“弾丸”試乗レポート
EVらしい静かさに加え、上質な走りも感じられる

3年ぶりの登場となったEV版ゴルフ、VW「e-Golf」試乗レポート

フォルクスワーゲンのEV(電気自動車)「e-Golf」の納車が2017年末より始まる。EVシフトの旗手の1人であるフォルクスワーゲンが、3年前の国内発売中止から再起をかけて投入するEVの実力は、どのようなものなのだろうか? モータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏がレポートする。

東京モーターショー2017にも展示されていた「ゴルフ」のEVモデル「e-Golf」。EVシフトを表明しているフォルクスワーゲンの意気込みとは?

約3年ぶり、二度目の正直で、ようやく日本へ導入

フォルクスワーゲンのe-Golfが2017年10月19日より受注開始となり、2017年の年末から納車が始まる。フォルクスワーゲンは、2015年のディーゼル排気ガス不正、いわゆる「ディーゼルゲート」の発覚以来、それまで注力していたディーゼルエンジンからEVへ路線を変更。今年の9月には「ロードマップ E」を発表した。2025年までにグループ全体で80を超える電動化車両をリリース。しかも、そのうちの50が純粋なEVであり、世界最大のEVブランドになるのが目標だという。

そうした威勢のいい話にあわせるかのように、日本に導入されるのがe-Golfであり、このモデルが日本ではフォルクスワーゲン・ブランド初のEVとなる。未来の世界一を目指すフォルクスワーゲンEVの実力を知る格好の1台と言えよう。

フォルクスワーゲンのマティアス・ミュラー会長が発表した、2030年までのロードマップ「ロードマップ E」では、車両、インフラ、バッテリーなど総合的なEVへの移行が表明されている

しかし、これには前奏があった。実は2015年初頭にも、フォルクスワーゲンはe-Golfと「e-up!」の2台のEVを日本に導入する予定だったのだ。しかし、日本の急速充電システムへの対応問題などもあり導入は先送りに。約3年の時間を経ての二度目の正直が、今回の日本導入であった。

先代e-Golfとe-up!は、2015年初頭に日本市場に導入される予定だった。2度目の挑戦となるのが、このたび登場する新しいe-Golfだ

最新「ゴルフ」の充実した装備をそのまま継承

今回、日本に導入されるe-Golfは、第7世代の「ゴルフ」をベースとする。第7世代のゴルフは「2013-2014日本カー・オブ・ザ・イヤー」も獲得したように、世界中で評判の高いモデル。これに35.8kWhのリチウムイオン電池と、最高出力100kW(136馬力)/最大トルク290Nmのモーターを搭載。航続距離はJC08モードで301kmを達成している。2015年の日本市場導入予定だった24.2kWh/最高出力85kw(116馬力)/最大トルク270Nm/航続距離215kmと比べると、その性能は大きくアップされている。

最高出力100kW(136馬力)/最大トルク290Nmのモーターを搭載し、前輪を駆動する

最高出力100kW(136馬力)/最大トルク290Nmのモーターを搭載し、前輪を駆動する

容量35.8kWhのリチウムイオン電池を搭載。先日発売された2代目日産「リーフ」の40kWhよりも、容量は1割ほど少なめ

また、ベースとなるゴルフの進化にあわせて、e-Golfにも、渋滞時追従支援などの先進の運転支援システムやコネクテッドサービス、さらにはインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」などの最新HMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)が備えられている。もちろん日本の急速充電システムである「CHAdeMO(チャデモ)」規格に対応。車載充電器は3kW(200V/15A)と6kW(200V/30A)に標準で対応。3kWなら約12時間、6kWなら約6時間でフル充電時間できる。

デザイン面においては、ベースとなるゴルフとの差は最小限度だ。バンパー部に青い線が入っているように、インテリアにも青いステッチを使うなど、さりげない仕上げとなっている。価格は499万円。EV購入での補助金は30万1000円だ。

フォルクスワーゲン純正のインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」は、約9.2インチの大画面。ジェスチャー操作も行える

渋滞時追従支援システム「トラフィックアシスト」は、0〜60km/hの速度域で自動的に加減速を行い、一定の車間距離を保つほか、車線の維持支援も行う

給油口の位置には日本の急速充電システムである「CHAdeMO」規格の充電ポートが備わり、約35分でバッテリー容量の80%まで充電できる

フロントエンブレム内の充電ポートは、200V/15A(3kW)で充電時間約12時間の普通充電と、200V/30A(6kW)の倍速充電に対応している

ベースとなるゴルフとのエクステリアの違いは、グリルとヘッドライトの中に入れられた青い縁どり、専用デザインのアルミホイールくらいのもの

ドイツ車的な硬めのシートも通常のゴルフと変わらない

ドイツ車的な硬めのシートも通常のゴルフと変わらない

EVとしての特性だけでなく、ゴルフ本来の安定した走りが魅力

このように、外見的には普通のゴルフとはほとんど見分けがつかないE-Golfだが、試乗してみれば、やはりEVならではの静粛性の高さが印象的だ。キーンという高周波もほとんど聞こえない。このあたりの作りこみの高さにプレミアムを感じる。スタート時から最大トルクの290Nmが使えるため、加速のレスポンスは非常によい。スペック的には、「ゴルフGTI」には届かないが、1.8リッターターボの「ゴルフ・オールトラック」に近い。よほどの飛ばし屋でない限り、e-Golfの運動性能に不満を持つ人はいないはずだ。
しかし、ただ速いというのではなく、e-Golfの魅力は、その乗り味にある。ステアリングのちょっとねっとりした手ごたえと、4輪がしっかりと路面をホールドする感覚は、非常に安心感が高い。スピードが高まるにつれ、それらの魅力が鮮明になる。こうした部分は、さすがドイツ車だなと思わせるものがあった。

EVらしい静かさはもちろんだが、ステアリングの手ごたえや、4輪がしっかりと路面をホールドすることから生じる安心感のある走行感覚はE-Golfの大きな魅力

減速の回生ブレーキの強さは、シフトノブを左側に倒すことで、自分で調整することができる。通常の「D」から「D1」「D2」「D3」「B」と5段階が選択可能だ。とはいえ、日産のリーフやBMWの「i3」のように回生ブレーキで停止までカバーするわけではない。効き目もライバルと比べるとマイルドなものであった。

高い静粛性やトルクというモーターのもたらす特性は、ある意味、どんなEVも備えているもの。しかし、e-Golfは、そうしたEVの魅力に、ゴルフならではのすぐれた高速走行性能がプラスされていた。EVになっても、ゴルフはゴルフのままであった。

シフトレバーを使って回生ブレーキを積極的にコントロールできる。ただし、日産のリーフやBMWのi3のように、アクセルコントロールだけで停止まではできない

ヒートポンプを備えた省電力暖房システムを搭載し、暖房使用時のバッテリー消耗と走行距離の減少を抑えている

インテリアは通常のゴルフに準じたものだが、シフトレバーやハンドルにEV的なイメージの青のステッチが入れられている

ラゲッジスペースの容量は通常版ゴルフの380リッターに対して、341リッターとやや少なめ

ラゲッジスペースの容量は通常版ゴルフの380リッターに対して、341リッターとやや少なめ

ベースモデルの出来のよさがそのままE-Golfの魅力になっている

現在、日本においてEVを購入しようと考えたとき、その選択肢は、それほど多くない。日産のリーフ、三菱の「i-MiEV」、BMWのi3、テスラの「モデルS」「モデルX」といったところだ。セグメントを考えれば、e-Golfのライバルは、日産・リーフとなることだろう。

e-Golfとリーフを比較すれば、EVとしてのスペックはリーフに軍配が上がる。リーフの最高出力は150馬力/320Nmであり、航続距離は400kmにも達しているからだ。しかし、乗り比べてみると「高級感」や「先進感」、「走行フィーリング」といった感性に訴える部分では、e-Golfが勝っていると言っていいだろう。315〜399万円のリーフに対して499万円〜と、100万円以上高いe-Golfではあるが、乗ってみれば、その価格なりの質感の差を感じることができる。これはベースとなったゴルフの出来のよさがストレートに表れているものと言える。クルマ作りという基本の部分でのフォルクスワーゲンの底力を感じる試乗となった。

EVの美点にプラスして、本来のゴルフの上質な乗り味が味わえるe-Golfは、高級感を堪能できるEVだった

EVの美点にプラスして、本来のゴルフの上質な乗り味が味わえるe-Golfは、高級感を堪能できるEVだった

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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