選び方・特集

ポップで使える人気のクルマ! 新車も中古も「MINIの選び方」教えます

筆者は、ずっと乗るつもりでいた愛車が予期せぬトラブルに見舞われて手放さざるを得なくなって以降、マイカーのない生活をしばらく送っている。

家族と共用で使う次期愛車を選んでいたところ、妻が欲しいというクルマの中で、「MINI」ならいいかなとだんだん思えてきた。新車はちょっと手が届かないので、予算を決めて中古で探し始めたところだ。

日本でも多く見かける「MINI」。愛嬌のあるデザインと走り、使い勝手で人気を博している

日本でも多く見かける「MINI」。愛嬌のあるデザインとゴーカートライクとも評される走り、そして使い勝手のよさで人気を博している

「MINI」といっても種類はいろいろ

「MINI」にもいろいろあるわけだが、筆者は4人家族なので、目当てはやはり5ドアだ。その5ドアにもいくつか種類があることを妻も何となく認識していたようだが、よくわかっていなかったので筆者が説明をすると腑に落ちたような顔をしていた。

そこでふと感じたのが、ウチの妻のような人は実は大勢いるんじゃないかということ。「MINI」が好きだけど、あまり詳しくは知らない人だ。価格.comマガジン読者のみなさんだって、知り合いで「MINI」に乗っている人が誰かひとりくらいはいるんじゃないかと思う。「MINI」はそれぐらいメジャーなクルマだ。でも、どういうラインアップで、それぞれどういう特徴があるのかまで把握しているのは、「MINI」に相当詳しい部類の人に違いない。

そこで、この機会に「MINI」について整理してみようと思った次第である。さっそく、ビギナー向け“MINI講座”を始めよう。

BMW製の新生「MINI」は2001年に登場

まず「MINI」にいくつの種類があるのか。そこから整理していこう。

マニアックな話は別の機会にするとして、いろいろな経緯で、現在の新生「MINI」を開発し生産しているのは、ご存じBMWだ。

こちらが、いわゆる「クラシックMini」。「オリジナルMini」などとも呼ばれる。このクルマが「MINI」のモデルになったことは言をまたないが、本稿では詳細は割愛する

こちらが、いわゆる「クラシックMini」。「オリジナルMini」などとも呼ばれる。このクルマが「MINI」のモデルになったことは言をまたないが、本稿では詳細は割愛する

「MINI」第1世代は、日本では2002年3月2日=「ミニの日」に発売された。第2世代が2007年2月、第3世代は2013年に登場した。さらに、第4世代の皮切りとなる「クロスオーバー」の受注が2023年末に始まったところで、2024年第一四半期からの納車が予定されている。

2002年に日本でも発売された第1世代の「MINI」の「ハッチバック」

2002年に日本でも発売された第1世代の「MINI」の「ハッチバック」

我が国での発売以来20年あまりの流れをざっくり振り返ると、まず基本の「ハッチバック」とその「コンバーチブル(屋根の開くオープンカー)」が出て、そこに「クラブマン(荷室がやや大きいタイプ)」が加わった。

「MINI コンバーチブル」は、開閉可能な幌の屋根を持つオープンカー

「MINI コンバーチブル」は、開閉可能な幌の屋根を持つオープンカー

「MINI クラブマン」は、観音開きのリアハッチドアを持つタイプ

「MINI クラブマン」は、観音開きのリアハッチドアを持つタイプ

次いで「クロスオーバー(車高を上げたSUVタイプ)」が加わり、その派生版の「ペースマン」が加わり、2シーターの「クーペ」や「ロードスター(2座のオープンカー)」までもが加わったが、後発のこれら3つのスポーティー系は早々に整理されて消滅し、元々あった定番的な車種がモデルチェンジした。

SUVタイプの「MINI クロスオーバー」

SUVタイプの「MINI クロスオーバー」

SUVクーペルックの「MINI ペースマン」

SUVクーペルックの「MINI ペースマン」

2シーターのオープンスポーツ「MINI ロードスター」

2シーターのオープンスポーツ「MINI ロードスター」

後に「クラブマン」は上級移行し、「ハッチバック」と「コンバーチブル」と「クロスオーバー」はキープコンセプトで、新たに「ハッチバック」のリアドア付きが加わる。そして最新の第4世代は、前述した「クロスオーバー」がお目見えしたが、ゆくゆくはすべてBEV(電気自動車)になる予定……と少々複雑なので、もう少し整理して解説していこう。

ボディタイプは14種類!

2024年初頭の時点で街を走っている「MINI」にはいくつ種類があるのか? ボディタイプについては、第4世代はこれからなので、上記の第1〜第3世代で見ていこう。

第1世代は3ドアの「ハッチバック」と「コンバーチブル」の2種類のみだったところ、第2世代では7種類にまで激増し、少し整理された第3世代でも5種類。ということで、3世代を合わせると2+7+5の合計14ものバリエーションが存在することになる。

さらに、それぞれのボディタイプにつきグレードが2〜5種類あり、エンジンやトランスミッション、一部モデルでは駆動方式(4WD)も選べるので、中古車検討の際はかなり多くのバリエーションの中から好みの1台を探さなければならない。

ちなみに、2014年の途中までのモデルなら、3ペダルのMTが全車で選べるのも、「MINI」の大きな特徴のひとつだ。

「MINI」のMTは、運転好きからの評価もいまだ高い

「MINI」のMTは、運転好きからの評価もいまだ高い

「MINI」のグレード構成

グレードについて、「MINI」イコール「MINIクーパー」だと思っている人が大勢いるほど、その名称は浸透しているが、「クーパー」は“プチ高性能版”として全モデルに設定される、あくまで「MINI」のグレードのひとつで、後述する人名に由来する。

さらに「S」が付けばスポーティーな高性能版、「D」が付けばディーゼルで、「SD」はディーゼルの高性能版となる。

また、「ALL4」は4WDを、クロスオーバーのみに設定のある「SE」はPHEVを示す。かつて一部に設定されていた「ワン」はベーシックなエントリーグレードだ。

リアハッチドアに付くオーナメント。このモデルはグレードが「クーパー」で、ディーゼルエンジンを搭載。そのなかでも高性能版であることを示す

リアハッチドアに付くオーナメント。このモデルはグレードが「クーパー」で、ディーゼルエンジンを搭載。そのなかでも高性能版であることを示す

途中で追加された別格的な高性能版「JCW=ジョン・クーパー・ワークス」も、徐々に設定が増え、大半のモデルで選べるようになっている。ここで、前記の「クーパー」の由来であり、「JCW」にはフルネームが入っているほどの人物、ジョン・クーパー氏が何者なのか気になった人も少なくないだろう。

同氏はかつて1950〜60年代、モータースポーツ界で名を馳せたイギリス人だ。自身のチームがF1でチャンピオンに輝いただけでなく、「クラシックMini」のチューニングを手がけ、当時のラリーやレースを席巻したほか、高性能な元祖「Miniクーパー」をみずから市販するなど、「MINI」を語る上で欠かせないほど非常に密接な関係がある。

「MINI JCW」はラインアップのなかで別格の性能が与えられたスポーツモデル。外観にもそれが現れる

「MINI JCW」はラインアップのなかで別格の性能が与えられたスポーツモデル。外観にもそれが現れる

「MINI」の選び方
-「3ドア」と「5ドア」に大別される-

では肝心の「MINI」の選び方について。

まず、ドアが2枚のモデルはシンプルだ。ちょっと難しいのはドアが4枚あるモデルだが、数は圧倒的に少ない。「MINI」では前者を「3ドア」、後者を「5ドア」と呼んでいるのでそれにしたがう(「MINI」はリアハッチもドアの1つとしてカウントする)。

リアハッチもドアの1つであり、写真のモデルは5ドアに分類される

リアハッチもドアの1つであり、写真のモデルは5ドアに分類される

5ドアの「MINI」は、第2世代の「クロスオーバー」と、それがモデルチェンジした第3世代の「クロスオーバー」、第3世代で従来からドア数が増えた「クラブマン」と、同じく第3世代で新たに設定された「ハッチバック」の派生モデルの4種類だけと、意外と少ない。

