2020年6月17日、4代目となるトヨタ 新型「ハリアー」が発売された。ハリアーは上質な内外装を持つSUVで、とくに先代の3代目ハリアーはスタイリッシュな外観や、最近のSUVブームなどもあって、高い人気を誇っている。
新型ハリアーのエンジンやプラットフォームなどは、2019年に発売されたSUV「RAV4」と基本的に共通のものだ。トヨタの販売店は、2020年5月から全店ですべてのトヨタ車を併売する体制に移行しており、新型ハリアーとRAV4も同じ店舗で販売される。そうなると、先代RAV4のユーザーが新型ハリアーへの乗り替えを検討したり、その逆のパターンが生じてくる機会も多くなるはずだ。そこで、当記事では新型ハリアーとRAV4の2台を、内外装から走行性能、グレード、価格などさまざまな面で比較してみたい。
トヨタ 新型「ハリアー」のフロントエクステリアとリアエクステリア
トヨタ「RAV4」のフロントエクステリアとリアエクステリア
外観デザインは、新型ハリアーはシティ派SUVという先代までの流れを受け継ぎつつも、流麗なクーペフォルムによって美しさがさらに増している。いっぽうのRAV4は対称的で、その外観は直線的でオフロード車を想起させるような力強いデザインが魅力的だ。
ボディサイズは、新型ハリアーが4,740(全長)×1,855(全幅)×1,660(全高)mmで、対するRAV4は売れ筋の「アドベンチャー」グレードが4,610(全長)×1,865(全幅)×1,690(全高)mmだ。ホイールベースは、どちらも2,690mmと同じ数値となる。新型ハリアーは、RAV4に比べて130mm長く、10mm狭く、30mm低い。
トヨタ 新型「ハリアー」のサイドイメージ
トヨタ「RAV4」のサイドイメージ
最低地上高は、新型ハリアーはNAエンジン搭載車が195mm、ハイブリッド車は190mm。RAV4は、グレードに応じて190〜200mmと、新型ハリアーとほぼ同等だ。新型ハリアーとRAV4は、大体のサイズ感は等しいが、全長だけは新型ハリアーのほうが少し長い。実際に外観を見ても、新型ハリアーのスタイリングは後方に向けて伸びやかなイメージだ。
トヨタ 新型「ハリアー」のインパネ
トヨタ「RAV4」のインパネ
インパネの質感は、RAV4も相応にいいのだが、新型ハリアーはRAV4を上回る上質さを持ち合わせている。“馬の鞍”をイメージしたセンターコンソールは広がり感があって個性的だし、エアコンスイッチやATレバーが配置された中央付近の造形は特に上質さを感じさせる部分だ。
トヨタ 新型「ハリアー」の調光パノラマルーフ
さらに、新型ハリアーの「Z」「Zレザーパッケージ」グレードには、新たに「調光パノラマルーフ」がオプション設定されている。これは、シェードを使わなくとも光の透過量を自動で調節してくれるものだ。
トヨタ 新型「ハリアー」のシート
トヨタ「RAV4」のシート
車内の広さは、両車とも同等だ。プラットフォームが共通なので、インパネやシート配列などはほぼ共通化されている。だが、シート表皮の見栄えなどは新型ハリアーのほうが上質だ。シート素材も、RAV4はファブリックか合成皮革だが、新型ハリアーでは本革が用意されている。
新型ハリアーのエンジンは、2L直4NAエンジンと、2.5Lハイブリッドがラインアップされている。駆動方式は、FFと4WDで、ハイブリッドの4WDは後輪をモーターで駆動する「E-Four」が採用されている。
トヨタ 新型「ハリアー」の走行イメージ
トヨタ「RAV4」の走行イメージ
新型ハリアーの2L NAエンジンの動力性能は、最高出力が171ps(6,600rpm)、最大トルクは21.1kg-m(4,800rpm)と、RAV4と同じ値だ。ハイブリッドシステムも共通で、エンジンとモーターの駆動力を合計したシステム最高出力は、2WDが218ps、4WDが222psになる。
車重は、駆動方式などが同等のグレード同士で比べると、新型ハリアーのほうがRAV4に比べて50〜80kgほど重い。そのため、加速性能は若干RAV4のほうが有利だ。
新型ハリアーのサスペンション形式は、前輪がストラット、後輪はダブルウイッシュボーンの4輪独立式だ。プラットフォームとあわせて、サスペンションも両車で共通化されているものの、セッティングは互いに異なっている。新型ハリアーはしなやかで快適な乗り心地を、RAV4は積極的に曲がる運転感覚を重視している。
トヨタ「RAV4」の走行イメージ
また、RAV4のNAエンジンを搭載した「アドベンチャー」と「G・Z パッケージ」グレードには、「ダイナミックトルクベクタリングAWD」と呼ばれる4WDシステムが標準装備されている。このシステムは、カーブを曲がるときに外側に位置する後輪に高い駆動力を伝えて、車両を積極的に内側に向けるというものだ。新型ハリアーもこれに似た制御は行ってはいるのだが、同システムは採用されていない。
「衝突被害軽減ブレーキ」は、新型ハリアー、RAV4ともに昼夜の歩行者、昼間の自転車にも対応している。「インテリジェントクリアランスソナー(パーキングブレーキサポートブレーキ)」も、両車に採用されている。
トヨタ 新型「ハリアー」に搭載されている「デジタルインナーミラー」は、車両前後の録画機能が新たに追加された
さらに、新型ハリアーには新しい「デジタルインナーミラー」が採用された。従来の機能に加えて、車両の前後方向を録画してSDメモリーカードに記録することができるようになった。
新型ハリアーのグレード構成は、NAエンジン、ハイブリッドともに、「S」「G」「Gレザーパッケージ」「Z」「Zレザーパッケージ」となる。駆動方式は、2WDと4WDが全グレードに採用されている。
RAV4のグレード構成は、NAエンジンが「X」「G」「G・Zパッケージ」「アドベンチャー」で、ハイブリッドは「ハイブリッドX」「ハイブリッドG」の2グレードのみになる。駆動方式は、2WDと4WDを選べるのはベーシックな「X」と「ハイブリッドX」だけで、G以上では4WDしか選ぶことができない。これらのグレード構成を比較すると、新型ハリアーではエンジンや駆動方式を幅広くラインアップしているのに対して、RAV4では4WDのNAエンジンが中心となったグレード構成になっている。
両車の販売価格を比較してみよう。たとえば、新型ハリアーの2L NAエンジンを搭載した「G」(4WD)の価格は、3,610,000円だ。対するRAV4は、2L NAエンジンを搭載した「G」(4WD)は3,261,500円になる。価格を比べてみると、新型ハリアーのほうがおよそ35万円高い。
トヨタ 新型「ハリアー」に標準装備されている「ディスプレイオーディオ」
両車の装備を比べると、最も大きな違いは8インチのモニター画面を備えた「ディスプレイオーディオ」の有無だ。新型ハリアーには、ディスプレイオーディオが標準装備されているが、RAV4ではカーナビは標準装備されていないのでディーラーオプションで購入しなければならない。このほか、LEDヘッドランプは新型ハリアーがプロジェクター式に上級化している。さらに、新型ハリアーのGには、ハイビーム状態を維持しながら、遮光によって対向車や先行車の眩惑を抑える「アダプティブハイビーム」も装着されている(RAV4はハイ/ロービームの自動切り替えのみ)。前述のデジタルインナーミラーは、RAV4のGは44,000円でオプションだが、新型ハリアーのGは録画機能を含めて標準装備されている。
逆に、「リヤロストラフィックアラート」はRAV4のGには標準装備されているが、新型ハリアーのGは68,200円でオプション設定となっている。ステアリングヒーター、運転席パワーシートのポジションメモリー機能も、RAV4のGには標準装備されるのに、新型ハリアーではレザーパッケージでないと付けられない。新型ハリアーは、助手席の電動調節機能や快適温熱シートなどがレザーパッケージの専用装備になっているのだ。したがって、Gではシート関連が簡素となっている。だが、もし新型ハリアーで「Gレザーパッケージ」(4WD)を選ぶと、今度は価格が3,910,000円と30万円もの上乗せになってしまうので、悩ましいところだ。
以上のような装備の違いを補正すると、新型ハリアーがRAV4に比べて質感を高めた対価は、約16万円。この金額そのものは、両車の装備の違いを踏まえると妥当な価格差だろう。
新型ハリアーのベストグレードは、ハイブリッドを搭載するG(2WD/400万円)だ。ハリアーらしい上質な走りを求めると、やや重いボディに2LのNAエンジンでは不足している。もし、移動は市街地が中心で走りを求めず、価格を抑えたいならNAエンジンのG(2WD/341万円)を選ぶという手もあるだろう。
対するRAV4のベストグレードは、先に述べた2LのNAエンジンを搭載する4WDのアドベンチャー(3,195,500円)になる。オフロードSUVの雰囲気は、新型ハリアーとは大きく異なる。
トヨタ 新型「ハリアー」の外観イメージ
トヨタ「RAV4」の外観イメージ
新型ハリアーとRAV4は、共通のエンジンやプラットフォームを採用しながらも、キャラクターがまったく異なるSUVに仕上げられている。エクステリアだけでなく、走りなどにおいても新型ハリアーはどちらかというと2WDメインの市街地向けで、RAV4は4WDメインで悪路などを走行することも考慮された機能を備えている。購入検討ユーザーは、市街地がメインなのか、それともアウトドアなどを目的とするのかなど、自身のライフスタイルに合わせて両車を検討するといいだろう。
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト