ホンダは、2022年5月27日に、6代目となる新型「ステップワゴン」を発売した。
ホンダ 新型「ステップワゴン」が、2022年5月27日に発売された。新型は、シンプルで塊感のあるエクステリアへ刷新されたほか、リビングのようにくつろげる居住性の高さなどを目指して開発された
新型ステップワゴンの納期を販売店にたずねると、以下のような返答であった。「新型ステップワゴンは、2022年2月から販売店で予約受注を開始している。納期は、2022年5月下旬に注文した場合、1.5L VTECターボエンジン搭載車は2022年10月ごろ、e:HEV(ハイブリッド)搭載車は2022年11月ごろになる」と言う。ちなみに、販売店に試乗車が配備されるのは「2022年6月以降」とのことなので、試乗して納得した上で契約すると、納車は2022年末〜2023年になるかもしれない。ティザーキャンペーンの開始から数えると、試乗してから購入するまでには約1年の歳月を要するわけだ。
市街地を模したホンダのテストコースで、新型「ステップワゴン」のエアーとスパーダのe:HEV搭載車に試乗したので、乗り心地や運転のしやすさ、居住性などを中心にレビューしたい
今回、市街地が再現されたテストコースにおいて、新型ステップワゴン e:HEVのエアーとスパーダに試乗したので、ハイブリッドのフィーリングや新型モデルにおける運転のしやすさ、居住性の高さなどを中心にお伝えしたい。
まず、新型ステップワゴン e:HEVの基本メカニズムについては、先代型と同じものだ。2L直列4気筒エンジンは主に発電機を作動させ、その電気を使ってモーターがタイヤを駆動するのが基本となっている。また、高速道路などにおける巡航時などには、エンジンがホイールを直接駆動して燃料消費量を節約する制御に切り替わるが、通常走行時はモーター駆動なので、加減速のフィーリングは電気自動車に近いものだ。
新型「ステップワゴン」エアー e:HEV搭載車の試乗イメージ
発進時にアクセルペダルを軽く踏み込むと、モーターが機敏に反応して速度が滑らかに高まっていく。この特徴は、モーター駆動ならではの感覚だ。そして、新型では先代型以上にノイズが抑えられており、静粛性を向上させている。
また、新型ステップワゴンはe:HEVの制御が改善されていることにも注目したい。熱効率を向上させて、実用域の燃料消費量を抑えている。さらに、新型では運転感覚にも配慮されている。e:HEVに搭載されているエンジンは、前述の通り発電用だ。アクセル操作に応じて動力性能を変化させるのは、エンジンではなく駆動用モーターのほうになる。したがって、エンジンは走行状態に関係なく発電効率を追求できる。だが、発電効率を突き詰めてエンジン回転数と走行状態が一致しなくなると、ドライバーは不自然な感覚に陥る。
新型「ステップワゴン」エアー e:HEV搭載車に試乗。e:HEVならではの静粛性の高さや、全方位における良好な視界による運転のしやすさが特徴的だ
そこで、新型ステップワゴンでは、効率を悪化させないように熱効率の向上などを図りながら、エンジン回転数とアクセル操作などによる走行状態をある程度まで同期させている。そのため、新型ステップワゴンを運転すると、モーター駆動のハイブリッド車であることを忘れてしまうほどだった。静粛性が高く、滑らかなガソリンエンジン搭載車のような、自然な感覚で運転できるのだ。
ホンダのテストコース内は、信号機が設置されているなど本格的な市街地を模したコースとなっている
また、新型ステップワゴンは、交差点やカーブを曲がる時の操舵感も上質な感覚だ。ステアリングホイールを回し始めた時から、車両の向きが正確に変わり、運転がしやすく感じる。
足まわりの設定は、先代型に比べると乗り心地を向上させるために、柔軟性が少し増している。16インチタイヤを装着するエアーとスパーダは、路面の細かな凹凸が伝わりにくい。段差を乗り越える時も、突き上げ感は抑えられている。この足まわりの変更によって、カーブを曲がる時にはボディが先代に比べて少し大きめに傾くのだが、不安を感じるようなことはなかった。後輪の接地性を優先させているので、挙動の変化が穏やかに進むからだ。
乗り心地と走行安定性が両立できている背景には、ドアの開口部付近の補強など、ボディ剛性を向上させていることにある。車両の基本性能が高められたことで、快適性と安全性をバランスよく向上することができている。
新型「ステップワゴン」エアーのフロントエクステリアとリアエクステリア
新型ステップワゴンは、先代型に比べてボディが拡大されている。先代型の標準ボディは5ナンバー車だったが、新型はエアー、スパーダともに3ナンバー車となった。新型の全長は、エアーが4,800mm、スパーダは4,830mmで、全幅は両グレードともに1,750mmになる。先代型の標準ボディと新型のエアーを比べると、110mm長く、55mmワイドになった。
新型「ステップワゴン」スパーダのフロントエクステリアとリアエクステリア
ここまでボディが拡大すると、普通であれば運転が難しくなると心配するのだが、実際に運転してみると、さほど影響はなかった。フロントピラーの位置を、先代型に比べて70mm車内側に引き寄せることで、ななめ前方が先代型よりも見やすくなっていることなどが大きい。さらに、ボンネットの上面が平らに仕上げられており、スッキリとさせていることなども、前方視界にいい影響を与えている。さらに、新型ではボンネットが視界に入るので、ボディの先端や車幅もわかりやすい。
最小回転半径は、先代型と同じく16インチタイヤ装着車が5.4mで、17インチタイヤ装着車が5.7mだ。16インチなら、ミドルサイズミニバンとして小回りの利きに不満はないだろう。テストコースでは、Uターンを試すこともできたが、前述のようにボディの先端がわかりやすいこともあって運転しやすかった。
