2025年5月16日、ホンダはミニバンの「ステップワゴン」に2つの新グレード、「AIR EX」と「e:HEV SPADA PREMIUM LINE BLACK EDITION」を追加した。当記事では、新グレードの魅力や追加された理由などについて解説しよう。
左が「AIR EX」で右が「e:HEV SPADA PREMIUM LINE BLACK EDITION」
2022年5月に発売された現行の「ステップワゴン」は、どの席に座っても安心や自由が感じられ、シートアレンジの多彩性や広い居住空間などミニバンとしての基本性能が非常に高いクルマだ。
「ステップワゴン」には、「AIR」と「SPADA」という2つのグレード体系がある。「AIR」は、シンプルかつクリーンなデザインが好評で、他メーカーからの流入が41%と、「SPADA」の24%を大幅に超える結果を生んでいる。
「AIR」は、デザインが高く評価されたいっぽうで、装備が弱みとなった。装備が豊富な「SPADA」との差が大きいため、「AIR」の装備をさらに充実してほしいと言う声が多くあがったのだ。
本田技研工業 四輪開発本部 完成車開発統括部 LPL室 LPLチーフエンジニアの寺田泰浩さん(左)と、本田技研 統合地域本部 日本統括部 国内四輪営業部 商品企画課の足助優華さん(右)
「シンプルでクリーンな価値観を持っているお客様に『AIR』を提供していこうと、価格をリーズナブルに抑える目的で(『SPADA』とは)装備に差を持たせました。ですが、思った以上に『AIR』のデザインがお客様に受け入れられ、『SPADA』と同等に装備を充実してほしいと言うご要望が多かったのです」と話すのは、商品企画課の足助優華さん。
また、LPLチーフエンジニアの寺田泰浩さんも、「先代までは、デザインは標準車よりも『SPADA』のほうを重視していました。ですが、現行では『AIR』と『SPADA』、それぞれのデザインに対する重視度が高くなったため、お客様の要望も少しずれてしまったのです」と述べ、新グレードを設定した背景を説明した。
そして、装備が充実した「AIR」がほしいと言う要望に応えたのが、今回追加された新グレードの「AIR EX」だ。ちなみに、今回の新グレード追加に伴い、e:HEVの「AIR」は廃止されガソリン仕様の「AIR」はFFのみの設定へと変更されている。
「AIR EX」の外観は、これまでの「AIR」とほとんど変わりはないが、装備についてはかなり充実したものとなっている
「AIR」と比較して「AIR EX」に追加された装備は、本革巻きステアリングホイール、減速セレクター(e:HEV)、パドルシフト(ガソリン車)、トリプルゾーンコントロールフルオートエアコン、運転席&助手席シートヒーター、2列目オットマン(7人乗り)、パワーテールゲート、USB Type-Cジャックがある。
「AIR EX」で注目したい追加装備のひとつが、7人乗りの2列目キャプテンシートへ設定されたオットマンだ
今回、「AIR EX」の投入によって「AIR」と「SPADA」は装備差がなくなり、デザインの違いだけの関係へと変わったことになる。
もうひとつ注目したいのが、「e:HEV SPADA PREMIUM LINE BLACK EDITION」(以下「BLACK EDITION」)だ。「SPADA PREMIUM LINE」(以下「PREMIUM LINE」)の究極系として投入された。
「BLACK EDITION」のエクステリアには、フロントグリルガーニッシュやロアーガーニッシュ、サイドシルガーニッシュなどにブラッククロームメッキ加飾を採用。ホイールはベルリナブラック塗装で、テールゲート部分には専用エンブレムが設定されている
「BLACK EDITION」は、至るところにブラック加飾が施されて上質感が高められるとともに、最上級グレードとしてのこだわりと所有する喜びを満たす仕上がりとなっている。
現在のグレード構成比は、「AIR」が約15%、「SPADA」がおよそ60%、「PREMIUM LINE」が25%弱になる。そこで、「PREMIUM LINE」よりも上級グレードの「BLACK EDITION」を設定することによって、さらなるユーザーニーズに応えることを目的としている。
カラーバリエーションは、「SPADA」と「PREMIUM LINE」は世界観を表現するために暗めの色をラインアップ。SPADA専用色としてプレミアムクリスタルガーネットメタリックが設定され、「BLACK EDITION」のみソニックグレーパールを採用している。これは、「シビックタイプR」にも採用されているボディカラーだ。
「BLACK EDITION」のコンセプトについて、寺田さんは「ひと言で言うと、シンプルです。『PREMIUM LINE』はホイールの切削面がシルバーですし、メッキパーツを採用するなどで色変化を持たせていますが、『BLACK EDITION』はあえて色変化を少なくしています」と述べ、足助さんも「色変化を減らしたブラックによって、統一感や存在感を際立たせています」とコメントした。
今回は、「ステップワゴン」の商品力向上のため、全体的にも装備を充実させている。まず、「ブラインドスポットインフォメーション」を全車に採用。さらに、「Honda SENSING」の追加機能として「後退出庫サポート」や「急アクセル抑制機能」が設定されている。
加えて、パワーテールゲートの開度も変更されている。これまでは、52度から全開までメモリ設定できたが、今回は22度から設定可能とすることで、後方スペースが狭くても開けやすくなっている。
パワーテールゲートは、最小で22度から開けられるようになった。さらに、「Honda Connect」でパワーテールゲートやスライドドアをリモート操作できるようになっている
そのほか、現行車がデビューした際には特許申請中だった「乗り物酔い低減技術」が正式に認可されたとのことで、乗り物に酔いやすいご家族がおられる人なども改めて注目したい。
「乗り物酔い低減技術」は、フロントウィンドウやサイドウィンドウを水平基調にすることなどによって乗り物酔いが低減できるデザイン技術のことだ
近年のミニバンに多い、押し出し感の強いアグレッシブな外観ではなく、街に溶け込むクリーンなエクステリアデザインをまとった「ステップワゴン」。特に「AIR」は、知的な印象すら与えられているように感じる。今回の商品力アップによって、より多くのユーザーが「ステップワゴン」を選んでくれることを期待したい。