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スズキ 新型「スペーシアギア」発売!“無骨かわいい”魅力を詳細解説

SUVタイプのスーパー軽ハイトワゴン、スズキ「スペーシアギア」。現行(3代目)「スペーシア」がベースの新型「スペーシアギア」が、2024年9月20日に発売された。今回は、新型「スペーシアギア」の特徴について、インタビューなどを交えながらお伝えしたい。

SUV風の内外装が施された、スズキ「スペーシア」の派生車「スペーシアギア」。今回は、新型モデルの詳細についてお伝えしたい

SUV風の内外装が施された、スズキ「スペーシア」の派生車「スペーシアギア」。今回は、新型モデルの詳細についてお伝えしたい

■新型「スペーシアギア」のグレードラインアップと価格
HYBRID XZ:1,952,500円(2WD)/2,072,400円(4WD)
HYBRID XZターボ:2,037,200円(2WD)/2,157,100円(4WD)

SUVライクな軽ハイトワゴンの先駆け

先代(初代)「スペーシアギア」は、2代目「スペーシア」がデビューしてから1年後の2018年に登場している。遅れて発売された理由について、スズキ 商品企画本部 四輪軽・A商品統括の鈴木猛介さんは当時を振り返り、次のように語る。

「2代目『スペーシア』の企画は当初、標準ボディとカスタムの2種類の開発ですでに進めていました。しかし、初代『スペーシア』の販売数は、ライバル車の半分以下しか出ておらず、そこでまた2つのバリエーションで出しても勝負にならないのではという判断になりました。そこで、販売数をさらに伸ばす案はないかと考えた結果、競合メーカーにはないクルマを新しく出そうということになり、『スペーシア』の発売後に、『スペーシアギア』を追加で発売したのです」。

新型「スペーシアギア」とスズキ 商品企画本部 四輪軽・A商品統括の鈴木猛介さん

新型「スペーシアギア」とスズキ 商品企画本部 四輪軽・A商品統括の鈴木猛介さん

つまり、SUVライクな軽ハイトワゴン(含むスーパーハイトワゴン)の先駆けは、「スペーシアギア」だったわけだ。その後、市場には競合が増え、今や多くの軽ハイトワゴンにSUVライクなラインアップが揃うにいたっている。

キーワードは“無骨かわいい”

新型「スペーシアギア」で鈴木さんが特にこだわったのは、デザインと使い勝手の2つという。まず、新型車で重要なデザインを実現するための肝となったのが、「デザイン提案のための制限を設けなかった」ことと鈴木さんは言う。

「先代の『スペーシアギア』ユーザーからは、“無骨かわいい”というキーワードが自然に多く出てきたのです。そこで、2代目のデザインはもっと“無骨かわいく”表現してもらいたかったのですが、このような(楽しさが重要な)クルマは、作り手が楽しく作らないと、魅力的なクルマにはならないと思っていました。そこで、あまり制限は設けませんでした」と言う。

もちろん、そうはいっても鉄板部分や“無骨かわいい”を象徴する丸目ヘッドライトなどの一部に制限はあったものの、それ以外の制限はそれほどなかったようだ。

鈴木さんは、「普通に考えるとお金がかかるのでNGと思うようなものも、デザイナーからは『これはやりたい』『こうしたほうがよい』といった提案がいくつも入ってくるのです」。

その一例が、前後バンパー下部に備えられた「スキッドプレート」だ。通常は部品点数が増え、色も異なるので採用は難しい。しかし、「必要なものを採用するのはよいこと。それを成立させるために、企画側がコストを考えればよい」と腹をくくった。

新型「スペーシアギア」の前後バンパーには、シルバーの「スキッドプレート」が備えられている

新型「スペーシアギア」の前後バンパーには、シルバーの「スキッドプレート」が備えられている

ほかにも、サイドの「GEARエンブレム」も同様で「必要なところを、しっかりと提案してくれました。さまざまなお題に対するアウトプットが、とてもよい反応でした」とコメントする。

