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車名には深いワケが! 三菱「デリカミニ」の魅力をじっくり解説

三菱は、軽スーパーハイトワゴンの「デリカミニ」を、2023年5月25日に発売すると発表した。「デリカミニ」は、「デリカ」らしい力強い走りを予感させるスタイリングに、軽スーパーハイトワゴンならではの快適で広々とした室内空間、砂利道など未舗装路の運転も安心な悪路走破性に、運転支援機能「マイパイロット」などの先進的な安全装備が採用されている。

広々とした室内空間に、力強い走りを融合させた三菱のミニバン「デリカ」の名を冠した軽スーパーハイトワゴンが「デリカミニ」だ。フロントフェイスには、「デリカ」にも採用されている「ダイナミックシールド」が用いられており、精悍な表情を見せる

広々とした室内空間に、力強い走りを融合させた三菱のミニバン「デリカ」の名を冠した軽スーパーハイトワゴンが「デリカミニ」だ。フロントフェイスには、「デリカ」にも採用されている「ダイナミックシールド」が用いられており、精悍な表情を見せる

デリカミニの製品画像
三菱
4.50
(レビュー2人・クチコミ135件)
新車価格:180〜223万円 (中古車:216〜268万円

今回、はたしてどのような経緯で「デリカミニ」が誕生したのかを、三菱の関係者にインタビューしたのでお伝えしたい。

■三菱 新型「デリカミニ」のグレードラインアップと価格
-NAエンジン-
G:1,804,000円[2WD]/2,015,200円[4WD]
Gプレミアム:1,985,500円[2WD]/2,149,400円[4WD]
-ターボエンジン-
T:1,881,000円[2WD]/2,092,200円[4WD]
Tプレミアム:2,074,600円[2WD]/2,238,500円[4WD]

「デリカミニ」は「eKクロススペース」がベース

「デリカミニ」は、三菱の軽スーパーハイトワゴン「eKクロススペース」をベースとしているが、その「eKクロススペース」は2023年1月の「デリカミニ」の発表と入れ替わる形で生産中止となっている。その理由について、三菱の関係者は「eKクロススペースのユーザー認知度が低かったため」と話す。

三菱は「eK」をベースに、アクティブなライフスタイルにマッチするアウトドアモデルとして「eKクロススペース」を開発したのだが、市場では都会的なイメージのカスタムモデルとして認識されており、齟齬が生じていたという。そのため、ユーザーからは「eKクロススペースに、なぜヒルディセントコントロールなど悪路走破性に関する装備があるのか」など、疑問に思われていたそうだ。

「デリカミニ」のベースとなった三菱「eKクロススペース」。三菱曰くアウトドアモデルとのことだが、外観からはやはりカスタムモデルの主張が強いように感じられる

「デリカミニ」のベースとなった三菱「eKクロススペース」。三菱曰くアウトドアモデルとのことだが、外観からはやはりカスタムモデルの主張が強いように感じられる

いっぽう、三菱にはハイトワゴンの「eKクロス」も存在するが、こちらは三菱の意図がユーザーにしっかりと伝わっていたため、電気自動車の「eKクロスEV」は、デザインをほぼそのままに登場させている。

ガソリン車の三菱「eKクロス」(上)と電気自動車の「eKクロスEV」(下)。その外観は、ほとんど変わらない

ガソリン車の三菱「eKクロス」(上)と電気自動車の「eKクロスEV」(下)。その外観は、ほとんど変わらない

では、なぜ「eKクロス」では成功したにもかかわらず、デザインが近い「eKクロススペース」は認知度において失敗したのだろうか。それは、両モデルのユーザー層が異なっていたことが大きな要因だったようだ。「eKクロス」のユーザー層は、年齢が少し高めなのに対して、スーパーハイトワゴンである「eKクロススペース」のユーザー層は幅広い。スライドドアが備えられているので小さなお子さんを乗せやすいなど、ファミリー層をメインに購入に結び付いていた。結果的に、「eKクロススペース」はメインユーザーであるファミリー層が乗るには、デザインの押し出しが強すぎたのである。

ユーザーへのネーミング調査で驚くべき結果が

そこで三菱は、ヤングファミリー層をターゲットとしたモデル(つまり「デリカミニ」)の開発に着手したが、同時に車名に関するユーザー調査も実施された。それは、「デリカミニ」の外観を2グループに分けたユーザーに見せるというもの。片方のグループには「eKクロススペース」という車名で紹介し、もう片方のグループには「デリカミニ」という車名で見せると、「eKクロススペース」として紹介したグループからも、「デリカっぽいね」という声が多く聞かれたという。同時に、目がかわいいなど女性からの評価がとても高かったとのことで、三菱としても需要があると判断したという。

