バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
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ホンダ「モンキー」に思いを馳せ、最終モデル「モンキー・50周年スペシャル」でラストラン

初期型の登場から50周年という節目の年に生産終了が発表された、ホンダ「モンキー」。50ccエンジン搭載のミニバイクの代名詞的な存在であるモンキーの長い歴史に終止符が打たれることは非常に残念ではあるが、優秀の美を飾るべく発売される特別仕様の最終モデル「モンキー・50周年スペシャル」は、半世紀の歴史に幕を下ろすのにふさわしい完成度となっている。シルバーに輝くデザインは乗らずに飾っておきたいほどだが、このたび、筆者はこの記念モデルに試乗する機会を得た。歴代のモンキーを思い返しながら、モンキー・50周年スペシャルの乗り心地をたっぷり味わってみる。

「モンキー・50周年スペシャル」は限定500台。受注受付期間は2017年7月21日から2017年8月21日までで、限定台数を上回る受注があった場合は抽選となる

遊園地の遊具から始まったモンキーのルーツを振り返る

モンキー・50周年スペシャルのことを語る前に、モンキーシリーズの歴史を振り返りたい。モンキーのルーツとなったモデルは、当時、ホンダが運営していたモータースポーツをテーマとした遊園地「多摩テック」の遊具として開発された「Z100」。小さなタイヤにサスペンションを持たないリジッド構造、そして4ストロークの小排気量エンジンという、園内で乗るレジャーバイク的なフォーマットだ。Z100はのちに「CZ100」へと進化し、海外へ輸出販売される。そのCZ100が好評だったことを受け、国内で1967年に発売された「Z50M」が、モンキーシリーズの初期型だ。

1961年に開催された日本自動車ショーに出展された「Z100」は、その後のモンキーシリーズの源流となった

1961年に開催された日本自動車ショーに出展された「Z100」は、その後のモンキーシリーズの源流となった

Z100をベースに輸出モデルとしてリリースされたのが1963年に発表された「CZ100」

Z100をベースに輸出モデルとしてリリースされたのが1963年に発表された「CZ100」

1967年に国内で販売された「Z50M」が、モンキーの初代モデルとなる。タータンチェックのシートなど、今見てもグッとくるデザインで、発売50周年を記念したアニバーサリーモデルでは初代のカラーリングが踏襲された

限定や特別仕様ではないモデルとしては、2016年に発売された「JBH-AB27」が最後となる

限定や特別仕様ではないモデルとしては、2016年に発売された「JBH-AB27」が最後となる

初代モデルZ50Mを見ると、2016年に発売されたモンキーよりも「かわいい」という印象が強いかもしれない。カラーリングやタンクの小ささによる部分もあるが、現行モデルとの大きな違いはタイヤ径が5インチである点と、リアがサスペンションを搭載しないリジッド構造であることだろう。その後、1969年に登場した「Z50A」でタイヤ径が8インチにアップし、乗り心地と走破性が向上。さらに、1974年に誕生した「Z50J」からはリアサスペンションも装備され、より快適性が高まっていった。レジャーバイクという位置付けはZ100の頃から変わらないものの、公道走行を前提に、より気持ちよく移動できるように進化している。

見るだけでも楽しい! バリエーションモデルの豊かさ

モンキーは、限定モデルや派生モデルが数多く誕生していることも魅力のひとつ。見ているだけでもワクワクする代表的な歴代モデルを、いくつか見ていこう。まずは、1978年に登場した姉妹モデル「ゴリラ」。基本的な構造はモンキーと同一ながら、タンク容量を大きくしたことでより長距離のツーリングが楽しめる。

タンクが大きくなったことで、外観の迫力も増した「ゴリラ」

タンクが大きくなったことで、外観の迫力も増した「ゴリラ」

1980年代〜90年代前半の“バイクブーム”の頃になると、限定モデルやバリエーションモデルはさらに増加。1984年にはタンクやフェンダー、マフラーガードなどのパーツにゴールドメッキを施した「ゴールドモンキー」がリリースされた。今回の「モンキー・50周年スペシャル」もメッキの外装が目を引くが、こうしたメッキ仕様車はモンキーの歴史の中で何度か登場している。

あらゆるものがゴールドに輝く「ゴールドモンキー」は1984年に発売。好評だったことから、1996年にも同モデルがリリースされた

1987年には当時のレーサーレプリカブームの影響を受け、レーシングマシンのようなツインチューブフレームを採用した「モンキーR」が登場。ハンドル位置が低くなり、レーシーなライディングポジションとなっている。アップタイプのサイレンサーはベースとなったモンキーの構造を受け継いでいる部分だが、2000年代にはこの位置にマフラーを持ってくるのがスポーツバイクのトレンドとなり、結果的に流行を先取りしていたように見えるのも面白い。

