バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂

“BIG-1”の完成形、ここに極まる。ホンダ「CB1300 SUPER FOUR SP Final Edition」に試乗

ホンダ「CB1300 SUPER FOUR SP Final Edition」

ホンダの「CB」シリーズ最高峰に君臨してきた「CB1300 SUPER FOUR」と「CB1300 SUPER BOL D'OR(スーパーボルドール)」が終焉を迎える。ビッグバイクを操る醍醐味を感じられるマシンだっただけに、残念に思ったライダーは多いのではないだろうか。かくいう筆者もそのひとり。有終の美を飾る「CB1300 SUPER FOUR SP Final Edition」に試乗し、その魅力を堪能してきた。

「CB1300」シリーズのルーツを振り返る

「CB1300 SUPER FOUR SP Final Edition」を語るにおいて、「CB1300」シリーズの礎となる「プロジェクト BIG-1」について触れておきたい。このプロジェクトは「新しい時代にふさわしいホンダのロードスポーツモデルはどうあるべきか」を徹底追求するために発足され、以下3つのコンセプトを基本としている。

●水冷・4ストローク・DOHC・直列4気筒エンジンを搭載していること
●体躯はあくまでもセクシー&ワイルドであること
●走る者の心を魅了する感動性能を有すること

それを体現するマシンとして、1992年に「CB1000 SUPER FOUR」が登場した。当時はまだ大型二輪免許が教習所では取得できなかったこともあり、ビッグバイクを乗りこなすことがステイタスだった時代。大きな4気筒エンジンを強調したような堂々たる体躯をもった「CB1000 SUPER FOUR」を自在に操ることはライダーにとって羨望の対象だった。大排気量車でも軽量・コンパクトがよしとされる近年とは異なり、“大きく重い”ことに意味があったとも言える。

「CB1000 SUPER FOUR」は1991年に開催された「東京モーターショー」に参考出品され、1992年秋に発売された。「プロジェクト BIG-1」により生まれた最初のモデルということで、「ビッグワン」とも呼ばれる

「CB1000 SUPER FOUR」は1991年に開催された「東京モーターショー」に参考出品され、1992年秋に発売された。「プロジェクト BIG-1」により生まれた最初のモデルということで、「ビッグワン」とも呼ばれる

そして1998年に、排気量を1,284ccにアップさせた「CB1300 SUPER FOUR」にモデルチェンジ。2005年にはハーフカウルを装備した「CB1300 SUPER BOL D'OR」が追加され、「CB」シリーズのフラッグシップの座を不動のものとした。

決してレース向きではないものの、多くのライダーが「CB1300」シリーズをレースに持ち込んでいた。これも、ファンの多さの現れだろう

決してレース向きではないものの、多くのライダーが「CB1300」シリーズをレースに持ち込んでいた。これも、ファンの多さの現れだろう

ちなみに、「CB1300」シリーズは全国の白バイにも採用されており、運転のしやすさと信頼度の高さから20年以上導入され続けている。

「BIG-1」初代モデルのイメージを継承したラストモデル

33年の長きに渡り、細かいブラッシュアップを繰り返しながらシリーズ最高峰の座に君臨してきたマシンが、2025年2月に発売された「Final Edition」をもってその歴史に幕を下ろす。最終モデルとして用意されたのは、「CB1300 SUPER FOUR Final Edition」と「CB1300 SUPER BOL D’OR Final Edition」、高品質な足回りを装備した「CB1300 SUPER FOUR SP Final Edition」と「CB1300 SUPER BOL D’OR SP Final Edition」の4モデルだ。

メーカー希望小売価格は「CB1300 SUPER FOUR Final Edition」が1,727,000円(税込)、「CB1300 SUPER FOUR SP Final Edition」が2,101,000円(税込)、「CB1300 SUPER BOL D’OR Final Edition」が1,837,000円(税込)、「CB1300 SUPER BOL D’OR SP Final Edition」が2,211,000円(税込)

