レビュー
劇的にアップした燃費や走行性能、価格まで徹底レビュー

セレナ e-POWER“速”試乗/Mクラスミニバン燃費No.1!走行性能も格段に向上

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日本国内における日産の受注状況を見ると、2017年の1年間で最も多くの台数を販売したのが、コンパクトカーの「ノート」だ。ノートの2017年の販売台数は約14万台と、首位のトヨタ「プリウス」に続いて2位を記録するなど、販売状況は絶好調と言えるだろう。

「ノート e-POWER」が発売される2016年11月以前は、ライバルであるトヨタ「アクア」やホンダ「フィット」に対して、ノートは販売台数でやや負けていた。だが、ノート e-POWERの登場によって、状況が一変。瞬く間に販売台数が上昇し、コンパクトカーとしてトップの販売台数の座を得るに至った。現在のノートは、e-POWERモデルの販売比率が約70%に達することからも、その人気の高さがうかがえる。

本庄サーキットを走行する日産「セレナ e-POWER」(グレードは「e-POWER ハイウェイスター V」)

本庄サーキットを走行する日産「セレナ e-POWER」(グレードは「e-POWER ハイウェイスター V」)

ノートの販売が好調な理由としてまずあげられるのが、「e-POWER」の搭載だ。e-POWERとは、日産が採用しているハイブリッドシステムのこと。他のハイブリッドシステムと異なるのは、ガソリンエンジンとモーターを切り替えて駆動するe-POWERでは、エンジンは発電のみに使われるということ。そこで貯めた電力でモーターを動かすことによって、駆動力を発生させるため、基本的な走行フィールはEVと同じで、モーター特有の瞬発力のある力強い加速や、良好な燃費などのメリットが生まれる。

日産「セレナ e-POWER」のエンジンルーム

日産「セレナ e-POWER」のエンジンルーム

そして、2018年2月28日、同社で人気の高いミニバン「セレナ」にも、いよいよe-POWERモデルが設定された。この「セレナ e-POWER」に搭載されている発電用エンジンは、ノートe-POWERと同じ1.2L直列3気筒。モーターもノートe-POWERと同タイプだが、動力性能が大幅に高められているのが特徴だ。さらに、駆動用電池についても容量がアップしているなど、さまざまな面においてノートe-POWERと比べて、性能向上が図られている。

セレナ e-POWER のJC08モード燃費は、「26.2km/L」。これまで、セレナの一部グレードに搭載されていた「スマートシンプルハイブリッド」を備えたグレードの燃費が「16.6km/L」であることに比べると、燃費値は比較にならないほど向上した。机上の計算では、燃料代が約36%も節約できることになる。

今回、セレナ e-POWERの正式な発表前に、埼玉県本庄市にある「本庄サーキット」において、試乗する機会が得られた。そこで、注目度の高いセレナ e-POWERの実力を試乗チェックしてみたい。ちなみに、今回試乗したグレードは、セレナ e-POWERの最上級グレードである「e-POWERハイウェイスターV」だ。

日産「セレナe-POWER」のグレードラインアップと価格

e-POWER X:2,968,920円
e-POWER XV:3,128,760円
e-POWER ハイウェイスター:3,178,440円
e-POWER ハイウェイスター V:3,404,160円

ノーマルエンジンを搭載するセレナに比べると、セレナe-POWERの価格は40〜50万円ほど高い。価格差が少し大きいが、セレナe-POWERは発電機と駆動用モーターを別に搭載するため、コストから考えると妥当な価格だろう。

>>「クラス最高の出来栄え」「個人的に大満足なe-POWER」価格.comで日産「セレナ e-POWER」のレビューを見る

日産「セレナe-POWER」の主なスペック
全長×全幅×全高:4,690×1,695×1,865mm(ハイウェイスターは4,770×1,740×1,865mm)
ホイールベース:2,860mm
駆動方式:FF
車重:1,730kg(e-POWER X)/1,750kg(e-POWER XV)/1,740kg(e-POWER ハイウェイスター)/1,760kg(e-POWER ハイウェイスター V)
乗車定員:7名
発電用エンジン:1.2リッター直列3気筒(HR12DE)
最高出力(発電用エンジン):62kW(84ps)/6,000rpm
最大トルク(発電用エンジン):103N・m(10.5kgf・m)/3,200-5,200rpm
モーター型式:EM57
最高出力(モーター):100 kW(136ps)
最大トルク(モーター):320 N・m(32.6kgf・m)
動力用主電池:リチウムイオン電池
トランスミッション:エクストロニックCVT(無段変速機)
燃費(JC08モード):26.2km/L

