愛車のカスタマイズが大好きな自動車ライター、マリオ高野です。
このほど、愛車のスバル「BRZ」のブレーキパッドを新調したところ、感動的に気に入ったので、それを紹介します。
筆者の2021年式スバル「BRZ」。購入当初は不満のなかったブレーキも、やがて初期制動の頼りなさに不満を覚えるようになり、ききの強いパッドへの交換を検討しました
今回選んだブレーキパッドは「Project μ(プロジェクトミュー )」の「HC M1」。街乗りからサーキットなどでのスポーツ走行までカバーする「HC」シリーズのフラッグシップモデルで、2023年に発売されました。
本製品のメーカー希望価格は前後とも2万7500円〜。使用温度域:50〜800度/摩擦係数:0.41〜0.55μ
制動力の安定性、コントロール性、対フェード性の高さ、ダスト量の少なさは定評どおり。初期制動や絶対的な制動力を求める人には「HC+」がおすすめとのこと
従来の「HC」シリーズに比べてサーキットでの連続周回数をアップ。街乗りでも問題なく使えるので、平日は通勤、休日はサーキットというユーザーに最適です
今回、数あるブレーキパッドの中から「Project μ(プロジェクトミュー )」を選んだ理由は、モータースポーツの影響です。「GR86/BRZ Cup」と呼ばれるトヨタ「GR86」とスバル「BRZ」のワンメイクレースにて、2023年のシリーズチャンピオンに輝いた「Team Takuty(チームタクティ)」が使っているブレーキのブランドが「Project μ(プロジェクトミュー )」。シリーズチャンピオンの実績により、自分の愛車にも装着したくなったのでした。
「Team Takuty(チームタクティ)」の代表であり、レーシングドライバーでもある井口卓人選手と一緒にレースマシンのブレーキ開発をしているプロジェクトミューの担当者に相談すると、超イチオシのブレーキパッドが昨年発売されたとのこと。それが今回装着した「HC M1」です。
レーシングドライバーの井口卓人選手(左)が代表を務めるタクティプロジェクト。東京スバルや千葉スバルなど、多くの企業からの協力を得て2024年も「GR86/BRZ Cup」に参戦します。マシンは2台体制で、ドライバーには久保凜太郎選手も参加
担当者の話によると、「HC M1」の設定温度域は50〜800度と幅広く、街乗りからかなりハードなスポーツ走行にも対応可能とのこと。グリップの高いタイヤを履いてサーキット走行で周回を重ね、ブレーキが高温になっても安定した制動力を発揮し続け、ペダルコントロール性のリニアさにも自信を持っていました。
「スーパーグラファイトメタリック」という素材を採用していますが、ハードなサーキット走行にも対応するパッドとしてはブレーキダストが出にくいことも注目すべき特徴です。筆者としては、愛用するBBSホイールはなるべく汚したくないので、自分の要望に合致。新車時から使っている純正のブレーキパッドからの交換です。
ちなみに、ブレーキローターは「STIドリルドディスク」を装着しております。
ブレーキパッドの交換は、道路運送車両法の特定整備に当たり、地方運輸局長の認証を受けた整備工場でなければ行えませんが、クルマの所有者はブレーキパッドの交換を自分で行うことが可能です。
価格.com経由で、比較的安く販売しているショップで購入し、群馬県太田市のシムスレーシングに交換作業を依頼。純正パッドからの交換です
前後とも「STIドリルドディスク」との組み合わせです
装着後の印象としては、街乗りでも明らかにブレーキペダルを踏み込んだときの頼もしさが増し、やや頼りなさを感じるようになった純正パッドの不満が解消しました。ブレーキダストの量は期待どおりの少なさで、街乗りでの量は、スポーツ性の高いブレーキパッドとしては、劇的に少ないと言えるレベルです。
長時間の駐車後など、ブレーキが完全に冷えた状態からの、最初のひと踏みはやや頼りない感覚もありますが、数10mも走れば気にならなくなります。
また、スポーツ系ブレーキパッドで発生しがちな「鳴き」については、メーカー側からは「多少は発生する」と聞いておりましたが、私の「BRZ」(STIドリルドディスクとの組み合わせ)では、ほぼゼロと言ってよいでしょう。装着してから1か月以上、ブレーキパッドを原因とする鳴きや異音は、走行の状況を問わず、少なくとも自分の耳に届いたことは一度もありません。
サーキット走行も含め、さまざまな状況を試しましたが、鳴きと呼ばれる異音が耳に届くことはありませんでした
圧巻は、サーキット走行時のフィーリングのよさ。さほど高い熱が入っていない状態から、ブレーキを強めに踏んだ瞬間の「きく!」感覚は期待以上です。メーター読み時速120km以上(サーキット走行)からのフルブレーキは、まったくもって頼もしいのひと言!
制動の立ち上がりが早いので、踏み込んだ瞬間に制動力のピークが来る感じがしますが、だからと言ってピーキーなものではありません。今回タイム計測はしませんでしたが、自分の走りだと、ミニサーキットでのラップタイムは1秒ぐらい縮まることでしょう。
本領を発揮するのはサーキット走行時。普段は通勤や買い物、休日はサーキットを走るユーザーにおすすめ
さらに、強く踏み込んでからブレーキを抜く操作においても、明らかに純正よりやりやすいと感じました。コントロール性もうたい文句どおりです。
この感覚は、ミニサーキットを10週ほど走り続けても変わらなかったので、周回を重ねても熱ダレしにくい特性もうたい文句どおりであると感じました。
サーキット走行時に動画を撮影してみたところ、筆者は思わず「きく……!」と漏らしてしまいました。
サーキット走行にてフルブレーキングを多用しても、やはりダスト量は最小限。強烈な摩擦によって出たダストも確実に排除する構造になっているとのこと。
街乗りも含め、総合的な性能の高さとフィーリングは感動レベルでした。ノーマルのブレーキディスクとの組み合わせは未確認ながら、少なくともSTIのドリルドディスクとの相性は抜群です(安定したブレーキ性能とコントロール性、耐熱性の高さはSTIのドリルドディスクでも得られるので、相乗効果が得られた可能性はあります)。
サーキット走行でのスキルアップ、タイムアップを図るも、対向4ポッドキャリパーキットなどの高額なブレーキパーツには手が出ない、という人に強くおすすめします!