“弾丸”試乗レポート
3リッター級のパワーと、リッター25kmの燃費を両立

ホンダ 新型ステップワゴン 試乗記/追加のハイブリッドモデルは静か、速い、そして低燃費!

ホンダの「ステップワゴン」がマイナーチェンジを実施。2017年9月29日より発売開始となった。マイナーチェンジの内容はどのようなものなのか? その実力は? モータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏がレポートする。

先ごろ行われたマイナーチェンジで、ハイブリッド車の追加や、運転支援技術「ホンダセンシング」も、全車種に搭載された「ステップワゴン」

ダウンサイジング過給エンジンと、工夫をこらしたドア&シートを採用した5代目のステップワゴン

今回、マイナーチェンジを実施したホンダのステップワゴンは、2015年より発売されている第5世代だ。特徴は、ホンダ初となる直噴1.5リッターVTECターボエンジンの採用と、横開きするサブドアを備えた「わくわくゲート」、床下に収納可能な3列目の「マジックシート」というもの。また、衝突被害軽減自動ブレーキを含む運転支援システム「ホンダセンシング」もオプションで用意されていた。

1.5リッターのターボエンジンは、いわゆるダウンサイジング過給エンジンであり、小排気量ならではの燃費のよさと、常用域では2.4リッタークラスのトルクを両立。実用性の高さとJC08モード17.0km/lのすぐれた燃費性能とを両立する。また、半分だけ横開きできる「わくわくゲート」というリヤゲートと、3列目を広く使える「マジックシート」は、ミニバンらしい使い勝手のよさを提供してくれる。ラインアップには、ノーブルなデザインのベースモデルと、個性の強いスパーダの2つを用意。装備類を強化したスパーダが上級グレードというスタイルで販売されていた。

そんなステップワゴンの属する2リッターのミニバンクラスは、国内ミニバン市場全体の半分を占め、トヨタの「ノア」および「ヴォクシー」や、日産「セレナ」というライバルとの激戦区となっている。実際のところ、そんな中でステップワゴンは、販売に苦戦しており、発売2年目となる2017年度は、当初に掲げた目標の月販5000台に届かないという状況にある。今回のマイナーチェンジでは、その販売のテコ入れが目標と言えるだろう。そのため、ただの小変更では済まない、大きな変更があった。それがハイブリッドモデルの追加だ。

ハッチゲートに横開きするサブドア「わくわくゲート」を備えているのが大きな特徴。マイナーチェンジでももちろん継続されている

床下に収納可能な3列目シート「マジックシート」もステップワゴンの特徴。収納性とシートレイアウトの幅を広げてくれる

ステップワゴンスパーダにハイブリッドモデルが追加、デザインはより力強く

今回のステップワゴンのマイナーチェンジの内容は、スパーダのデザイン変更とハイブリッドモデルの追加、そして全モデルに、運転支援技術「ホンダセンシング」の標準搭載したのが中心。スパーダに偏った内容であるが、それも仕方ない。なぜなら、現状のステップワゴンの販売では、スパーダが8割を占めるからだ。ちなみに、ユーザーの約7割が30〜40代で、約6割が子育て期だという。ステップワゴンの人気グレードの魅力をさらに高めようというのが、今回のマイナーチェンジの狙いであったのだ。
スパーダは、よりグリルが垂直に大きくなり、ヘッドライトにはLEDを採用。力強さをましたデザインとなっている。また、リヤゲートの上部がスポイラー風になり、スポーティー度も高めている。

販売の8割を占める「スパーダ」は、より力強さが強調されたデザインに変更されている

販売の8割を占める「スパーダ」は、より力強さが強調されたデザインに変更されている

バンパーの形状が変更されたフロントデザインは傾斜が弱まり、よりボリューム感を強調したものになっている

バンパーの形状が変更されたフロントデザインは傾斜が弱まり、よりボリューム感を強調したものになっている

こちらはベースモデルの「ステップワゴン」。エントリーグレードの「B」グレードを除いて、ヘッドライトがLED化された

ハイブリッドシステムは、これまで「アコード」や「オデッセイ」にも搭載されている「i-MMD」だ。このシステムの特徴は、“なるべく多くのシーンをモーターで走ろう”というもの。走行用と発電用の2つのモーターがあり、走行用モーターは最高出力184馬力もある。エンジンの駆動力をタイヤに伝える機構も備えているが、エンジンは発電に使うのを基本とし、高速域や高い出力を求められるときだけ、クラッチが働いてエンジンの力をタイヤに伝えるものだ。結果的にモーター走行の領域が広がるため、騒音や振動が少なくなるのがメリットである。今回のマイナーチェンジで追加された「スパーダハイブリッド」は、JC08モード燃費で25km/lを達成。また新しい表示モードであるWLTCでは、総合値が20km/l、市街地モード18.8q/l、郊外モード21.7q/l、高速道路モード19.5km/lに。ハイブリッドモデルならではのすぐれた燃費性能を身につけた。