「サイドドアガーニッシュ」にはオレンジの差し色で「GEAR」のエンブレムが入れられている

「サイドドアガーニッシュ」にはオレンジの差し色で「GEAR」のエンブレムが入れられている

アウトドアに便利な装備を数多く採用

使い勝手の面では、先代から引き続き採用されている「撥水加工シート」や「防汚タイプラゲッジフロア」、「ルーフレール」などの専用装備に加えて、「スペーシア」「スペーシアカスタム」にも搭載されている「ステアリングヒーター」や「電動パーキングブレーキ」なども標準で設定されている。

「ルーフレール」は、「スペーシアギア」で特徴的な装備のひとつだ

「ルーフレール」は、「スペーシアギア」で特徴的な装備のひとつだ

また、荷物の積載だけでなく、アウトドアシーンでの使い勝手も考慮して、先代よりも後席を格納した際の荷室の高さを高くし、よりフラットな床面を実現。そして、日常シーンだけでなくアウトドアシーンでも活躍する、後席の「マルチユースフラップ」も全グレードに標準装備されている。

「スペーシア」「スペーシアカスタム」の上級グレードにのみ装備されている「マルチユースフラップ」は、「スペーシアギア」にも採用されている

「スペーシア」「スペーシアカスタム」の上級グレードにのみ装備されている「マルチユースフラップ」は、「スペーシアギア」にも採用されている

「デジタルガジェット」を意識したデザイン

新型「スペーシアギア」のデザインコンセプトは、“10マイルアドベンチャー”。10マイルはおよそ16kmと、軽自動車の一日の平均走行距離になる。日常の中でも、気軽にアウトドア気分を思い切り楽しみたいユーザーに向けてデザインされた。

新型「スペーシアギア」のフロント、リアエクステリア

新型「スペーシアギア」のフロント、リアエクステリア

スズキ 商品企画本部 四輪デザイン部 アイデア開発課の中村賢都さんは、エクステリアデザインについて、「新型モデルのコンセプトを造形に落とし込むヒントとして、デジタルガジェット(小型の電子機器)をテーマにしました。アクティブなシーンで使うアクションカメラやICレコーダーなど、デジタルガジェットのデザイン要素を取り入れたのがポイントです。特に、多角形のデザインとスッキリとした面質を意識しました」とコメントする。

デジタルガジェットをヒントにしたのは、「近年、アウトドアギアのデジタル化が進んできており、たとえばランタンの色味を調節できたり、スマホと連携してより便利になったりすることで、これまで敷居が高く感じていたアクティビティも身近になり、気軽にアウトドアを体験できるようになってきました。実は『スペーシア』もそうで、スズキコネクトといったスマートフォン連携機能、電動パーキングブレーキの採用などのデジタル化が進んできましたので、新型『スペーシアギア』が目指す“10マイルアドベンチャー”とも合致すると思い、デジタルガジェットを造形テーマとしたのです」と説明する。

新型「スペーシアギア」のデザインスケッチ

新型「スペーシアギア」のデザインスケッチ

たとえば、「フロントバンパーは、大きな面の中で張りのある面質にしたり、フォグランプベゼルはデジタルガジェットの造形をかなり意識したりするなど、とても作り込んでいます」と言う。また、ナンバー脇にはダズル迷彩を入れることでホーンをカバー。「通常は、ホーンの前の穴はそれほど意識しないですし、できるだけ見せたくない部分なのですが、『スペーシアギア』なので楽しくやりました」と言う。

フロントグリルも、丸目ライトを基本としつつ、よりタフで頑丈にしたいという企画の狙いもあり、大きなブロックにメッキを使うことで「とにかく目立つようにしました」とのこと。結果として、インパクトのある顔つきとともに、「ジムニー」などスズキの顔を演出する結果となった。

さらに、ホイールも専用の新デザインが採用されている。「先代は、マイナーチェンジで4本スポークになりましたが、それをさらにアップデートしました。4本の十字をネジの頭をイメージして、巨大ドライバーで固定している様子をデザインしています」。