メーカー希望小売価格は「CB1300 SUPER FOUR Final Edition」が1,727,000円(税込)、「CB1300 SUPER FOUR SP Final Edition」が2,101,000円(税込)、「CB1300 SUPER BOL D’OR Final Edition」が1,837,000円(税込)、「CB1300 SUPER BOL D’OR SP Final Edition」が2,211,000円(税込)

4モデルはいずれも、ボディをはじめ、スイングアームやトップブリッジ、ステアリングステムをシルバーカラーにするなど初代モデルをイメージしたカラーリングを採用しているが、「Final Edition」とラストモデルであることを明示する文字が記されている。

ここからの写真は「CB1300 SUPER FOUR SP Final Edition」を撮影したものとなるが、基本的な部分は4モデル共通

ここからの写真は「CB1300 SUPER FOUR SP Final Edition」を撮影したものとなるが、基本的な部分は4モデル共通

容量21Lの迫力あるガソリンタンクの天面に「PROJECT BIG-1 SINCE1992」と「Final Edition」の文字が目立つ

容量21Lの迫力あるガソリンタンクの天面に「PROJECT BIG-1 SINCE1992」と「Final Edition」の文字が目立つ

スイングアームは初代モデルと同じシルバーだが、「Final Edition」はゴールドチェーンを標準装備している

スイングアームは初代モデルと同じシルバーだが、「Final Edition」はゴールドチェーンを標準装備している

外観は、ホンダの看板車種である「CB」シリーズのフラッグシップらしい完成度。丸目ヘッドライトを基調に丸型のホーンや砲弾型のメーターで形成されるフロントフェイスは、まさにシリーズの顔と言えるデザインだ。足回りは正立式のフロントフォークに、2本タイプのリアサスペンションというオーセンティックな組み合わせ。「SP」タイプには、オーリンズ製の前後サスペンションやブレンボ製のラジアルマウントキャリパーが装備されている。

光源はLEDになったが、「CB」の伝統を感じさせる“顔”だ

光源はLEDになったが、「CB」の伝統を感じさせる“顔”だ

少し低めのパイプハンドルと、その向こうに並ぶ2つのアナログ式メーターがネイキッドマシンらしい

少し低めのパイプハンドルと、その向こうに並ぶ2つのアナログ式メーターがネイキッドマシンらしい

オーリンズ製フロントフォークのゴールドと、ブレンボ製キャリパーが「SP」モデルの証

オーリンズ製フロントフォークのゴールドと、ブレンボ製キャリパーが「SP」モデルの証

外から見えやすい2本タイプのリアショックなので、オーリンズのロゴも目立つ

外から見えやすい2本タイプのリアショックなので、オーリンズのロゴも目立つ

シートは、ライダーが乗る部分とタンデム部分で異なる表皮の素材を採用。「SP」タイプは赤のステッチが施されている

シートは、ライダーが乗る部分とタンデム部分で異なる表皮の素材を採用。「SP」タイプは赤のステッチが施されている

搭載されるエンジンは1,284ccの水冷並列4気筒で、113PSの最高出力を発揮。現代のマシンとしては特筆するほどのハイパワーではないが、最大トルクは112Nmあり、一般公道での常用回転域でのトルクを重視した設計であることが感じられる。エンジン自体にも幅があり、DOHCヘッドの存在感が強く、見た目の迫力も満点だ。

現行モデルよりもボリューム感があり、「大きなエンジンのバイクに乗っている」ということを視覚的にも感じられそう

現行モデルよりもボリューム感があり、「大きなエンジンのバイクに乗っている」ということを視覚的にも感じられそう

集合マフラーのサイレンサー部分は、近年のバイクとしては細身な作り

集合マフラーのサイレンサー部分は、近年のバイクとしては細身な作り

走り出すと軽いビックバイク

いよいよ、「CB1300 SUPER FOUR SP Final Edition」に試乗するのだが、サイドスタンドを掛けた状態から車体を引き起こすだけでもずっしりとした重みを感じる。266kgという数値以上に重量があるように感じるが、走行感はどうなのだろうか。

