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復活希望! 本格派軽SUV「ジムニー」のかつてのライバル車たち、ダイハツ「テリオスキッド」と三菱「パジェロミニ」

スズキ「ジムニーノマド」が販売開始5日で受注ストップせざるを得ないほど、大人気となっているというニュースが、今年の初め世間を騒がせました。その後一時受注を再開したものの、この記事を書いている2025年8月時点でも生産が追いつかず、スズキのホームページでは「当面のあいだ受注停止」となっています。

今年発売されたスズキ「ジムニーノマド」、人気が高く、現在も生産が追いついていない状況だ

今年発売されたスズキ「ジムニーノマド」、人気が高く、現在も生産が追いついていない状況だ

「ジムニーノマド」の登場とその話題性により「3ドアのシエラのほうがデザイン的にカッコイイ」とか「やはりジムニーは軽自動車規格だからこそだよね」などなど、いろんな意見が出てきていて、「ジムニー」シリーズが引き続き根強い人気の高さを誇っていることがわかります。

「ジムニーノマド」のベースとなった「ジムニー」(左)と「ジムニーシエラ」(右)両者は室内の寸法はほとんどのグレードで同一だが、エンジンの排気量やタイヤ幅、オーバーフェンダーの違いで「ジムニー」は軽自動車、「ジムニーシエラ」は普通自動車と分類が異なる

「ジムニーノマド」のベースとなった「ジムニー」(左)と「ジムニーシエラ」(右)両者は室内の寸法はほとんどのグレードで同一だが、エンジンの排気量やタイヤ幅、オーバーフェンダーの違いで「ジムニー」は軽自動車、「ジムニーシエラ」は普通自動車と分類が異なる

現在、軽SUVはシティ派が主流で、スズキ「ハスラー タフワイルド」、ダイハツ「タフト」あたりがそれにあたります。スーパーハイトワゴンにも、三菱「デリカミニ」、スズキ「スペーシアギア」、ダイハツ「タント ファンクロス」、ホンダ「N-BOX JOY」などがありますが、いずれも車体や動力性能は元となる車両とほぼ共通のもの。一体型のモノコック構造が基本で、4WDもスリップなどを検知した場合に2WDが自動的に4WDに切り替わる方式のパートタイム4WD。主に外装や内装の味付けでSUV感を出しています。

現在主流の「シティ派」軽SUVたち。いずれも精悍(せいかん)な外観やアウトドアに便利な装備を競い人気となっているが、動力性能や車体構造は元となる軽自動車とほぼ同じ

現在主流の「シティ派」軽SUVたち。いずれも精悍(せいかん)な外観やアウトドアに便利な装備を競い人気となっているが、動力性能や車体構造は元となる軽自動車とほぼ同じ

やはり、ラダーフレーム構造、副変速機付きパートタイム4WDの本格派クロスカントリーSUVである「ジムニー」とは、まったく違う趣となっています。

なお、それぞれの特徴は以下の通りです。

・ラダーフレーム構造:はしご形のフレームの上にエンジン、サスペンション、ボディなどを載せる構造。現在主流のモノコック構造に比べ、耐久性、悪路走破性に勝るとされ、損傷を受けた場合も影響が全体に及びにくい
・副変速機付きパートタイム4WD:2WDと4WDとは手動切り替えで、4WDもHIGH、LOWが選択できる

「ジムニーノマド」のフレーム(左)、車長が伸びた分「ジムニーシエラ」のもの(右)にクロスメンバーが追加されるなど一部補強がされているが、ほぼ同じラダーフレーム構造だ。なお、「ジムニーシエラ」と「ジムニー」のラダーフレームは基本的に同一設計

「ジムニーノマド」のフレーム(左)、車長が伸びた分「ジムニーシエラ」のもの(右)にクロスメンバーが追加されるなど一部補強がされているが、ほぼ同じラダーフレーム構造だ。なお、「ジムニーシエラ」と「ジムニー」のラダーフレームは基本的に同一設計

普通の変速機とは別に装備される、「ジムニー」シリーズ共通の機械式副変速機は本格派SUVの証しだ

普通の変速機とは別に装備される、「ジムニー」シリーズ共通の機械式副変速機は本格派SUVの証しだ

しかし、かつては本格派軽SUVの世界も「ジムニー」一択ではなく、ライバルとして、ダイハツ「テリオスキッド」、三菱「パジェロミニ」という、異なる発想の本格派軽SUVが販売されていたのですよね。

おとなしめの4ドア軽ボディに、本格オフロード仕様。ただ、オフロード性能を強調した販売はされていなかった、ダイハツ「テリオスキッド」

ダイハツ「テリオスキッド」は1998〜2012年まで販売されていたモデルで、軽自動車で唯一5ドアのフルタイム4WDのSUVであるのが特徴でした。ボディ構造はモノコックフレームにラダーフレームを溶接した「ビルトインラダーフレーム式」。4WDはセンターデフ付きのフルタイム4WDで、デフロックのオンオフがインパネのスイッチひとつで簡単にできたのも利便性が高かったです。全車ターボエンジン搭載車で、パワフルな走りには定評がありました。

ダイハツ「テリオスキッド」。おとなしめの外観ながらフルタイム4WDに機械式センターデフがつき、構造もビルトインラダー式を採用するなど、「ジムニー」とは異なった選択をした「本格派」軽SUVだった