以下からは、5ドアモデルと3ドアモデルに分けて、それぞれの車種をご紹介したい。

<5ドアモデル>

●「クロスオーバー」(第2、第3世代)

初の3ナンバーとなったクロスオーバーSUV

まずは5ドアの「クロスオーバー」から。車名のとおり、「MINI」らしい雰囲気をクロスオーバーSUVで表現した同車は、日本には2010年に導入された。

「MINI」シリーズ初の5ドアであり、ボディサイズは登場時で4105mm×1790mm×1550mmと「ハッチバック」よりもだいぶ大柄で、初の3ナンバー車となったほか、4WDが初設定されるなど、「MINI」として“初づくし”であった。

その「クロスオーバー」は、2017年にモデルチェンジを実施。まったくのキープコンセプトで、詳しくないと新旧の判別がつかないほど似ているが、中身はエンジンから何から大きく異なる。PHEVが「MINI」として初めて設定されたのもポイントだ。

「MINI クロスオーバー」第2世代

「MINI クロスオーバー」第2世代

「MINI クロスオーバー」第3世代

「MINI クロスオーバー」第3世代

●「クラブマン」(第3世代)

観音開きのリアドアが特徴

ついで第3世代の「クラブマン」について。第2世代「MINI」で設定された初代「MINI クラブマン」は、元々「クラシックMini」にもあったバージョンを忠実に再現したもの。「ハッチバック」を前後に伸ばして右側に観音開きのドアを追加するとともに、テールゲートも観音開きとし、枠を塗り分けた独特のカラーリングを選べるようにしたのが特徴で、売れ行きもまずまずだったことから、いまだによく見かけるモデルである。

「MINI」が第2世代になって登場した、初代「MINI クラブマン」

「MINI」が第2世代になって登場した、初代「MINI クラブマン」

リアエンドの塗り分けが、このクルマの特徴のひとつだった

リアエンドの塗り分けが、このクルマの特徴のひとつだった

その「クラブマン」、「MINI」が第3世代に移行する際に従来とはだいぶ変わって、ボディサイズが大きくなり、ドア数が増えて、見た目には「クロスオーバー」のシャコタン版のようなクルマになった。

「MINI」が第3世代になって登場した、「MINI クラブマン」の2代目。ドアの枚数が増えた

「MINI」が第3世代になって登場した、「MINI クラブマン」の2代目。ドアの枚数が増えた

「クラシックMini」に設定されていた、元祖「クラブマン」

「クラシックMini」に設定されていた、元祖「クラブマン」

●「ハッチバック」(第3世代)

3ドアを拡大して居住性を確保

もう1台が、第3世代で登場する「ハッチバック」の5ドアだ。3ドアモデルを少し拡大し、後席のドアと居住スペースを確保したという成り立ちで、発売されるや3ドアをしのぐほどの売れ行きを見せた。

第3世代の「ハッチバック」、車名は「MINI 5 door」

第3世代の「ハッチバック」、車名は「MINI 5 door」

以上の4台が、2024年初頭の時点で街を走っている可能性のある「MINI」の5ドアモデルだ。ねっ、意外とシンプルでしょう? これだけで、ずいぶんスッキリした人も大勢いるのではないかと思う。

<3ドアモデル>

では、3ドアモデルについて。「ハッチバック」「コンバーチブル」と前述の「クラブマン」はわかるだろうから、それ以外を整理すると、第2世代「MINI」の時代に、「クーペ」「ロードスター」、そして「ペースマン」というモデルがあった。

●「クーペ」と「ロードスター」(第2世代のみ)

スポーティーな雰囲気の2シーター

「クーペ」と「ロードスター」は、2011年9月と翌2012年1月にそれぞれ日本に導入された。既存の「ハッチバック」や「コンバーチブル」とサイズ感は近いが、「クーペ」と「ロードスター」は2シーターであり、独立したトランクを備えているのが特徴だ。スタイリングも特徴的で、前後がスラントしていてスポーティーな雰囲気なので、ひとめで判別可能。ただし販売的には芳しくなく、2015年2月に生産終了と短命に終わったので、街で見かけることは少ない。

