国産SUVの中で、特に人気が高いと言えるのがトヨタ「ハリアー」だ。同車は、売れ筋の価格帯が350〜500万円の高価格車にも関わらず、2023年1〜6月の販売台数はコンパクトSUVのトヨタ「ライズ」をも上回っている。
その「ハリアー」とパワーユニットやプラットフォームを共通化しているSUVが、トヨタの高級車ブランドであるレクサスの「NX」だ。今回は、人気の「ハリアー」とそのプレミアムモデルである「NX」の2車種について比較してみたい。なお、今回の比較について、以下の動画でも詳しく紹介しているので、ぜひご覧いただければ幸いだ。
まず、ボディサイズから比べると、全長は「ハリアー」のほうが80mm長く、全幅は「NX」のほうが10mmワイドだ。全高やホイールベースは同じ数値になる。
エレガントさと逞しさが融合する、流麗なクーペフォルムが採用されているトヨタ「ハリアー」。横一文字に光るテールランプも、特徴のひとつとなっている
レクサス「NX」の外観は、スピンドルグリルと呼ばれる大型のフロントグリルが特徴的だ。全体的に、塊感のあるグラマラスなデザインが採用されている
ボディサイズの数値は同程度だが、エクステリアについてはかなり異なる。「ハリアー」は、フロントウィンドウを立て気味にすることで、SUVならではのたくましさと流麗さをあわせ持つデザインが採用されている。いっぽうの「NX」は、フロントウィンドウを寝かせてボンネットからルーフへのラインを滑らかにつなげることで、走りのよさを想起させるようなデザインとなっている。
最小回転半径は、「ハリアー」は17、18インチタイヤ装着車が5.5m、19インチは5.7mになる。「NX」は全車が5.8mなので、小回りの利きは「ハリアー」のほうが少しすぐれている。
内装の質感について、レクサスは上級車ブランドなので上質な素材が使われているが、合成皮革による「ハリアー」の高級感も質感の高さがしっかりと表現されていて好印象だ。
また、両車ともにインパネの囲まれ感は強い。「NX」は、ドライバーを中心とした設計がなされており、センターディスプレイなどがドライバー側を向いている。運転席に座るととても快適な室内空間なのだが、助手席に座ると少々疎外感がともなうかもしれない。いっぽうの「ハリアー」は、助手席の前方にも装飾などが入れられるなど、助手席側にも配慮が感じられる作りとなっている。
トヨタ「ハリアー」のインテリア。センターコンソールは馬の鞍をイメージして開発されており、そこから左右へと広がるインパネデザインによって、包み込まれるような空間が演出されている
『ハリアー』のインテリアは、全体的に上質感があって、うまくまとまっている印象を受けます。中央の12.3インチディスプレイが大きめなので視界を遮るかと思ったのですが、実際に座ってみるとちょうどいい高さに収まっていました
レクサス「NX」のインテリア。「Tazuna Concept」と呼ばれるコックピットデザインに基づいて開発されており、ドライバーが運転に集中しながら各種操作が可能な作りとなっている
居住空間の広さは、「ハリアー」「NX」ともに同程度だ。身長170cmの大人4名が乗車したとき、後席に座る乗員の膝先には、握りコブシ2つ分の余裕がある。特に広くはないが、両車ともに、4名乗車時の快適性は良好だ。
シートの座り心地は、「NX」は欧州車のように少し硬めに仕上げられている。体をしっかりと支えてくれて、長距離を移動するときにも疲れにくいタイプだ。対する「ハリアー」は、「NX」に比べると少し柔軟性のある座り心地で、日本人はなじみやすいだろう。「ハリアー」は日本向け、「NX」は海外向けという印象を受ける。
トヨタ「ハリアー」のフロントシート
レクサス「NX」のフロントシート
『NX』は、フロントシートの座り心地がとてもいいですね。フィット感がよくて、少しだけ硬めなのですが、家のソファーに座っているような感覚でリラックスできます
レクサス「NX」の内外装はやはり上質なのだが、「ハリアー」も十分に満足できる質感の高さへと仕上げられている。「ハリアー」には、日本のユーザーが共感するであろうわかりやすいプレミアム感が、いたるところに見られた。レクサスというネームバリューも含めて検討しているのであれば「NX」を推奨したいが、そうではないのなら「ハリアー」も十分に高級感があり、所有欲を満たしてくれるプレミアムSUVだ。
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト