バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
ただ流行に乗っただけじゃない完成度の高さを試乗で実感

抜群の安定感! ハーレーダビッドソンらしさを継承したアドベンチャー系「パン アメリカ1250」

ハーレーダビッドソンが初となるアドベンチャー系モデル「パン アメリカ1250」をリリース。世界的に人気の高いアドベンチャー系に、新型の水冷Vツインエンジンを搭載したモデルであることから多くの注目を集めている。現に、売れ行きは好調で、購入者の4割がハーレーダビッドソンに乗っていなかった新規ユーザーだという。新たな顧客層も開拓している、フロンティアスピリッツを感じる本モデルの魅力をお伝えしよう。

なお、パン アメリカ1250にはスタンダードモデル(価格は231万円〜/税込)と、電子制御サスペンションなどを装備した「パン アメリカ1250スペシャル」(価格は268万700円〜/税込)がラインアップ。今回は、パン アメリカ1250スペシャルを中心に紹介する。

アドベンチャー系モデルの文脈に沿ったデザイン

ハーレーダビッドソンといえば、空冷のV型2気筒エンジンを搭載した低い車体のマシンを思い浮かべる人が多いだろう。近年は、空冷エンジンが排出ガス規制に対して不利であることもあって、水冷エンジンを採用したモデルにも力を入れているものの、ラインアップの主力はやはり、空冷エンジンを積んだ、長く続く直線の舗装路をクルージングするようなマシンだ。ジャンルのカバー範囲は広くはないが、逆に、独自の世界観を確立してきたとも言える。そんな中、2021年2月に登場したパン アメリカ 1250は、同ブランドの現行モデルの中ではめずらしい、かなり腰高なスタイル。もともとヨーロッパで人気の高かったアドベンチャー系のバイクで、ちょっとしたオフロードも走れる長めのストロークのサスペンションと、高速巡航時にライダーに当たる風を防ぐカウルとスクリーンといった、アドベンチャー系の基本スタイルの文脈に沿った装備をパン アメリカ 1250も備えている。

ハーレーダビッドソンでは「アドベンチャーツーリングモデル」という位置づけとなるパン アメリカ 1250。広報写真にはオフロードを走行するシーンも多く、従来のハーレーダビッドソンのマシンとは一線を画する

ハーレーダビッドソンでは「アドベンチャーツーリングモデル」という位置づけとなるパン アメリカ 1250。広報写真にはオフロードを走行するシーンも多く、従来のハーレーダビッドソンのマシンとは一線を画する

ハーレーダビッドソン初のアドベンチャー系であるパン アメリカ 1250は、新設計のフレームに新開発された「Revolution Max 1250」という水冷V型ツインエンジンを搭載している。排気量1,250ccで、最高出力152PS/8,750rpm、最大トルク128Nm/6,750rpm。ハーレーダビッドソンとしては高回転型のエンジンとなっており、レブリミットは9,500rpmに設定されている。このエンジンは、フレームの一部を兼ねた構造となっているのが特徴。フロントフレーム、ミッドフレーム、テールセクションの3つのボトルで固定しており、この設計とすることで、高剛性と軽量化を高いレベルで両立している。

パン アメリカ1250スペシャルの全長は2,265mmで、ホイールベースは1,580mm。車重は258kg(スタンダードモデルは245kg)となっている。リアに装着されているパニアケースはオプション

パン アメリカ1250スペシャルの全長は2,265mmで、ホイールベースは1,580mm。車重は258kg(スタンダードモデルは245kg)となっている。リアに装着されているパニアケースはオプション

水冷エンジンになったとはいえ、Vツインのシルエットやエキゾーストパイプの取り回しは見た目にもハーレーらしさを感じるもの。なお、このエンジン(Revolution Max 1250)は同ブランドの中核を担うものとなるようで、2021年7月に発表された新型「スポーツスターS」にも搭載された

水冷エンジンになったとはいえ、Vツインのシルエットやエキゾーストパイプの取り回しは見た目にもハーレーらしさを感じるもの。なお、このエンジン(Revolution Max 1250)は同ブランドの中核を担うものとなるようで、2021年7月に発表された新型「スポーツスターS」にも搭載された

マフラーは、長めでカチ上げられたデザインに。同ブランドではめずらしいデザインだ

マフラーは、長めでカチ上げられたデザインに。同ブランドではめずらしいデザインだ

アドベンチャーという新ジャンルにチャレンジしたモデルではあるが、デザイン的には同ブランドらしさを強調したユニークな見た目に仕上がっている。アドベンチャーモデルらしくフロントカウルとスクリーンを備えているが、スクエアで横長なヘッドライトなど、フロントカウルは他メーカーの同モデルに似たものがないデザインを採用。伝統的なティアドロップ形状のガソリンタンクも、アドベンチャー系ではめずらしいものだ。また、足回りの装備も、同ブランドでは異色なセレクトとなっている。

ほかにはない独自性の高いフロントカウルが特徴的。知っている人ならひと目でパン アメリカ1250とわかる

ほかにはない独自性の高いフロントカウルが特徴的。知っている人ならひと目でパン アメリカ1250とわかる

スクリーンは2段階調整が可能。乗車したままでも手を伸ばせば簡単に変更できるので、信号待ちなどで気軽に調整できる

スクリーンは2段階調整が可能。乗車したままでも手を伸ばせば簡単に変更できるので、信号待ちなどで気軽に調整できる

アドベンチャーモデルではなかなか目にすることがない、長さのあるティアドロップ形状のタンク。底面が水平基調でバイクらしいシルエットを形作っている

アドベンチャーモデルではなかなか目にすることがない、長さのあるティアドロップ形状のタンク。底面が水平基調でバイクらしいシルエットを形作っている

イタリアのブレンボ社と共同開発したブレーキをフロントにはダブルで装着。ディスク径は320mmで、ラジアルマウントのモノブロックキャリパーを採用している。試乗車はスポークタイプのホイールを履いているが、キャストタイプを選ぶことも可能。スポークはリムの縁部分に配置され、チューブレスタイヤを履ける構造となっている。ホイール径は19インチ

イタリアのブレンボ社と共同開発したブレーキをフロントにはダブルで装着。ディスク径は320mmで、ラジアルマウントのモノブロックキャリパーを採用している。試乗車はスポークタイプのホイールを履いているが、キャストタイプを選ぶことも可能。スポークはリムの縁部分に配置され、チューブレスタイヤを履ける構造となっている。ホイール径は19インチ

リアブレーキもブレンボ製でディスク径は280mm。ホイールは17インチとなっている

リアブレーキもブレンボ製でディスク径は280mm。ホイールは17インチとなっている

マスターシリンダーもブレンボ製で、セミラジアルタイプを採用。従来のハーレーダビッドソンのバイクは、ブレーキなどのレバーが太かったが、パン アメリカ 1250は日本人の手でも操作しやすい細さだ

マスターシリンダーもブレンボ製で、セミラジアルタイプを採用。従来のハーレーダビッドソンのバイクは、ブレーキなどのレバーが太かったが、パン アメリカ 1250は日本人の手でも操作しやすい細さだ

そして、最近のバイクらしく、電子制御の装備も充実。ABSやトラクションコントロールはもちろん、走行モードの切り替えにも対応している。用意されている走行モードは「スポーツモード」「ロードモード」「レインモード」「オフロードモード」のほか、ユーザーがカスタマイズできるモードが2つと、オフロード走行時にフロントを上げたりリアをロックさせたりする操作にも対応する「オフロード+モード」の7種類。

