バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂

ヤマハ「SR400」が欲しかった人に推せる!クラシカルな空冷単気筒ベネリ「インペリアーレ400」

東京モーターサイクルショー2022」でお披露目され、大きな注目を集めた、イタリアンブランド「Benelli(ベネリ)」の「インペリアーレ400」。空冷単気筒エンジンを搭載した車体はディテールにいたるまでオーソドックスなデザインにまとめられ、細部までチェックしているバイクファンが多かったことを覚えている。実際、2022年6月の発売以降も高い人気を維持し、ファーストロッドはすでに完売状態。次のロッドも予約がかなり埋まっているという。そんなインペリアーレ400に試乗してみた。

イタリアンルーツのクラシカルなルックス

インペリアーレ400は、ベネリとモトビ(ベネリから独立して創立されたメーカー)が1950年代にコラボでリリースし、名車と評価を得ている「Imperiales」をオマージュした新モデル。374ccの空冷単気筒エンジンを、オーソドックスな鋼管ダブルクレードルフレームに搭載し、クラシカルな雰囲気に仕上げられている。クラシカルな単気筒モデルといえば、2021年に惜しくも生産終了となったヤマハ「SR400」を思い起こす人も多いだろう。実は、SR400は、2021年の販売台数が400ccクラスの中で1位だったマシン。そして2位は、2021年に新型モデルとして登場した、同じく空冷単気筒エンジンを搭載するホンダ「GB350」だ。最新の電子制御を備えパワフルなエンジンを搭載したマシンも選べる中で、シンプルな空冷単気筒モデルが1、2位を占めるというのは興味深い。

左写真がヤマハ「SR400」で、右写真がホンダ「GB350」。400ccクラスにおける2021年の販売台数1位と2位の人気車種だ

左写真がヤマハ「SR400」で、右写真がホンダ「GB350」。400ccクラスにおける2021年の販売台数1位と2位の人気車種だ

ただ、現行で販売されているGB350が生産終了となったSR400の代わりになるかというと、やや疑問を感じる人もいるのではないだろうか。GB350もとても魅力的なマシンではあるが、キャストホイールを採用しているため、クラシカルな雰囲気という点ではSR400とは少々異なる。その点、インペリアーレ400はスポークホイールを装備し、細部のパーツもクラシカルなデザインとなっているので、SR400のようなマシンが欲しいバイクファンには気になる存在だろう。

インペリアーレ400のサイズは2,170(全長)×820(全幅)×1,120(全高)mmで、車重は205kg。メーカー希望小売価格は668,800円(税込)となっている

インペリアーレ400のサイズは2,170(全長)×820(全幅)×1,120(全高)mmで、車重は205kg。メーカー希望小売価格は668,800円(税込)となっている

エンジンは空冷単気筒でSOHCの2バルブ。15.5kw(21PS)を5,500rpmで発揮する。カムカバーにはベネリのマークの刻印も

エンジンは空冷単気筒でSOHCの2バルブ。15.5kw(21PS)を5,500rpmで発揮する。カムカバーにはベネリのマークの刻印も

キャプトンタイプと呼ばれるクラシカルなデザインのマフラー。表面はヘアライン仕上げとなっており、ヒートガードも装着される

キャプトンタイプと呼ばれるクラシカルなデザインのマフラー。表面はヘアライン仕上げとなっており、ヒートガードも装着される

ホイールはスポークホイールで、フェンダーも金属製となっているなど、クラシカルなディテール。フロントのタイヤサイズは100/90-19

ホイールはスポークホイールで、フェンダーも金属製となっているなど、クラシカルなディテール。フロントのタイヤサイズは100/90-19

片押し2ピストンタイプのディスクブレーキにはABSも付いており、最新の規制に対応。ブレーキキャリパーにはベネリのロゴが刻まれる

片押し2ピストンタイプのディスクブレーキにはABSも付いており、最新の規制に対応。ブレーキキャリパーにはベネリのロゴが刻まれる

リアブレーキもディスクで十分な制動力とコントロール性を確保。リアのタイヤサイズは130/80-18

リアブレーキもディスクで十分な制動力とコントロール性を確保。リアのタイヤサイズは130/80-18

ホイールのハブ(軸)部分をよく見ると、昔のドラムブレーキ車を思わせるデザインとなっていた

ホイールのハブ(軸)部分をよく見ると、昔のドラムブレーキ車を思わせるデザインとなっていた

ほかのパーツに目を向けても、こだわりが感じられる。シートは、1950〜60年代のヨーロッパ車に採用されていたタンデムシートを分割したセパレートタイプ。背面にスプリングが付いているなど、手が込んでいる。灯火類もあえてLEDを使わず、クラシカルな雰囲気を重視しており、バイクにくわしい人でなければ、インペリアーレ400が2022年に登場したとは思わないだろう。それでいて、リアにはサイドバッグを装着したときにホイールへの巻き込みを防止するパイプが標準装備されていたりと、使い勝手も配慮されている。

クラシックバイクを思わせるセパレートタイプのシート

クラシックバイクを思わせるセパレートタイプのシート

シート下には、リアサスペンションがなかった時代に採用されていたスプリングが装備されている

シート下には、リアサスペンションがなかった時代に採用されていたスプリングが装備されている

ライトやウィンカーはクラシカルな砲弾形状であるだけでなく、あえてハロゲンを採用。暖かみのある光を放つ

ライトやウィンカーはクラシカルな砲弾形状であるだけでなく、あえてハロゲンを採用。暖かみのある光を放つ

ライトステーもフロントフォークまで覆う黒い一体成型となっており、クラシカルな雰囲気を盛り上げる

ライトステーもフロントフォークまで覆う黒い一体成型となっており、クラシカルな雰囲気を盛り上げる

リアの灯火類も当然ハロゲン。リアホイールの横にある黒いパイプは、サイドバッグを装着した際に巻き込みを防止するもの

リアの灯火類も当然ハロゲン。リアホイールの横にある黒いパイプは、サイドバッグを装着した際に巻き込みを防止するもの

伝統的なティアドロップ形状のタンク。ニーグリップ用のラバーが貼り付けられているのも旧車的な雰囲気だ

伝統的なティアドロップ形状のタンク。ニーグリップ用のラバーが貼り付けられているのも旧車的な雰囲気だ

ハンドルは当然パイプタイプで、メーターは砲弾型の2眼式。どちらもアナログな針が動くタイプだ

ハンドルは当然パイプタイプで、メーターは砲弾型の2眼式。どちらもアナログな針が動くタイプだ

ステップは大きめのラバーで覆われている。シフトレバーはシーソー式ではなく、一般的なタイプ

ステップは大きめのラバーで覆われている。シフトレバーはシーソー式ではなく、一般的なタイプ

クラシカルな乗り味を現代の技術で再現

細かい部分までクラシカルなパーツがセレクトされ、現代のバイクとは思えないルックスに仕上がっているインペリアーレ400は、どのような乗り味なのだろうか。街中から高速道路、ワインディングをそれぞれ走行し、その性能とフィーリングを味わってみた。

足つき性は良好。身長175cmの筆者の場合、両足のかかとまでしっかりと接地する。車体がスリムなこともあり、小柄な人が乗っても安心できそう

足つき性は良好。身長175cmの筆者の場合、両足のかかとまでしっかりと接地する。車体がスリムなこともあり、小柄な人が乗っても安心できそう

ライディングポジションはかなりアップライトで、背筋が伸びた姿勢。ハンドルは、そこから手を伸ばしたところにちょうどグリップがある位置関係だ。現代的なバイクと比べるとステップはやや横に張り出しており、ニーグリップ用のラバーにちょうど膝が当たる絶妙なもの。街中やツーリングでは視界もよくてリラックスできるが、高速走行ではやや上体に風を受けそうだ。

エンジンスタートがセル式なのは、キャラクター的に近しいヤマハ「SR400」のキック式に比べ、体力に自信がない人にもやさしい設計。スタートの“儀式”が欲しいと思うライダーもいるかもしれないが、気軽に乗れるメリットは大きい。そして、エンジンを始動すると、パルス感のある元気のいい排気音が耳に届く。だが、座っているシートやグリップには驚くほど振動が伝わってこない。振動とセットだった昔の単気筒とは異なり、インペリアーレ400が現代の設計であることを感じさせる。

クラッチをつないで走り出しても不快な振動は皆無だが、エンジンの鼓動感とタイヤが地面を蹴るようなトラクションなど、単気筒エンジンの魅力といえる部分はきちんと残されている。374ccの排気量があるので、低速からトルクがあり、街中はもちろんワインディングでも非力さを感じることはなかった。

坂道を登っていくシーンでもトルクが十分にあり(29Nm/4,500rpm)、21PSというスペックから想像するよりもパワフル

坂道を登っていくシーンでもトルクが十分にあり(29Nm/4,500rpm)、21PSというスペックから想像するよりもパワフル

高速道路ではさすがにパワフルとは言い難いが、上体が起きたライディングポジションであまり飛ばす気にならないこともあり、必要にして十分。アクセルを大きめにひねると意外とピックアップは鋭く、レッドゾーンの始まる7,000rpmまでタコメーターの針が跳ね上がっていく。このあたりは、低回転でゆっくり走ることをよしとしないイタリアンブランドらしいところだ。

そして、ワインディングを走ってみると、意外と言っては失礼だが、コーナーが続く道を走るのがとても楽しい。ハンドリングは、フロントが19インチ、リアが18インチのホイールらしく安定感のあるものだが、向きが変わるのを待たされるような感覚はなく、想像していたラインよりもコンパクトに曲がっていける。現代のスポーツバイクと比べるとバンク角も少なく、コーナーを攻めるようなマシンではないが、素直なハンドリングを生かしてバイクと一緒に曲がって行く感覚は、バイクを操るうえでは欠かせないものだ。

予想外と言っては失礼なくらい、ワインディングを走るのが楽しい。ハンドリングにクセがないので、初心者が乗ってもバイクを操る楽しさを味わえるだろう

予想外と言っては失礼なくらい、ワインディングを走るのが楽しい。ハンドリングにクセがないので、初心者が乗ってもバイクを操る楽しさを味わえるだろう

試乗を終えて

「東京モーターサイクルショー2022」でインペリアーレ400を見て、その場で注文を決めた人も多かったと聞いているが、今回試乗して、スタイルを見ただけで購入を決定したとしても後悔することはないマシンだと言える。セルスターターがあり、足つき性も良好なので気軽に乗れるだけでなく、ベテランライダーをも満足させる素直なハンドリングや、必要なときにパワーを取り出せるピックアップのよさも完備。また、クラシカルなルックスと単気筒らしいパルス感を演出しつつ、絶妙な乗りやすさを実現している。週末のツーリング用に購入したとしても、普段の通勤や買い物などにも使いたくなる魅力もあるので、インペリアーレ400を購入したらいろいろなところに出かけたくなるはずだ。

細部までこだわりが感じられる車体は所有感も高く、ガレージにインペリアーレ400がある生活を考えるだけでワクワクさせられる

細部までこだわりが感じられる車体は所有感も高く、ガレージにインペリアーレ400がある生活を考えるだけでワクワクさせられる

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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