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ランクルの原点回帰モデル「ランドクルーザー250」を「プラド」や「300」と詳細比較!

高い悪路走破性を備えた人気の四輪駆動車、トヨタ「ランドクルーザー」シリーズ。そのラインアップは、2021年にフルモデルチェンジされた最上級モデルの「ランドクルーザー300」を筆頭に、1984年に登場した「ランドクルーザー70」の復刻モデルが2023年11月に発売。

さらに、2024年4月18日には「ランドクルーザープラド」(以下、プラド)の後継車として「ランドクルーザー250」(以下、250)が発売された。今回は、同シリーズの中核モデルとなる「250」の特徴やスペック、価格や推奨グレードなどの詳細についてお伝えしたい。

標準の角形ヘッドライトを搭載した車両

標準の角形ヘッドライトを搭載した車両

こちらは、ディーラーオプションの丸型ヘッドライトを搭載した車両(詳細は後述)

こちらは、ディーラーオプションの丸型ヘッドライトを搭載した車両(詳細は後述)

「プラド」よりもボディサイズは大きい

「250」は「プラド」の後継車種として登場したものの、両車のボディサイズは大きく異なる。プラド」は(同シリーズの中では)少しコンパクトだったが、「250」は「ランドクルーザー300」(以下、300)と同等の大きさだ。

「プラド」は、同シリーズの中では取り回しを重視したコンパクトなモデルだった

「プラド」は、同シリーズの中では取り回しを重視したコンパクトなモデルだった

■「250」「プラド」「300」のボディサイズを比較
※数値は左から、全長×全幅×全高/ホイールベース
ランドクルーザー250(VX):4,925×1,980×1,925mm/2,850mm
ランドクルーザープラド(TX):4,825×1,885×1,850mm/2,790mm
ランドクルーザー300(ZX):4,985×1,980×1,925mm/2,850mm

「250」と「プラド」のボディサイズを比較すると、「250」のほうが100mm長く、95mmワイドで、75mm高い。さらに、ホイールベースも60mm拡大している。

「300」の全長が60mm長いことを除けば、ほかのサイズは共通だ。「250」はエクステリアこそ異なるものの、シャシーやボディの基本部分は「300」を踏襲しているからだ。

「250」は、全長を除けば上級モデルの「300」と同じボディサイズだ

「250」は、全長を除けば上級モデルの「300」と同じボディサイズだ

シティ派SUVのように、なじみやすい雰囲気を備えていたコンパクトな「プラド」は、「300」とは上下関係にあった。だが、「250」ではその位置付けが変わり、「300」と横並びの関係に近づいている。

「300」よりも質実剛健な内外装

気になるのは、「300」と「250」の違いについてだろう。

まずは内外装について。「300」は、トヨタブランドのオフロードモデルとして頂点に立つ存在なので装備が充実しており、売れ筋グレードのフロントマスクには大型メッキグリルが備わるなど、豪華な仕様だ。

「300」(上)と「250」(下)のフロントフェイスを比較すると、「250」のほうがシンプルで無骨な印象を受ける

「300」(上)と「250」(下)のフロントフェイスを比較すると、「250」のほうがシンプルで無骨な印象を受ける

いっぽう、「250」にはメッキグリルなどの装飾は装備されない。「300」のような豪華さを抑え、悪路走破のイメージを強調したモデルが「250」なのだ。

「ランドクルーザー」の本質は、後輪駆動をベースとした四輪駆動機構を備え、耐久性の高いラダー(ハシゴ状)フレームが採用されており、悪路走破性にすぐれていることだ。「250」は、その本質を改めて追求する“原点回帰”のクルマ作りがなされている。

「250」で注意したいのは最小回転半径で、全グレードで6mに達する。全長の長い「300」の5.9mをも上回り、小回りのききが悪い。さらに、全幅も1,980mmとワイドなので、狭い裏道の右左折や車庫入れなどには少々気を使うだろう。そのため、購入を検討されているなら一度は試乗車に乗ってみて、クルマの大きさや取り回しなどを実際に確認しておきたい。

インパネ周りは、メーターのサイズが大きくて見やすく、各種スイッチもわかりやすい場所に設置されていて操作しやすい。視界は、ウィンドウの下端が低く抑えられているので良好だ。「300」と異なるところは、インテリアもエクステリアと同様にメッキパーツなどの装飾が抑えられていること。悪路向けのSUVらしい、実用指向なモデルであることを感じさせる内装となっている。

