レビュー

アレンジ次第で使い方自在!商用車化した軽スーパーハイトワゴン スズキ「スペーシアベース」とホンダ「N-VAN」

相変わらず人気の高い軽自動車のスーパーハイトワゴンですが、そうなるとほかの人とはちょっと違うものが欲しいとなるのが人の常ですよね。そこで登場してきたのが、乗用車をベースに、商用車化したクルマたちです。今回は代表選手となる、スズキ「スペーシア ベース」とホンダ「N-VAN」を取り上げてみました。

あえて「商用車」化した軽ワゴンを選択する意味は、乗用車より広い自由にアレンジできる荷室の存在

両車に共通するのは、軽商用車(法律上の分類が4ナンバーの「軽貨物自動車」)ということ。となると、軽商用車と軽乗用車とは何が違うの?というのが気になるところですよね。大きな違いとなってくるのは、荷室スペース。貨物自動車には「シートを全部起こした状態で、残された荷物を置くスペースのほうが、2列目以降の人が乗るスペースよりも広くなければならない」という規定があるのです。軽乗用車でも後席シートを倒せば十分広い荷室が確保できるクルマもあるけど? と思ったりしますが、後席フル乗車状態でのスペースの規定があるんですよね。
またフル乗車状態で「最大限積める荷物の総重量が、2列目以降の最大限乗れる乗員の総重量より大きいこと」という規定もあり、つまり当たり前ですが、軽商用車は多くの荷物を積むことを前提に、荷室が拡充されているというのが、軽乗用車との大きな違いとなります。スズキ「スペーシア ベース」には、元となっている「スペーシア」があり、ホンダ「N-VAN」は「N-BOX」がベースなので、どちらを買おうか迷っている方は、それぞれの違いを見てみるとわかりやすいでしょう。

スズキ 「スペーシア ベース」(手前)と乗用タイプの「スペーシア」。「スペーシア ベース」は商用車というよりは、荷室を使った「隠れ家」のコンセプトが外観にも反映されている?

スズキ 「スペーシア ベース」(手前)と乗用タイプの「スペーシア」。「スペーシア ベース」は商用車というよりは、荷室を使った「隠れ家」のコンセプトが外観にも反映されている?

ホンダ 「N-VAN」(手前)と乗用タイプの「N-BOX」。「N-VAN」は運送業などの法人で商用車として使われるケースも多いため、より多く貨物を積載することを意識して作られている。

ホンダ 「N-VAN」(手前)と乗用タイプの「N-BOX」。「N-VAN」は運送業などの法人で商用車として使われるケースも多いため、より多く貨物を積載することを意識して作られている。

そして、その広い荷室をいろいろアレンジできるというのが、この両車の面白いところなのです。それでは両者の違いを見てみましょう。

マルチボードの活用で、使い方が広がるスズキ「スペーシア ベース」の荷室

スズキ「スペーシア ベース」の荷室は、マルチボードの使い方でガラリと表情が変わります。上段に設置すればリモートワーク的移動事務所として仕事のスペースに、中段にすれば荷物を上下に分けて搭載でき、下段にすればフラットな車中泊のスペースを作り出せます。
上段に設置して仕事スペースにする場合、折りたたんだ後席がちょうどイスになるので、とても使いやすい空間になります。

仕事スペースから車中泊用まで、マルチボードの設置位置によりいろいろな用途に対応する

仕事スペースから車中泊用まで、マルチボードの設置位置によりいろいろな用途に対応する

そしてユニークなのが前後分割モードで、マルチボードを立てて設置することで、荷室を前後にセパレートする使い方もできるんですよね。
これは単純に荷物を分けて…ということもできますが、ペットを乗せるなんていうときも役に立つんだとか。ワンちゃんの急な飛び出し防止にもなるので、飼い主は安心してペットと一緒にドライブができるというわけです。

