ブリヂストンは、ミニバンとコンパクトSUV専用の新プレミアムタイヤ、REGNO(レグノ)「GR-XIII TYPE RV」(ジーアール・クロススリー タイプ アールブイ)を2025年2月に発売した。今回は、「GR-XIII TYPE RV」を装着した車両の試乗会が開催されたので、新タイヤの印象についてお伝えしたい。
ブリヂストンのプレミアムタイヤブランドである「REGNO」から新たに発売されたのが、ハンドリング性能や乗り心地、静粛性を従来よりもさらに進化させた、ミニバン&コンパクトSUV専用タイヤの「GR-XIII TYPE RV」だ
2024年、ブリヂストンは静粛性の高さとハンドリングのよさを両立させたプレミアムタイヤ、REGNO「GR-XIII」を発売した。
「GR-XIII」は、セダンやクーペをメインターゲットとしており、近年の電動車や欧州大型セダンにも対応。これまで、REGNOが培ってきた静粛性や乗り心地などの性能を進化させるとともに、走行性能や乗り味にもこだわって開発されていることなどから、「GR-XIII」の販売は順調に推移しているという。
そんな「GR-XIII」の特徴である静粛性や走行性能、サスティナビリティの3つの柱はそのままに、ミニバンやコンパクトSUVの車両特性やユーザーニーズを踏まえて開発されたRV用タイヤが、2025年2月に発売された「GR-XIII TYPE RV」だ。
REGNO「GR-XIII TYPE RV」は、従来モデルのREGNO「GRVII」に比べて、ロードノイズは6%低減、パターンノイズは8%低減されている。さらに、「GR-XIII TYPE RV」ではふらつきにくく安定した走りを実現しているとともに、凹凸乗り越え時のショックによる車体の揺れも少なくなっている
ミニバンやコンパクトSUVは、車重が重く車高が高いといった特徴から、横風や路面の轍でふらつきやすかったり、2列目シートでの走行音が気になったり、タイヤが変摩耗しやすかったりといったさまざまな課題がある。さらに、これらの車種は家族など複数人で乗る機会が多いため、後部座席での乗り心地や快適性へのニーズも強かった。
そこで、「GR-XIII TYPE RV」は「GR-XIII」をベースに、それらのニーズを踏まえたカスタマイズが施されている。具体的には、車高が高いことから横風や路面の轍で車が揺れやすくなる。そのため、タイヤのショルダー部に大きな負荷がかかるため硬くする必要があった。しかし、そうすると上下方向も硬くなり、乗り心地の悪化や騒音、振動などに影響してしまう。そこで、「GR-XIII TYPE RV」はショルダー部の幅を広くして、ブロックを少し大きくすることでショルダーの剛性をアップ。さらに、パターンを見直すことで横方向の剛性を高めてショルダーの負荷を支えつつ、上下方向は従来どおりにすることで、静粛性と乗り心地を両立させている。
それでは、試乗に移ろう。まずは、パイロンなどが設置されたクローズドコースにおいて、新タイヤのREGNO「GR-XIII TYPE RV」と、従来タイヤのREGNO「GRVII」が装着された車両で比較してみた。試乗車は、トヨタの先代「アルファード」(235/50R18)と「クラウンクロスオーバー」(235/55R19)が2台ずつ、計4台の試乗だ。
REGNOは真円度が高く、乗り心地がよい上質なタイヤというイメージがある。そして、「GR-XIII TYPE RV」と「GRVII」を比較すると、「GR-XIII TYPE RV」のほうが明らかにタイヤの丸さが感じられ、転がり抵抗が低い印象を強く受けた。
「アルファード」で「GR-XIII TYPE RV」と「GRVII」を比較試乗したところ、車体の揺れの少なさや静粛性の高さを実感できた
また、コース上に設置されたロープを乗り越えるようなシーンでは、前席だけでなく後席でも「GRVII」で感じられた若干の揺り戻しが、「GR-XIII TYPE RV」では大きく減少していることに気づいた。これは、特に車高の高い「アルファード」で顕著に感じられ、タイヤそのものの剛性の高さとともに、ショックの吸収力がすぐれていることが窺えた。
もうひとつ、大きく印象に残ったのが静粛性の高さだ。段差を超えたときの音だけでなく、走行音もオブラートで包んだように耳障りな音は排され、高い静粛性を実現していた。
また、「クラウンクロスオーバー」のほうは、スラロームで次のパイロンに向かうために一気にステアリングを切ってみると、「GRVII」よりも「GR-XIII TYPE RV」のほうが応答性はスムーズで、鼻先がスッと入る印象だった。また、ステアリングを切る量も少なく、安定してスラロームをこなせる。ただし、これについては乗り比べたから気づくレベルであり、「GRVII」でも十分な性能を備えていることも付け加えておきたい。