「デリカミニ」は、「eKクロススペース」と異なり、発売前の調査で女性からの評価も高かったことから、三菱は手応えを感じたという

「デリカミニ」は、「eKクロススペース」と異なり、発売前の調査で女性からの評価も高かったことから、三菱は手応えを感じたという

また、ネーミングに関しては三菱の開発者からもこんな話をうかがった。「軽自動車を検討中のお客様は、軽のみならず広くクルマを探していますので、それでしたら“デリカの小さい版”と言ったほうがわかりやすいでしょう。『デリカミニ』のように、『デリカ』みたいと思っていただくことが大事なのです」。「eKクロススペース」ではショッピングリストに加わらなくとも、ブランド認知度の高い「デリカ」というネーミングであれば、購入検討ユーザーにも伝わりやすい。「デリカミニ」という車名は、デザインとネーミングの相乗効果が見事に表れていると言えそうだ。

「デリカミニ」(左)と「デリカD:5」(右)。どちらも、三菱らしい悪路走破性の高さがエクステリアにも表現されている

「デリカミニ」(左)と「デリカD:5」(右)。どちらも、三菱らしい悪路走破性の高さがエクステリアにも表現されている

軽自動車にも“デリカらしさ”を注入

「デリカミニ」の特徴的なエクステリアや機能について、カンタンにご紹介しよう。なお、詳しく知りたい人は、別記事の「SUVスタイルの新型軽、三菱『デリカミニ』が2023年5月に発売!」にて、開発者を交えて詳細に解説しているので、そちらをご覧いただければ幸いだ。

「デリカミニ」のフロント&リアエクステリア。プロテクター形状のスキッドプレートなど、武骨な外観がSUVらしさを感じさせる

「デリカミニ」のフロント&リアエクステリア。プロテクター形状のスキッドプレートなど、武骨な外観がSUVらしさを感じさせる

まず、フロントフェイスは三菱のアイデンティティーである「ダイナミックシールド」が用いられ、フロントバンパーとテールゲートガーニッシュには立体的なデリカロゴを採用。また、ブラック塗装を施したホイールアーチに加えて、前後バンパー下部にはプロテクト感のあるスキッドプレート形状を用いることで、デリカならではのSUVらしい力強さが表現されている。

また、特徴的なヘッドライトは、デリカミニのキャラクターである“やんちゃ坊主”をイメージし、かわいらしさとキリッとした表情によって、母性本能をくすぐるようなデザインとされている。

最適な“目”の表情をデザインするため、半月のライトは角度の違いによる表情の変化について、幾度も試行錯誤が繰り返されたという

最適な“目”の表情をデザインするため、半月のライトは角度の違いによる表情の変化について、幾度も試行錯誤が繰り返されたという

さらに「デリカミニ」では、「eKクロススペース」で評価の高かった機能が引き継がれている。たとえば、「ハンズフリーオートスライドドア」や「ヒルディセントコントロール」、クラスを超える安全運転支援システムの搭載など、ほかのスーパーハイトワゴンに追随、もしくは凌駕する機能などは、「eKクロススペース」のユーザー調査においても高く評価されていたため、「デリカミニ」にも継承されている。

加えて、「デリカ」と名付けるのであれば、軽スーパーハイトワゴンであってもある程度の四駆性能は担保したいと、「デリカミニ」の4WDモデルは足回りに手が入れられ、15インチの大径タイヤも装着された。

覆された都市伝説「三菱車は家族向けではない」

「デリカミニ」は、2023年1月13日から予約が開始されているが、受注状況は非常に好調で、2023年4月5日時点で9,000台を超える状況だという。「三菱車はファミリー向けではない」といった、ある種の“都市伝説”があるそうなのだが、それは覆されそうな勢いで、ファミリー層をしっかりとつかんでいるようである。

それを裏付けるように、「デリカミニ」を出展した「東京オートサロン2023」では、ベビーカーを押したファミリーが三菱ブースへ次々と来場。最終日には、大阪や三重から「デリカミニ」を予約注文するために、わざわざ家族を連れて見に来た人もいたとのことだった。

東京オートサロン2023の三菱ブースにて、藤井康輔さんと「デリカミニ」

東京オートサロン2023の三菱ブースにて、藤井康輔さんと「デリカミニ」

さらに、プレスデイではアフターマーケットの業者も多くブースを訪れ、採寸などをしていったそうだ。つまり、彼らの目にも「デリカミニ」は魅力的に映り、「このクルマは売れる!」と確信したのだろう。その結果として、用品にニーズがありそうだと判断したようである。

筆者としては、「eKクロススペース」がベースとは思えないような、「デリカミニ」のデザインがやはり秀逸であると感じている。結果として、ニューモデルのように見せることができ、ネーミングも「ミニ」とすることで、「デリカ」の派生車ではなく兄弟車であると市場に認識させるあたりは、マーケティングの勝利なのかもしれない。「デリカ」というネーミングは集客に重要でありながら、三菱がその名を冠するということは、期待を裏切らない仕上がりになっているという自信の表れでもありそうだ。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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デリカミニの製品画像
三菱
4.50
(レビュー2人・クチコミ135件)
新車価格:180〜223万円 (中古車:216〜268万円
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