レビュー
新たに採用されたプラットフォーム「CMF-B」の実力は!?

かつてのルノー車を乗り継いだライターが、乗って感じた新型「ルーテシア」

ルノー・ジャポンは、2020年11月6日に、5代目となる新型「ルーテシア」を発売した。

2020年11月6日に、日本における販売が開始された、5代目のルノーの新型「ルーテシア」。ルノー、日産、三菱のアライアンスによって新開発されたモジュラープラットフォーム「CMF-B」がルノー車として初採用されており、運転支援システムなどの安全面も大幅に向上している

2020年11月6日に、日本における販売が開始された、5代目のルノーの新型「ルーテシア」。ルノー、日産、三菱のアライアンスによって新開発されたモジュラープラットフォーム「CMF-B」がルノー車として初採用されており、運転支援システムなどの安全面も大幅に向上している

欧州では「クリオ」を名乗るルーテシアは、1990年に初代モデルが登場し、これまでに世界累計で1,500万台が販売されている。特に、4代目の先代ルーテシアは260万台を売り上げ、欧州のBセグメントにおいて6年連続で販売台数No.1を獲得。さらに、欧州のすべての乗用車においても、VW「ゴルフ」に次ぐ2位を記録するほどのヒット作となった。これまで、Bセグメントのクルマは燃費や取り回しなどの機能軸で選ばれることが多かったのだが、先代ルーテシアは圧倒的にデザインで選ばれたのだという。

今回、そんなルーテシアの5代目となる新型モデルを、短時間ではあるが試乗する機会に恵まれたので、その印象をレポートしよう。

アライアンスがもたらした、新プラットフォーム

新型「ルーテシア」のフロントイメージとリアイメージ

新型「ルーテシア」のフロントイメージとリアイメージ

新型ルーテシアのエクステリアデザインは、基本的には曲線基調の先代のデザインが踏襲されているが、新型では直線的なデザインも積極的に使われ、メッキなどを加えることで曲線と直線をうまく融合したデザインへと変わった。また、ルノーブランドの象徴であるCシェイプのヘッドライトには、LEDのデイタイムランプが採用されている。

また、インテリアも大きく変更され、ドライバーズオリエンテッドなイメージで使いやすさがさらに向上している。インテリアについては、詳細を後述したい。

そして、新型ルーテシアの最大のポイントは、新プラットフォームを採用したことだ。ルノー、日産、三菱のアライアンスから生まれた新プラットフォームは、先日発表された日産の新型「ノート」に先駆けて搭載された「CMF-B」と呼ばれるものだ。主な狙いは、軽量化とADAS(先進運転支援システム)の充実、そして安全性の向上にある。新型ルーテシアでは、新プラットフォームの採用などによって先代比50kgの軽量化に成功したとされ、ADASなども豊富に備わっている。360°カメラ(日産ではアラウンドビューモニターと呼んでいるもの)やハイウェイアンドトラフィックジャムアシストなどは、最上位グレードに搭載されている。また、安全面では、ユーロN-CAPで最高評価となるファイブスターを獲得している。

新型「ルーテシア」に搭載されている、1.3リッター直噴ターボエンジン

新型「ルーテシア」に搭載されている、1.3リッター直噴ターボエンジン

搭載されるエンジンも、同アライアンスで開発されたものだ。最近では、メルセデスのAクラスにも搭載されている1.3リッター直噴ターボエンジンが採用されている。しかし、各社のチューニングによって、特性などは変更されているという。新型ルーテシアの場合は、前モデルと比べて、出力やトルクが向上している(新型は、最高出力131ps/5,000rpm、最大トルク240Nm/1,600rpm。先代は1.2リッターターボで、118ps/5,000rpm、205Nm/2,000rpm)。特に、最大トルクはひとクラス上のメルセデス・ベンツ「Aクラス」よりも高い値だ。

新型「ルーテシア」のボディサイズは、先代よりも全長、全幅、ホイールベースが短くなっていることに注目したい

新型「ルーテシア」のボディサイズは、先代よりも全長、全幅、ホイールベースが短くなっていることに注目したい

いっぽう、ボディサイズ(全長×全幅×全高)は4,075mm×1,725mm×1,470mmと、先代の4,095mm×1,750mm×1,445mmよりもサイズダウンしている(全高はアンテナ位置で測定するため、実ルーフよりも高い数値)。また、ホイールベースも2,515mmと、先代よりも15mm短くなっている。これは、主に欧州市場で多くのクルマがサイズアップの傾向にあるのに対してのアンチテーゼともとらえられ、いずれにせよマーケットリーダーだからこそできるものと言えよう。

かつてのルノーにはない、質感の高いインテリア

実際に試乗した印象をレポートする前に、少しだけ個人的なお話をさせていただきたい。実は、筆者の初めてのクルマは初代「ルノー5(サンク)」の中古車で、アルバイトをしてお金をためて購入したものだった。その後、2代目「ルノー5」や「21(ヴァンティアン)ターボ」、2代目「トゥインゴ」など、多くのルノー車を乗り継いだ。現在もガレージに「25(ヴァンサンク)バカラ」という大型のルノー車をしまい込んでおり、ルノーに対して、特にコンパクトなルノー車には思い入れがあるのだ。小さいながらも、走る、曲がる、止まるという基本的なクルマの性能に手を抜かず、かつ抜群に乗り心地がよく、出来のいいシートと高い直進安定性による走行性能などが魅力としてあげられる。今回は、そういった視点も含めて新型ルーテシアを評価しようと思う。

質感が大幅にアップした、新型「ルーテシア」のインテリア

質感が大幅にアップした、新型「ルーテシア」のインテリア

ドアを開けて室内に乗り込み、最初に気付いたのは、驚くほど質感が向上したことだった。フランス人は、プラスチックをあえてほかのものに見せようとはせず、「プラスチックは、プラスチックのままでいいじゃないか」といった考え方を持っている。そのため、これまでのルノー車は、質感において日本車と比較すると、一歩も二歩も遅れを取っていた。また、パーツの継ぎ目も決して滑らかではなく、下手をするとバリが飛び出していることも珍しくはなかった。それがどうだ。新型ルーテシアでは、手の触れる個所のほとんどにソフトパッドが張り巡らされ、ちょっとした高級感さえ漂わせている。当然、触れればやわらかく、しっとりとした手触りだ。ステアリングも革巻きで、握り心地は上々だ。なんだ、できるじゃないか!

エンジンをスタートさせ、ゆっくりと走り出して気付くのは、コンパクトなボディによる取り回しの高さだ。先代も、それほど不便さは感じなかったが、新型では若干サイズダウンしたことにより、さらに乗りやすさが増したようだ。

わずかにぎくしゃくするが、他のルノー車に比べればスムーズな7速AT

わずかにぎくしゃくするが、他のルノー車に比べればスムーズな7速AT

いっぽう、気になったのは7速のオートマチック(ゲトラグ製 湿式クラッチ)とエンジンのマッチングが先代と同様、わずかにギクシャクする点だ。特に、信号からのスタートダッシュでアクセルを踏んだ際に若干のタイムラグが感じられ、若干の慣れが必要になる。だが、そこを過ぎてしまえば力強い加速を手に入れられ、シフトアップ、ダウンとも痛痒なく走らせることができるだろう。あえてこう書いたのは、ほかのルノー車にはシフトアップ、あるいはダウン時に迷いを感じたり、ショックがあったりする場合が多かったからだ。そういう点では、進化していると言える。

新型「ルーテシア」の走行イメージ

新型「ルーテシア」の走行イメージ

しかし、ダウンサイズエンジンの癖で、3,000rpmあたりから一気にパワーがあふれてくるので、元気に走りたい時はまだしも、少し疲れていたり、ゆったりと走らせたい時は、少しせわしなく感じることもあった。エンジンそのもののノイズはそれほど大きくはなく、十分に許容範囲と言えよう。しかし、タイヤからの振動やロードノイズがフロアを通して身体に伝わってくるのが、少々不快だった。

乗り心地は、いまひとつ

前述したように、ルノーをはじめとしたフランス車の多くはシートの出来が抜群によく、疲れずにどこまでも走り続けたくなる魅力を持っている。これは同時に、高い直進安定性も大きく寄与している。実際に、私もほかのフランス車で1,000km以上のテストを楽々とこなし、先代ルーテシアもその点ではコンパクトカーと言えど、十分なグランドツアラーの素質を備えていた。

新型「ルーテシア」のフロントシート

新型「ルーテシア」のフロントシート

では、新型ルーテシアはどうだろうか。正直に告白すると、少々残念な結果だった。まず、シートだ。前席の乗り心地は、比較的しなやかさも感じていいのだが、シートが少し大きく、ホールド性は若干物足りない。また、路面の振動が体に伝わりやすく、クッション性もいまひとつなので、腰が疲れてくるのだ。これは、これまで多くのルノー車に乗ってきて、初めての経験だった。また、フロア周りの剛性が低くて若干足に振動が伝わり、同時にステアリングへの振動が大きいので、ステアリングの取り付け剛性の低さも感じられた。

高速道路における、新型「ルーテシア」の試乗イメージ

高速道路における、新型「ルーテシア」の試乗イメージ

今回は、高速道路での移動はあまりできなかったのだが、短い距離ながら判断すると、フロア周りやステアリングの取り付け剛性の影響によって、若干直進安定性も心もとないようだった。

ブレーキフィールはいいのだが

近年のルノーのブレーキペダルは、踏力のコントロールが少々しにくい傾向があった。たとえば、信号で停止する寸前に少しだけ踏力をゆるめたくても、それが素直にクルマへと伝わらずに、いわゆる「カックン」と止まりやすかったのだ。しかし、新型ルーテシアではそのあたりが改善されており、非常にスムーズでかつコントロールしやすくなっていた。

ブレーキ関係では、電動パーキングブレーキに「オートホールド機能」が採用された。これは、センターコンソールにあるボタンで作動するもので、信号などの停止時にブレーキペダルから足を離してもその状態をキープし、アイドルストップが作動する。そして、軽くアクセルペダルを踏み込むことで解除される便利な機能なのだが、その反応がかなり遅いのだ。特にオートホールドブレーキが作動し、アイドルストップが介入した直後にアクセルペダルを踏み込んでも、気分的には半呼吸くらいたってからエンジンがスタートするようなイメージで、よりアクセルを踏み込んでしまいかねないことから、注意が必要と感じた。

スイッチなどの操作性は、かなりいい

新型「ルーテシア」のメーター(上)とセンターディスプレイ(下)

新型「ルーテシア」のメーター(上)とセンターディスプレイ(下)

メーター類は、7インチのディスプレイが採用され、より見やすくなった。また、センタークラスターの7インチタッチディスプレイも、必要なものを的確に見つけやすい階層になっている。さらに、エアコンなど運転中に操作することが多いものは、ブラインドタッチも可能な物理スイッチを採用している点などは、大いに評価したい。ただし、ハザードのスイッチはほかのものと並列に並んでいてとっさに使いにくいので、これだけは単独での配置を望みたい。

それにしても、いまだにオプションでもカーナビゲーションが装備されないのはどういうことだろう。たしかに、スマートフォンをつなげばApple「CarPlay」やGoogle「Android Auto」などのカーナビアプリが使えるのだが、誰もがスマートフォンのアプリを使いこなせるわけではないし、いちいちスマートフォンをつながなくてはいけないことを面倒に思う方も少なくないだろう。そんなユーザーのために、オプションでもいいのでカーナビゲーションを装着できるようにしてほしいと思う。

残念なリアシート

新型「ルーテシア」のリアシート

新型「ルーテシア」のリアシート

今回は、短時間ながらリアシートも試すことができたので、その印象を述べてみたい。ホイールベースは短くなったが、足元は広々としており、またシアタータイプで前席よりも後席の着座位置が高く、ヘッドレストも工夫がされていて視界はとてもいい。

だが、確かにBセグメントなのでリアシートの乗車率は低いかもしれないが、そのシートの出来は決して褒められたものではなかった。座面は短くて水平で、バックレストの角度が立ち気味なので、座っていてかなり疲れる。また、乗り心地は硬く、路面からの突き上げも感じられた。いつも、取材時には編集部員が後席などに同乗して撮影などをしてくれることから、多くのテスト車両の後席の経験があるのだが、その彼いわく、「これまで乗った後席の中では、かなり厳しい。座面や角度などから、大人が後席へ常に乗ることができるような気がしない。どちらかと言うと、子供向けのようなイメージだ。広さはとてもあるが、乗り心地が悪く、振動も段差などが直接お尻などに伝わってくる。その時にフロアがブルブルするようで、足裏に振動を感じる。長時間はきついかもしれない」と厳しめのコメントを発しており、私もほぼ同様の印象を持ったのだ。

ここまで、かなり厳しいコメントが並んでしまったのは、ルーテシアに対しての思い入れが強かったことも、少なからずあるかもしれない。しかし、シートや直進安定性というこれまで持っていた大きな美点が失われ(とはいっても多くの同セグメントの日本車よりは遥かに高いのだが)、軽快感やしなやかさがあまり見られなくなってしまったのは、少々残念に思える。

新型「ルーテシア」の走行イメージ

新型「ルーテシア」の走行イメージ

資料によると、リアサスペンションの設定を見直すことで、高い速度でカーブを曲がる際の安定性が向上し、ロール量(コーナーでの傾き)を減らしているというが、その結果、後席の快適性が失われているとすれば、本末転倒と言うしかないだろう。また、ボディ剛性の低さから、乗り心地が悪化した可能性も否定できない。

いっぽうで、大幅に質感が向上したのは重要な点で、ひとつ上の「メガーヌ」よりもさらに高いレベルになったことは、大いに評価したい。さらに、安全運転支援システムが“やっと”装備されたのも喜ばしく、これだけでも競争力のさらなる向上につながるだろう(ただし、一部装備がグレードによって省かれているのはいかがなものかとは思うのだが……)。

しかし、たとえばライバル車の1台であるプジョー「208」と比較すると、少なくとも208はステアリングが段差でブルブルと震えることはないし、フロア周りが弱く感じられることもない。シートに関しても長時間(高速道路で4~5時間)座り続けても疲れはほとんど感じられず、高い直進安定性から体自体の疲労も少なかった。こういったことを踏まえると、大きく影響を及ぼしているのはアライアンスによる新プラットフォーム、CMF-Bのような気がしてならないのだ。少なくとも、これまでのルノーにはなかった剛性の低さを感じたのは、このためだろう。

まだ発売されて間もないが、欧州車の常で、改良は適宜入るだろうし、数年後には大幅なマイナーチェンジもあるかもしれない。高い出力やトルクよりも、本来、小型のルノーが備えていた魅力を再び手に入れてほしいと感じた。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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