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ポリシーは”常時全輪駆動”です

舗装路しか乗らないけど必要!? スバルが「全輪駆動」をつらぬく理由

自動車ライターのマリオ高野です。

ウインタードライブのシーズンを迎えると「4WD(4 Wheel Drive=四輪駆動)」のクルマが気になってくる人は多いのではないでしょうか? 

特に、80年代の大ヒット映画「私をスキーに連れてって」の影響を受けた中年世代にとっては「雪道を走るには4WD(四輪駆動)が最強」というイメージが強いことでしょう。その4WDを得意とする自動車メーカーと言えば「SUBARU(スバル)」を連想する人もまた多いはず。

SUBARUのクルマが本領を発揮しやすいのは、やはり雪道や未舗装路。AWD(4WD、後に詳述)の開発は1972年から行っており、1970年代の後半にはすでに四輪駆動を得意とするメーカーとして認知されるようになりました

販売車の90%以上が四輪駆動!

スキー場の駐車場、あるいはスキー場へ向かう高速道路などでSUBARUのクルマ(「レオーネ」や「レガシィ」)が頼もしく見えたという経験を持つ人も多いのではないでしょうか。サーファーなら、砂浜でもスタックせずに難なく走るSUBARU車に驚いたことがあるかもしれません。

SUBARUという自動車メーカーは、なんと販売する車種の90%以上が4WD(SUBARUではAWD=All Wheel Driveと呼んでいます)であるという世界的にも稀有なメーカーで、4WDの専門メーカーといっても過言ではありません。最近ではサザンオールスターズの軽快な曲を起用したテレビCMがかなりオンエアされており、印象深いところ。話題となったTBS日曜劇場「グランメゾン東京」でもスポンサーとなっていましたが、木村拓哉さんが寝泊まりしていたのはSUBARUの「フォレスター」というクルマで、やはり4WDでした。

「SUV(ジープタイプの多目的スポーツ車)は欲しいけど、4WDは要らない」という人も多い中、SUBARUは4WDを重視する姿勢を取り続けています。

しかも、現在のSUBARUの4WDは「常時全輪駆動」のみであり、2輪駆動への切り替えを行わない、常に4WD状態で走る本格派ばかり。雪や雨など滑りやすい路面ならともかく、乾いたアスファルトで4WDは不要なのでは?と思う人は多いかもしれませんが、SUBARUはどんな路面状況でも4輪すべてのタイヤにしっかり駆動力をかけた4WDで走ることを理想としているのです。

SUBARUの「シンメトリカルAWD」は文字どおり左右対称で、車体の重量バランスにすぐれます。また車軸の長さが均一なのでトルクステアという現象が出にくいという利点も。一般的なエンジン横置き式前輪駆動、または後輪駆動をベースとした4WDは左右対称にならない場合が多くあります

「安心と愉しさ」をもたらす4WD

SUBARU以外の自動車メーカーも4WDの重要性は強く認識しているので、世界的にどのメーカーも4WDの比率を高めています。しかし、一般的な4WDは機構が複雑で重くなり、抵抗も増して燃費が悪くなるという大きなデメリットがあるので、やはり今でも2輪駆動モデル(特に前輪駆動車)を販売の主力としているメーカーがほとんど。

それでもSUBARUは4WD中心のラインアップを変える気配はありません。というのも、SUBARUは「安心と愉しさ」というテーマを標榜するメーカーだからです。

最新のテレビCMでも、最後に必ず「安心と愉しさを」というキャッチフレーズが流れますが、SUBARUは長年にわたって「走ることが愉しめるクルマは、安全に走れるクルマである」ということを標ぼうし続けてきました。

SUBARUの前身企業は中島飛行機という航空機メーカーだったので、自動車メーカーとしての黎明期から今にいたるまで、安全に対する意識が特に高いことで知られています。1955年発売の軽自動車「スバル360」の時代から他社に先駆けて衝突実験を繰り返し、いまでは日米欧の公的な衝突試験で極めて高い評価を受けるなど、パッシブセイフティ(受動安全性:ぶつかったときの安全性)の高さは世界でもトップクラス。

前身企業が航空機メーカーだったSUBARUは、今でも軍用ヘリコプターやボーイング社の航空機の機体の一部を製造。航空機作りから受け継いだ安全性を重視する設計思想により、四輪駆動の採用を拡大していきます

SUBARUの水平対向エンジンは前面からの衝突時に車体の下側へ潜り込むように後退しやすいので、衝突安全性の高さにも貢献

「ぶつからない車」のさきがけにもなった

また、2012年には「ぶつからないクルマ」というCMコピーで「アイサイト」と呼ばれる運転支援システムをブレイクさせ、自動ブレーキや自動追従などの運転支援システムが普及するきっかけをつくりました。

この「ぶつからない」ための安全性は、運転支援システムだけで確保できるものではありません。まずクルマそのもののアクティブセイフティ(能動的安全性)が高いレベルにある必要があります。

運転支援システムの普及を一気にうながしたSUBARUの「アイサイト」。2つのステレオカメラで前方を認識し、自動でブレーキやアクセルの制御を行います。2012年、5代目レガシィに搭載された「アイサイト・バージョン2」が大ヒットし、運転支援システムの重要性を知らしめたのです

単独事故が発生する状況の多くは、旋回時、湿潤/凍結路面走行時、追い越し時、障害物回避時など、クルマの挙動が不安定になりやすい場面なので、どんな状況でもクルマが挙動を乱さず安定性を保つことが重要。

そこでSUBARUはラリーやレースといったモータースポーツ活動に力を入れ、極限化におけるクルマの走りを磨いてきました。国際的な規格の競技で何度も世界一を獲得するなど、輝かしい実績をあげていますが、一般道でもモータースポーツでも強い武器となるのが4WDというワケです。

4WD車は、グリップの効く、乾いたアスファルト路面でも安定性の高さを発揮。緊急回避操作を行ってもクルマの挙動が乱れにくく、乱れても収束させやすいというメリットがあります

4WDはエンジンパワーを無駄なく路面に伝えられる

そもそも4WDとは、エンジンのパワーを4輪のすべてに分けて走るシステムで、2WDより走行安定性は高まります。クルマが路面と接しているのはタイヤのみで、しかも一般的なクルマでは1輪あたりハガキ1枚分程度のわずかな面積しかありません。エンジンのパワーを4つに分ける4WDは2WDよりもタイヤのスリップによるロスが少なく、安定して路面をつかめます。ですので2WDよりも高い走破性や走行安定性が得られるのです。

たとえば200馬力のエンジンを積むクルマの場合、2WDでは駆動するタイヤ1輪あたり100馬力が伝わりますが(厳密にはさまざまな抵抗によって最終的にタイヤに伝わる馬力は減ります)、4WDでは1輪あたり50馬力と2WDの半分なので、パワーをかけても2WDよりはるかにタイヤが空転しにくく、2WDよりもエンジンのパワーを余すことなく使い切れます。

また、出力の大きいエンジンを積んでも4WDならタイヤが空転しにくく、パワーを無駄なく路面に伝えることができるので、2WDよりもパワーのあるエンジンが積みやすくなります。

エンジンパワーを上げずとも、クルマの基本的な安定性が高ければ、スポーティーなクルマに仕立てやすくなるなど、いずれにせよ4WD性能を磨くことで、より「愉しさ」が提供できるという考えです。

1996年6月、2代目レガシィが当時の自主規制である280馬力という高出力に達して話題となりましたが、これもバランスのよい車体とすぐれた4WDがあってこそ実現したのでした。

昔の4WDは直進性にすぐれる半面、曲がりにくいという難点がありましたが、サスペンションや駆動システムの進化によりほぼ解消。エンジンのパワーを使い切りやすいので、ハイパワーなエンジンを搭載しやすいメリットも

前述したように、4WDは2WDに対してメカニズムが複雑となって重くなり、抵抗も増して燃費が悪化してしまうという難点があります。部品点数が多くコスト高となったり、挙動が安定する分、逆に曲がりにくくなったりする運動性能面のデメリットもありますが、SUBARUは1972年に世界で初めて量産の乗用車に4WDを採用した4WDのパイオニア。

50年近くに及ぶ開発により、これらのデメリットを最小限にとどめるための創意工夫を凝らしてきたので、他社の一般的な4WDに比べると、4WDのデメリットは少ないといえます。

4WDがもたらす走行安定性は、高速走行時の安定感を保つことにも大きく貢献。直進性にすぐれ、横風にも強いため、長時間ドライブでの疲労軽減効果も高いのです

水平対向エンジンとの好マッチング

また、SUBARUは全長が短く平べったい形状の水平対向エンジンを搭載するので、4WDシステムをバランスのよい左右対称にレイアウトできることも大きな強みに。中型以下のクルマに多い直列エンジンを横に配置したクルマの4WDよりも車体の重量バランスにすぐれるというメリットも捨てがたいところです。

全長の短いエンジンを縦に積むことにより、トランスミッションやセンターデフは比較的軽量コンパクトで済むのも見逃せません。4WD化にともなう重量増は50〜60kg程度で済み、他社の一般的な4WDより数10kg軽いのです。

SUBARUが得意とする水平対向エンジン。ピストンが水平に配置され、車体の低重心化にも寄与します

SUBARUが得意とする水平対向エンジン。ピストンが水平に配置され、車体の低重心化にも寄与します

水平対向エンジンは、横幅の制約やコスト高などのデメリットがあるいっぽう、低重心で振動が少なく、バランスのよい左右対称の4WDシステムを作るのに適しています。SUBARUでは「シンメトリカルAWD」と呼んでいます

SUBARUのシンメトリカルAWDは車体のバランスにすぐれるため、廉価な実用車でもサーキット走行が楽しめるほど基本的な運動性能が高いのが特徴。実用セダンやSUVなど、クルマのジャンルを問わず積極的に走りが楽しめます

課題は今後の燃費規制への対応

SUBARUといえば「走りはいいけど燃費が悪い」というイメージを持つ人も少なくないかもしれませんが、実は同じジャンルの4WD車で比較すれば、燃費も決して悪くありません。ほぼ同程度か、やや落ちる程度です。ただ、販売するクルマの90%以上が4WDなので、メーカー全体の平均値としては燃費が悪いということになり、今後の燃費規制にどう対応するかが注目されています。

また、SUBARU以外のメーカーでは、電気モーター駆動システムを追加することで4WD化、あるいは4輪とも電気モーター駆動の4WDシステムを搭載するクルマが増えており、従来型4WDのネガ要素を低減。新世代の4WD車が続々と登場していますが、それだけどのメーカーも4WDを重視する傾向が強まっていることを証明しています。

乾いたアスファルトでも4WDなら安心安全なので、これまで4WDに興味がなかった人も、次は検討の候補にあげてみてはいかがでしょうか?

SUBARUは衝突実験の歴史も古く、日米欧の衝突安全性能評価でしばしば最高得点をマークしているなど、衝突安全ボディ作りでも定評があります

写真:SUBARU、マリオ高野

マリオ高野

マリオ高野

1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。2台の愛車はいずれもスバル・インプレッサのMT車。

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