バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
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伝説の名車「Z2」再び!? カワサキ「Z900RS」の圧倒的な乗り味に興奮が止まらない!

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かつての名車「Z1」「Z2」を思わせるスタイリングが大きな話題となった、カワサキ「Z900RS」。かくゆう筆者も、当時Z1/Z2に乗ることはできなかったものの、憧れの気持ちは強く、Z900RSの登場に心が躍ったひとりだ。しかも、Z900RSはスタイルをZ1/Z2に寄せているだけでなく運動性能の評価が非常に高いというのだから興味がわかないわけはない。その乗り味をたっぷり確かめてきた。

歴史的モデル「Z1」「Z2」とは?

2017年の東京モーターショーにおいてZ900RSが日本国内で初お披露目された時、多くの人が期待したのは名車「Z1/Z2」の再来だろう。1972年に欧米向けの輸出モデルとして誕生した「Z1」は、当時としては世界トップレベルの動力性能(903ccの空冷4気筒エンジン搭載)を有しており、欧米でのカワサキブランドの評価を定着させた。その日本国内向けモデルが「Z2」(1973年発売)。排気量は自主規制によって746ccに落とされたものの基本設計はZ1と同じであったことから高い人気を博し、正式名称「750RS」ではなく、型式名称のZ2、あるいは「ゼッツー」と呼ばれ、数々の漫画や小説、映画などにも取り上げられた。このような背景もあり、「Z1/Z2」はバイクに乗らない人でも耳にしたことがあるカワサキの代表的なモデルとなったのだ。

その後、「750RS」は1976年に「Z750Four」に変わり、マイナーチェンジをしながら1977年まで販売された。この間、正式名称は変わってもティアドロップ型のガソリンタンクに代表される、流れるようなラインと型式名称は継承されていたため、Z2の愛称で親しまれ続けたのだが、1978年に登場した「Z750FX」でデザインが直線基調に一変。型式名称も変更されたため、一般にZ2と称されるのは1977年までのモデルとなる。

「750RS」に採用された“火の玉カラー”と呼ばれるタンクのカラーリングは、Z2の代名詞にもなっている

「750RS」に採用された“火の玉カラー”と呼ばれるタンクのカラーリングは、Z2の代名詞にもなっている

タンク形状をはじめとする丸型のパーツが特徴的だったZ1/Z2とは大きく異なる直線的なデザインになった「Z750FX」(1978年発売)

そんなZ1/Z2を意識したであろうデザインの「ZEPHYR(ゼファー) 750」が、1991年に登場。丸みのあるカムカバーやテールカウル、タンクを備えた姿はZ2/Zを彷彿とさせるものであったが、ZEPHYR 750は空冷エンジンを搭載し、雰囲気も乗り味もクラシカルに再現することに重きをおいていたため、速さについてはそれなり。ゆえに、世界トップレベルの動力性能を誇り(発売当時)、“速い”イメージの強いZ1/Z2の再来としては物足りなさを覚える人も多かった。

Z1/Z2の流れを受け継ぐデザインのほか、エンジンなどの細部もZ1/Z2に近づけられた「ZEPHYR 750」。ただ、動体性能においては期待はずれの部分も。とはいえ、その時代の流行であったレーサーレプリカに代表される高性能化・先鋭化を一変させ、レトロブームを作り出す契機となったモデルで、ZEPHYR 750もかなりの名車だ

実は、Z1/Z2と称されるモデルが1977年で生産終了になってから、Z2とZ1はファンの間で神格化されるまでになっている。現在、1970年代〜80年代にかけてのバイクは「旧車」と呼ばれ、中古市場で人気が高いが、Z1とZ2はその中でも突出した存在。200万円を超える価格を付けているものがほとんどで、状態のよいものだと400万円を超えることもめずらしくない。しかも、一般的に旧車はパーツの入手に苦労することが多いが、Z1/Z2においてはサードパーティー製のパーツが現時点でも数多く販売されており、消耗パーツからカスタムパーツまで多種多様な部品を入手できる特異な状況が続いているほど、長きにわたり愛され続けている。