第2世代で登場した「MINI クーペ」

第2世代で登場した「MINI クーペ」

●「ペースマン」(第2世代のみ)

「クロスオーバー」の3ドアモデル

前記の「クロスオーバー」をベースとするクーペ版の「ペースマン」が追加され、2013年3月2日(MINIの日)に日本で発売された。こちらも大柄な車体でドア数が少ない特徴的なルックスをしているが、販売台数はかなり少なく、見かけることはめったにない。

「MINI ペースマン」。中古で探せば買えないことはない

「MINI ペースマン」。中古で探せば買えないことはない

また、現行モデル末期である第3世代の「MINI」はボディサイズが拡大され、「ハッチバック」や「コンバーチブル」を含め、全車が3ナンバーとなった。

というわけで、乗員用のドアが2枚の「MINI」は、「ハッチバック」と「コンバーチブル」で3種類(世代)ずつ、「クラブマン」「クーペ」「ロードスター」「ペースマン」が1種類(世代)ずつの、計10 種類である。

「クロスオーバー」あらため「カントリーマン」

2024年初の時点で、「クラブマン」はすでに生産が終了しており、在庫分のみが販売されている。

これから普通に新車を買える「MINI」は、「ハッチバック」の3ドアと5ドア、「コンバーチブル」「クロスオーバー」と、新しく加わった「カントリーマン」である。

「カントリーマン」は元々「クロスオーバー」の海外名であり、モデルチェンジを機に日本でも使われることになった。すなわち、実質的に3代目「クロスオーバー」となったわけだ。これが第4世代を迎える次世代「MINI」モデルの第1弾であり、日本での納車は2024年第1四半期以降が予定されている。

第4世代「MINI」の「カントリーマン」

第4世代「MINI」の「カントリーマン」

将来はすべての「MINI」が電気自動車に

さらに、BMWの電動化戦略においても「MINI」は重要な存在だ。BMWはすでに2030年初頭には「MINI」をBEV専門ブランドとする計画で、内燃エンジンを搭載する「MINI」は2025年には姿を消す予定を明らかにしている。その一環として、ひと足早くヨーロッパでの販売がスタートしたBEV仕様の「MINI」が、まもなく日本にも上陸する見込みだ。

「MINI」はこのところずっと、JAIA(日本自動車輸入組合)が発表する販売台数ランキングで首位の常連である。モデルで分けず、ラインアップ全体の合計でカウントしているという事情もあるが、いずれにしても日本で「MINI」の人気が高いことには違いなく、中古車もかなり豊富に流通しているので、予算に合わせて選べる。

ただし、このように人気が高いので、相場は割高な傾向だ。全体としては、「ハッチバック」はドア数を問わず、また「クロスオーバー」も世代を問わず豊富で、「クラブマン」もかなり多い。

反対に、「クーペ」「ロードスター」「ペースマン」はケタが違うほど貴重だ。

まずは中古で「MINI」の世界観をリーズナブルに味わっておくのもありだろうし、あるいはゆくゆくBEVのみになってしまうことを念頭に置いて、いまのうちに内燃エンジンを搭載する「MINI」を手に入れ、長く乗るというのもありだろう。

いろいろある「MINI」が、本稿でだいぶスッキリと理解していただけたのではないかと思う。小さいながらも存在感があって、人気車だからいろいろ話題に上がることも多い「MINI」。再び疑問が生じたならば、ぜひこの記事を読み返していただきたい。


写真:BMW

岡本幸一郎
Writer
岡本幸一郎
1968年生まれ。都内大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の編集に携わったのち独立。走り系を中心に軽自動車から高級輸入車までカテゴリーを問わず幅広く網羅する。プライベートではこれまで25台の愛車を乗り継ぐ。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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芝崎 瞬(編集部)
Editor
芝崎 瞬(編集部)
自動車専門媒体からゴルフ専門メディアを経由し、価格.comマガジンへ。クルマは左ハンドルMTに限る! と思って乗り継いでいたが翻意して今は右AT。得意クラブは、強いて言えばミドルアイアン。
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