車体サイズは2,200(全長)×795(全幅)×1,135(全高)mm。シート高は790mm(スタンダードタイプは780mm)だが、足付き性は数値から想像するほど悪くない。身長175cmの筆者の場合、両足の母指球あたりがしっかりと接地した

車体サイズは2,200(全長)×795(全幅)×1,135(全高)mm。シート高は790mm(スタンダードタイプは780mm)だが、足付き性は数値から想像するほど悪くない。身長175cmの筆者の場合、両足の母指球あたりがしっかりと接地した

エンジンをかけて走り始めると、先程までの重さがウソのように軽い。正確に言うと、重量感はあるが、意図したとおりに動くので軽快に感じられるといった感じだ。低回転域からトルクの太いエンジン特性と適度なやわらかさを持つ足回り、すぐれた車体バランスにより、扱いやすさも抜群。そして、トルクの出方が唐突ではないため、街乗りのような速度域でもギクシャクすることなくフレンドリーだ。それでいて、「大きな車体を操っている」感覚が得られるので、街中を流しているだけでも楽しい。

大排気量のトルク感と扱いやすいエンジン特性で、スピードを出していなくても操っている充実感が得られるのはビッグバイクならでは

大排気量のトルク感と扱いやすいエンジン特性で、スピードを出していなくても操っている充実感が得られるのはビッグバイクならでは

ハンドリングも、車体から予想するよりもかなり軽快。軽い動作で車体をバンクさせられ、その動きに連動してスッと舵角がついてくる。といっても、近年のスーパースポーツをベースとするネイキッドマシンのような軽快さとは異なり、どこか旧車的な味わい。1,520mmの長めのホイールベースと2本サスの足回りが、この味わいを作っているのだろう。フロントを軸に曲がる近年のマシンに対して、「CB1300 SUPER FOUR SP Final Edition」はリアタイヤにどっしり荷重して曲がるほうが気持ちいい味付けだ。

速度があまり出ていなくても、大きな車体を“正確に操る”という楽しさが得られるのも魅力

速度があまり出ていなくても、大きな車体を“正確に操る”という楽しさが得られるのも魅力

高速道路でも試乗してみた。走行風がライダーに直接当たるネイキッドタイプなため、あまり速度を出す気にはならない。トップギアで3,000〜4,000回転くらいをキープして巡航するのがいちばん気持ちよく、疲れが少ないように感じた。追い越しでは、そこからアクセルを捻れば大柄な車体が瞬時に加速する。このように余裕を持ちながら巡航するのが、このマシンの最適解だろう。

【試乗を終えて】

エンジンの回転上昇だが、回して楽しむよりもトルク変動の少なさを生かして少し低めの回転域で走るのが似合う。アクセルを開ければ、どの回転域からでもトルクが取り出せるので、ゆっくり走っていても気持ちの余裕がある。街中で小排気量のバイクに抜かれても「その気になれば、いつでも抜けるしな……」というおおらかな気分で先に行かせられた。

コーナリングも速度を上げてチャレンジするより、進入前にきちんと減速してリアに荷重しながら曲がるのが気持ちいい、どこか旧車的なハンドリング。この点を意識すると、重い車体を意のままに操ることができ、街中の交差点でも楽しめる。大きくて重い車体を正確に操る楽しさはビッグバイクならではだが、最近の大排気量ネイキッドが軽量・コンパクトでクイックなハンドリングのものが多いことを考えると、今後、「CB1300」シリーズのようなマシンが出てくる可能性は低い。ビッグバイクを操る醍醐味を存分に味わいたいライダーなら、「最後のBIG-1」となるであろうこのマシンが欲しくなるのではないだろうか。

●メインカット、走行シーン撮影:松川忍

増谷茂樹
Writer
増谷茂樹
カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。
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中村真由美(編集部)
Editor
中村真由美(編集部)
モノ雑誌のシロモノ家電の編集者として6年間従事した後、価格.comマガジンで同ジャンルを主に担当。気づけば15年以上、生活家電の情報を追い、さまざまな製品に触れています。
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