“弾丸”試乗レポート
ホンダセンシング搭載と内外のデザイン変更で、熟成の進んだ定番コンパクト

ホンダ 新型フィット 試乗&インタビュー/フロントフェイス刷新で個性を強化

2013年にデビューした現行型の第3世代・ホンダ「フィット」がマイナーチェンジを実施。2017年6月30日より販売が開始されている。では、その新しいフィットは、どんな狙いで、どんなところが変更されたのか? 開発者インタビューと試乗インプレッションを通じて、モータージャーナリストの鈴木ケンイチ氏がレポートする。

今回のフィットのマイナーチェンジのポイントは、内外のデザインや走りの質感アップ、そして運転支援システムの搭載となる

新型フィットで個性を強めたデザイン、運転支援機能の搭載、そして走りの熟成

マイナーチェンジを行ったフィットの開発担当者に話をうかがうことができたので、以下インタビュー形式で紹介しよう。

中村芳則氏 株式会社 本田技術研究所 四輪R&Dセンター 第10技術開発室 技術企画ブロック 主任研究員車体設計の責任者。2013年のフルモデルチェンジのときからフィットに関わっている

鈴木:今回のフィットはデビューから4年目のマイナーチェンジになりますが、その狙いはどのようなものでしょうか?

中村:“より個性を強化する”という内容のフェイスリフトを実施しています。もともとひとつの顔だったのを2つにしており、さらにテイスト付けを「S」と「RS」で分けています。形としては2つのデザインで、個性としては3つ。つまり、今回のマイナーチェンジは、より個性強化を行ったというのが特徴です。

こちらは標準グレードのバンパー。ヘッドライトとのつながりが重視されより洗練された印象だ

こちらは標準グレードのバンパー。ヘッドライトとのつながりが重視されより洗練された印象だ

「S」と「RS」専用のフロントバンパー。デザインがより立体的になっているほか、フォグランプが円形になっている点が標準グレードと異なる点だ

鈴木:素の顔があって、「S」の顔が加わったと。それに「RS」が「S」と若干違うということですね。ちなみに、クロスオーバー風にするオプションも用意されていましたよね。

中村:はい、ホンダアクセスで用意しました。

鈴木:クロスオーバー風は、けっこう大胆でびっくりしました。ただ、基本はキープコンセプト。つまり、本質は変わらなくて、そこに個性の演出を加えたということですね。それとホンダセンシングの搭載がトピックですね。でも、ホンダセンシングの搭載はフィットというよりも、ホンダ全体の流れとも言えますが。

純正アクセサリーを手がける「ホンダアクセス」では、クロスオーバーテイストのパーツセット「クロススタイルパッケージ」が用意されている

中村:ホンダセンシングの採用は、確かにホンダの戦略にそっています。けれども、セッティングの部分を進化させているので、内容は、これまでとちょっと違います。

鈴木:ホンダセンシングの進化というのは具体的には何になるのですか?

中村:たとえばACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)で、時速100kmでセットしたとします。そのときに、前を時速80kmで走っていた別のクルマに追いつく。こうしたときに、今までは、ブレーキが急すぎると感じる方もいらっしゃいました。そこで、そのあたりのセッティングを見直して、自然なフィーリングにしています。また、前のクルマがいなくなったら、なかなか加速しないこともありましたが、そこも改めて、人の感覚にあうようなセッティングに変えました。

従来型では搭載されていなかった運転支援システム「ホンダセンシング」を搭載。他車種に搭載されているものとはセッティングが改良されている

鈴木:過去のフィットにホンダセンシングはまるで乗っていませんでしたよね? 何に対して、進化というのですか?

中村:すでに採用している「ヴェゼル」とか「ジェイド」です。そこからの進化です。

鈴木:確かにACCも、こなれた感じがしました。

中村:そのために北海道の鷹栖のテストコースで1週間かけて確認しました。もともとのセッティングは栃木でやりましたけれど、栃木のコースは混んでいるので。前のクルマとの車間を詰めるとか、最後の確認を鷹栖でじっくりやりました。発表前に公道も走るんですけれど、サービスとか工場部門の、普段はあまり評価をしない人たちにも乗ってもらっています。

鈴木:なるほど。それ以外の改良はどんな部分ですか?

中村:車体領域でステアリングフィールや乗り心地の改善などを、やってきました。ハイブリッドでいうとブレーキのペダルの機構を変えています。慣れがなくても、最初から扱いやすいようなブレーキフィーリングにしています。マイナーチェンジとしては、かなり手を入れています。

ステアリングフィールや乗り心地にも手が加えられている。また、ハイブリッド版ではブレーキペダルの機構も変更された

鈴木:細かい部分ですね。

中村:スペック的に大きく変わっているところはないのですけれど、普通に乗ってわかっていただけるような部分です。乗り心地でも、街中の細かい振動とか、少しひょこひょこと感じる部分をもっとフラットにして、もっと気持ちよく走っていただけるようにしています。ステアリングも、スポーティーというよりも、普通に切って、切り始めがすっと動く、気持ちよい動きを目指しています。普通の人が運転してわかるような、ステアリング、乗り心地、ブレーキフィールといったシャシー領域のすべてにおいて、改良してきています。乗っていただいて、満足していただけるような、次もホンダのクルマを買うと思っていただけるような満足度を高めるような改良ですね。

普通の人が運転してわかるように、街中での挙動や乗り心地が改善されている

普通の人が運転してわかるように、街中での挙動や乗り心地が改善されている

鈴木:つまり、デザイン、安全、シャシーの3つを改良したと……。

中村:インテリアの色調も変えています。また、ナビも中身を、アップルの「CarPlay」や「Android Auto」に対応するものに変更しています。それと静粛性の向上です。フロアの上にアスファルトシートを全グレードに敷いています。これが一番、音に効くんですね。その次に効くのがダッシュボードに貼るインシュレーターですけれど、これは1.5リッターとハイブリッドに入れました。ハイブリッドの「S」には、あらゆるものを全部入れていて、ダウンサイザーの方でも、満足できるようにしています。

インテリアのカラーを変更したり、遮音のためのアスファルトシートを全グレードに採用するなど、内部の質感が高められている

鈴木:実直に積み上げてきたという感じですね。

中村:新しいエンジンなどなくて、熟成させてきたという感じですね。もともと、フィットは外観は先進イメージで、グリルも樹脂のミラー塗装など、ちょっと変わった感じでした。それを今回のマイナーチェンジでは、どちらかというと質感方向にやっています。クルマの機能の部分を見直して、効率の部分も見直して、確実な品質のものとしてきました。質感を表現するようなデザインにしています。

フロントグリルに収まるエンブレムもより立体的になり質感が高められたものに改められている

フロントグリルに収まるエンブレムもより立体的になり質感が高められたものに改められている

鈴木:最後に、一番、見てもらいたいところや気づいてほしいところは?

中村:もともとのフィットの持っているよさがあります。あまり声高に言わないので、忘れられがちなのですが……。それは、パッケージングのよさです。非常に室内が広くて、シートアレンジもいろいろできます。それなのにコンパクトで扱いやすい。そういうよさがベースとしてあるんですね。それに対して、今回のマイナーチェンジで乗り心地とかステアリングなどで、自然に快適に乗れるというところを熟成させてきたというわけです。

燃料タンクを前席の下に配置する「センタータンクレイアウト」は健在。室内空間の広さとシートアレンジの多彩さを決める基礎技術だ

鈴木:なるほど。パッケージングという基本のよさは、そのままに、さらに快適性を高めたというのが、今回のマイナーチェンジであったのですね。ありがとうございます。

室内が広くシートアレンジも豊富というパッケージングのよさは、初代から受け継がれる美点だ

室内が広くシートアレンジも豊富というパッケージングのよさは、初代から受け継がれる美点だ

じっくりと磨き続け、育てあげられた「フィット」

インタビューでもあったが、今回のマイナーチェンジで大きく変わったのは2点。デザインと運転支援システムである「ホンダセンシング」の採用だ。そして、インテリアの質感が高められ、走りの質が高められている。

デザインは、上級グレードである「S」と「RS」に専用バンパーが用意された。フロントバンパーが若干前に長く、フォグランプが丸形なのが特徴だ。また「S」グレードはバンパーの一番下の部分がガンメタリックとなるが、「RS」はボディ同色という違いがある。ちなみに、パワートレインは、1.3リッター・ガソリン(5速MTとCVT)、1.5リッター・ガソリン(CVT、6速MT)、1.5リッター・ハイブリッド(7速DCT)の3種。「RS」は、1.5リッターモデルに設定されており、「S」は1.3リッターとハイブリッドにそれぞれ存在する。

新たに採用された運転支援システム「ホンダセンシング」は、ミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせたもの。「車両や歩行者を認知する衝突被害軽減自動ブレーキ」「アクセルとブレーキの踏み間違いなどで飛び出さない、誤発進抑制機能」「路側帯の歩行者を認識して衝突を避ける歩行者事故低減ステアリング」「ステアリング操作に介入する路外逸脱抑制機能(時速60〜100km)」「前走車に追従するACC(約時速30〜100q)」「車線中央を走行するのをアシストするLKAS(車線維持支援システム)(時速約65〜100km)」「先行車発進お知らせ機能」「制限速度などの標識をディスプレイに表示する標識認識機能」の8つの機能が備わっている。歩行者を認識する自動ブレーキとACCだけでなく、ステアリングへのアシストまであるのはコンパクトカークラスとしては嬉しいところだろう。

従来型では設定のなかった運転支援システム「ホンダセンシング」。マイナーチェンジモデルでは8個の機能を搭載する

試乗では、1.3リッターのガソリンモデルとハイブリッドの「S」を試した。まずインテリアであるが、特に「S」の質感の高さは、インタビューで聞いたとおりに、確かになかなかのものであった。また、走りの質感も、ずいぶんと高められている。足がしなやかに動き、路面からの嫌な突き上げを上手にいなす。前後のピッチングも抑えられており、ひとクラス上のようなフラット感がある。これはハイブリッドの「S」だけでなく、1.3リッターのガソリンモデルでも同じだ。また静粛性も悪くはない。ハイブリッドの「S」のほうがより静かだが、1.3リッターでも不満のないレベル。個人的にはコストパフォーマンスにすぐれる1.3リッターモデルのほうが印象はよかった。

インテリアの質感向上は目ざましい。大型車からの乗り換えユーザーでも違和感なくすぐになじめそうだ

インテリアの質感向上は目ざましい。大型車からの乗り換えユーザーでも違和感なくすぐになじめそうだ

ガソリンエンジンとハイブリッドの両方を試乗したが、1.3リッターガソリンモデルでも、車体価格の割に静粛性も高く、満足度が高かった

試乗を振り返ってみれば、新しくなったフィットは、地味ではあるが、確かなブラッシュアップを見ることができた。ホンダには「新しいことは得意だが、いっぽうで、古いものを守り育てるのは苦手」というイメージを持っていたが、それもだんだんと変わってきたように思う。じっくりと磨き続け、育てあげた「フィット」が、その変化の証明なのではないだろうか。

今回マイナーチェンジを受けた新しいフィットは、地味ではあるが、着実な進化をとげ、全体の質感が高められた印象だ

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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