セレナ e-POWERの運転のしやすさ(取りまわし性/視界)

日産「セレナ e-POWER」のフロントイメージ

日産「セレナ e-POWER」のフロントイメージ

日産「セレナ e-POWER」のフロントグリル

日産「セレナ e-POWER」のフロントグリル

セレナ e-POWERは、セレナと比べてデザインが若干異なる。セレナ e-POWERの外観は、フロントグリルなどにブルーのアクセントが施され、15インチの切削アルミホイールが備わる。

日産「セレナ e-POWER」のリアイメージ

日産「セレナ e-POWER」のリアイメージ

セレナe-POWERのボディサイズについては、セレナと同じだ。エアロパーツを備えたセレナe-POWER ハイウェイスターは、全長が4,770mm、全幅が1,740mmと3ナンバー車になるが、さほど大柄な印象ではない。最小回転半径も5.5mで、小回り性能がすぐれているとまでは言えないが、不満はあまりないだろう。

サイドウィンドウの下端は低めに抑えられているから、側方や後方の視界がよく、背の高いミニバンとしては運転がしやすい部類に入る。

評価:★★★☆☆(3点)
コメント:視線の高いミニバンは通常、左側面の死角が大きいが、セレナe-POWERはミニバンの中では運転がしやすい部類。

セレナ e-POWERの内装(質感/スイッチの操作性とメーターの視認性)

日産「セレナ e-POWER」のインパネ

日産「セレナ e-POWER」のインパネ

日産「セレナ e-POWER」のシフトノブ

日産「セレナ e-POWER」のシフトノブ

セレナe-POWERの内装は、ミドルクラスミニバンの中では上質だ。ATレバーは、ノートe-POWERと同様のシフトパターンを採用している。このシフトパターンはセレナとは操作感覚が異なるが、わかりやすいのでとまどうようなことはないだろう。

日産「セレナ e-POWER」のメーター

日産「セレナ e-POWER」のメーター

メーターは、インパネ最上部の奥まった位置に装着され、e-POWERの作動を示す「パワーメーター」や「エネルギーフローメーター」が備わる。視認性はよいが、メーターパネルが高い位置にあるので、小柄なドライバーは少し圧迫感を感じることがあるかもしれない。

評価:★★★★☆(4点)
コメント:シフトやメーターなどがセレナとはことなるが、操作性や視認性などに違和感はなく、質感も満足できる。

セレナ e-POWERの居住性&荷室(前後席の居住性/荷室の広さと使い勝手)

日産「セレナ e-POWER」のシート

日産「セレナ e-POWER」のシート

セレナのシート配列は、3列すべてが「ベンチタイプ」(乗車定員8名)だが、セレナe-POWERは2列目がセパレートタイプの「キャプテンシート」(乗車定員7名)になっている。

日産「セレナ e-POWER」の2列目シート

日産「セレナ e-POWER」の2列目シート

セレナe-POWERの2列目シート(キャプテンシート)の座り心地は快適だ。このキャプテンシートは、セレナと同様に前後スライドができるほか、左右方向のスライド機能/機構も備わっている。

注意したいのは、2列目シートに座った乗員の足が、1列目シートの下に収まりにくいこと。セレナe-POWERでは、1列目シートの下に駆動用リチウムイオン電池が搭載されているからだ。足元空間が少し狭いものの、それでも大人6名が乗車して窮屈に感じることはないだろう。

日産「セレナ e-POWER」の3列目シート

日産「セレナ e-POWER」の3列目シート

3列目シートのサイズは、ライバル車のトヨタ「ヴォクシー」や、ホンダ「ステップワゴン」よりも大きい。床と座面の間隔も十分なので、快適に座れる。ただし、1列目シートの下に駆動用リチウムイオン電池を搭載したために、1列目シートのセンター部分が持ち上がっており、トレイも備え付けられている。そのため、1列目シートと2列目シート間のウォークスルーはしづらい。

