レビュー
価格を抑えることで若年層へアピール

迫力の外観に手頃な価格。ジープ「コンパス」マイナーチェンジモデルへ試乗

FCAジャパンの大きな柱となっている、「ジープ(Jeep)」ブランド。そのジープにおける、主力SUVの「コンパス」が、2021年6月にマイナーチェンジされた。わずかな時間ではあるが、試乗する機会が得られたのでレポートしよう。

2021年6月にマイナーチェンジモデルが日本へ導入された、ジープ 新型「コンパス」。「グランドチェロキー」譲りの迫力あるフォルムはそのままに、安全運転支援機能の強化や、インテリアの大幅な刷新などが施された

2021年6月にマイナーチェンジモデルが日本へ導入された、ジープ 新型「コンパス」。「グランドチェロキー」譲りの迫力あるフォルムはそのままに、安全運転支援機能の強化や、インテリアの大幅な刷新などが施された

コンパスの製品画像
ジープ
3.00
(レビュー8人・クチコミ42件)
新車価格:346〜435万円 (中古車:76〜418万円

FCAジャパンの大黒柱となった「ジープ」

現在、日本市場で右肩上がりの成長を続けている、FCAジャパン。2021年1月〜4月の、FCAジャパンの登録台数を見ると、純輸入車市場におけるシェアは10.1%になる。「輸入車の、10台に1台はFCAジャパンのクルマになるのです」と、FCAジャパン代表取締役社長兼CEOのポンタス・ヘグストロム氏は言う。その伸長は著しく、過去最高を記録した2019年の1月〜4月が6,976台だったのに対し、2021年同月期は8,603台と、コロナ禍でありながらも記録を更新し、約24%も成長しているのだ。

この成長に大きく貢献しているのが「ジープ」ブランドだ。ジープブランドのクルマは、いまやFCAジャパンの販売台数の半分を占めているという。その最大の理由は、「2015年に決断した戦略で、日本では世界に先駆けてジープ専用のディーラー網を構築したことです」と話す。それまでは、ジープ以外にクライスラーなどを扱っていたが、それをやめてジープのみに特化させたのだ。その結果、ジープブランドの登録台数は、2012年は約5,000台であったのが、2017年には1万台を突破し、昨年の2020年は13,588台を記録している。

ユーザー層も広がり、「当初は、いわゆるクロカン四駆を求めるユーザーのみでしたが、今はファッションで乗る方が多いようです。アウトドアやキャンプが好きな方達が、大半になります」と、FCAジャパン マーケティング本部 プロダクトマネジャーの渡邊由紀さんは教えてくれた。ちょうどグランピングなどのブームもあり、ジープライフをおしゃれに楽しんでいる人たちが多いようである。

戦略的な値付けで、若年層にアプローチ

新型「コンパス」のエクステリア。グレードは、今回試乗した最上級モデルの「リミテッド」

新型「コンパス」のエクステリア。グレードは、今回試乗した最上級モデルの「リミテッド」

そういった背景の中で、コンパスのマイナーチェンジモデルが日本へ導入された。大きな変更点としては、安全運転支援システムの充実と、インテリアの刷新があげられる。安全面から具体的に見てみると、新たに「前面衝突警報」や、車線を逸脱するとステアリングを自動で補正してくれる「アクティブレーンマネジメントシステム」(ジープ初採用)、交通標識に基づいて法定速度を検知し、走行速度を自動で制御してくれる「インテリジェントスピードアシスト」などが採用されている。さらに、「ドライバーアテンションアラート(疲労運転警告)」は、走行車線の逸脱やステアリング入力など車両の挙動を常に監視し、疲労や居眠り運転を検知すると警告してくれる。「衝突被害軽減ブレーキ」は、歩行者やサイクリストの検知機能も備えられている。ヘッドライトは、全車にLEDタイプが採用され、従来モデルのキセノンタイプに比べて、ほぼ倍の明るさを実現しているという。

■ジープ「コンパス」(2021年マイナーチェンジモデル)のグレードラインアップと価格
Sport [FF]:3,460,000円
Longitude [FF]:3,850,000円
Limited [4WD]:4,350,000円
※価格はすべて税込