ただし、全幅が55mm広がっているために、狭い駐車場などでは乗降性に差が生じるだろう。特に、1列目のドアは横開き式なので、開閉時に注意したい。いっぽう、後席側はスライドドアなので、開閉時にドアパネルが外側へとあまり張り出さない。新型では、駐車場所に応じて、1列目から2列目に移動して乗り降りすることなども考えたい。
新型のボディサイズは、先代型に比べて拡大されているが、車内の広さについては同程度だ。全長の拡大は、衝突安全性の向上に費やされ、全幅については外観の存在感を強めることに使われている。新型の外観を見ると、ドアパネルが外側へと少し張り出している。それでも、サイドウィンドウなどの室内幅は少し広がっているので、開放感がともなう。
新型「ステップワゴン」エアー(ガソリンエンジン搭載車)のインテリア。先代に比べてインパネが水平基調になり、すっきりとした開放感のある印象を受ける
車内に入ると、インパネ周辺は水平基調になっていて視認性がいい。質感も満足できるものだが、シフトスイッチには注意したい。
新型「ステップワゴン」e:HEV搭載車のシフトは、スイッチタイプの「エレクトリックギアセレクター」になっている
新型ステップワゴンのe:HEV搭載車では、「アコード」などと同じく、シフトチェンジの際にスイッチを押すタイプ(ホンダでの名称は「エレクトリックギアセレクター」)になったので、特にDレンジは慣れないと扱いにくい(ガソリンエンジン搭載車は、通常のATシフトレバーを採用)。ユーザーによっては、操作性が先代型よりも悪くなったと感じるかもしれない。
新型「ステップワゴン」エアーの1列目シート
シートの座り心地は、1列目シートはサイズに余裕があって快適だ。特に、エアーに使われているファブリックのシート生地は伸縮性があり、座り心地は柔軟に感じる。
新型「ステップワゴン」エアーの2列目シート
2列目シートは、新型になって床と座面の間隔が10mm広がり、着座姿勢が最適化された。サイズに余裕があって、ゆったりと座れる。
新型「ステップワゴン」エアーの3列目シート
3列目シートは、シートを床下に格納するためにサイズが小さい。座面は、1列目シートに比べて約70mm短く、大腿部に少々違和感が生じる。それでも、先代型に比べると座面の厚みは20mm増しており、底突き感は抑えられている。また、床と座面の間隔が20mm拡大しているので、膝が持ち上がるような着座姿勢も改善されている。新型の3列目シートは、先代型に比べると居住性は大幅に向上している。
また、新型では1、2列目シートの背もたれが少し細身に仕上げられており、2、3列目シートに座る乗員の圧迫感が解消されている。さらに、サイドウィンドウや内張りの形状も水平基調に仕上げられており、クルマ酔いが生じにくいように作り上げられている。
車内の広さは先代型と同程度だが、身長170cmの大人6名が乗車して、2列目シートの膝先空間を握りコブシ2つ分に調節すると、3列目シートにも同じくらいの余裕が生じる。3列目シートは、前述のように座り心地を向上させているので、多人数の長距離移動にも対応できるだろう。
以上のように、新型ステップワゴンはエクステリアの雰囲気こそ少々地味ではあるものの、大勢で乗車するミニバン本来の機能を充実させている。ドライバー、乗員ともに視界にすぐれており、運転感覚や快適性も満足できるものだ。
■ホンダ 新型「ステップワゴン」のグレードラインアップと価格
※価格はすべて税込み
-e:HEV搭載車-
Air [FF]:3,382,500円(7人乗り)/3,404,500円(8人乗り)
SPADA [FF]:3,641,000円(7人乗り)/3,663,000円(8人乗り)
SPADA PremiumLine [FF]: 3,846,700円(7人乗り)
-1.5LVTECターボエンジン搭載車-
Air [FF]:2,998,600円(7人乗り)/3,020,600円(8人乗り)
Air [4WD]:3,240,600円(7人乗り)/3,262,600円(8人乗り)
SPADA [FF]:3,257,100円(7人乗り)/3,279,100円(8人乗り)
SPADA [4WD]:3,477,100円(7人乗り)/3,499,100円(8人乗り)
SPADA PremiumLine [FF]:3,462,800円(7人乗り)
SPADA PremiumLine [4WD]:3,653,100円(7人乗り)
左から、新型「ステップワゴン」の「スパーダ」、「エアー」、「スパーダプレミアムライン」グレード
グレードは、1.5L VTECターボエンジン搭載車(ガソリン車)、e:HEV搭載車ともにエアー、スパーダ、スパーダプレミアムラインの3種類がラインアップされている。買い得なグレードは、後方の並走車両を検知して知らせる「ブラインドスポットインフォメーション」などが標準装着されているスパーダだ。スパーダの価格は、エアーに比べて258,500円高いが、価格差に見合う装備が採用されている。
パワーユニットは、e:HEVの価格はターボに比べて383,900円高いが、購入時に収める税額は、スパーダの場合でe:HEVのほうが75,700円安い。そうなると、実質価格差は308,200円に縮まる。そこで、レギュラーガソリンの1リッター当たりの価格を160円で計算すると(今の170円は高すぎるので)、8〜9万kmを走れば、燃料代の差額で価格差を取り戻せる。少々距離が長いが、e:HEVは加速力に余裕があって、走りも静かで滑らかだ。このような上質感も考慮すると、ベストグレードはe:HEVスパーダ(3,641,000円)になるが、予算が足りないのであれば、VTECターボのスパーダ(3,257,100円)やエアー(2,998,600円)も合わせて検討しよう。
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト