バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂

クラシカルな空冷単気筒が気持ちいい! ロイヤルエンフィールド「CLASSIC 350」

日本での発売以来、高い人気を集めているホンダの空冷単気筒バイク「GB350」に、よりクラシックテイストを強めた派生モデル「GB350 C」が、2024年に登場する見込み。すでに公開されているティザー画像を見ると、英国にルーツを持つバイクブランド「ロイヤルエンフィールド」が2022年に発売した「CLASSIC 350」にデザインがよく似ている。「GB350 C」には試乗したいと思っているので、その前に、ホンダに意識されているであろう「CLASSIC 350」(2022年発売)の乗り味を確かめておきたい。

「CLASSIC 350」には4つのバリエーションが用意されているが、今回はスタンダードモデルの「Halcyon(ハルシオン)」に試乗する

「CLASSIC 350」には4つのバリエーションが用意されているが、今回はスタンダードモデルの「Halcyon(ハルシオン)」に試乗する

「CLASSIC 350 Halcyon」はHalcyon Green(写真上)、Halcyon Grey(写真左下)、Halcyon Black(写真右下)の3色展開。メーカー希望小売価格は694,100円(税込)

「CLASSIC 350 Halcyon」はHalcyon Green(写真上)、Halcyon Grey(写真左下)、Halcyon Black(写真右下)の3色展開。メーカー希望小売価格は694,100円(税込)

英国生まれ、インド育ちのクラシックブランド

近年、クラシカルなマシンの人気が高まる中、空冷エンジンを主力としたクラシカルなモデルを展開しているロイヤルエンフィールドが急速に存在感を増している。冒頭で2024年発売予定の「GB350 C」について触れたが、すでに発売されている人気のホンダ「GB350」(2021年発売)も、インド市場でロイヤルエンフィールドに対抗するために作られたマシン。空冷単気筒のバイクを語るうえで、ロイヤルエンフィールドは外すことができない存在だと言える。

2022、2023年の2年連続で、このクラスの販売台数1位のホンダ「GB350」。このモデルもロイヤルエンフィールドを意識して開発された

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2021/09/02 07:00

ロイヤルエンフィールドは1901年に英国で創業され、1950年代にはインドでも生産・販売を開始するものの、英国本社は経営悪化により1970年に倒産してしまう。ただ、その後もインドでは生産が続けられ、1990年代にインドの自動車メーカー「アイシャー・モーターズ」がブランドを買い取るが、それ以降も2000年過ぎまで1950年代に作られた基本構造のままのマシンを製造・販売していたこととから“本物のクラシックバイク”と呼ばれていた。

1961年式の「Big Head Bullet Fury」。空冷単気筒を搭載したマシンで、クランクケースの意匠などにも現行モデルにつながる血統を感じる

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この当時のマシンも日本にも輸入されていたが、設計が古いことに加えて品質保証やパーツ交換対応など体制が不十分だったこともあり、「ロイヤルエンフィールド=壊れやすい」というイメージが一部にあった。ただ、それは過去の話。近年は、クラシカルなイメージを残しつつ、電子制御のフューエルインジェクションを採用した設計の新しいエンジンや車体にアップデートされている。英国とインドにテクニカルセンターを持ち、品質や性能が大きく向上。世界的な評価も高まっている。

ブランドの伝統を感じさせるクラシックデザイン

2022年3月に発売された新型「CLASSIC 350」も、ロイヤルエンフィールドの主力エンジンと言える349ccの空冷単気筒を搭載している。最新の排ガス規制に対応した設計だが、ホイール径はフロント19、リア18という1970年代以前のバイクによく用いられていたサイズで、前後ともスポークホイールを採用。各部にメッキを多用し、一見すると本物のクラシックバイクのように見える仕上がりだ。

車体サイズは2,145(全長)×785(全幅)×1,090(全高)mmで、重量は195kg

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空冷のフィンが美しい単気筒エンジン。最高出力は20.2PS/6,100rpmで最大トルクは27Nm/4,000rpm

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マフラーはキャブトンタイプのクラシカルな形状。メッキの輝きが美しい

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フロントホイールは19インチのスポークタイプ。金属製のフェンダーやフォークのカバーがクラシカルな雰囲気を演出しているが、ブレーキはBYBREのディスクブレーキだ

フロントホイールは19インチのスポークタイプ。金属製のフェンダーやフォークのカバーがクラシカルな雰囲気を演出しているが、ブレーキはBYBREのディスクブレーキだ

リアホイールは18インチ。こちらもディスクブレーキだが、サスペンションはクラシカルな2本タイプで、サイドバッグを装着する際にホイールへの巻き込みを防ぐフレームも付く

リアホイールは18インチ。こちらもディスクブレーキだが、サスペンションはクラシカルな2本タイプで、サイドバッグを装着する際にホイールへの巻き込みを防ぐフレームも付く

ライトには古めかしい雰囲気の金属製バイザーが装着されている。左右に小さいポジションランプも装備

ライトには古めかしい雰囲気の金属製バイザーが装着されている。左右に小さいポジションランプも装備

ティアドロップ型のタンクなど、ロイヤルエンフィールドらしい伝統的なデザインを継承しているが、ABSやスマートフォンなどを急速充電できるUSBポートといった現代的な装備を備えている。

メーターはライトケースに埋め込まれたデザイン。タコメーターはなく、スピードメーターのみ

メーターはライトケースに埋め込まれたデザイン。タコメーターはなく、スピードメーターのみ

伝統的なティアドロップ形状のタンクには、ニーグリップ用のラバーを装備。クラシックなイメージを引き立てている

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試乗車にはオプションのローシートとタンデムシートが装着されていたが、標準はシングルシートだ

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ブレーキのマスターシリンダーは丸型で、現行モデルにはなかなかないシルエット。グリップは樽型で、レバーも太めのレトロなもの

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クランクケースカバーの形状もクラシカル。ステップ位置はかなり前方で、ステップラバーにまでブランドロゴが刻まれている

クランクケースカバーの形状もクラシカル。ステップ位置はかなり前方で、ステップラバーにまでブランドロゴが刻まれている

今どきのバイクとは異なるライディングポジション

ずいぶん昔に乗ったことはあるが、最近のロイヤルエンフィールドのバイクに乗ったことがないので「CLASSIC 350」に試乗するのがとても楽しみ。ワインディングを攻めるようなバイクではないため、街中を中心に、高速道路も走ってみよう。

コックピットのデザインもクラシカルで、試乗前から気分が高まる

コックピットのデザインもクラシカルで、試乗前から気分が高まる

標準のシート高は805mm。試乗車には標準よりも約20mmシート高が下がるオプションのローシートが装着されていたため、足付き性に不安はなかったものの、ステップに足を乗せると現代のバイクとは思えないような乗車姿勢となる。足が前に出るので、あまりスピードを出したくならないライディングポジションだ。

ローシートだったため、身長175cmの筆者の場合、両足のかかとまでしっかりと接地した

ローシートだったため、身長175cmの筆者の場合、両足のかかとまでしっかりと接地した

前方にあるステップに足を乗せると、椅子に腰掛けているような独特のライディングポジションとなる

前方にあるステップに足を乗せると、椅子に腰掛けているような独特のライディングポジションとなる

トルクフルなエンジンで街乗りが楽しい

空冷単気筒のエンジンは、多くの人がイメージするであろうトルクフルな単気筒らしい特性。最大トルクの値は決して高いものではないが、ボアのほうが大きければ回転を上げやすく高回転型、ストロークのほうが大きいと低回転域でのトルク型となる「ボア×ストローク比」が72×85.8というロングストローク型のエンジンが、この特性に寄与している。

また、ボアよりもストロークのほうがだいぶ長いため、むやみに回転を上げるよりも早めにシフトアップして低めの回転数でトルクを感じながら走るスタイルとの相性がいい。ライディングポジションも相まって、スピードを出すよりも、エンジンの鼓動を感じながらのんびり巡航するような走り方が向いている。

単気筒エンジンが爆発しているのを感じながら流すのが気持ちいい。トルク感が強いので、20.2PSという数値以上に力強く感じる

単気筒エンジンが爆発しているのを感じながら流すのが気持ちいい。トルク感が強いので、20.2PSという数値以上に力強く感じる

旧車のようなホイール径で、バンク角も決して深くないため、車体を大きく寝かしてコーナリングスピードを高めていく走り方には向いていないが、ハンドリングは悪くない。きっかけを与えて車体を傾ければ、自然と舵角が付いて曲がっていく。ライディングポジションの関係できっかけを与えるのに慣れは必要だが、慣れてくると交差点の右左折やUターンなどで意外な俊敏性を感じた。

ハンドリングが自然なので、車体を傾けて曲がるのも気持ちいい。ただ、バンク角は深くはないので、これ以上寝かすとどこかを擦ってしまう

ハンドリングが自然なので、車体を傾けて曲がるのも気持ちいい。ただ、バンク角は深くはないので、これ以上寝かすとどこかを擦ってしまう

高速道路では非力さに不満を感じるかと思ったが、そのようなことはまったくなかった。上体が起きており、風圧をもろに受けるため、あまり飛ばす気にならないということもあるが、トルクのあるエンジンは巡航がしやすくストレスはない。車体も安定していて、都市高速によくある舗装の継ぎ目などでも振られてしまう挙動はなかった。ただ、トランスミッションが5速のため、高速道路を長い距離走ると6速が欲しくなるかもしれない。

【試乗を終えて】
よりクラシックな雰囲気を楽しみたいなら

試乗する前は、クラシカルな雰囲気を楽しむ要素が強いモデルかもしれないと思っていたが、実際に乗ってみるとトルクフルなエンジンが気持ちよく、歯切れのいい排気音も相まっていつまでも乗っていたくなるような味わいがあった。空冷エンジンではあるが、設計は新しいので、旧車のようにエンジンがかかりにくかったり、回り方がギクシャクしたりすることはない。それでいて、ロングストローク型のエンジン特有の鼓動感が感じられて気持ちいい。

クラシカルなルックスの「CLASSIC 350」は、街角に停めていても通りがかりの人が振り返るほどデザインや細部の質感は高く、所有する喜びも得られるだろう。2024年に発売予定のホンダ「GB350 C」についての詳細はまだ明らかではないが、ティザー画像を見る限りではキャストタイプのホイールとなりそう。よりクラシックな雰囲気を楽しみたいのであれば、スポークホイールを採用し、120年を超える歴史を持つロイヤルエンフィールドの「CLASSIC 350」に分があるかもしれない。

ホンダがSNSで公開した「GB350 C」のティザー画像。フォークガードやセパレートシートなどがクラシックな雰囲気だ

ホンダがSNSで公開した「GB350 C」のティザー画像。フォークガードやセパレートシートなどがクラシックな雰囲気だ

●メインカット、走行シーン撮影:松川忍

増谷茂樹
Writer
増谷茂樹
カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。
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中村真由美(編集部)
Editor
中村真由美(編集部)
モノ雑誌のシロモノ家電の編集者として6年間従事した後、価格.comマガジンで同ジャンルを主に担当。気づけば15年以上、生活家電の情報を追い、さまざまな製品に触れています。
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