装備の充実などによって、車両価格も改訂されているのだが、かなり戦略的な値付けがなされていると言える。最も価格の安いスポーツでも、フロントとリアにLEDライトが採用され、さらにブラインドスポットモニターや前述のアクティブレーンマネジメントシステムなども装備。これらを価格に換算すると、25万円相当になる装備だとポンタス氏。しかし、先代からの上乗せ価格は10万円に抑えられ、車両価格は346万円となっている。これによって、「ジープ コンパススポーツは、このクラスの輸入 SUV としては最も手が届きやすい価格になっています」と強調するとともに、「若い世代の方々が、ジープを手に入れやすくする努力の一環です」と述べる。

中間グレードの「Longitude(ロンジチュード)」は、グロスブラックのルーフとミラーをまとったモデルで、先進安全装備をスポーツよりも、さらに充実させている。インテリジェントスピードアシストや「トラフィックサインレコグニション」「オートブレーキホールド」など 20万円相当の装備を追加しながら、車両価格は385万円。従来モデルからは、わずか2万円のアップにとどめられている。

そして、トップモデルのリミテッドは、 「LED プロジェクターヘッドライト」に「サラウンドビューカメラ」、「8ウェイパワーシート」「4 way ランバーサポート」を備えたフロントシート、さらには「ドライバーアテンションアラート」「ハンズフリーパワーリフトゲート」など、30万円相当の装備が追加されているにもかかわらず、現行モデルとの価格差はわずか1万円の、435万円に抑えられた。ちなみに、3つのバリエーションのうち、「Limited(リミテッド)」のみが4WDモデルになる。

インテリアが大きく変更されている理由

マイナーチェンジによって、インパネのほか、センターコンソールやドアパネルまで刷新された、新型「コンパス」のインテリア

マイナーチェンジによって、インパネのほか、センターコンソールやドアパネルまで刷新された、新型「コンパス」のインテリア

インテリアデザインについて、ジープのインテリアデザインを統括するクリス・ベンジャミン氏によると、「保守的なものには、したくありませんでした。また、素材も上質感があるものを使いたかった。さらに、収納スペースが足りないという声もあったので、これらをフォーカスし、デザインしていきました」と言う。特に、広々としたスペースを感じさせるために水平基調とし、ボルスターと呼ばれるインパネ中央がクロームでぐるりと囲まれたデザインによって、乗り込むと実寸以上の広々とした感覚に包まれる。このあたりは、とくに先代よりも大きく向上した点と言えよう。さらに、質感の向上もポイントのひとつだ。特に、従来モデルから比較するとまったく違うクルマという印象すら与えられており、目を見張るものがあった。

エクステリアはさほど変更されていないにもかかわらず、なぜここまでインテリアに手が加えられたのだろうか。ベンジャミン氏は、「コンパスのエクステリアは、すでにジープのいいところが表現できていると思いました。お客様が求めているものにも近く、すでにかなりモダンなデザインに仕上がっていますので、エクステリアは大きく変える必要はないと判断しました」。いっぽう、インテリアは「広さ感とともに、より多くの機能性やクリーンなデザインといった側面から、もっとやれることがあるのではと感じていました」とコメントする。

今回、パワートレイン系に手は加えられておらず、エンジンは2.4リッターを搭載し、最高出力は129kW(175ps)/6,400rpm、最大トルクは229Nm(23.4kg・m)/3,900rpmを発揮する。トランスミッションは、FFモデルのスポーツとロンジチュードが6速AT、4WDモデルのリミテッドには9速ATが搭載されている。

軽快な走行フィール、操作系のレイアウトなども良好

今回試乗したのは、コンパスの最上級モデルのリミテッドだ。借り出した車両は、まだ500kmほどしか走行しておらず、慣らしが済んでいないという点も考慮しながらお伝えしたい。

まず、クルマに近づきドアを開けると、セグメント以上の上質さを感じさせるインテリアが目に飛び込んできた。感覚的には、少なくとも2クラスは上の印象で、それだけでマイナーチェンジの大きな目的のひとつが達せられていることを実感できる。厚めのシートに腰を下ろし、ドアを引くとガシャリという剛性感のある音とともに閉じられた。

新型「コンパス」の試乗イメージ

新型「コンパス」の試乗イメージ

スタート、ストップボタンを押してエンジンをスタートさせ、剛性のあるセレクトレバーでDレンジを選ぶ。そして、アクセルを軽く踏み込むと、軽快にコンパスは走り始めた。市街地を走っていると、4WDのトルク配分は自動で変更され、それによる違和感もない。交差点で、フルロックに近いくらいステアリングを切ってみてもブレーキング現象などはなく、普通の乗用車と同じように扱うことができる。

乗り心地は硬く、ひょこひょこと落ち着きがなかったのだが、前述したように足回りの慣らしが済んでいないことが起因しているようだった。その後、3,000km以上を走っていた別の車両の新型コンパスに乗ったのだが、今回のような落ち着きのないフィーリングはまったくと言っていいほどなかった。

新型「コンパス」の走行イメージ

新型「コンパス」の走行イメージ

市街地でのストップアンドゴーにおいて、ブレーキのコントロールが非常にしやすく、踏力に応じた減速 G を確保することができるのは優秀に思える。また、フットレストが備えられているので、悪路などの走行時に体を支えたり、足を休めたりなどができるのもいい。また、シフトレバーなどのレイアウトも、一部の輸入車のように左ハンドルのままではなく、右ハンドル向けにレイアウトし直しているところなども高印象だ。

走らせてみて、首都高速道路のような速度域では、9速オートマチックが積極的にシフトを繰り返すので、きびきびとした走りが楽しめた。しかし、少々エンジンが高回転を好むようで、6速で走るようなところをあえて5速などを選択するといった印象なのは、少し気になった点だ。

レーンキープアシストの制御はいまひとつ

新型「コンパス」の走行イメージ

新型「コンパス」の走行イメージ

市街地を含めて、最も気になったのは安全運転支援機能だ。今回、初採用されたレーンキープアシストは、介入時のオン、オフが激しく、一気にステアリングにトルクがかかったり、それが外れたりするので、非常に気を遣う結果になり、疲れを誘発した。特に、横に大型トラックなどがいて、少し避けたいタイミングでいきなり介入されると、ちょっと驚いてしまう。結局、試乗の最中、レーンキープアシストはステアリングへの振動のみにリセットして走らせることになった。

インテリアの質感の高さは驚くばかりだが

新たに採用されたコックピット周りは、とてもシルエットがきれいで横方向への広がりが感じられるものだった。しかし、いろいろな制約があったのだろう。スイッチ類があまり整理されずに配置されている個所も見受けられ、とっさの時にどのスイッチを触ればいいかなど、迷う場面も多々あった。もちろん、慣れの問題もあるだろうが、それでも誤操作はありそうなレイアウトと思われた。

煩雑でわかりづらいセンターディスプレイ下のスイッチ類(上画像)と、使用頻度が高いにもかかわらず、下方に設置されているオーディオ、エアコン関連スイッチ(下画像)

煩雑でわかりづらいセンターディスプレイ下のスイッチ類(上画像)と、使用頻度が高いにもかかわらず、下方に設置されているオーディオ、エアコン関連スイッチ(下画像)

特に、パーキングアシストなどのスイッチ類と、その下にある空調、オーディオスイッチ類は逆のほうが使いやすいだろう。ただし、ハザードスイッチはそのままか、さらに独立した位置が望ましい。また、ドアミラーの位置がピラーから生えているので、死角を作ってしまっているのも少々気になった。

少しだけ、リアシートに座る機会があったのだが、実はフロントシートよりも乗り心地がよく感じられた。シートの背面は少し硬めだが、座り心地は悪くなく、路面からの突き上げも角が取れているように感じられた。また、ロードノイズもフロントシートに座るよりも静かで、もしかしたら特等席はリアシートかもしれないと感じたほどだった。

ジープは、さまざまなところに遊び心が隠されているのだが、このコンパスにも「セブンスロットグリル」やウイリスジープのモチーフなどがちりばめられており、それを見つけるたびにちょっと笑顔になってしまう。ジープといえば、本格的なオフロード車のイメージが強いという方もおられるかもしれない。その性能は担保したうえで、ちょっとオシャレな街乗り四駆のイメージを持たせたのが、このコンパスだ。サイズもそれほど大きくなく、4WD制御もその時々の最適解をクルマが導き出してくれる。価格も、ライバルの輸入車に比べれば決して高くはないので、お買い得な輸入車SUVとも言えるだろう。こういったSUVであれば、当然キャンプやアウトドアスポーツを楽しむために、高速道路などで長距離を移動する機会もあるはずだが、前述の通りリアシートも快適なので、長距離でも乗車した皆が楽しく移動できるはずだ。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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