雪上ドライブ好きの自動車ライター、マリオ高野です。
今シーズンは愛車のスバル・先代「インプレッサG4 1.6i (5MT/AWD)」の冬タイヤを新調。ダンロップのスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX 03(ウインターマックス ゼロスリー)」を装着しました。
ダンロップの「WINTER MAXX」シリーズは、旧作(01/02)を長く愛用した経験があり、価格も含めた総合力の高さが大変気に入っています。とりわけ、耐摩耗性の高さは2世代前の製品「WINTER MAXX 01」で通年装着テスト(春から夏、秋のシーズンオフも使用して2万キロほど走行し、そこから冬に雪上/氷上性能をチェック)を実施して好結果が得られたことから、絶大な信頼を寄せるにいたりました。
今回装着したサイズは205/55R16。ホイールはBBS製の鍛造品です。クルマは2014年式(先代型)スバル・インプレッサG4 1.6i (5MT/AWD)
ドライ路面での印象は前作「02」に限りなく近いフィーリング。スタッドレスタイヤとしては硬質で剛性が高く、高速域でヨレる感覚は最小限です
パターン設計を工夫し、より均一に摩耗させることで、新品時からの外観変化を抑制。摩耗してもパターン効果を維持できます
固められた圧雪と、アイスバーンと呼ばれる凍結路面を中心に走った結果、うたい文句通りの性能だと実感しました
トレッド面を見ると、溝やサイプと呼ばれる切れ目などから、雪がしっかり落ちていることがわかります
雪上でトレッド面を確認すると、つかんだ雪をしっかり飛ばす効果が高いことを実感させます
雪面にきれいなトレッドパターンの跡が刻まれることからも、雪上性能の高さをうかがい知ることができます。
仕事で乗る別のクルマには「WINTER MAXX 02」を装着し、3シーズン目を迎えていますが、旧作01を超える耐摩耗性や氷上性能の高さに感心しています。それゆえに「03」への期待が高まったのでした。
また、筆者が同社のタイヤを積極的に選ぶ理由のひとつに、モータースポーツ活動で活躍しているというイメージがあります。たとえば「スーパーGT」という国内最高峰レースに参戦するスバルのマシンもダンロップを採用。2021年シーズンはGT300クラスの年間チャンピオンを獲得するなど技術力の高さを実証し、そのイメージを自分の愛車で味わいたいとの思いが強いのです。
そんな理由から今回装着した「WINTER MAXX 03」の注目ポイントは、旧モデル比で22%向上したとされる氷上ブレーキ性能の高さと、旧モデル比で36%も向上したという40%摩耗時の制動距離比。つまり、冬の道路でもっとも危険な氷に強く、摩耗が進んでも性能の劣化が少ないのです。
高密度ゴムで摩耗のきっかけを減らすことでも摩耗を抑制。タイヤに混ざるシリカの分散性を高める新ポリマーも、効きの長持ちに寄与します
ダンロップではスタッドレスタイヤのロングライフの基準として5000km×4年という数字を公表。もちろん03もその基準を満たしています
そもそも氷の上でタイヤが滑るのは、氷とタイヤの間にミクロの水膜が介在して摩擦力を失うためで、ぬれた手でガラスを触ると滑りやすくなるのと同じ原理です。どのタイヤメーカーもスタッドレスタイヤの氷上グリップを高めるため、この水膜を除去する技術を日夜磨いているわけですが、ダンロップは氷面に介在する水膜を除去する速度にこだわり、「ナノ凹凸ゴム」と呼ばれる新素材を開発。凹凸構造の突起部分がいち早く水膜に到達し、除水が始まるタイミングを早めました。
タイヤが転がるごとに無数の突起部分が連続して除水を行い、タイヤが氷(路面)に密着するまでの時間を短縮するという、新しい発想から氷上性能を高めたのです。除水時間を短縮すると、タイヤが氷(路面)に密着する時間が長くなるので、おのずと氷上性能が向上するということなんですね。
タイヤのトレッド表面にある凹凸構造自体が大変柔軟性にすぐれたゴムなので、氷面に隙間なく密着します。接地における密着面が広くなったことにより、氷との密着力が大幅に向上。氷上ブレーキ性能は旧モデル比で22%、氷上コーナリング性能は11%もアップしたのでした。
気温が氷点下10℃以下になってもトレッド面の柔軟性は失われず、むしろより食いつく感覚が得られることも確認しました
人が立って歩くのも困難なほど滑りやすい路面でも、期待する以上の高いグリップ感を発揮しました
どれだけ氷上性能に優れたスタッドレスタイヤでも、黒光りしたアイスバーンやミラーバーンと呼ばれる最悪レベルに滑りやすい状況では予想以上に滑ってしまうことがあるので、くれぐれも慎重さを忘れないようにしましょう
また、この「ナノ凹凸ゴム」は、前述した氷上での“効きが長持ちする”特性も備えています。
摩耗しても新たな凹凸構造が生まれてくるという「MAXXトリップトリガー」という構造により、表面が溶けても新たな凹凸構造が再出現。さらに前作「02」から受け継がれたゴムと軟化剤の二面性を持つ「液状ファルネセンゴム」により、低温での密着力とゴムのやわらかさを実現。タイヤ内部のオイルがしみ出にくいなど、様々な劣化を抑える工夫が凝らされているのです。
そんな「WINTER MAXX 03」を装着した愛車でさまざまな路面を走ってみると、まず乾いたアスファルトでは前作「02」同様に、スタッドレスタイヤとしては引き締まった感覚が印象的。高速道路でややペースを上げても、スタッドレスタイヤとしては剛性が高く、硬質感をともなったフィーリングでした。この点も前作「02」と変わらないと言えるでしょう。
標高1300〜1400mにある真冬の雪山を走ってみると、雪上路面でのグリップ感はとても頼もしく、ブレーキ、コーナリングともに不満はありません。前作「02」でも秀逸だった、タイヤの溝が雪をつかみ固める力と、つかんだ雪を飛ばす性能はしっかり受け継がれていることも確認できます。
こうした雪上で求められる「ひっかく力」と、氷上で求められる「密着する力」は技術的に相反するものであり、両方を高めることはとても難しいのですが、「WINTER MAXX 03」は見事にこれらを両立。前作02と感覚的にはなんら変わらない雪上性能とドライグリップ性能を維持できていることが確認できました。
気温が氷点下9℃ほどまで下がる状況では、路面のいたるところにアイスバーンやミラーバーンと呼ばれる極めて滑りやすく危険な部分が出現。こうした路面では、どんな高性能なスタッドレスタイヤでも滑って制動距離が伸び、コーナリング時の安定感も損なわれるものですが、「WINTER MAXX 03」は予想以上の粘りを見せてくれます。
黒光りした最悪レベルのミラーバーンが続く下り勾配など、可能なかぎり速度を落とし、慎重度マックスな運転を心がけることが必要となる状況でも、おおむね期待(予想)どおりに止まり、曲がることができるので、神経をすり減らす系の精神的な負担が大幅に軽減されるでしょう。
前作「02」でもいまだ頼もしく思える氷上での前後の縦グリップ(加速とブレーキ)はさらに力強くなり、「02」ではやや物足りなかった横方向のグリップ(曲がり)も、明確に向上していることが確認できます。欲を言えば、横方向のグリップ感がさらにあれば完璧ですが、ドライ性能や雪上性能、価格などをおおむね維持したまま、ここまで氷上性能を高めたことを思えば、十分に期待以上だと言えます。
注目の“効きが長持ちする”性能については、まだ新品同様のため確認できませんが、過去作の01、02で実感できた耐摩耗性の高さからして、おおいに期待できるでしょう。
走行距離や管理の仕方にもよりますが、ウインターマックス02/03なら4シーズンは普通に安心して使えるでしょう
“効きが長持ちする性能”の秘訣は、摩耗が進んでも凹凸構造が損なわれないこと。とはいえ、スタッドレスタイヤは溝の深さが50%以下になると冬タイヤとして使用できないので、定期的に摩耗具合をチェックすることを忘れないようにしましょう
2018年式(先代型)スバル・WRX S4で「02」を装着して3シーズン目になりますが、現状では特に目立った劣化は確認されていません。高重量なハイパワー車でも耐摩耗性の高さを実証しました
純粋な耐摩耗性では前作「02」ほどには高くないとされながらも、摩耗が進んでからの性能の落ちは02よりも少ないということで、結局のところ長く使うにはどっちが良いのか悩んでしまうところですが、総合力ではやはり最新の03のほうが高いのは間違いありません。
ただ、ドライ性能と雪上性能、耐摩耗性の高さでは02もまだまだ商品性が高いと言えるので、場合によっては02をチョイスするのもまったくもってアリだと思います。冬のシーズンが長い地域、また走行距離が伸びがちなドライバーには02もオススメできます。
1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。3台の愛車はいずれもスバルのMT車。