荷室は、通常のセレナと変わらない。3列目シートを左右に跳ね上げて格納すれば、ボックス状の広い荷室となり、自転車などでも積める。

日産「セレナ e-POWER」のデュアルバックドア

日産「セレナ e-POWER」のデュアルバックドア

また、ボディの最後部にはデュアルバックドアが備わり、バックドアの上半分だけを開閉できる。縦列駐車をしてボディ後方の空間が乏しい時でも、荷物の出し入れがしやすい。

評価:★★★★★(5点)
コメント:セレナに比べると2列目シートの足元空間が少し狭まり、1、2列目シート間の移動もしにくいが、多人数乗車時の快適性と荷室の使い勝手はすぐれている。

セレナ e-POWERの走行性能(動力性能/走行安定性)

日産「セレナ e-POWER」の走行イメージ

日産「セレナ e-POWER」の走行イメージ

セレナe-POWERで注目されるのが、動力性能だ。1.2L直列3気筒エンジンと駆動用モーターは、ノートe-POWERと同じものが採用されている。だが、エンジン出力は7%アップ、モーター出力は25%アップと、ノートe-POWERよりも大幅に性能が高められている。

そのため、セレナe-POWERの車重はノートe-POWERを約500kgも上回る1,760kgに達しながら、動力性能に不満は感じない。セレナe-POWERの動力性能は、ガソリンエンジン車では2.5〜3Lクラスに匹敵するだろう。

通常、エンジンは回転数の上昇に伴って駆動力を高めていくが、モーターは瞬発力が高く、反応がすばやい。そのため、セレナ e-POWERでアクセルペダルを踏み増すような操作をした時の加速は、いっそう力強く、かつ滑らかだ。

さらに、アクセルペダルを深く踏み込むと、発電を積極的に行うためにエンジン回転数が高まるが、この時の感覚も自然だ。アクセルペダルを踏み込んだ時のノイズの高まり方などに不自然さがないので、運転していても違和感が生じない。

日産「セレナ e-POWER」の走行イメージ

日産「セレナ e-POWER」の走行イメージ

走行安定性にも注目したい。セレナe-POWERは全高が1,865mmに達し、車重はセレナよりも70kg重い1,760kgに達する。これらは、走行安定性を確保するうえで不利なはずなのだが、実際に試乗するとセレナよりも挙動が安定している。ハンドルを切り込んだ際の、ボディの唐突な傾きが抑えられており、挙動の変化はおだやかだ。

カーブを曲がり始めた後も、旋回軌跡が拡大しにくい。操舵に対する車両の動きも、セレナに比べて正確だ。フロントシートの下に駆動用リチウムイオン電池を搭載したことで、ボディを補強したような効果が得られている。さらに、足まわりのセッティングを入念に行ったことも効いている。

日産「セレナ e-POWER」の走行イメージ

日産「セレナ e-POWER」の走行イメージ

「S」モードや「ECO(エコ)」モードを選ぶと、ノートe-POWERと同様にアクセルペダルを戻した瞬間から回生充電が開始される。駆動用モーターが減速エネルギーを使って積極的に発電するため、効率にすぐれ、しかもアクセルペダルを戻す操作に応じて強めの減速が生じる。従来のクルマで言えば、強いエンジンブレーキが働いている感覚だ。

そのために、アクセルペダルの操作で速度調節がしやすい。アクセル、ブレーキペダルの操作が大幅に減り、アクセルペダルを戻す操作だけで停車状態までカバーできるのは、ノートe-POWERと同様に、このシステムの面白いところだ。

そのほか、ガラスに遮音膜を入れたり、4層カーペットを敷くなどの効果で、エンジンが作動している時のノイズが小さい。特に発進時は、高級ミニバンである「エルグランド」よりも静かだ。

評価:★★★★☆(4点)
コメント:これまでのセレナに比べると、動力性能、加速の滑らかさ、静粛性、操舵に対する正確性、走行安定性など、さまざまな走りの機能がバランスよく高められた。

セレナ e-POWERの乗り心地

日産「セレナ e-POWER」の走行イメージ

日産「セレナ e-POWER」の走行イメージ

セレナe-POWERでは、乗り心地に「重厚感」がある。硬めではあるが、粗さは抑えられており、ミドルクラスミニバンでありながらLクラスミニバンに近い印象を受ける。タイヤサイズは15インチ(195/65R15)で、転がり抵抗を抑えるために指定空気圧は280kPaと高い。こうなると、通常は粗い乗り心地になりがちなのだが、セレナe-POWERの乗り心地はいたってマイルドだ。

評価:★★★★☆(4点)
コメント:高重心のボディ、細いタイヤサイズ、高い指定空気圧など、いずれも乗り心地に不利な要素のはずだが、そのあたりがうまく抑えられている。

セレナ e-POWERの安全&快適装備

日産「セレナ e-POWER」のテールライト

日産「セレナ e-POWER」のテールライト

セレナと同様に、歩行者も検知して緊急自動ブレーキを作動できる「インテリジェントエマージェンシーブレーキ」は、セレナe-POWERの全グレードに標準装備されている。

そのうえで、運転支援技術の「プロパイロット」や「サイド&カーテンエアバッグ」などを「e-POWER XV」と「e-POWER ハイウェイスター V」グレードにオプション設定した。

そしてセレナe-POWERでは、ハイビームとロービームを自動的に切り替える「ハイビームアシスト」、道路標識を検知してディスプレイに表示する機能の拡大(セレナは進入禁止のみだが、セレナe-POWERは一時停止と速度標識も表示)などの改善も図られている。

評価:★★★★☆(4点)
コメント:オプション装着の必要はあるが、安全装備と運転支援の機能は充実している。

セレナ e-POWERの価格の割安感

日産「セレナ e-POWER」走行イメージ

日産「セレナ e-POWER」走行イメージ

セレナe-POWERの価格は、セレナに比べて40〜50万円ほど高い。それでも、エコカー減税の差額まで差し引くと、11万km前後を走れば、燃料代の差額で実質的な価格差を取り戻せるだろう。

セレナ「ハイウェイスターVセレクション」の価格は、293万4,360円。たとえば、前述のグレードを「e-POWERハイウェイスターV」へアップすると、340万4,160円に達するが、セレナ「e-POWER XV」であれば312万8,760円と、およそ19万円の価格差に収まる。

セレナe-POWERを選ぶ代わりに、エアロパーツを装着しないという買い方もありだろう。

評価:★★★★☆(4点)
コメント:セレナとセレナe-POWERの価格差は40万円を超えるが、燃料代の差額で取り戻しやすい。

セレナ e-POWERの総合評価

日産「セレナ e-POWER」ロゴ

日産「セレナ e-POWER」ロゴ

セレナe-POWERでは、燃費の高さのみならず、動力性能や走行安定性が大きく引き上げられている。さらに乗り心地や静粛性といったミニバンとして必要な性能においても向上が図られた。前述のとおり、長く所有することを考えれば、セレナとの価格差は燃料代で取り戻せる。これらのメリットを考えれば、セレナe-POWERは買い得と考えてよいだろう。

これまで、セレナは本格的なハイブリッドモデルなしに、他社の強力なライバルたちと互角の勝負を繰り広げてきた。そこへセレナe-POWERが追加されることで、ライバルたちを一気に引き離す可能性も出てきた。今後のMクラスミニバンの動向に注目したい。

総合評価:★★★★☆(4点)

日産「セレナe-POWER」の採点結果

運転のしやすさ(取りまわし性/視界):★★★☆☆(3点)
内装(質感/スイッチの操作性とメーターの視認性):★★★★☆(4点)
居住性&荷室(前後席の居住性/荷室の使い勝手):★★★★★(5点)
走行性能(動力性能/走行安定性):★★★★☆(4点)
乗り心地:★★★★☆(4点)
安全&快適装備:★★★★☆(4点)
価格:★★★★☆(4点)
総合評価:★★★★☆(4点)

[Photo:松永和浩/日産自動車株式会社]

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渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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