レビュー
クルマ本来の走りのよさが味わえる「Modulo X」

走りにこだわり抜いた「ヴェゼル Modulo X」へ試乗!熟練のホンダエンジニアがチューニング

チューニングカーと言えば、以前はユーザーがクルマを購入した後に好みの改造を施すことを指すことが多かった。だが、最近では「コンプリートカー」が増えてきている。新車をベースとして、すでにエアロパーツが装着されていたり足まわりがチューニングされている完成車を購入するという方法だ。

2019年11月29日に発売された、ホンダのコンプリートカー「ヴェゼル Modulo X」

2019年11月29日に発売された、ホンダのコンプリートカー「ヴェゼル Modulo X」

コンプリートカーは、パーツをそれぞれひとつずつ購入して装着するのとは異なり、完成車として販売されているのでさまざまな規制をクリアしており、安心して乗れるという利点がある。また、ボディ補強や足まわりのセッティングなどを個別にチューニングするのに比べて、コンプリートカーでは車両バランスも入念にセッティングされているので、総合的な走行性能も高い。

さらに、コンプリートカーは価格も割安だ。生産方法によっても異なるが、カスタマイズパーツを量産グレードと同じ生産ラインで装着すれば、購入後に既存のパーツをはずして取り付けるのに比べてコストを安くできる。コンプリートカーは、購入後にみずからチューニングするようなオリジナリティは得られないが、性能バランスにすぐれていて買い得感があるというのがメリットだ。

2019年11月29日、高い人気を誇るホンダのコンパクトSUV「ヴェゼル」のラインアップに、「Modulo X(モデューロ・エックス)」と呼ばれるコンプリートカーが追加された。Modulo Xは、ホンダ車の純正用品を手がける「ホンダアクセス」によって開発されており、専用のカスタマイズパーツが生産過程で装着されている。Modulo Xシリーズは、すでに「ステップワゴン」や「S660」などが先んじてラインアップされており、人気を博している。

ヴェゼル Modulo Xには、専用サスペンションやアルミホイール、エアロパーツなどが装着されており、ノーマル車と比べて走行安定性や乗り心地のバランスを向上させている。

フロントやサイドは、フロントグリルやバンパー、LEDフォグライト、アルミホイール、ホイールアーチ、サイドシルなどが専用装備となっている

リアやルーフは、テールゲート、ルーフレール、ロアガーニッシュ、エンブレム、リアエアロバンパーなどが専用品だ

ヴェゼル Modulo Xの外観については、専用デザインのフロントグリルやフォグランプに加えて、前後バンパーも専用のエアロ形状のものが装着されている。エクステリアは、実車を拝見した印象としては過剰に目立つようなことはなく、バランスの取れたデザインへと仕上げられているように思える。

「ヴェゼル Modulo X」には、Modulo Xシリーズで初の「専用スポーツシート」が装備されている

「ヴェゼル Modulo X」には、Modulo Xシリーズで初の「専用スポーツシート」が装備されている

リアシートも、フロントと同様に「ヴェゼル Modulo X」専用となっている

リアシートも、フロントと同様に「ヴェゼル Modulo X」専用となっている

ヴェゼル Modulo Xのフロントシートには、専用の「スポーツシート」が採用されている。使われているシート生地は、プライムスムースとラックススエードだ。サイドサポートの張り出しは適度で、乗り降りのしやすさに配慮しながら腰の近辺をしっかりと支えてくれて、体が滑りにくい。峠道などのワインディングから高速道路の長距離移動まで、さまざまな場面で着座姿勢が乱れにくく、疲労を抑えてくれる。なお、リアシートはシート生地がウルトラスエードと合成皮革に変更されている。

■ホンダ「ヴェゼル Modulo X」のグレードラインアップと価格
TOURING Modulo X Honda SENSING:3,528,800円(FF)
HYBRID Modulo X Honda SENSING:3,467,200円(FF)/3,617,900円(4WD)
※価格はいずれも税込み

ヴェゼル Modulo Xのグレードは、1.5Lターボエンジンを搭載する「TOURING Modulo X Honda SENSING」と、ハイブリッドを搭載する「HYBRID Modulo X Honda SENSING」の2グレードがラインアップされている。ちなみにターボ、ハイブリッドともに動力性能についての変更はない。

「ヴェゼル Modulo X」(HYBRID Modulo X Honda SENSING)の走行イメージ

「ヴェゼル Modulo X」(HYBRID Modulo X Honda SENSING)の走行イメージ

走行安定性は、ノーマルのヴェゼルもすぐれているのだが、Modulo Xでは操舵に対する車両の動きがさらに正確になった。ステアリングは、微小舵角から車両が確実に向きを変えてくれる。コーナーなどでステアリングを切ると、思ったとおりに旋回してくれて外側にふくらむようなことがない。いっぽう、今日のクルマらしく後輪の接地性が高く、下り坂のカーブなど不安定になりやすい場面でも車体は安定している。

ヴェゼル Modulo Xのタイヤサイズは、2WD(FF)が18インチ(225/50R18)で、4WDが17インチ(215/55R17)。運転が楽しいのは、FFが装着する18インチのほうだ。

「ヴェゼル Modulo X」(HYBRID Modulo X Honda SENSING)の走行イメージ

「ヴェゼル Modulo X」(HYBRID Modulo X Honda SENSING)の走行イメージ

操舵に対する反応が少し機敏になり、コーナーを曲がる際に意識的にアクセルペダルを戻すと、安定しながらも車両を若干内側へと向けることができる。このあたりの挙動変化は、入念に計算されていることが感じられる。走行安定性が高められているチューニングカーでは、乗り心地が概して硬くなりやすいが、ヴェゼル Modulo Xは快適だ。時速40km以下で走ると少し上下に揺すられるものの、タイヤが路上を細かく跳ねるような不快な感覚はない。

走りのバランスがいい理由のひとつが、ショックアブソーバーの減衰力やスプリングレートなどのサスセッティングが最適化されていることだ。開発者は、「特にコストの高いパーツなどは使っておらず、ボディの補強も行っていない」と言う。

次に、専用開発されたアルミホイールの効果だ。ヴェゼル Modulo Xでは、アルミホイールを「スプリング」に見立てたチューニングが施されている。具体的には、ホイールのスポークやリムの接合形状や厚みを変化させることによって、操舵感や乗り心地を調整している。スポークやリムの接合を薄くすれば操舵に対する反応は穏やかになり、乗り心地はやわらかくなる。逆に、スポークやリムの接合を厚くすると、操舵に対する反応が機敏になって乗り心地は硬くなる。

「ヴェゼル Modulo X」に採用されている専用エクステリアは、実走行での作り込みによって最適な空力バランスが図られているという

そして最後は、Modulo X専用に開発されたエアロバンパーによる整流効果だ。ボディの上下を流れる空気を整えて、走行安定性を向上させている。このように、ショックアブソーバーやスプリング、アルミホイール、エアロパーツなどを入念にセッティングすることで相乗効果を引き出し、すぐれた走行安定性と乗り心地を両立させている。

ヴェゼル Modulo Xで注目したいのは、前述の開発者のコメントにもあったように、高価なパーツを使ったりボディの補強などをしていないということだ。ショックアブソーバーやスプリング、アルミホイール、エアロパーツなどをバランスよく組み合わせることによって、すぐれた走りを実現させている。そうなると、ノーマルのヴェゼルの走りをModulo Xに近づけることも可能なはずだ。

本来、チューニングとは楽器などの「調律」を意味しており、クルマについても走行性能を大幅に高めることではない。量産される工業製品であるために、不可避的に生じるバラつきや粗さを抑え、本来の性能を引き出すことだ。ヴェゼル Modulo Xは、そんなチューニングの本質を突いたクルマでもあるだろう。見方を変えると、Modulo Xで味わえるのがヴェゼル本来の走りとも言える。

ホンダ「ヴェゼル Modulo X」(TOURING Modulo X Honda SENSING)の外観イメージ

ホンダ「ヴェゼル Modulo X」(TOURING Modulo X Honda SENSING)の外観イメージ

価格は、「TOURING Modulo X Honda SENSING」で考えた場合、ノーマルの「TOURING Honda SENSING」に比べて57万2,000円高くなる。購入後にModulo Xの各パーツを付け替えるよりも割安ではあるが、グレードに準じた価値観でいえば30万円、高くても40万円の上乗せに抑えてほしかった。正直、57万2,000円の上乗せはやや割高だ。

それでも、ヴェゼルの初期モデルでファンになったユーザーが後期型を購入検討するようなときには、ヴェゼル Modulo Xは十分に魅力的で、この価格差も許容範囲に入るのではと思える。ようやく本当のヴェゼルに出会えたような、そんな喜びの瞬間が待っているはずだ。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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