新型「スペーシアギア」に採用されている新デザインのホイール

新型「スペーシアギア」に採用されている新デザインのホイール

リアエンブレムは50通り以上を検討

新型「スペーシアギア」は、内外装のCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)も大きなキーとなる。まず、エクステリアは「スキッドプレートやピラーデカールをシルバーにすることで、ひとクラス上のハードな質感を表現しました。また、エンブレムデザインにもこだわり、リアのエンブレムにはビード形状を横に入れることで、道具感や質の高さを表しています」と、スズキ 商品企画本部 四輪デザイン部 エクステリア課の長嶋みのりさんは言う。また、縁にオレンジを入れることで、「ガツガツのカッコよさというよりも、ちょっと遊び心があるみたいなところをプラスしています」と話す。

GEARという文字は、「文字だけでなく、記号を含めて50通り以上を検討しました。『スペーシアギア』を、特別なクルマとして使ってもらいたいという思いが強かったので、今回はGEARという文字を採用しました」と、こだわりを語った。

新型「スペーシアギア」のリアエンブレム

新型「スペーシアギア」のリアエンブレム

シート柄やタグにも遊び心を

インテリアカラーは、アウトドアの雰囲気が感じられるカーキグリーンを採用。スズキ 商品・原価企画部 四輪デザイン部 インテリア課の沖野有花さんによると、「内外統一のカラーデザインを、かなり意識しています。オレンジをアクセントカラーにしつつ、カーキグリーンを採用することで、タフで機能的であることを表現しました」。

新型「スペーシアギア」のインテリア

新型「スペーシアギア」のインテリア

カーキグリーンは、「重厚さや重さ感を出したかったので、明度は明るくしませんでした。また、色域も黄色く寄りすぎるとミリタリー感が強くなってしまうし、青みが強いと上品でファッショナブルなカーキに見えてしまうので、その色相と明度を、質感をハードに見せるところを狙いながら、ベストなカラーに仕上げました」と説明する。

また、シートバックに配されているタグも、注目ポイントのひとつだ。沖野さんは、「リアシートに座る人の気持ちを考えて、楽しさをタグで表現できるとよいというところからたどり着きました。小さなギアが、トレイルランで頑張っているように見せています。8ビットゲームのような表現にすることで、ギアがゲームの主人公のようにトコトコと走っているような遊び心を感じてもらえたらいいなと思っています」。

さらに、「一見、風景のようなイラストも、山のグラフィックがシートの表皮の柄や、エクステリアのスキッドプレートなど多角形の造形とリンクさせました。また、ボディサイドのビードを彷彿とさせるように、背景に横ラインを入れています」と話す。

タグひとつで、新型「スペーシアギア」のさまざまなデザイン要素が見て取れるといった“遊び心”にも配慮している

タグひとつで、新型「スペーシアギア」のさまざまなデザイン要素が見て取れるといった“遊び心”にも配慮している

「スペーシアギア」のシート柄も、軽自動車にしては珍しい大柄なデザインだ。その意図を、沖野さんは「個性あるアウトドアスタイルを表現したかったことと、歯車のようにも、山のようにも、そしてタイヤのパターンのようにも見えるこの柄を採用できるのは『スペーシアギア』しかいないと思っています。さらに、質感にもかなりこだわりました。撥水感が、パッと見てわかるような艶感と凹凸感にしています」と説明する。その艶感を出すために、製造工程にも工夫が凝らされたそうだ。

新型「スペーシアギア」のフロントシート(上)と、タイヤ痕や山のようにも見えるシート柄(下)

新型「スペーシアギア」のフロントシート(上)と、タイヤ痕や山のようにも見えるシート柄(下)

コストやサイズなど、制限の大きい軽自動車。それでも、ここまで遊び心満載で楽しませてくれるのは「スペーシアギア」ならではだ。

聞くところによると、インスタなどの写真を見ると、「スペーシアカスタム」はクルマ中心であるのに対し、「スペーシアギア」はアウトドアグッズとともに写っていたり、風景の中のひとつとして写っていたりするそうだ。つまり、「スペーシアギア」はお気に入りのアウトドアグッズとしてのポジションを確立しているわけだ。そして、新型ではその個性がさらに伸ばされ、かつ、遊び心溢れた仕上がりになっていることを高く評価したい。

内田俊一
Writer
内田俊一
1966年生まれ。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。
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桜庭智之(編集部)
Editor
桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
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