また、標準装備化されたホンダセンシングも内容が進化していた。新たに走行車線のすぐ横を歩く歩行者への衝突を防ぐ「歩行者事故低減ステアリング」を追加。基本機能は「歩行者事故低減ステアリング」をはじめ、「衝突軽減自動ブレーキ」「誤発進抑制機能」「路外逸脱抑制機能」「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」「車線維持支援システム」「先行車発進お知らせ機能」「標識認識機能」の8つとなった。また、ハイブリッド車のACCは、作動範囲を0q/hにまで拡大した渋滞追従機能が付与されている。

さらにオプションとして、ボディサイドの床下に足を差し入れると自動でサイドドアが開く「ハンズフリースライドドア」と、車両後方をモニターで表示できる「アドバンスルームミラー」が新たに用意された。

ハイブリッド車のACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は、作動範囲を0q/hにまで拡大した渋滞追従機能が追加された

ボディサイドの床下に足を差し入れると自動でサイドドアが開く「ハンズフリースライドドア」、両手がふさがっているときに便利だ

車両後方をモニターで表示できる「アドバンスルームミラー」も搭載。ヘッドレストや荷物に視界をじゃまされずに後方を確認できる

新型ステップワゴンの静かでスムーズな走りは、まるで3リッターV6エンジン搭載車のよう

試乗は、追加されたハイブリッド車と1.5リッターターボ車の2台。この2台には予想以上の大きな違いがあった。まず、圧倒的なまでにハイブリッド車の静粛性がよい。もともとエンジンが停止している状況の多い低速域だけでなく、エンジン稼働が増える中速度から高速域までの全域で、ハイブリッド車の静粛性は高かった。音だけでなく、振動も相当に抑え込まれている。ちなみに試乗は、勾配の急な山坂道であったこともあり、意外とEVモードで走れる時間は短い。パワーがより多く求められるため、すぐにエンジンが駆動するモードに入ってしまったのだ。しかし、それでも騒音と振動はごくわずか。1ランク上の快適性が保たれていたのだ。

ハイブリッド車は、システム全体で215馬力の出力を持ち、心地よい加速の伸びをもたらしてくれる

ハイブリッド車は、システム全体で215馬力の出力を持ち、心地よい加速の伸びをもたらしてくれる

力強さという点では、1.5リッターターボ車も悪くない。アクセルをわずかに踏み込んだ直後から、ぐっと力強いトルク感を得られる。その後もトルク感はフラットで続くため、扱いやすさはある。ただし、高回転域での伸びは感じられない。いっぽう、ハイブリッド車は、低速の力強さはそれほどない。しかし、スルスルと気持ちよく速度が高まる。高回転に向けての伸び感があるのだ。気が付けば意外なまでに速度が高まっている。パワートレインには184馬力の駆動用モーターと145馬力のエンジンがあり、システム合計出力が215馬力もある。トルクはモーターが0〜2000回転で315Nmを発生させる。まるで3リッターV6ガソリンエンジンなみの動力性能。それは速いはずだ。

高回転域の伸びは足りないが、1.5リッターターボ車もトルクバンドが広く扱いやすい

高回転域の伸びは足りないが、1.5リッターターボ車もトルクバンドが広く扱いやすい

直線道路だけでなく、ハイブリッド車はコーナリングでの安定感もまずまず。これはボディやシャシー系の強化が効いているのだろう。1列目シート下に納められている2次電池のリチウムイオン電池は、具体的にはクロスメンバー内にサンドイッチのように入っている。電池を納めるために、メンバーが強化されているのだ。また、ボディへの硬いハイテン鋼材の使用を3%増加。ボディ前後に振動を減衰させるボディダンパーを採用。前輪のナックルも軽量で剛性の高いものに。もちろんサスペンションは専用チューニング。モーターと二次電池を追加したハイブリッド車は、ガソリン車に比べて80〜140kgも重いが、その分、ボディとシャシーにはしっかりと手が入っており、ネガティブさを感じさせないようになっていた。
ちなみにハイブリッド化のために使い勝手がスポイルされていないというのも注目ポイントだ。2次電池は1列目シートの下にあり、ステップワゴンの売りである「わくわくゲート」も「マジックシート」も、そのまま使える。使い勝手のよさは、そのままに走りを磨き上げたのが、ハイブリッド車なのだ。

ハイブリッド車でも、床面はフラットで、わくわくゲートやマジックシートも犠牲になっていない。室内スペースにしわ寄せがないのは大きな美点

マイナーチェンジで追加されたハイブリッド車の走りは、申し分のないものであった。静粛性にすぐれ、十分な速さがあり、コーナーでも安定している。2リッターではなく、その上のクラスの走りが味わえる。最新のホンダセンシングが標準化されたのも嬉しい。走りという意味では、クラストップレベルだろう。“ミニバンだけど、やっぱりシャキッと走ってほしい”と考えている人には、新しいステップワゴンのハイブリッドなら満足度は高いだろう。

ハイブリッド車は、動力性能が高いうえに静かで、ライバルと比較しても個性が際立っている。走りにこだわりたいユーザーでも満足できそうだ

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
価格.comマガジン プレゼントマンデー
ページトップへ戻る