上が「300」で、下が「250」のインテリア

上が「300」で、下が「250」のインテリア

前後のシート間隔や前後席の足元空間などは、「300」と基本的に同じだ。身長170cmの大人4名が乗車したとき、後席に座る乗員の膝先には握りコブシ2つ分の余裕があり、後席の乗員も長距離を快適に移動できる。

7人乗り仕様は2列目のスライド機能がないことに注意

グレードは大きく分けると、ベーシックな「GX」、中級の「VX」、上級の「ZX」の3種類が用意されている。「GX」は2列シートで乗車定員は5名、「VX」と「ZX」は3列シートで7名だ。3列目シートは荷室に装着するコンパクトなシートだが、短時間であれば多人数乗車で移動できる。

■トヨタ「ランドクルーザー250」のグレードラインアップと価格
-ディーゼルエンジン車-
GX(2列5人乗り):5,200,000円
VX(3列7人乗り):6,300,000円
ZX(3列7人乗り):7,350,000円
VX“First Edition”[特別仕様車](3列7人乗り):7,000,000円
ZX“First Edition”[特別仕様車](3列7人乗り):7,850,000円
-ガソリンエンジン車-
VX(3列7人乗り):5,450,000円
VX“First Edition”[特別仕様車](3列7人乗り):5,900,000円
※価格はすべて税込

「250」のほとんどのグレードが、3列シートの7人乗り仕様だ

「250」のほとんどのグレードが、3列シートの7人乗り仕様だ

シートでひとつ注意したいのが、「250」には以前の「プラド」で装着されていた2列目シートの「前後スライド機能」が省かれていることだ。3列目シートを使う場合、2列目シートにスライド機能があれば前側に寄せて、3列目の足元空間を拡大できる。しかし、2列目シートにスライド機能がないと、2、3列目シート間で足元空間を配分できない。そのため、「ランドクルーザー250」の3列シート車を購入して多人数で乗車する予定があるなら、3列目シートの居住性を確認しておこう。

3列目シートは、「ZX」グレードでは電動格納タイプになる。リアドアとバックドアにスイッチが設けられており、押し続けると自動で格納、もしくは展開してくれる

3列目シートは、「ZX」グレードでは電動格納タイプになる。リアドアとバックドアにスイッチが設けられており、押し続けると自動で格納、もしくは展開してくれる

エンジンは「ランドクルーザープラド」を踏襲

「ランドクルーザー250」は、シャシーをホイールベースの数値まで含めて「ランドクルーザー300」と共通化してボディを拡大した。ところが、エンジンは「ランドクルーザー300」とは異なり、従来型の「ランドクルーザープラド」のものが踏襲されている。直列4気筒 2.7LのNAガソリンエンジンと、同2.8Lのクリーンディーゼルターボエンジンだ。

■「ランドクルーザー250」の搭載エンジンとトランスミッション
-ディーゼルエンジン車-
グレード:「ZX」「VX」「GX」
搭載エンジン:2.8Lクリーンディーゼルターボエンジン
最高出力:150kW(204ps)/3,000-3,400rpm
最大トルク:500N・m(51kgf・m)/1,600-2,800rpm
トランスミッション:Direct Shift-8AT(電子制御8速オートマチック)
燃費(WLTCモード):11.0km/L
-ガソリンエンジン車-
グレード:「VX」
搭載エンジン:2.7L NAガソリンエンジン
最高出力:120kW(163ps)/5,200rpm
最大トルク:246N・m(25.1kgf・m)/3,900rpm
トランスミッション:6 Super ECT(電子制御6速オートマチック)
燃費(WLTCモード):7.5km/L

2.7LのNAガソリンエンジンは「VX」のみに搭載されており、最高出力は163ps/5,200rpm、最大トルクは25.1kgf・m/3,900rpmを発生させる。いっぽう、2.8Lのクリーンディーゼルターボエンジンは「ZX」「GX」「VX」の3グレードすべてに用意され、最高出力は204ps(3,000〜3,400rpm)、最大トルクは51kgf・m(1,600〜2,800rpm)になる。

