ダンロップが最新技術を惜しみなく投入して開発した、次世代オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。
水や温度に反応し、路面状態に合わせてゴムの性質が変化する新技術「アクティブトレッド」が組み込まれることによって、ドライ、ウェット、氷雪などさまざまな路面に対応するタイヤだ。今回、筆者の愛車に装着して走らせてみたので、その印象をレポートしたい。
今回は、ダンロップの最新オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」を愛車に装着し、およそ半年ほどテストしてみた
「シンクロウェザー」を装着した筆者の車両は、メルセデス・ベンツ「CLK200コンプレッサー アバンギャルド」(平成13年式)だ。居住地である八王子を中心に、2024年秋〜2025年春にかけて走行した。装着サイズは205/55R16だ。
今回、「シンクロウェザー」の装着をお願いしたダンロップ直営店の「タイヤセレクト日野(東京都日野市)」
組み換え作業は、ダンロップ直営店である「タイヤセレクト日野(東京都日野市)」に依頼した。数々な新技術を搭載しているタイヤだからこそ、専門店で作業してもらうことで、その実力を100%発揮させたいと考えたのだ。結果、期待どおり「シンクロウェザー」の長所を明確に感じられる仕上がりとなった。
愛車のメルセデス・ベンツ「CLK200コンプレッサー アバンギャルド」に「シンクロウェザー」を装着している様子
さて、今回は暖冬の影響か都内ではほとんど雪が降らず(雪が降ればテスト走行するつもりだったが)、残念ながら雪道を走ることは叶わなかった。氷雪路に関しては、以下の記事で別途レビューしているので、そちらをご参考頂ければ幸いだ。今回は、ドライやウェット、市街地から高速道路まで、日常生活におけるさまざまなシーンで走らせることができたので、それらについてお伝えしよう。
まず、履き替えての第一印象は「まるで、夏タイヤを履いているかのよう」という驚きの感覚だった。
一般的にオールシーズンタイヤは、夏と冬の「いいとこ取り」を目指すあまり、性能が中途半端になりがちだ。ドライ、ウェット性能の低下だけでなく、タイヤノイズが大きくなる傾向にある。しかし、「シンクロウェザー」はそれらとは一線を画している。
何よりうれしかったのは、タイヤノイズの小ささだ。夏タイヤと同等レベルと言っても過言ではない。以前テストした別のオールシーズンタイヤは、遠くからでもタイヤノイズで自車の接近がわかるほどの大きな音だったが、「シンクロウェザー」はそのようなことが皆無だったのは実に喜ばしい。
また、街中を走っていて「オールシーズンタイヤを履いている」と意識させられるシチュエーションもなかった。たとえば、交差点の右左折時にタイヤがよれるような感覚はなくスムーズに曲がれるし、歩道の白線の上でだらしなくズルッと滑ることもない。もっとも、ウェット時に夏タイヤが滑るような状況では同様に滑るため、過信は禁物だが、日常域での安心感は高い。
「シンクロウェザー」を装着したメルセデス・ベンツ「CLK200コンプレッサー アバンギャルド」走行の様子
高速道路でも印象は変わらない。直進安定性は素直で、軽くステアリングに手を添えているだけで真っ直ぐ走り、路面の轍(わだち)にとられることもない。レーンチェンジでも、ステアリングを(いい意味で)適当に切るだけで思い通りにスムーズに車線変更できる。それは、新東名高速などの最高速度120km/h区間でも同様で、日本の速度域において不都合は感じられない。
あえて気になる点をあげるなら、若干タイヤの当たりが硬く、路面からのショックを伝えやすい印象があったことだ。また、タイヤ表面のざらついた感覚がステアリングを通して伝わってくるため、コンフォートタイプのタイヤから履き替える際には少し気になる要素かもしれない。
注目すべきは快適性だけではない。特筆すべきは「ウェット性能」だ。「シンクロウェザー」には、路面状態の変化に反応する2つの「スイッチ」を備えた「アクティブトレッド」技術が搭載されている。そのひとつが「水スイッチ」だ。
これは、タイヤが水に触れることでスイッチが働き、表面のゴムが軟らかくなる仕組みである。結果として、雨の日でも路面をしっかり掴むグリップ力が向上する。技術的には、ゴム内部の化学結合の一部を水で脱着できる「イオン結合」に置き換えることで実現しているという。
画像は、水がまかれたテストコースで「シンクロウェザー」装着車を試乗している場面。詳細は以下の記事にて
もちろん、実際にスイッチが入った瞬間を体感できるわけではないが、これまで経験したオールシーズンタイヤやスタッドレスタイヤよりもウェット性能ははるかに高い。一般道から高速道路までしっかりとグリップしてくれていたので、1年中履いていてもウェット性能に不満や不安を感じることはないだろう。
そして、もうひとつのスイッチが「温度スイッチ」だ。低温になるとこの「温度スイッチ」が働くことで、氷上路面でも軟らかさを維持し、グリップ力を低下させない。一般的に、ゴムは冷えると硬くなる性質があるが、大学の研究者との共同研究により「低温で高温時よりも軟らかくなる高分子材料」を研究している大学研究者とともに、共同研究に着手して実用化。その結果、夏場のしなやかさと氷上性能の両立に成功している。
この技術のおかげで、気温が氷点下になる冬の首都圏でも、ゴムの硬化による乗り心地の低下やハンドリングへの悪影響はなかった。秋や春と同じ感覚のまま冬も乗り続けられることは、非常に大きな安心感につながっている。
ただし、氷上性能についてはこれまでの経験上、スタッドレスタイヤにはかなわない。なぜなら、スタッドレスタイヤはウェット性能などをある程度犠牲にしてまで、氷雪路に特化して開発されているからだ。
つまり、「シンクロウェザー」はあくまで「非降雪地帯」での使用がおすすめだ。その地域の降雪レベルであれば十分に対応可能であり、スノーフレークマークが刻印されているため高速道路の冬タイヤ規制もクリアできる。スタッドレスタイヤほどの氷雪性能はないことを理解したうえで使えば、これほど心強い存在はないだろう。
実際に愛車へ「シンクロウェザー」を履かせてみて、非降雪地帯である首都圏では十分な性能を発揮してくれた。何より、いざという時にもクルマを動かせるという「心理的な安心感」に加え、四季を通してタイヤを履き替えることがないので手間やコストを抑えられる「経済的負担の少なさ」という価値は非常に大きい。
標準的な夏タイヤと同等の性能を備えつつ、冬の備えも両立した「シンクロウェザー」は、非降雪地帯のユーザーへ大いにおすすめしたいオールシーズンタイヤである。