「映え」が大事なSNSの人気や、癒やしを求める人たちが増えたこと、好きなモノに囲まれた暮らしへの憧れなどから、クルマもデザイン最優先で選ぶ人が増えつつあり、“かわいい系”デザインの車種がじわじわと支持を集めています。
表情豊かなフロントマスクや動物などをモチーフにしたディテール、素のままの自分でいられる心地よさや、ペットや相棒のように愛着のわく雰囲気などなど、人それぞれいろんなニュアンスがある「かわいい」が、軽自動車やコンパクトカーには揃っています。本稿では、そんな「かわいい」クルマのなかでも代表的と言える5台について、以下にご紹介したいと思います。
ダイハツ「ムーヴキャンバス」
まずは、世代を超えて愛されるかわいさ、ユルさで絶大な人気を誇る癒し系の軽スーパーハイトワゴン、ダイハツ「ムーヴキャンバス」。両側スライドドアを備えながらも、あくまでファミリー向けではなくパーソナルなクルマとしてのキャラクターを大事に作られており、「ムーヴ」と「タント」の中間くらいの背の高さが特徴です。
親世代が見るとちょっとレトロ感のあるかわいさで、子ども世代が見ると新鮮さがあるという、絶妙な“レトロかわいい”デザインで、「母娘シェア」という新提案の初代モデルが大ヒット。そして、2022年にフルモデルチェンジした2代目の現行モデルは、初代モデルからの「かわいい」をさらに進化させた「ストライプス」と、落ち着いた大人のかわいさを表現した「セオリー」という2タイプのデザインがラインアップされています。
「ムーヴキャンバス」は、外観だけでなくドアを開けてもかわいさ満点! リラックス感のあるベンチタイプのフロントシートや、初代モデルから好評だった後席座面下の引き出し式大容量ボックス「置きラクボックス」も魅力的。さらに、テーブル代わりになるインパネや、保温機能付きのカップホルダーもうれしい装備です。エンジンは自然吸気とターボの2種類があり、純正アクセサリーで3つの世界観を作り上げた「アナザースタイルパッケージ」も個性的なデザインでステキです。
直線基調でポップなインテリア
シートのカラーリングもクルマのキャラクターに合わせてデザインされています
初代モデルから好評の後席下の収納「置きラクボックス」
スズキ「ラパン」
続いては、フランス語で「うさぎ」を意味する車名を持つ、スズキの軽自動車「ラパン」です。ぴょこんとした立ち耳にキュンとするうさぎのマークや、まん丸でキュートなヘッドライト、ホワイトを基調としたレトロモダンな内装など、どこを切り取っても「映える」クルマでもあります。
これまではかわいい系デザインひと筋のラパンでしたが、ちょっと大人っぽく、どこか懐かしさも感じさせる、「ラパンLC」というもうひとつのデザインも2022年6月に登場しています。
どこかレトロな雰囲気の「ラパンLC」
「ラパン」には、運転しているときにも「かわい〜」と悶絶させられる演出が盛りだくさん。たとえば、メーター内にはダイハツのデザイナーが「ラパン」のためだけに制作したうさぎのアニメーションがいろいろと流れてくるのです。エンジンをかければ「HELLO!」とうさぎがひょっこりあいさつしてきたり、信号待ちのアイドリングストップ中にはコロコロと丸くなったうさぎが転がってきたりします。
さらに、事前に誕生日などの記念日を登録しておけば、特別なアニメーションが見られるなど、毎日をウキウキさせてくれるのもすてきなところです。
「ラパン」はセダンタイプの軽自動車ですが、後席の足元スペースに十分な余裕があるので4人乗車もでき、荷物も積めて実用的。自然吸気エンジンのみですが、街中はもちろん高速道路でも安心して走れます。
ホンダ「N-ONE」
次にご紹介するのは、ちょっと犬っぽくて人懐っこいかわいさに惹かれる人が多い、ホンダ「N-ONE」。こちらもセダンタイプの軽自動車です。
「N-ONE」のデザインは、ただかわいいだけでなく、1967年にホンダ初の乗用車として生まれた「N360」に込められた思想が受け継がれており、時代を超えた普遍的存在を目指しているところが特徴的。大人が乗ってもサマになるのは、そんな凛とした姿勢が見え隠れするからかもしれません。「N360」から受け継いだのは、人を中心に考えたクルマのカタチを線でつないだ、むだのないシルエット。流行に左右されず、いつまでも愛されるデザインです。
1967年に発売された「N360」の普遍的なデザインコンセプトを継承する
そこへ、軽自動車初のデイタイムランニングランプを兼ねつつ、シンプルで愛嬌のある瞳をイメージさせるフルLEDヘッドランプを採用し、かわいさのなかにもモダンな進化を感じさせます。
かわいいヘッドライトは軽自動車初となるデイタイムランニングランプを兼用する