名車のスタイリングと最新の運動性能が融合

これほどまでに特別な存在となったZ1/Z2の雰囲気を色濃く感じさせるのが、今回紹介するZ900RSだ。“火の玉カラー”をまとったティアドロップ型のタンクをはじめとするスタイリングは、まさにZ1/Z2の再来をにおわせた。しかし、細部を見ていくとZ1/Z2とは異なる部分のほうが多い。エンジンは4気筒で同じだが、Z900RSは水冷式(Z1/Z2は空冷式)で、リアのサスペンションも1本になっている(Z1/Z2は2本)。実は、Z900RSのベースとなったのは2017年に登場した輸出モデル「Z900」。Z1/Z2とはまったく異なるデザインだ(下の写真参照)。だが、ここからがなかなか熱い。このベース車にZ1/Z2らしいタンクを搭載するために、フレームから作り直しているという。走行性能を高めるためにフレームを新設計するならともかく、タンクを載せるために新造するというのはなかなか聞かない話だ。このほか、シートやサイドカバー、テールカウル、メーターなど随所にZ1/Z2を彷彿とさせるデザインが採用されている。カワサキには歴史的名車をオマージュしたデザインのバイクが少なくないが、基本設計の異なるモデルを細部の意匠によってイメージさせるという手法はなかなか鮮やかだ。

Z900RSのベースとなった「Z900」は、公道での運動性能を追求した“ストリートファイター”というジャンルに属する。デザイン的にはZ1/Z2をイメージさせる部分はどこにもない

ベース車から大きく様変わりし、かつての名車Z1/Z2を思わせるスタイリングとなったZ900RS

ベース車から大きく様変わりし、かつての名車Z1/Z2を思わせるスタイリングとなったZ900RS

“火の玉カラー”のタンクは、水転写式デカールによるカラーリングが施され、塗装の凹凸もなくスムーズな仕上がり

クラシカルな印象を与えるシートだが、着座位置の幅が狭められているので足つき性にも貢献。着座位置を高くするハイシートもオプションとして用意されている

テールカウルもZ1/Z2を思い起こさせる形状。テールランプはLEDだが、クラシカルに見えるように大型の1灯が点灯する方式となっている

メーターもレトロな仕上がりだが、中央部には液晶モニターを装備。入っているギアを表示するなど、かなり多機能になっている

かつて「Z2ミラー」と呼ばれ、他車のカスタムにも用いられた丸型ミラーを再現

かつて「Z2ミラー」と呼ばれ、他車のカスタムにも用いられた丸型ミラーを再現

しかも、Z900RSはヒストリックな名車のスタイルを模倣しただけのバイクではないところが熱い。コンパクトでハイパワーな最新鋭の水冷4気筒エンジンを備えるとともに、車体を軽量に仕上げることで運動性能を高めている。さらに、足回りにも現代的なモノショックや倒立式フロントフォークを装備し、軽快なハンドリングを実現。サーキットを視野に入れたスーパースポーツ系のモデルではないが、ストリートでのハンドリングは現代の目で見ても高い性能を狙っていることが見て取れる。

エンジンは水冷だが、空冷を思わせるフィンが刻まれ、クランクケースなどの形状もZ1をモチーフにしている

エンジンは水冷だが、空冷を思わせるフィンが刻まれ、クランクケースなどの形状もZ1をモチーフにしている

リアサスペンションは性能の高いモノショックで、リンクを介して車体の中央部に水平にマウント。排気管から遠く配置できるため、熱の影響を受けにくいのがメリットだ

剛性の高い倒立式のフロントフォークを採用。ブレーキはラジアルマウント式で、制動力・コントロール性ともに良好だ。タイヤサイズは120/70-17

リアタイヤは180/55-17と、現代的なサイズ。前後ホイールは専用設計のキャストとなっている

リアタイヤは180/55-17と、現代的なサイズ。前後ホイールは専用設計のキャストとなっている

公道でも感じられる圧倒的な性能

いよいよ試乗へと移る。実は、筆者が初めて「乗りたい」と思ったバイクは「Z2」だった。中学生時代に読んだ漫画に出てきた主人公が乗っていた「Z2」に憧れていたものの、実際に乗ったことはない。筆者のライダー仲間ですでにZ900RSに乗った人たちによると、その動力性能はかなりのものだという。走行性能とスタイルで魅了したZ1/Z2さながらの評判に試乗前から胸が高鳴る。

またがる前に、まず感じたのは押し歩きの際の軽さ。このクラスのネイキッド(カウルのないバイク)マシンとしては軽量な215kgという車重のおかげか、押してみただけで運動性能の高さを予感させた。そして、またがってみると車体が実にコンパクト。1クラス下の600ccくらいのバイクではないかと思うほどの感覚だ。

車体サイズは2,100(全長)×865(全幅)×1,150(全高)mmのZ900RSにまたがると、身長175cmの筆者でギリギリ両足のカカトが接地しない程度。足付き性はかなりよいほうだ

高鳴る鼓動を抑えつつ、エンジンをかけると迫力ある排気量が響き、さらに心が躍らされた。現代的な水冷エンジンの場合、排気音はモーターのような味気ないものであることも少なくないのだが、Z900RSはやや空冷エンジンに近いデロデロという低い音をアイドリングから吐き出し、乗り手をやる気にさせてくれる。カワサキとしては初めて排気系のサウンドチューニングを行なったそうだが、その効果はかなり大きい。ノーマルマフラーの排気音で、ここまで心躍らされるマシンはめずらしい。

低回転ではストレートに、高回転ではプリチャンバーを迂回して排気が抜ける凝った構造を採用。低回転の扱いやすさと高回転のパワーを両立している

走り出して真っ先に感じるのは、アクセルを開けた瞬間に車体をドンっと加速させるトルク。街中を走る際の2,000〜3,000回転ほどの低回転でも、アクセルをひと開けするだけで気持ちのよい加速を味わえる。かなり低回転から力が出る設定のようで、試しに停止した状態からトップギアである6速でスタートしてみたが、半クラッチを長めに使えばノッキング(エンジンに過大な負荷がかかったときに生じるノックするような音を発する現象)を起こすこともなく発進できた。トルクが大きいエンジンというと、小さなアクセルの開閉で車体が動いてギクシャクしてしまうバイクもあるが、Z900RSはそのあたりがよく調律されているようで、低速で走り続けてもストレスがたまることはない。街乗りやツーリング主体で使うライダーにとってはありがたい設計だろう。

また、サスペンションもストリートに合わせた設定とされているが、低速でギャップを乗り越えたりすると、それなりに振動や突き上げ感が伝わってくる。ただ、少しスピードが出てくると(時速50〜60km程度)、途端にこれらのショックは感じなくなるので、ツーリングペースで走っていれば気になることはないだろう。もちろん、高速道路を走るようなペースになれば、都市高速の路面によくある継ぎ目などはまったく気にすることなく通過できる。しかも、アクセルをひとひねりすれば交通の流れを圧倒的にリードすることができるのだ。この特性がおもしろくないわけがない。

どんな速度域からもアクセルを開ければ、目がついて行かなくなるほどの加速を味わえる

どんな速度域からもアクセルを開ければ、目がついて行かなくなるほどの加速を味わえる

そして、もっとも感動したのがハンドリング。真っ直ぐ走っている際の直進安定性は高いのだが、カーブに差しかかった時に少し体重移動でキッカケを作ってやるとスッと車体が寝てイメージしたとおりに曲がることができるのだ。しかも、そのハンドリングが街中の交差点から、ちょっとしたワインディングの高速コーナーまで幅広いシーンで味わえる。運動性能が高いモデルはスーパースポーツも含めてほかにもいろいろあるが、街乗りの速度域からある程度スピードが出るシーンまで、意のままに操れる感覚が得られるマシンは多くはない。このハンドリングが味わえるのが、Z900RSの最大の魅力なのではないだろうか。

コーナリングでの寝かし込みやすさと、操作に対するレスポンスは感涙モノ。街中の何でもない曲がり角すら楽しく感じる

試乗を終えて

スタイリングから走行性能まで何かと話題になることが多いマシンだが、その魅力はウワサ以上。かつて憧れたマシンをイメージさせるルックスを持ち、実際に走らせればスーパースポーツ顔負けの運動性能をストリートでも味わうことができる。あまりにも意のままに動いてくれるので、自分のライディングスキルが上がったのかと錯覚してしまうほどだ。これだけ魅せられるマシンに出会えることなかなかないだろう。Z1やZ2が熱い支持を集める理由は、そのスタイルももちろんだが、当時の世界最高峰を目指して開発された走行性能を持っていること、そしてそれが街乗りなど低い速度域でも味わえることにある。このような意味からも、Z900RSはかつての名車が持っていた魅力を正しく継承していると言えるのではないだろうか。

また、Z900RSのオーナーになれば、愛車をカスタムするというさらなるおもしろみもある。カワサキの「Z」シリーズが現在まで高い人気を維持しているのは、カスタムパーツが豊富で”いじる楽しみ”にハマる人が多いからだ。ただ、筆者が1週間程度乗り回した感触では「ここをいじりたい」と思う個所はどこもなかった。マフラーはデザインも音も文句なしにカッコイイし、ブレーキはマスターシリンダーまでラジアルポンプ化され、ウインカーやミラーのデザインも完成されている。その他の多くのバイクでは「ここのパーツを替えたい」と感じる部分が1〜2か所はあるのだが、カスタマイズしたい部分が見当たらないのだ。それが今回の試乗で感じた悩みであり、その答えはまだ見つかっていない。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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