走行モードの切り替えは右手側の「MODE」ボタンで行う。走行中に切り替えることも可能だ。多くのボタンが並んでいるルックスが最新のバイクらしい

走行モードの切り替えは右手側の「MODE」ボタンで行う。走行中に切り替えることも可能だ。多くのボタンが並んでいるルックスが最新のバイクらしい

選択している走行モードなどの情報は、6.8インチの大画面のタッチスクリーンパネルに表示される

選択している走行モードなどの情報は、6.8インチの大画面のタッチスクリーンパネルに表示される

速度表示の上にあるアイコンが、選択中の走行モードを示すもの。写真は「オフロードモード」選択時の状態

速度表示の上にあるアイコンが、選択中の走行モードを示すもの。写真は「オフロードモード」選択時の状態

ここまで紹介した内容は、スタンダードモデルも共通。ここからは、パン アメリカ1250スペシャルにのみ備えられている装備を見ていこう。電子制御のセミアクティブサスペンションや、停車時に車高を低くして足付きを向上させるアダプティブライドハイト(ARH)のほか、センタースタンド、マルチポジションブレーキペダル、タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)、アルミ製のスキッドプレート、Daymakerシグネチャーアダプティブヘッドランプ、ヒーター付きハンドグリップ、ハンドウィンドディフレクター、ステアリングダンパーが追加されている。スタンダードモデルとの価格差は約40万円あるが、これほど装備が充実している「スペシャル」はお得と言えるかもしれない。

フロントフォークは電子制御なので、キャップにはコードが繋がっている。その上にはステアリングダンパーも装備

フロントフォークは電子制御なので、キャップにはコードが繋がっている。その上にはステアリングダンパーも装備

リアサスペンションも電子制御。走行中にサスペンションが動くと車高が上がり、停車時には下がるARHも装備する

リアサスペンションも電子制御。走行中にサスペンションが動くと車高が上がり、停車時には下がるARHも装備する

ブレーキペダルは、ペダル部分を回転させると高さが変えられる機構を搭載。足首が動きにくいオフロードブーツを履いていても操作しやすくするための装備だ

ブレーキペダルは、ペダル部分を回転させると高さが変えられる機構を搭載。足首が動きにくいオフロードブーツを履いていても操作しやすくするための装備だ

コーナーリング時に車体が傾くと点灯するコーナーリングライトも含む、Daymakerシグネチャーアダプティブヘッドランプを装備

コーナーリング時に車体が傾くと点灯するコーナーリングライトも含む、Daymakerシグネチャーアダプティブヘッドランプを装備

オフロード走行時に飛び石などからエンジンやマフラーなどを保護するスキッドプレートも完備されている

オフロード走行時に飛び石などからエンジンやマフラーなどを保護するスキッドプレートも完備されている

グリップにはヒーターが装備されているので、冬のツーリングに役立つ。ハンドガードも備えられている

グリップにはヒーターが装備されているので、冬のツーリングに役立つ。ハンドガードも備えられている

ツーリングバイクとしての完成度を実感

パン アメリカ1250スペシャルでの試乗は、高速道路を走り、郊外のワインディングまで足を伸ばしてみる。少しではあるが、砂利敷きの林道も走ってみよう。雨が降る中での試乗となったが、逆に“旅バイク”としての完成度を検証することができそうだ。

身長175cmの筆者がまたがると、両足の土踏まずの辺りまで接地した。アドベンチャー系モデルは日本人の体型では足つきに難がある場合が少なくないが、パン アメリカ1250スペシャルは小柄な人でも安心して乗れるだろう

身長175cmの筆者がまたがると、両足の土踏まずの辺りまで接地した。アドベンチャー系モデルは日本人の体型では足つきに難がある場合が少なくないが、パン アメリカ1250スペシャルは小柄な人でも安心して乗れるだろう

足つき性のよさを実現した大きなポイントは、前述のとおり、アダプティブライドハイト(ARH)にある。ARHは、走行中にリアサスペンションがストロークするたびに少しずつ車高が上がり、時速が7km以下になると自動で下がるというもの。この機構のおかげで、走行中は必要なサスペンションストロークを確保しながら、停車時は高い足つき性を発揮する。実際、街乗りで渋滞に巻き込まれた際、大きな車体を安心して支えることができた。

アダプティブライドハイト(ARH)の効果で、停車時のシート高は830mmと、アドベンチャー系モデルとしては低め

アダプティブライドハイト(ARH)の効果で、停車時のシート高は830mmと、アドベンチャー系モデルとしては低め

街中を軽く流したあと、高速道路へ。車重が258kgある車体は街乗りでは重さを感じるが、高速道路に入ると、その重さがどっしりとした安定感に変わる。アドベンチャー系としては重心が低いため、スピードが出ても安定感はバツグン。自動車に乗っているような安心感に包まれた。スクリーンの風防効果も高く、高速巡航は非常に快適だ。おそらく、ホイールベースの長さも効いているのだろう。新開発された水冷のエンジンについては、ハーレーダビッドソンらしい鼓動感を感じさせつつも、少し大きめにアクセルを開けるとスムーズに回転が上昇し、車体を一気に加速させる。低回転でのトルク感は従来の空冷エンジンより薄めだが、その分、高回転はエキサイティング。ついついアクセルを開けたくなる特性だ。

直進安定性の高さとエンジンの気持ちよさは、高速道路を降りても感じられる

直進安定性の高さとエンジンの気持ちよさは、高速道路を降りても感じられる

一般道に降りても、郊外の道は巡航速度が高めなので気持ちよく流れに乗ることができる。シートの座り心地もよく、ハンドルも手を伸ばしたところにグリップがあるような自然なポジションなので、長時間のライディングでも疲れは少ない。休憩することも忘れて、どんどん走りたくなるのはアドベンチャー系らしい魅力だ。

その後、ワインディングに入っても安心感と快適性の高さは変わらない。車体が重いため、深くバンクさせて曲がるよりも、フィーリングのいいブレーキを握って速度を落とし、安定感の高さを生かしてバイクと一緒に曲がって行くほうが気持ちいい印象。特に、加速時のエンジンフィーリングが爽快なので、深く寝かせて曲がるよりも、立ち上がりの加速を楽しむような走り方が特性に合っているように感じた。

ワインディングでは雨が激しくなってしまったが、そんなコンディションでも不安を感じることなく走れるのは、ツーリングバイクとしての懐の深さだろう

ワインディングでは雨が激しくなってしまったが、そんなコンディションでも不安を感じることなく走れるのは、ツーリングバイクとしての懐の深さだろう

車体は重いものの、倒し込みの操作は決して鈍重ではない

車体は重いものの、倒し込みの操作は決して鈍重ではない

最後に少しだけ未舗装の林道を走ってみたが、予想以上の安心感と走破性を感じることができた。まず、重心が低く、足付き性もいいのでオフロードでも気負うことなく走れる。それでいて、走破性も高いため、小川のように水が流れている部分があるような林道も難なく通過できてしまった。少々身構えていたのだが、拍子抜けするほどスムーズに進んでいける。ただ、このような路面状況と筆者の腕では、積極的に楽しむようなライディングはできなかった。それでも、驚くほどスイスイ走破できるので、オフロードに不慣れな人でも不安感なく挑むことができるだろう。

試乗を終えて

正直なところ、試乗する前は、パン アメリカ1250スペシャルに対する期待感は大きいものではなかった。流行りに乗ってアドベンチャー系を出したのだろうという思いがあったからなのだが、実際に試乗してみると、そんな気持ちは消し飛び、「これは最高のツーリングバイクかもしれない」と思うまでに評価が上昇。そのくらい、安定感と快適性が高い。考えてみれば、これまでハーレーダビッドソンが作り続けてきたのは、独自の世界観のある“旅バイク”。足の長いアドベンチャーバイクのスタイルでも、重心の低さを感じる安定性は同ブランドならではのもの。カタチを変えても、その思想はパン アメリカ1250にもしっかりと受け継がれている。

そして、足付き性のよさが安心感の高さにつながることについても特筆しておきたい。特に実感したのは、未舗装路での走行時。もちろん、電子制御のサスペンションの出来のよさも影響しているだろうが、いざという時にいつでも地面に足がつける安心感があると、旅先で見つけた荒れた道に入ってみようという気持ちになれる。オフロードを積極的に楽しむのであれば、サスペンションストロークの長さは必須かもしれないが、ツーリング先でオフロードも楽しむというアドベンチャーバイクの使い方を考えると、足付き性のほうがメリットになる場面も多いだろう。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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