レビュー
航続距離 300km超のEVであれば、長距離ドライブは可能!?

プジョーのEV「e-2008」で長距離試乗! 充電回数や充電タイミングは!?

電動化車両を、積極的に日本市場へと投入している、グループPSAジャパン。今回は、フルEVのコンパクトSUVであるプジョー「e-2008」に乗って、長距離テストを実施した。シティユースがメインのEVといえども、遠出もしてみたいと考えている方もおられるのではないだろうか。そこで、現在の日本における道路環境や充電環境において、フルEVを長距離走らせるとどうなるのかを、e-2008でレビューしよう。

今回の長距離試乗に連れ出した、プジョー「e-2008 GT」

今回の長距離試乗に連れ出した、プジョー「e-2008 GT」

SUV 2008の製品画像
プジョー
4.33
(レビュー41人・クチコミ336件)
新車価格:303〜472万円 (中古車:53〜438万円

今回借り出したのは、「e-2008 GT」だ。走りや乗り心地など車両のレビューに関しては、以前「e-208」とともに試乗記「プジョー 新型「e-208」「e-2008」は低重心の走りと強烈な加速が魅力!」にてすでにお伝えしているので、今回は「EVを、長距離走らせてみたらどうなるのか?」といった視点でお届けしたい。

今回の試乗では、2泊3日で岐阜方面へと向かった。なお、電費優先となるため、ドライブモードは常に「エコモード」を使用した。エコモードでは、航続距離を重視するために動的性能が抑えられるのだが、非力さなどは感じられなかった。また、エコモードではエアコンにも制御がかかるのだが、強い日差しの際には温度設定を若干下げることで十分に対応可能であったことを、あらかじめお伝えしておきたい。

1日目は330km走って、充電回数は3回

まず、メーターの走行可能距離が304kmと表示されていて、満充電に近い状態(1充電走行距離はWLTPモードで331km)で、中央道の八王子ICから下り車線へと入る。目指すは、岐阜県可児市だ。単純に、304kmという数値だけを見れば目的地までは十分に到達可能なのだが、一般的にEVは高速道路などにおいてはバッテリーの消費が早いと言われている。一般道では、ブレーキを踏んだ時やアクセルオフ時などに回生ブレーキによって充電ができるのだが、高速道路ではアクセルペダルを踏んでいることのほうが多いため、回生ブレーキによる充電があまり期待できないのだ。さらに、中央道はアップダウンが多いため、アクセルを踏む頻度が増えることも、電費には悪影響が出そうに思えた。

諏訪湖SAで充電中の様子

諏訪湖SAで充電中の様子

空いた中央道を、周りの流れに乗って走らせていると、走行可能距離が50kmを割り始めたので、諏訪湖SAにて初の充電を行った。実際に走った距離は165kmで、バッテリー残量は18%まで減っていた。ちょうど、ほかのクルマが充電を行っていたため、20分ほど待って充電を開始する。最大50kwの給電力を持つ急速充電器を使い、30分でバッテリー残量54%、走行可能距離122kmまで充電した。

続いて、81km先の阿智PAで再び充電する。バッテリー残量は24%で、走行可能距離は48kmまで減っていた。こちらも、最大50kwの急速充電器で30分充電し、バッテリー残量54%まで復活。走行可能距離も160kmになる。ここからは、目的地の可児市まで無給電で到着することができた。

可児市の日産ディーラーにて充電

可児市の日産ディーラーにて充電

この日の夜に、ホテルの近くにある日産ディーラーで充電。夜間でも、自由に充電させてもらえる日産ディーラーは大変ありがたい。この日産ディーラーには、3基の充電器が設置されており、そのうちのひとつは90kwの高出力のもので、そこが空いていた。e-2008は、50kwが上限となっているため、90kwであっても制御がかかって50kwでの充電になる。バッテリー残量37%、走行可能距離84kmで充電を開始し、30分で同87%、274kmまで充電することができた。

2日目は131km走って、充電回数は1回

翌日は、可児市の近くで“うだつ”のある古い街並みなどを巡りながら、岐阜市内へ。地方の比較的狭く、かつ知らない土地を走らせていると、e-2008のアイポイントの高さはとてもありがたく感じる。また、1,770mmという全幅は少々広く感じるものの、高速道路などの安定性も考えると、このあたりが落としどころのようにも思える。

プジョー「e-2008」と可児市の古い街並み

プジョー「e-2008」と可児市の古い街並み

この日は、131km走って42%のバッテリー残量で充電を行った。走行可能距離は130kmだった。前出の日産ディーラーで、今回は50kwの充電器で30分充電し、バッテリー残量81%、走行可能距離250kmまで充電したあとにホテルへ戻った。

3日目は294km走って、充電回数は3回

3日目は、残念ながら雨。ワインディングなどを走らせて、道の駅明宝にて昼食を兼ねて充電する。115km走って、バッテリー残量は38%、走行可能距離86kmだった。20kwの中速充電器で30分充電し、バッテリー残量51%、走行可能距離126kmになる。昼食が途中だったので、クルマを移動させて続きを食べてクルマに戻るが、ほかにEVは見当たらないことから、再度30分充電を行った。バッテリー残量64%、走行可能距離186kmになる。

道の駅明宝にて、充電中の様子

道の駅明宝にて、充電中の様子

そこから、一般道をしばらく走り、東海環状自動車道関広見ICから高速道路へ。この時点で、走行可能距離は170kmほど。そして、阿智PAまでは100kmほどだったので、阿智PAでの充電を予定して走らせた。だが、実はこれが、今回最大のピンチ(?)を迎えることになる。

実は、道の駅明宝から関広見ICまでは一般道で60kmほどあるのだが、下りが多かったこともあり、回生ブレーキによる充電の効果が出て、航続可能距離は20kmほどしか減っていなかったのだが、そこまで深くは考えずに高速道路へと突入した。すると、見る見るうちに航続可能距離が減っていくではないか。まさに1kmごとにではなく、10km単位で減るのに驚いた。

プジョー「e-2008」のメーターは、走行中に充電残量が%で表示されない

プジョー「e-2008」のメーターは、走行中に充電残量が%で表示されない

さらに付け加えると、e-2008は走行中、充電残量が%で表示されないのだ(充電中には、%で表示される。これまでお伝えした(%の)値は、すべて充電中(直後)に確認した数値)。そのため、目盛りと走行可能距離で判断するしかなく、正確な充電残量がわからないのに少々困った。もう少し細かく記すと、航続可能距離はさきほど述べたように、その瞬間の状況で大幅に変動するのであまり信用できず、かといって目盛りでは正確な残量がわからないので不安になるのだ。特に、今回のように高速道路で、かつアップダウンがあると判断もかなり難しくなってくる。

さて、高速道路でみるみる航続距離が減っていっても、まだ航続可能距離は到着距離から+30kmほどは余裕があったので、そのまま目的地を変更せずに中央道上りに合流して進んでいく。中央道の上りは、比較的下り坂が多いので、そこで回生を積極的に利用すれば問題ないと思っていたのだが、下りがあれば、その手前には上りがあるのは当然だった。特に、恵那山トンネルの手前の登りでは一気に30kmの余裕代を使い果たし、ついに到着距離+1qにまでなってしまった。幸いにも、恵那山トンネルとそれ以降は下りが続くので、回生ブレーキを積極的に使うことで、阿智PAにほうほうの体でたどり着いた。その時の航続可能距離は18km、バッテリー残量は8%だった。回生ブレーキさまさまではあるが、こんなにブレるのであれば、本当に航続可能距離は信用できず、参考程度にとどめておかねばなるまいと感じた。

阿智PAで30分充電して、バッテリー残量49%、航続可能距離132kmまで回復。そして、81km先の諏訪湖SAで再度充電。バッテリー残量は15%から45%へ、航続可能距離は34kmから124kmへ。そして、60km走らせて双葉SAにて再び充電。バッテリー残量は33%から64%、航続可能距離は114kmから194kmまで充電し、その後は無事に帰宅した。

わかってはいたのだが……やはりEVは高速道路が苦手

今回の電費データは、以下の通りだ。

市街地:7.20km/kWh
郊外路:7.07 km/kWh
高速道路:6.34 km/kWh

今回の長距離テスト後も、数日e-2008と過ごしたのだが、新東名高速道路で120km/hまで速度を上げると、電費はてきめんに悪化した。今回の経験で、50km/hから80km/h程度でのんびりと走らせるのが、電費にとってはよさそうだということがわかった。市街地と郊外路でそれほど電費に差がないのはそういうことなのかもしれない。いっぽう、EVは高速道路が苦手なのは、間違いないようだ。

高速道路では、市街地よりも早めに充電を

今回、EVで長距離を走らせて、正直に言えば精神的にはかなり疲れる結果となった。筆者がそこまでEVに慣れていないということもあるのだが、航続可能距離の変動差があまりに大きく、どのくらいで、どのあたりで充電すれば効率がいいのかが、なかなかつかめなかったのだ。また、他社のEVの場合は充電残量が%で表記される場合がほとんどなので、正確なバッテリー残量がわからなかったことも、疲労が蓄積する要因のひとつとなっていたことは否めない。

改めて振り返ると、充電のタイミングは市街地で6がけ、高速道路では3がけ程度。つまり、航続可能距離が300kmだとしたら、市街地では180km、高速道路では90km程度走ったタイミングで充電が必要と感じた。もちろん、道路状況によってはさらに長く走らせることは可能だろうが、特に高速道路では充電スポットまでの距離が長く、時には充電器が故障している場合もあるので、それらのリスクも見込んでいるためだ。

また、今回はほとんど経験しなかったが、先に充電しているクルマがある場合、最長で30分は余計に時間がかかる場合があることも注意が必要だ。つまり、待ち時間30分、充電時間30分の計1時間は必要になると思ったほうがいいだろう。

クルマ自体の電費や出力などを鑑みると、おおよそ他メーカーのEVも同じくらいの走行状況になるのではと思われる。つまり、e-2008だから頻繁に充電しなければいけないというわけではなく、総電力量50kWh同程度のEV、たとえば日産「リーフ」なども同じような頻度になるのではと考えられる。現状では、EVのロングドライブは、前述したくらいの頻度での充電が必要になると考えておいたほうがよさそうだ。

プジョー「e-2008」の走行イメージ

プジョー「e-2008」の走行イメージ

SUV 2008の製品画像
プジョー
4.33
(レビュー41人・クチコミ336件)
新車価格:303〜472万円 (中古車:53〜438万円

e-2008自体は、高速安定性も高く、また乗り心地も重厚でしっとりとしたものなので、長距離でも体力面においてはほとんど疲れを感じることもなく、さらに今回のようにサービスエリアなどに停車する機会が多かったので、そのあたりは問題を感じることはなかった。

したがって、市街地はもちろん高速道路での移動も十分なポテンシャルを持ち合わせているのだが、その際は時間的な余裕、今回であれば内燃機関車であれば一気に行けるところを、2回、あるいは3回充電する必要があること。そして、航続可能距離のマージン、そういったことをすべて含んだ気持ちの余裕を持つことができれば、快適なEVライフを送ることができるはずだ。市街地が7割以上で、3割程度が高速道路を利用するというくらいの比率であればe-2008を、それよりも高速道路の利用が増えるのであれば、ガソリンエンジン搭載車の2008をおすすめしたい。

さて、ここで2つ、大きな課題を示しておきたい。ひとつは、EVのレポートでは常に触れているのだが、なぜ日産以外のディーラーのほとんどは夜間充電ができないのかということだ。結局、夜間の充電は、どのメーカーのEVも日産ディーラーに集中する結果となっている。日産が、自社のクルマの充電を守るために、他メーカーのEVを排除しないことを願うばかりだ。

高速道路のSAやPAに設置されている充電器は、安全とは言い難い場所もあった

高速道路のSAやPAに設置されている充電器は、安全とは言い難い場所もあった

もうひとつは、高速道路での充電だ。場所によっては、SAやPAのはずれにあったり、スマートインターチェンジの出口や入り口の間のわずかなスペースに設置されていたりなど、決して安全とは言えない状況も多く見られた。特に、夜間においては顕著で、街灯が少なかったり、大型トラックに囲まれているような場所などもあり、特に女性が安心して充電できる環境とは言いがたいのが現状だ。これから、EVはさらに普及するはずだが、現状はインフラが整っているとは言えず、かつ安心して利用できる環境とも言えない場所が多いのは問題のように思えた。

スマートフォンアプリ「高速充電なび」の充電スポット一覧画面。充電器の満空情報に加えて、いつから充電されているのかもわかるのでとても便利だ

スマートフォンアプリ「高速充電なび」の充電スポット一覧画面。充電器の満空情報に加えて、いつから充電されているのかもわかるのでとても便利だ

最後に、高速道路でEVを利用する際、非常に便利なスマートフォンアプリがあるのでお知らせしておきたい。「高速充電なび」と呼ばれるアプリで、全国の高速道路の路線ごとに、充電設備の使用状況などをリアルタイムに表示してくれるものだ(iOSとAndroidの両方に対応。対応するOSバージョンなどの詳細については、AppleStore、GooglePlayなどのアプリ配信サイトにて確認のこと)。今回、この高速充電なびを大いに活用した。高速充電なびでは、設置してある場所だけでなく、現在の満空情報、さらには充電中の場合にはいつから使用しているのかまでがわかるので、「もうすぐ30分たつので空きそう」「まだ充電が始まったばかり」など、どのくらいで空くのかの目安にもなる。さらに、行きたいSAやPAをタップすれば、(大まかな地図ではあるが)どこに充電器が設置されているかもわかるなど、非常に便利であった。こういった情報が、あらゆるEVにおいてナビ画面などですぐにわかるようになれば、EVはもっと使いやすくなるだろう。

[Photo:内田俊一/内田千鶴子]

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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