「モンキーR」は当時のレーシングマシンのようなツインチューブフレームだが、実はアルミ製ではなく鉄製なため、重量はかなりあった

レーサーレプリカ同様に人気の高かった、バハ・カリフォルニア半島で行われるオフロードレースを走るバイクのスタイルを模した「モンキー・バハ」が、1991年に誕生。このレースは夜間も走り続けるため、参戦車両の多くに2つの大きなヘッドライトが装着されており、モンキー・バハにもその流れを取り込んだデュアルヘッドライトが装備された。

2つの丸目がかわいい印象を与えたのか、意外な人気モデルとなり2001年まで生産された

2つの丸目がかわいい印象を与えたのか、意外な人気モデルとなり2001年まで生産された

このようなモデルのバリエーションだけでなく、モンキーには社外品を含めたカスタムパーツが非常に多いことも特徴だ。フレームやエンジンパーツなど多岐にわたるパーツが発売されており、パーツを購入して組み立てれば1台のモンキーが完成するといわれるほど数多くのカスタムパーツが存在する。これだけ多くのカスタムパーツが揃うモデルは世界的に見ても、モンキーだけだろう。カスタマイズにハマる人の中には100万円以上をつぎ込むような人もめずらしくない。こんな小さなバイクに、大の大人が多額な投入をするほどハマっていく。それだけの魅力をモンキーは持っているということであり、日本のバイク文化を語るうえでも欠かせない存在であったといえる。

メッキのタンクやパーツを多用した有終の美を飾る最終モデル

モンキーの歴史を簡単に振り返ったところで、いよいよ「モンキー・50周年スペシャル」に目を向けていこう。モンキー・50周年スペシャルは、2016年に発売された「JBH-AB27」と基本的な構造は同じ。外観がクロームメッキで仕上げられているのが特徴だ。前後フェンダーはスチール製とされており、メッキがさらに映えるようになっている。また、元はレジャーバイクとして作られたマシンだけに、舗装路だけでなく未舗装路も想定した作りとなっているのもポイント。タイヤがブロックタイプとなっているのは、その証拠だ。ブレーキは前後ともドラムでサスペンションも最新スペックのものと比べるとシンプルな構成だが、出力の大きくないエンジンと軽量コンパクトな車体とのバランスを考えると、これくらいが最適なのだろう。

サイズは1,365(全長)×600(全幅)×850(全高)mmながら、存在感はバツグン!

空が映り込むほど、くもりのない美しい仕上げがなされたクロームメッキのタンク

空が映り込むほど、くもりのない美しい仕上げがなされたクロームメッキのタンク

フェンダーやライトケース、メーターなどもタンクに見劣りしない輝きを放つ

フェンダーやライトケース、メーターなどもタンクに見劣りしない輝きを放つ

存在感のあるマフラーガードも、タンクなどと同様に仕上げられている

存在感のあるマフラーガードも、タンクなどと同様に仕上げられている

細かい部分だが、リアキャリアも質感の高いメッキ仕上げ

細かい部分だが、リアキャリアも質感の高いメッキ仕上げ

左側のサイドカバーには、50周年を記念するエンブレムが施されている

左側のサイドカバーには、50周年を記念するエンブレムが施されている

タンクの上部にも50周年記念のエンブレムが誇らしげに輝く

タンクの上部にも50周年記念のエンブレムが誇らしげに輝く

シートもイメージを合わせ、モノトーンのチェック柄とされた。座り心地も腰があって良好だ

シートもイメージを合わせ、モノトーンのチェック柄とされた。座り心地も腰があって良好だ

フロントタイヤには、8インチのブロックタイプを装着。メッキの車体を引き立てるように、ホイールは黒で塗装されている

リアタイヤもフロントタイヤ同様のサイズとブラック化されたホイールを搭載し、足元が引き締まったデザインとなっている。サスペンションは高性能なものではないが、エアボリュームのあるタイヤとクッション性の高いシートのおかげで路面の凹凸は気になることはない

コックピット周りも質感の高いルックス。ハンドルは折り畳めるので、コンパクトに車載することができる

コックピット周りも質感の高いルックス。ハンドルは折り畳めるので、コンパクトに車載することができる

キーにも50周年の記念ロゴが入れられ、所有欲がくすぐられる

キーにも50周年の記念ロゴが入れられ、所有欲がくすぐられる

マシンの性能に大きく影響するエンジンについては、実はこの50年間大きく変わっていない。モンキーシリーズには、横型と呼ばれる、シリンダーが前方に向かって伸びるレイアウトの空冷4ストロークエンジンが搭載されている。同社の「スーパーカブ」に採用されるエンジンと基本的な構造は共通で、50年の間に細かいブラッシュアップは繰り返されているものの、基本構造はほぼ同じ。これだけ長い間、使われ続けたエンジンは世界的にもめずらしい。それでいて、現代の目で見ても燃費や耐久性などは高いレベルであることを考えると、50年以上前に開発された際、どれだけ革新的なエンジンであったのかが想像できる。ただ、2009年のモデルチェンジにおいて排ガス規制に対応するため、燃料噴射装置が機械式のキャブレターから電子制御式「PGM-FI」に変更された。モンキー・50周年スペシャルの最高出力は2.5kW(3.4PS)/8500rpmで、最大トルクは3.4Nm/5000rpm。初期モデル(2.5PS)よりも出力は向上しているものの、排ガス規制が厳しくなる前に存在した4.5PSを発揮するモデルと比べるとスペック的には劣っている印象となるが、こればかりは仕方がない。

エンジンの基本的な構造は同一だが、燃料供給が電子化された最新スペックのものを搭載

エンジンの基本的な構造は同一だが、燃料供給が電子化された最新スペックのものを搭載

街中をライディング! 電子制御で走行性が劇的にアップ!?

正直なところ、“モンキーの最終モデルである”ことが大きな話題だったため、走行性については特別な期待は持っていなかった。筆者は過去に何台かのモンキーに試乗してきたが、ノーマル車としては非力さが目立ち、幹線道路などでは交通の流れに乗るのも大変だったという印象が強い。ただ、筆者がライディングしたモンキーは燃料供給がキャブレターだった時代のもの。電子制御式「PGM-FI」になったモンキーに乗るのは、これが初となる。燃料噴射装置の変更で、どれほど走行性が変わるのか楽しみだ。

175cmの筆者がまたがると、このような感じになる。レジャー施設の遊具に乗っているかのようだ

175cmの筆者がまたがると、このような感じになる。レジャー施設の遊具に乗っているかのようだ

踏み心地の軽いキックアームを下ろすと、いとも簡単にエンジンが始動。この辺りは確実に電子制御化の恩恵である。セルスターターは装備していないが、これだけ始動性がよければ必要ないと思えるほどだ。

エンジンスタートはキック式だが、キックペダルを踏み降ろせばほぼ確実にエンジンがかかる

エンジンスタートはキック式だが、キックペダルを踏み降ろせばほぼ確実にエンジンがかかる

電子制御化のメリットは、走り出してからも感じられる。出だしのトルクが力強く、加速が鋭い。過去、キャブレターモデルに乗った時に感じた非力さがまったくなく、街中ではそのまま交通の流れに乗ることができる。数値上の馬力はキャブレターモデルより劣っているが、アクセルを開け始めたところのトルクが太くなっているため、体感的には速くなっているような感覚を味わえた。こうした日常での使い勝手が向上している点は、50年の歴史による熟成の結果だろう。あまり期待をしていなかった分、これは嬉しい驚きだった。もちろん、4ストロークの50ccエンジンなので交通の流れをリードするような速さはないが、自分が操れるだけのパワーをフルに引き出して走るのは単純に楽しい。街中の移動でさえパワーを使い切る面白さが得られ、なおかつ流れに遅れることがないことに感激した。

速いとはいえないが、軽い車体を思い通りに加速させてくれるのは気持いい

速いとはいえないが、軽い車体を思い通りに加速させてくれるのは気持いい

街中だけでなく、田舎道も走行してみた。その際、少しだけ未舗装路を走ることができたのだが、小さいながらも幅広のブロックタイヤを装着しているため、グリップは良好。低速のトルクを生かしてトコトコと走っていけるのだ。ちょっとした登りもものともしないので、散歩ならぬ散走感覚でライディングを楽しめる。レジャーバイクをルーツとするモンキーの底力を感じることができた。

試乗を終えて

今回、モンキーシリーズの歴史を振り返るためにいくつかのモデルを紹介したが、モンキーに乗ったことはなくても、「友達が乗っていた」とか「近所のお兄さんが持っていた」というように、思い出の中にモンキーが存在する人は多いのではないだろうか。かくいう筆者も、そのひとり。所有したことはないものの、モンキーにハマっている友人・知人は多かった。そんなモンキーの最終モデルともなればいろいろな思いが駆け巡り、モンキー・50周年スペシャルに乗っているというだけで、なつかしさや感激、満足感などさまざまな感情がこみ上げてくる。40万円(税別)という“モンキーらしくない”価格だが、モンキーファンなら手元に置いておくだけでも優越感を得られるだろう。

ただ、実際に走ってみると、コレクターズ・アイテムとして飾っておくだけではもったいないと思えてならない。特に燃料噴射装置が電子制御化されたことで、始動性、走行性は劇的に向上しており、中型・大型バイクのような速さやコーナリングで味わえる楽しさはないものの、街中を走る、未舗装の道を乗りこなしてみるといったことだけでワクワクできる。そんな、“ちょっとしたことが楽しい”バイクはなかなかない。

モンキー・50周年スペシャルは500台の限定販売だが、もし機会があるなら電子制御式「PGM-FI」が採用されたモンキーに触れてみてほしい。免許(自動車の普通免許でも試乗可能)があるのにモンキーに乗ったことがないなんてもったいない! と1度乗った人なら思ってしまうほど、実によくできた乗りモノだ。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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