ダイハツ「テリオスキッド」。おとなしめの外観ながらフルタイム4WDに機械式センターデフがつき、構造もビルトインラダー式を採用するなど、「ジムニー」とは異なった選択をした「本格派」軽SUVだった

当時のカタログなどを見ても、センターデフロックの簡単な記述はあるものの、ハンドル右側の根元にあるはずのデフロックスイッチの画像は一切見当たらない

当時のカタログなどを見ても、センターデフロックの簡単な記述はあるものの、ハンドル右側の根元にあるはずのデフロックスイッチの画像は一切見当たらない

ビルトインラダーフレーム式構造に至っては、その言葉すらカタログには出てこない。図は当時のカタログに使用された、上部モノコック部分の衝突安全ボディシステム「TAF」の説明図。いずれにせよ本格派軽SUVとして強くマーケティングされた形跡はないようだ

ビルトインラダーフレーム式構造に至っては、その言葉すらカタログには出てこない。図は当時のカタログに使用された、上部モノコック部分の衝突安全ボディシステム「TAF」の説明図。いずれにせよ本格派軽SUVとして強くマーケティングされた形跡はないようだ

本格的運動性能とやさしい操作性、さまざまなコラボによるスペシャルエディションで女性の心もつかんだ三菱「パジェロミニ」

いっぽう、三菱「パジェロミニ」は、初代が1994〜1998年、2代目が1998〜2013年まで販売されていたモデルで、三菱のクロスカントリーSUV「パジェロ」の弟分としてデビュー。そのため、パジェロ譲りのエクステリアを持ち、ビルトインモノコック構造(モノコックボディにラダーフレーム状の補強材で補強したもの)に縦置きエンジン、後輪駆動モデルと「イージーセレクト4WD」と呼ばれるパートタイム4WDモデルの2種類をラインアップ。オフロードだけでなく、街乗りも快適な本格派軽SUVとして一世風靡(いっせいふうび)しました。

人気SUVだった三菱「パジェロ」を意識した外観の「パジェロミニ」。パジェロ譲りのSUV性能に加え、取り回しや乗り心地の良さでは「ジムニー」を凌駕(りょうが)していた部分もあった

人気SUVだった三菱「パジェロ」を意識した外観の「パジェロミニ」。パジェロ譲りのSUV性能に加え、取り回しや乗り心地の良さでは「ジムニー」を凌駕(りょうが)していた部分もあった

スヌーピーエディションなどのコラボレーションモデルや派生モデルもたくさんあり、女性にも人気が高いモデルとして知られていました。

外装、内装からメーターまで随所にスヌーピーのモチーフがあしらわれていた「パジェロミニ スヌーピーエディション」(U)サイドには作者チャールズ・M・シュルツ氏のサインがプリントされている

外装、内装からメーターまで随所にスヌーピーのモチーフがあしらわれていた「パジェロミニ スヌーピーエディション」(U)サイドには作者チャールズ・M・シュルツ氏のサインがプリントされている

「撃墜王」のスヌーピーが乗っていれば、「パジェロミニ」も気分は愛機「ソッピース キャメル」だ

「撃墜王」のスヌーピーが乗っていれば、「パジェロミニ」も気分は愛機「ソッピース キャメル」だ

とはいえ、カワイイだけではなく、運動性能も本格派だったので、「ジムニー」といちばん比較されたのも「パジェロミニ」でした。「ジムニー」はじめ、当時のSUVは全般的に副変速機の変速に結構力が必要でしたが、「パジェロミニ」は軽い操作感で、あまり力を入れなくても変速ができました。イージーセレクト4WDという当時としては操作が簡単な4WDへの切り替え機構も功を奏し、女性にも扱いやすい印象が高かったんですよね。オフロードの走破性とともに、オンロードの乗り心地のよさも兼ね備えていたのも大きなポイントでした。

そういった感じで、「テリオスキッド」も含めて3車それぞれ性格が違ったために、3車がいい具合にライバルとして成立、世界的にも珍しい軽本格派SUVというカテゴリーを、盛り立てていたのが当時印象的でした。

【まとめ】まだまだ、使い道はある!「ジムニー」のライバルとなる本格派軽SUVの復活を望む

今は残念ながら、ダイハツからも三菱からも本格派SUVモデルはリリースされていませんが、「ジムニー」シリーズがこれだけ人気があることに鑑みても、いつか……と待ち望んでいる方は多いように思います。ボディサイズが小さく軽量という利点を生かし、軽本格派SUVだからこそ行ける道、走破性の観点から軽本格派SUVでないといけない道は、世界中にたくさんあります。そして、活躍の場も保守点検というようなお仕事面だけでなく、アウトドアライフはもちろんのこと、モータースポーツまで含めると多様で、楽しみ方だっていろいろあるはずです。かくいう私も、「ジムニー」のライバル復活を待ち望んでいるひとりなのです。

竹岡 圭
Writer
竹岡 圭
テレビやラジオのレギュラー番組、自身のYoutubeチャンネル「圭Tube」での配信、雑誌やwebでの執筆、芸能プロダクション人力舎に所属し、タレント業も行うなど幅広く活動するモータージャーナリスト。日本自動車ジャーナリスト協会副会長、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、道路や自動車関連を始めとする官公庁の審議会等の委員も務める。またレーシングチーム「圭rallyproject」を主宰し、チームオーナー兼ラリードライバーとして参戦中。
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