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乗ってみるとどう違う?「N-BOX」vs「スペーシア」売れ筋の軽自動車を比較!

前回は、ホンダ「N-BOX」とスズキ「スペーシア」の内外装について比較したが、今回は走行性能や乗り心地を中心に比較してみよう。ちなみに、試乗グレードは「N-BOX」が標準ボディの「ファッションスタイル」で、「スペーシア」は標準ボディの「ハイブリッドX」だ。どちらも、ターボを装着していないNAエンジンを搭載したモデルになる。

動力性能を比較

両車の動力性能を比べると、実用回転域の駆動力は「N-BOX」のほうが上まわる。同条件で走らせても、「N-BOX」は「スペーシア」に比べてアクセルペダルの踏み込み方が少ない。

「N-BOX」のパワートレインには、吸気バルブの制御にVTECを採用した自然吸気エンジンを採用しており、制御を細部まで見直すことによって扱いやすいエンジン特性を実現している

「N-BOX」のパワートレインには、吸気バルブの制御にVTECを採用した自然吸気エンジンを採用しており、制御を細部まで見直すことによって扱いやすいエンジン特性を実現している

また、「スペーシア」は登り坂などを走行中に、エアコンのオンとオフによっても動力性能が微妙に変化する。駆動力が小さいため、エアコンの作動による負荷が相対的に大きいためだ。だが、「N-BOX」は基本的な駆動力に余裕があるので、エアコンを作動させても動力性能が影響を受けにくい。

また、両車ではノイズも異なる。実用回転域の駆動力に余裕のある「N-BOX」は、CVTの作動で変化するエンジン回転数も「スペーシア」より低く、ノイズも小さい。

「スペーシア」のパワートレインは、中低速の動力性能や静粛性の高い自然吸気のR06D型エンジンにマイルドハイブリッドが組み合わせられている。さらに、軽量で高効率な新CVTの採用などによって、「ハイブリッドX」グレードで23.9km/LのWLTCモード燃費を実現している

「スペーシア」のパワートレインは、中低速の動力性能や静粛性の高い自然吸気のR06D型エンジンにマイルドハイブリッドが組み合わせられている。さらに、軽量で高効率な新CVTの採用などによって、「ハイブリッドX」グレードで23.9km/LのWLTCモード燃費を実現している

深山さん
深山さん

「N-BOX」は、スムーズで滑らかに加速してくれるので、市街地から高速道路まで、多くの場面で不満は感じられないですね。「スペーシア」は、街中はとても快適なのですが、高速道路の入り口など大きな加速が必要な場面においては、少しパワー不足を感じました

走行安定性、操舵フィールを比較

ステアリングを回し始めた時の反応は「N-BOX」のほうが正確に動く。小さな操舵角から、車両の進行方向が正確に変わり始めるのがわかる。「スペーシア」でも不満はないものの、「N-BOX」に比べると車両の反応は鈍めだ。

「N-BOX」は、軽自動車とは思えないような重厚感のある走りが特徴的だ

「N-BOX」は、軽自動車とは思えないような重厚感のある走りが特徴的だ

いっぽう、「スペーシア」の操舵フィールには軽快感が伴う。ステアリングの正確性は「N-BOX」に比べると下がるものの、市街地の交差点などを右左折する時には運転しやすい。走行安定性は両車ともに不満はないが、「N-BOX」には重厚感がある。

「スペーシア」は軽快感があって取り回しも容易なので、市街地をラクに走行できる

「スペーシア」は軽快感があって取り回しも容易なので、市街地をラクに走行できる

以上のように、両車の運転感覚を比べると「N-BOX」は速度域が比較的高くても安定している。直進安定性にすぐれ、ワインディングなどにおける走りも正確だ。いっぽう、「スペーシア」は軽快感があるため、市街地での走りに適している。最小回転半径も、「N-BOX」(ファッションスタイル)は4.5m、「スペーシア」(ハイブリッドX)は4.4mに収まり、後者は小回りが利くなど市街地における使いやすさを向上させている。

深山さん
深山さん

「N-BOX」はステアリングにしっかりと重みがあって、全体的にどっしりとしている感じですね。高速道路などでもまっすぐに安定して走ってくれます。「スペーシア」のほうは、操舵を含めてクルマに軽快感があって、交差点の多い市街地やUターンなどでもスイスイと曲がれるので、腕が疲れにくくて乗りやすく感じられました

乗り心地を比較

「N-BOX」は、路上の凹凸が直接的に伝わりにくく、重厚感が伴う乗り心地だ。また、シートも凹凸をしっかりと吸収してくれる。いっぽうの「スペーシア」は、タイヤが路上を跳ねるような粗さはないのだが、「N-BOX」に比べると乗り心地は少々硬めだ。

深山さん
深山さん

「N-BOX」は、道路の凹凸などを静かに抑えて走ってくれるので、乗り心地がよいですね。「スペーシア」は、街中を走る速度では突き上げ感なども少なくて快適に走れますが、高速道路など高い速度では、少し硬めの乗り心地や風切り音などが気になりました。ただ、シートの座り心地がとてもいいので体には伝わりづらいです

燃費性能を比較

WLTCモード燃費は、「N-BOX」のファッションスタイルは21.6km/Lで、「スペーシア」のハイブリッドXは23.9km/L。「スペーシア」は、「N-BOX」に比べると燃料代を約10%節約できる。

「スペーシア」は、マイルドハイブリッドシステムを採用しており、なおかつ車重も「N-BOX」に比べて30kgほど軽い。これらの効果によって、全高が1,700mmを超える軽自動車では、最良の燃費値を達成している。新型「スペーシア」における燃費のよさは、大きな特徴のひとつだ。

総合評価、おすすめのユーザー

両車ともに全高が1,700mmを上まわるスライドドアを装着した軽自動車なので、子育て世代を含めて幅広いユーザーに適している。その上で比べてみると、「N-BOX」はクルマとしての基本的な性能に力が入れられている。エンジン特性や乗り心地、操舵感、シートの座り心地などがすぐれている。軽自動車ながら、比較的長距離を走るユーザーも満足できるだろう。

いっぽう、「スペーシア」は車内の快適装備、収納設備など背の高い軽自動車に求められる実用的な付加価値に力が入れられた。日常的なツールとして、クルマを便利に使いたいというユーザーにピッタリだ。また、「スペーシア」は燃費がよいので、1年間の走行距離が1万kmを超えるなど、燃料代を抑えたいニーズにも適している。

もし、軽スーパーハイトワゴンの購入を予定されているのなら、上記のような特徴の違いを踏まえながら人気の2台を検討していただければ幸いだ。

渡辺陽一郎
Writer
渡辺陽一郎
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト
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桜庭智之(編集部)
Editor
桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
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