行で特に効果的。運転時の疲労も抑えられるので、目的地でレジャーを楽しむ余裕も増える

ちなみにシエンタにも先進運転支援が備わっている。こちらは「トヨタ・セーフティセンスC」。衝突被害軽減自動ブレーキと「LDA(レーン・デパーチャー・アラート)」、それにオートマチックハイビーム機能が備わる。

以上、車格や内容を見ると、ほとんど差のない2台であるが、実際に乗り比べてみるとそのキャラクターは相当に異なっていた。ポップなデザインと、低速域でのスムーズで快適な乗り心地が魅力のシエンタ。オーソドックスなデザインながら実用性を重視したインテリアと、高速走行に便利な機能を備えるフリード。燃費性能や室内の広々感は互角。荷物や人を数多く載せて運ぶクルマとしての実力は、どちらも十分に高い。なお、シエンタの価格は168万円〜、フリードの価格は188万円〜と、こちらもほぼ違いはない。今回の比較試乗で明らかになった両車の個性の違いを、クルマ選びの参考として活用してもらいたい。

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
価格.comマガジン「動画」まとめページ
ページトップへ戻る