「N-ONE」には、異なる3つのグレードラインアップがあります。ヘッドライトに丸目を強調するシルバーリングを採用し、「N-ONE」らしさを磨いた「Original」。水平基調の大開口グリルとフォグライトガーニッシュモールにクロームメッキをあしらい、上質感を高めた「Premium」。ハニカムメッシュグリルをダーククロームメッキで縁取り、ブラック塗装の「N-ONEエンブレム」などで精悍(せいかん)な表情をもたせて走りの楽しさを予感させる「RS」。どれも踏ん張りのあるスタイルで、頼もしさをあわせ持っているエクステリアデザインです。
エンジンは自然吸気とターボの2種類。変速機は、リニアさを突き詰めたCVTのほかに、「RS」専用としてMTも用意されます。室内の広さはもちろん、低床で十分な容量を確保したラゲッジスペースには、置き傘や靴などを積むための便利な床下収納があります。後席が5:5で倒せるので長いものや大きな荷物も積みやすいほか、ホンダ独自のシートアレンジは後席の座面を跳ね上げることができ、背の高い荷物の積載も可能です。
ダイハツ「ミラトコット」
続いては、盛ったメイクやキラキラ、ヒラヒラ系のかわいさではなく、素のまま、自然体で癒し系のかわいさが好きという人におすすめしたいのが、ダイハツ「ミラトコット」。一見、ちょっとシンプルすぎるような気もする飾り気のない素朴な印象のデザインですが、太いバーだけでオシャレに見せているフロントグリルや、丸と四角を組み合わせたヘッドライトなど、ジワリジワリとにじみ出てくるかわいさがあります。
というのも、「ミラトコット」のキーワードは肩ひじ張らず、自然体でいられることを表現するファッション用語「エフォートレス」。外観デザインもインテリアも、妙なデコボコを作らず、シンプルな水平基調をベースとし、ひと目で運転のしやすさや安心感を得られるような「ほっとスクエアハッチ」のデザインに仕上がっているのです。
インテリアでは、インパネやドア周りのナチュラルなオシャレ感が好印象。軽自動車に多いベンチシートではなく、安心感や座り心地を優先したセパレートシートを前席に採用しているのもポイントです。
前席は座り心地を優先したセパレートシートを採用
エンジンは自然吸気のみで、ハンドルの操作感や加速フィールなども穏やかな味付け。「ミラトコット」のかわいさに癒されながら、のんびりと走りたい人におすすめの軽自動車です。
スズキ「クロスビー」
最後は、すっかり定番となったコンパクトでかわいい系のSUV、スズキ「クロスビー」。ニッコリとほほ笑みかけてくれるような愛らしいフロントマスクといい、ぽってりとした丸さとたくましさをミックスした独特のボディといい、パッと見た印象はまさに「ハスラー」のお兄ちゃん的なかわいさです。
シャープなルーフラインやベルトラインが横方向への勢いを感じさせ、スズキのSUVの代名詞的な存在である初代「エスクード」を思わせるブリスターフェンダーや、しっかり取られたアプローチアングル/デパーチャーアングルなどが力強さを表現しており、かわいさと両立するたくましさも魅力的。ルーフやサイドモールの色が変わる3トーンのボディカラーが選べるのも楽しいですね。
かわいさとたくましさを両立させたデザイン。皆さまはどうお感じでしょうか?
また、実用面でも「クロスビー」にはほかのコンパクトSUVをリードする工夫があります。というのも、「クロスビー」はSUVにワゴンの要素をプラスしたところが特徴で、後席は165mmの前後スライド機能を持ち、乗員のスペースと荷物のスペースをフレキシブルに使い分けることが可能。ラゲッジ床下には大容量のアンダーボックスがあり、ラゲッジボードを開けると深さのあるスペースができて、ベビーカーを縦に積むこともできます。
そしてインテリアも、これまた遊び心あふれる空間。パイプフレームをモチーフにしたというインパネのデザインや、メーターナセルやドアインナーまで覆われたホワイトパネルがかわいく、シートにアクセントとして入る3色のパイピングもオシャレです。
シートに入るかわいいパイピング。細かいところも抜かりなくデザインされています
ペットボトルから500ml紙パック飲料まで置けるドリンクホルダー、ボックスティッシュを収納したままティッシュが引き出せるというインパネトレー、充電しながらスマホを収納できるセンターポケットや、折りたたみ式のパーソナルテーブルなど、使い勝手も優秀。1Lターボエンジンのマイルドハイブリッドで、軽快に走れるのも大きな魅力です。
ということで、さまざまなタイプのかわいい系デザインをご紹介しましたが、どれも、かわいさで選んだとしても実用性や居住性までバッチリなクルマばかり。見るたびにキュンとするような愛車となら、毎日がもっと輝くのではないでしょうか。
2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。誰でも今日からできる交通安全応援プロジェクト「OKISHU(オキシュー)」でイベント等も開催。