マルチボードを立てに使うと荷室を前後にも分割できる

マルチボードを立てに使うと荷室を前後にも分割できる

また、荷室がワイパブル仕様になっているので、お掃除が簡単なのもうれしいポイントですよね

お掃除が簡単に行える防汚タイプラゲッジフロア

お掃除が簡単に行える防汚タイプラゲッジフロア

私だったら…移動収録スタジオとして使うと面白いかも?なんて想像を巡らせたりして。どうやって使おうかと考える時間も軽商用車の楽しみです。

上下にも前後にもとにかく広い!ホンダ「N-VAN」の荷室

続いてホンダ「N-VAN」です。現行の「N-VAN」はホンダの軽商用車「アクティバン」とあわせて「N-VAN」として一本化することで生まれたため、とにかく大空間に荷物を載せることを重視して作られているのですが、その空間の広さが運ぶこと以外にも役立っているというわけなんですよね。現在はハイルーフ仕様のみとなっていることもあり、上下にも前後にも荷室の広さが確保されています。

そのスペースを確保するために役立っているのが、センタータンクレイアウト。燃料タンクを前席下に置くことで、後席を床下にダイブダウンでたためるうえ、助手席も同じ高さまでダイブダウンさせることができ、本当にフラットな空間を生み出せます。

そのスペースを確保するために役立っているのが、センタータンクレイアウト。燃料タンクを前席下に置くことで、後席を床下にダイブダウンでたためるうえ、助手席も同じ高さまでダイブダウンさせることができ、本当にフラットな空間を生み出せます。

「N-VAN」の広い開口部と、助手席までフルフラットとなる構造は、商用車向きなばかりでなく、サーフボードなど長尺ものギアの積載、手足を伸ばしての車中泊などのアウトドアユースから、移動店舗や移動オフィスなどのビジネスユースまで使い方無限

「N-VAN」の広い開口部と、助手席までフルフラットとなる構造は、商用車向きなばかりでなく、サーフボードなど長尺ものギアの積載、手足を伸ばしての車中泊などのアウトドアユースから、移動店舗や移動オフィスなどのビジネスユースまで使い方無限

また、高さもあるため、普通の軽車両では想像できないような使い方が可能となります。以前公園で、「N-VAN」の荷室に机を置いて、オフィスで使うようなキャスターがついた椅子を入れて、普通の事務所のように使っている方に出会ったことがあり、驚くと同時に感心してしまったのを覚えています。

【まとめ】広い荷室はアイデア次第!税金も安い軽商用車はユニークで満足な選択肢!?

フレキシブルに工夫できるベースのものを広さとともに提供するスズキ「スペーシア ベース」、とにかく広さを提供しDIYで工夫してもらうホンダ「N-VAN」。両車の考え方に違いはありますが、広い荷室をアイデア次第で活用できる軽商用車は、なかなか面白い選択と言えるでしょう。
両車ともに共通しているのは、運転席以外は、アレンジすることが前提で作られているため、乗用車タイプと違い豪華装備はなくシンプルであること。乗り心地重視ではないこと。最初の車検が2年、その後の車検も2年であること。いっぽうで毎年の軽自動車税は乗用車タイプよりも低く抑えられる(乗用自家用の軽自動車税年額10,800円に対し、乗用貨物用は5,000円)こと…といった感じでしょうか。


明確な目的をもって選択するならば、商用車化した軽ハイトワゴンは、ベースの兄弟車とはひと味違った、ユニークかつ満足のいくカーライフをおくらせてくれること請け合いです。


竹岡 圭
Writer
竹岡 圭
テレビやラジオのレギュラー番組、自身のYoutubeチャンネル「圭Tube」での配信、雑誌やwebでの執筆、芸能プロダクション人力舎に所属し、タレント業も行うなど幅広く活動するモータージャーナリスト。日本自動車ジャーナリスト協会副会長、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、道路や自動車関連を始めとする官公庁の審議会等の委員も務める。またレーシングチーム「圭rallyproject」を主宰し、チームオーナー兼ラリードライバーとして参戦中。
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