「クラウンクロスオーバー」でパイロンスラロームを行うと、「GR-XIII TYPE RV」のほうがハンドリングに対してより正確に車両が動き安定して走行できた
一般道では、「GR-XIII TYPE RV」を装着したトヨタの現行「アルファード」(225/55/R19)と「カローラクロス」(225/50R18)を試乗した。
まず「カローラクロス」では、転がり抵抗の少なさが際立って感じられた。しかし、ほかの車両と比べて車重が軽いためか、タイヤへの当たりが少々硬く思えた。実は、筆者の愛車メルセデス・ベンツ「CLK200コンプレッサー」にもREGNO「GR-XIII」を履かせていて、当たりが少し硬いと思っていたのだが、それと同じ印象を「カローラクロス」で覚えた。これは、「GR-XIII」のターゲットがより重量級の車両だからではないかと考えられる。なぜなら、「クラウンクロスオーバー」ではそのような硬さはほとんど感じられなかったからだ。
「GR-XIII TYPE RV」を装着した「カローラクロス」を走らせると、静粛性の高さとともに高速道路などでは直進安定性が高まっていることが感じられた
「GR-XIII」と「GR-XIII TYPE RV」は、これまでのREGNOブランドのタイヤとは少しイメージが変わった印象で、筆者のブランドイメージからするともう少ししなやかさが加わるとよいと思える。
だが、ネガティブなのはそのくらいだ。「GR-XIII TYPE RV」の静粛性はとても高く、高速域での直進安定性もとても良好。ステアリングは軽やかで、手を添えているだけで十分なので「カローラクロス」そのものが持っていたネガティブ面ですらかなり軽減された印象を受けた。さらに、市街地のモーター走行時の静粛性の高さは顕著で、ロードノイズも見事に抑えられている。
「アルファード」も、「カローラクロス」と同じ印象だった。全高1,945mmという高さがあるため、高速道路での横風は気になるところだが、実際に海沿いの自動車専用道路を走らせたところ、吹き流しが横に向く程度であってもほとんど気にせず、高い直進安定性を保つことができたのは驚きだった。
「アルファード」の「GR-XIII TYPE RV」装着車は、ステアリングの操作に対して車両が正確に反応してくれて、後席の乗り心地も向上していた
車線変更時なども、ステアリングに対して適切な反応を返してくれるので、安心してハンドルを握ることができる。「アルファード」のOEタイヤと比較すると、最初は若干シャープに感じるかもしれないが、これはタイヤの剛性が高いためなので、しばらく走っているうちに慣れてしまうレベルのものだ。静粛性も同様に高く、ショックもそれほど感じられないので、どの席でも快適なドライブが楽しめるだろう。
REGNOは、ブリヂストンの中でもトップグレードと位置づけられており、CMを含めてそのイメージが浸透していることはご存じのとおりだ。しかし、「GR-XIII TYPE RV」はSUVに関してはコンパクトSUV向けとして位置付けられている。この点について、開発陣はミニバン全般、そしてコンパクトSUVをターゲットにしているとし、別ブランドの「ALENZA」がSUV向けのブランドであるため、REGNOはコンパクトSUV向けにしているという。中・大型SUVはALENZAで対応しているとのことだ。重いミニバンと軽いSUVの位置付けは、ほぼ同じロードインデックス(タイヤの負荷率)という。
ブランドイメージからすると、筆者としては少々違和感を覚える。数年前、REGNOが軽自動車サイズまで広げられたときにも疑問に感じていたのだが、今回のポジショニングを見ても、SUVに関してはALENZAのほうが上級に見えてしまうのは残念に感じた。
今回、REGNO「GR-XIII TYPE RV」装着車を試乗してみた印象としては、まさにブリヂストンの企画どおりといって差し支えないだろう。背の高いミニバン系にはぴったりの性能を備えていると言える。
特に、ハンドリングにおいては安心して家族にもステアリングを任せることができるし、運転に不慣れな人でも高速道路を含めてリラックスして走らせることができる。大型車のほうがその恩恵を受けられるだろう。また、2列目シートにおいても高い静粛性とともに妙な横揺れなどもないので、車酔いしやすい人にも安心だ。
いっぽう、SUV系は「カローラクロス」レベルの車重であれば若干タイヤの硬さが感じられたものの、先代と比較して軽量化(およそ1.5kg/1本)されているため、バネ下が軽くなりバタつき感は大きく減った印象だった。
「GR-XIII TYPE RV」は中〜大型ミニバンと特に相性がよいように感じられたので、ミドルサイズ以上のミニバンをお持ちの方は、次期タイヤ候補のひとつとして検討して大いによさそうだ。