トランスミッションは、NAガソリンエンジンは従来の「ランドクルーザープラド」と同じ6速ATで、ギヤ比まで共通だ。クリーンディーゼルターボエンジンは、「ランドクルーザープラド」では6速ATだったが、「ランドクルーザー250」では8速ATへと変更されている。

WLTCモード燃費は、NAガソリンエンジンは7.5km/Lで、クリーンディーゼルターボエンジンは11km/Lだ。ディーゼルの軽油価格は、レギュラーガソリンに比べて1L当たり約20円安いことを考えると、クリーンディーゼルターボエンジンは最大トルクをNAガソリンエンジンの約2倍に高めながら、燃料代は約60%に抑えられる。

駆動方式は全車フルタイム4WDで、悪路の駆動力を高める副変速機も搭載されている。最低地上高は215mm(ZXは225mm)と高いので、悪路を走りやすい。

サスペンションは、前輪がダブルウィッシュボーンの独立式で、後輪はトレーリングリンクの車軸式だ。さらに、上級グレードの「ZX」には時速30km以下でフロントスタビライザーの作動を解除できる「SDM」も備わる。スタビライザーを解除すると、足まわりの伸縮性が高まるので、凹凸のある悪路を走行中などにタイヤの接地性を確保しやすい。その代わり、ボディの傾き方が拡大して走行安定性に支障が生じるため、時速30km以上ではスタビライザーが作動するように戻る。

「ZX」グレードは、「SDM」以外にも後輪側のデファレンシャルギヤをロックする機能、ダート(未舗装路)やロック(岩場)などの走行状況に応じて車両の各種セッティングを変えてくれる「マルチテレインセレクト」が採用されるなど、悪路走破性がいっそう高められている

「ZX」グレードは、「SDM」以外にも後輪側のデファレンシャルギヤをロックする機能、ダート(未舗装路)やロック(岩場)などの走行状況に応じて車両の各種セッティングを変えてくれる「マルチテレインセレクト」が採用されるなど、悪路走破性がいっそう高められている

推奨グレードはクリーンディーゼルの「VX」

■トヨタ「ランドクルーザー250」のグレードラインアップと価格
-ディーゼルエンジン車-
GX(2列5人乗り):5,200,000円
VX(3列7人乗り):6,300,000円
ZX(3列7人乗り):7,350,000円
VX“First Edition”[特別仕様車](3列7人乗り):7,000,000円
ZX“First Edition”[特別仕様車](3列7人乗り):7,850,000円
-ガソリンエンジン車-
VX(3列7人乗り):5,450,000円
VX“First Edition”[特別仕様車](3列7人乗り):5,900,000円

前述のとおり、エンジンは2種類が用意されておりクリーンディーゼルが基本だが、「VX」ならガソリンエンジンも選べる。ただし、ガソリンエンジンの「VX」はクリーンディーゼルエンジンの「VX」に比べて車両価格は85万円安いのだが、あまり推奨できるグレードではない。なぜなら、2,240kgの車重に対して動力性能が不足しているからだ。悪路を含めて、「ランドクルーザー250」らしい、力強い運転感覚を求めるならば、クリーンディーゼルエンジンを選びたい。
クリーンディーゼルエンジンを搭載したグレードのうち、最も安価な「GX」(520万円)でも、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能、8インチのディスプレイオーディオ、前方撮影のドライブレコーダーなど、十分に実用的な装備を備えている。

中級グレードの「VX」(630万円)になると、リヤスポイラーやルーフレール、前後撮影のドライブレコーダー、バックドアの電動開閉機能、狭い場所でも荷物を出し入れしやすいバックドアガラスハッチ、ベンチレーション機能を備えた本革シート、運転席の電動調節機能、3列目シートなどが加わる。「VX」のクリーンディーゼルエンジン搭載車は、「GX」に比べて価格が110万円高いが、それに見合う機能と装備が加わる。

「VX」「ZX」に標準装備されている「バックドアガラスハッチ」は、スマートキーを携帯していればドアロック状態でもバックドアを開かずに荷物を出し入れできる

「VX」「ZX」に標準装備されている「バックドアガラスハッチ」は、スマートキーを携帯していればドアロック状態でもバックドアを開かずに荷物を出し入れできる

上級の「ZX」(735万円)になると、「VX」の装備に加えて「SDM」(Stabilizer with Disconnection Mechanism、悪路走破性と快適な乗り心地の両立を図る機構)を始めとする悪路走破性を高める機能や、悪路においてドライバーの死角となる路面の様子をディスプレイに表示してくれる「マルチテレインモニター」、ハイビームを維持しながら対向車などの眩惑を抑える「アダプティブハイビーム」、渋滞時にステアリングホイールから手を離しても運転支援が続く機能、助手席の電動調節機能、14個のスピーカーを含んだ「JBLプレミアムサウンドシステム」などが加わる。タイヤサイズも、「VX」と「GX」は18インチだが、「ZX」では20インチに拡大される。

上級仕様が欲しいなら「ZX」を選びたいが、735万円という価格は「300」の「ZX」に近い。V型6気筒3.5Lガソリンツインターボエンジン搭載車が730万円、V型6気筒3.3Lクリーンディーゼルツインターボエンジンでも760万円だ。

ディーゼルエンジン同士で比べると、「250」の「ZX」は直列4気筒2.8Lシングルターボ、「300」の「ZX」はV型6気筒3.3Lツインターボなので、動力性能もかなり異なる。「300」は、最高出力が309ps(4,000rpm)、最大トルクは71.4kg-m(1,600〜2,600rpm)。対して、「250」は204ps(3,000〜3,400回転)・51kg-m(1,600〜2,800rpm)だ。

まとめると、「250」のベストグレードは、中級グレード「VX」のクリーンディーゼルエンジン搭載車だ。もし、「250」の「ZX」を選ぶなら、「300」の「ZX」を推奨したい。

「丸型ヘッドライト」が欲しいなら特別仕様車も検討したい

「250」には、特別仕様車の「ファーストエディション」が「VX」(700万円/ディーゼル)と「ZX」(785万円/ディーゼルのみ)に設定されている。「ファーストエディション」は全国で限定8,000台なので選びにくく、内外装に特別色が採用され一部のオプションも標準装備されるが、一般グレードに比べて価格が割高で、購入の候補には入りにくい。

だが、外観の“丸型ヘッドランプ”が欲しい向きには話は変わる。一般グレードでは、全車に標準装備されるのは角型ヘッドランプで、丸型ヘッドランプは「VX」だけにディーラーオプションとして用意される。メーカーオプションではないため、販売店の利益が多く含まれ、その価格は、18万7,000円である。

しかし、特別仕様車の「ZXファーストエディション」には、丸型ヘッドランプが標準装備されているのだ(角型は選べない)。つまり、上級グレードの「ZX」に丸型ヘッドランプを組み合わせたい場合には、一般グレードの「ZX」ではなく、「ZXファーストエディション」を選ぶ必要がある。そして「VX」に丸型ヘッドランプをオプション装着すると前述の18万7,000円が上乗せされるから、丸型ヘッドランプが欲しいというユーザーに限れば、「ZXファーストエディション」は割安という見方もある。

「250」の発売とともに、特別仕様車の「ZX ファーストエディション」「VX ファーストエディション」が台数限定(2台あわせて8,000台)で販売開始された

「250」の発売とともに、特別仕様車の「ZX ファーストエディション」「VX ファーストエディション」が台数限定(2台あわせて8,000台)で販売開始された

これまで述べたとおり、「250」は上級の「ZX」の価格が「300」に近づいて割高感が生じる。そこで、改めて「300」を選ぼうとしても、2024年4月下旬時点では受注を停止している。「ランドクルーザー」シリーズは、とても購入しにくい車両なのだ。

販売店では「250」の販売について以下のように説明する。「『ファーストエディション』は、限定販売なので抽選になる可能性が高い。一般グレードも、『プラド』からの乗り替えを含めて、購入希望のお客様が膨大におられる。そのため、すべてのお客様には行き渡らないと思う」。

定額制カーリースの「KINTO」では「250」を扱っており、納期は5〜8か月だ。ただし、「KINTO」はリース期間満了後の買い取りができないので購入とは異なる。トヨタは「250」を発売した以上、国内市場にも滞りなく供給すべきだ。

「300」のように受注を停止すると、中古車が1,000万円を軽く超えるプレミアム価格で販売されるなど、市場の混乱を招く。納期も、商品力の大切な要素のひとつだから、皆が気持ちよく買えるように配慮してほしいものである。

渡辺陽一郎
Writer
渡辺陽一郎
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト
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桜庭智之(編集部)
Editor
桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
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