トヨタ 新型「プリウス」とホンダ「シビック」(e:HEV)の2台について、前回、前々回は内外装や走りについて比較したが、今回は車両価格を比較するとともに、推奨グレードや購入に際しての注意点などもお伝えしよう。
まずは新型「プリウス」からだが、パワーユニットには1.8Lエンジンと2Lエンジンを搭載するハイブリッドのほか、PHEV(プラグインハイブリッド)も用意されている。だが、PHEVは車両価格が460万円と高く、「シビック」との価格差もかなりあるので、今回はPHEVを除いて解説したい。
■トヨタ 新型「プリウス」のグレードラインアップと価格
※価格はすべて税込
-1.8L ハイブリッド-
X:2,750,000円[FF]/2,970,000円[E-Four](レンタカー、法人向け)
U:2,990,000円[FF](KINTO専用車)
-2.0L ハイブリッド-
G:3,200,000円[FF]/3,420,000円[E-Four]
Z:3,700,000円[FF]/3,920,000円[E-Four]
新型「プリウス」の1.8Lハイブリッドのグレード構成は、法人やレンタカー向けのXと、定額制カーリースであるKINTO専用グレードのUがラインアップされている。Uは、リース期間が満了したら返却しなければならず、買い取りができない。また、リースなので走行距離や穴開けによるパーツ取り付けができないなどの制限もある。多くのユーザーは、返却や使用制限のない購入を基本に考えるため、検討するにあたってはXが対象となるだろう。
新型「プリウス」の1.8Lハイブリッドは、価格が安く燃費もいいのだが、ほとんどの一般ユーザーにとっては購入対象になりにくいので注意が必要だ
また、2Lハイブリッドのグレード構成は、GとZの2種類がある(PHEVを加えると3種類)。その中で、Gは機能や装備の割に価格が割安な買い得グレードだ。Gの価格は320万円と、1.8Lエンジンを搭載するXの275万円に比べると45万円高いが、装備も充実している。Gは、Xには備わらない8インチディスプレイオーディオなどのセットオプション(Xのオプション価格は227,700円)、19インチアルミホイール(レスオプション価格は112,200円)、上級ファブリックのシート生地(Uのオプション価格は72,600円)など、41万円相当の装備が加わる。
そうなると、GはXとの価格差である45万円から装備差の41万円を差し引いた4万円で、搭載エンジンが1.8Lから2Lへと上級化されることになる。新型「プリウス」の2Lエンジンは、筒内噴射とポート噴射をあわせ持つ「D-4S」が採用されており、高度な燃焼制御が行われる。また、エンジンとモーターの動力性能を合わせたシステム最高出力は、1.8Lハイブリッドは140PSだが、2Lハイブリッドでは196PSへと高められる。2Lハイブリッドは、パワーユニットの性能が1.8Lに比べて大幅に向上しており、スポーティーカーのような運転感覚を味わえるのが特徴だ。このパワーユニットが、正味4万円で得られるということから、1.8LのXよりも2LのGのほうが買い得になる。
ただし、燃費性能には差がある。2WDのWLTCモード燃費は、1.8Lハイブリッドが32.6km/Lで、2Lハイブリッドは28.6km/Lだ。したがって、2Lハイブリッドの燃料代は1.8Lハイブリッドに比べて14%増えてしまう。そのため、今後は燃費にすぐれた1.8Lハイブリッドを搭載する、一般ユーザー向けの買い得グレードも必要になるだろう。ちなみに、一般ユーザーが購入できるグレードを2Lハイブリッドに限定した背景には、ハイブリッド車が普及した今、「プリウス」は付加価値を追求したスペシャルティカーに仕上げたいというメーカーの狙いがあるからだ。そこは理解できるが、いまだ価格の割安な低燃費の「プリウス」を求めるユーザーもいるだろうから、やはり1.8Lハイブリッドの買い得グレードも必要なのではと思える。
また、上級グレードのZは価格が370万円なので、Gよりも50万円高い。パワーバックドアや自動防眩ルームミラーなど、価格アップに見合う装備は加わるが、Gよりも買い得とは言えなさそうだ。パノラミックビューモニターなど、Zに標準装備されているがGにもオプション装備できるものもある。Gを選び、必要に応じてオプション装備するのが、新型「プリウス」の割安な買い方になるだろう。
いっぽう、「シビック」は1.5L直噴VTECターボエンジンを搭載するLX 、EXと、2L直噴エンジンにハイブリッドが組み合わせられたe:HEVの計3グレードがラインアップされている。
■ホンダ「シビック」のグレードラインアップと価格
-1.5L直噴VTECターボエンジン-
LX:3,190,000円[FF]
EX:3,539,800円[FF]
-ハイブリッド-
e:HEV:3,940,200円[FF]
その中でも注目はe:HEVで、3,940,200円の車両価格は高いように思われるかもしれないが、e:HEVと装備水準が近いEXも3,539,800円なので、e:HEVの価格アップそのものは400,400円に収まる。シビックは、全体的な価格は高めなのだが、一般的にガソリンエンジンとハイブリッドの価格差は35〜60万円なので、e:HEVはガソリン車と比べて割高とは言えないだろう。
「シビック」は、全体的に価格設定が高めなのが少々ネックだ。だが、ハイブリッドの「e:HEV」は、ガソリン車との価格差という点においてはそれほど大きくはない
さらに、e:HEVは購入時に納める税額がEXに比べて123,700円安いので、実質的な価格差は276,700円に縮まる。また、e:HEVの使用燃料はレギュラーガソリンだが、ガソリン車はプレミアムガソリンだ。その結果、7〜8万kmを走ると、276,700円の価格差を燃料代の節約によって取り戻せる。e:HEVは、約400万円の車両価格自体は高いものの、ガソリン車との価格差においては割安と言える。
「シビック e:HEV」の価格を、新型「プリウス」のZグレード(以下、新型「プリウス Z」)と比べると、240,200円高い。「シビックe:HEV」は、ハイビーム状態でも対向車などの眩惑を抑えるアダプティブドライビングビームや、BOSEプレミアムサウンドシステムなどが標準装備されている。そして、新型「プリウス Z」には、リヤゲートの電動開閉機能、スマートフォンの操作で車庫入れなどが行えるリモート機能付きアドバンストパーク、100V・1500Wの電源コンセントなどが備わる。両グレードの装備水準は同等か、新型「プリウス Z」のほうが少し上回る。そのうえで、新型「プリウス Z」の価格は、「シビックe:HEV」に比べて約24万円安いため、装備と価格のバランスでは新型「プリウス Z」のほうが買い得と判断できる。
また、WLTCモード燃費は、「シビックe:HEV」は24.2km/L、新型「プリウス Z」は28.6km/Lなので、燃費も新型「プリウス Z」のほうがいい。ただし、内装の質感や乗降性、動力性能や乗り心地などについては、「シビックe:HEV」のほうがすぐれている。
装備や価格のバランス、燃費といった経済性においては新型「プリウス」が勝り、走行性能や乗り心地など走りに関した魅力は「シビックe:HEV」のほうが強い。新型「プリウス」は幅広いユーザーに推奨できて、「シビックe:HEV」は運転が好きなユーザーに推奨できると言えそうだ。
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト