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日産の軽EV「サクラ」が販売絶好調!今後の課題は補助金の行方

日産の新型軽EV「サクラ」の販売が好調だ。2022年5月20日に発表され、およそ2か月後の7月28日には23,000台を受注した。サクラは、電気自動車としては異例のヒット車となっている。

2022年6月16日に発売された、日産の新型軽EV「サクラ」。ボディは、取り回しのしやすい軽自動車サイズで、最大195Nmの高いトルクを発生させるモーターが搭載されていることによって軽快な走りを実現している

2022年6月16日に発売された、日産の新型軽EV「サクラ」。ボディは、取り回しのしやすい軽自動車サイズで、最大195Nmの高いトルクを発生させるモーターが搭載されていることによって軽快な走りを実現している

サクラの製品画像
日産
4.19
(レビュー21人・クチコミ1986件)
新車価格:233〜294万円 (中古車:―円

サクラが高い人気を得ている背景には、軽自動車サイズの電気自動車であることが挙げられる。電気自動車は、1回の充電で走行できる距離がエンジン搭載車に比べて短く、改善するには大容量のリチウムイオン電池が必要になる。だが、大容量のリチウムイオン電池を搭載するとボディは重くなって、車両価格も高くなる。電気自動車で航続可能距離を伸ばそうとすると、現時点ではさまざまな弊害が生じてくるのだ。

日産「サクラ」は軽自動車であるため、ボディサイズ(全長×全幅×全高)は3,395×1,475×1,655mmと、軽自動車規格のサイズ内に収められている。また、最小回転半径は4.8mと、小回り性能も良好だ

日産「サクラ」は軽自動車であるため、ボディサイズ(全長×全幅×全高)は3,395×1,475×1,655mmと、軽自動車規格のサイズ内に収められている。また、最小回転半径は4.8mと、小回り性能も良好だ

だが、軽自動車ということであれば、電気自動車の見方も変わってくる。軽自動車は、街中を中心とした移動手段のひとつなので、長距離を走る機会は少なくて済む。たとえば、自宅にミニバンやSUVなどのファーストカーをすでに所有している人が、軽自動車サイズの電気自動車を近距離用のセカンドカーとして使うのならば、走行距離はそれほど問題にはならないはずだ。

しかも、軽自動車は車重が軽く、加速の際などに大きなパワーを必要としないので、電力消費量は少なくて済む。さらに、軽自動車はボディも小さく、混雑した街中や駐車場で運転しやすい。日本で、電気自動車を普及させるなら、セカンドカーとして使いやすく、走行距離を問われない軽自動車のカテゴリーは最適だ。そのような理由もあって、サクラは売れ行きが伸びている。

日産「サクラ」は、軽自動車であることや航続距離の短さから、特にセカンドカー需要において高い利便性を発揮するものと考えられている

日産「サクラ」は、軽自動車であることや航続距離の短さから、特にセカンドカー需要において高い利便性を発揮するものと考えられている

したがって、サクラを推奨できるユーザーは、自宅に充電設備を設置できる一戸建てに住み、日産の「セレナ」や「エクストレイル」といったファーストカーを併用する人達だ。もちろん、クルマを使った移動が短距離にかぎられるならば、サクラ1台のみの所有でも問題はない。

さらに、サクラは走行コストを節約したいユーザーにも適している。リチウムイオン電池の総電力量は20kWhで、1回の充電で180kmを走行できる。ベーシックな東京電力の従量電灯Bで電気料金を計算すると、1kWhが19.88円なので、20kWhなら397.6円だ。この金額で180kmを走行すると、1km当たりの走行コストは2.2円になる。

いっぽう、日産の軽自動車である「デイズ」のNAエンジン搭載車は、WLTCモード燃費が21.2km/Lになる。レギュラーガソリン価格が1L当たり160円とすると、1km当たりの走行コストは7.5円になる。1年間に1万kmを走ると、サクラの走行コストは22,000円、デイズは75,000円なので、サクラは53,000円を節約できる。比率に換算すると、サクラの走行コストはデイズの29%に収まる。

日産「サクラ」の走行イメージ

日産「サクラ」の走行イメージ

しかも、電気自動車は走りが上質だ。サクラもモーター駆動のみでエンジンは搭載しないので、ノイズはハイブリッドと比べても圧倒的に小さい。加速の仕方も滑らかだ。しかも、モーターは瞬発力が強く、停車中や巡航時にアクセルペダルを踏み増した時の加速感は、軽自動車のターボエンジン搭載車を大幅に上まわる。ノイズをほとんど増やさずに、速度を一気に上昇させるので、独特の迫力や上質感も伴う。運転感覚も楽しさがある。

サクラは、走行安定性や乗り心地も良好だ。駆動用リチウムイオン電池を低い位置に搭載しているので重心が下がり、衝突時に電池を保護する補強も行われており、ボディ剛性が高められているからだ。

日産「サクラ」のフロントエクステリアとリアエクステリア。ベースとなっている日産の軽自動車「デイズ」とは、異なる造形へと作り込まれている

日産「サクラ」のフロントエクステリアとリアエクステリア。ベースとなっている日産の軽自動車「デイズ」とは、異なる造形へと作り込まれている

このように、動力性能や静粛性、走行安定性、乗り心地がすぐれていることは、ほかの電気自動車にも当てはまる特徴だが、サクラはさらに内外装もていねいに仕上げられている。姉妹車の三菱「eKクロスEV」は、三菱車の共通性を表現するために内外装はeKクロスとほぼ同じなのだが、サクラとデイズは大きく異なり、共用するのはウィンドウ程度になる。

日産「サクラ」に採用されている、特別色の「暁-アカツキ- サンライズカッパー/ブラック 2トーン」。「アリア」や「リーフ」など、日産の他の電気自動車にも採用されている、日産の電気自動車の象徴となるボディカラーだ

日産「サクラ」に採用されている、特別色の「暁-アカツキ- サンライズカッパー/ブラック 2トーン」。「アリア」や「リーフ」など、日産の他の電気自動車にも採用されている、日産の電気自動車の象徴となるボディカラーだ

サクラは、日産の電気自動車におけるシリーズとして、「アリア」や「リーフ」などとの共通性を重視しており、外装色もアリアやリーフと同じ「暁-アカツキ- サンライズカッパー/ブラック 2トーン」が設定されている。

日産「サクラ」プレミアム<Z>のインテリア。高級感の漂う内装も、サクラの特徴のひとつだ

日産「サクラ」プレミアム<Z>のインテリア。高級感の漂う内装も、サクラの特徴のひとつだ

日産「サクラ」は、エクステリアのみならず、インパネの形状も「デイズ」と異なる造形となっており、こだわりを持って開発されたことがわかる

日産「サクラ」は、エクステリアのみならず、インパネの形状も「デイズ」と異なる造形となっており、こだわりを持って開発されたことがわかる

インパネの形状も、デイズやeKクロスEVとは異なり、助手席の前側をトレイ状にしている。この形状を実現するために、インパネの内側に配置されたエアコンダクトの取りまわしを変更しているほどだ。

インパネの表皮にはファブリック調の素材が使われ、Gのプレミアムインテリアパッケージを装着すると、内装の質はさらに高まる。上質感と電気自動車としての個性を考えると、姉妹車のeKクロスEVと比べても、一般的にはサクラのデザインは魅力的だ。eKクロスEVのほうは、三菱車の共通性を大切にしているので、三菱ファンの共感を得やすい。

日産「サクラ」のリアイメージ

日産「サクラ」のリアイメージ

サクラは、走りから乗り心地、内装までさまざまな質が高められているが、電気自動車とあって軽自動車の中では価格は高めだ。中級のXでも2,399,100円、上級のGは2,940,300円になる。デイズで、上級のハイウェイスターGターボプロパイロットエディションは、価格が1,747,900円になる。222,037円のカーナビをオプション装着してサ、クラ Gと条件を合わせると、合計額は1,969,937円になる。それでも、サクラGの価格は約97万円高い。購入時に納める税金はデイズが約3万円高く、それを差し引いても差額は約94万円になる。

そこで重要になるのが、電気自動車に交付される補助金だ。経済産業省からは55万円が交付され、この金額を前述の94万円から差し引くと、実質価格差は39万円になる。さらに、届け出する地域によっては、自治体の補助金も交付される。東京都は45万円と高額なので、経済産業省の55万円を加えれば、交付額の合計は100万円に達する。サクラ Gとデイズ ハイウェイスターGターボプロパイロットエディションの実質価格差は94万円なので、100万円が交付されるとサクラのほうが安く手に入ることになる。電気自動車の損得勘定は、補助金次第で大きく変わる。

問題は、補助金には予算があって使い切れば終了することだ。2022年8月2日、次世代自動車振興センターは、2022年7月25日時点での「電気自動車・プラグインハイブリッド車・燃料電池自動車等の導入補助事業」における補助金の残高が177億円になり、2022年10月末を目処に終了する見込みと発表している(見込みについては、今後の申請状況や予算残額などによって、前後する可能性があるとする)。もし、今年度の申請が間に合わなくても、来年度も補助金は申請できるのだが、東京都を含めて交付額が減額される可能性もあるので、ユーザーにとってはそこが不安だ。電気自動車の補助金は、法人ではなくプライベートで使う一般ユーザーを中心に交付されるので、誰でも安心して使える良心的な制度に改めてほしいと思う。一定期間中に申請したユーザーには、もれなく交付するような方式を考えるべきだ。補助金の改善は、今後の電気自動車の普及にも大きな影響を与えてくるだろう。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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