“弾丸”試乗レポート
6年ぶりに投入された、ファン待望のMT搭載スポーツ系2モデルを箱根で比較試乗

「ゴルフ R」と「ゴルフ GTI」、ワインディングで判明した個性の違いとは?

2015年秋にフォルクスワーゲンとして久しぶりとなるMT車が「ゴルフR」と「ゴルフGTI」に追加された。そのゴルフシリーズのスポーツモデルとして人気の2台をモータージャーナリストの鈴木ケンイチ氏がワインディングにて比較試乗。そこでわかったことは?

箱根のワインディングロードで、ゴルフのスポーツハッチ「ゴルフ R」と「ゴルフ GTI」の違いに迫ってみた

箱根のワインディングロードで、ゴルフのスポーツハッチ「ゴルフ R」と「ゴルフ GTI」の違いに迫ってみた

6年ぶりとなるMTをゴルフに採用したワケ

2015年秋より、フォルクスワーゲンの「ゴルフR」と「ゴルフGTI」に6速MT搭載モデルが追加された。ゴルフRの価格は539万円、ゴルフGTIが389万円。DSGモデルよりも、どちらも10万円安くなっている。日本へのMT車の投入は、フォルクスワーゲンとしては6年ぶりだ。

では、なぜ今ごろになってMT車を追加したのか? 日本においてMT車は、どんどん数が減っている絶滅危惧種のような存在だ。しかし、欧州のスポーツハッチバックを購入する人は、まだまだMT志向が強いという。日本の欧州ハッチバックのスポーツモデルに限って言えば、今もMT車がポロクラスでは40%、ゴルフクラスでは20%も売れているとか。また、フォルクスワーゲンでいえば、スポーツモデルであるゴルフRとゴルフGTIがゴルフシリーズ全体の20%を占めるほど売れている。そのためMT車を投入しても採算がとれるという計算になったのだろう。

今回は、その新しくMTを採用したゴルフRとゴルフGTIの2台を箱根のワインディングで試乗する機会を得た。そこでわかった2台の違いをレポートしたいと思う。

ゴルフ Rとゴルフ GTIのスペックを比べて見えてくるものとは?

フォルクスワーゲンのゴルフシリーズの2台のスポーツモデル。それがゴルフ史上最強といわれるゴルフRと、伝統のスポーツモデルであるゴルフGTIだ。どちらも最新のゴルフ7をベースにしたスポーツモデルであり、見た目の違いはフロント回りのごく一部。ゴルフRが白、GTIが赤、という異なる色のラインが走るフロント回りのデザインと、左右4本出しマフラーのゴルフRと、左右2本出しマフラーのゴルフGTI、それにそれぞれに専用にデザインされたホイール。それくらいの違いしかない。クルマに詳しくない人であれば、見分けがつかないかもしれないほど小さなものだ。

フロントのグリルを見ると、ゴルフ Rには白の、ゴルフ GTIには赤いラインが走っている

フロントのグリルを見ると、ゴルフ Rには白の、ゴルフ GTIには赤いラインが走っている

ゴルフ Rは左右に2本ずつ4本のマフラーが配置される

ゴルフ Rは左右に2本ずつ4本のマフラーが配置される

ゴルフ GTIは左右1本、合計2本のマフラーだ

ゴルフ GTIは左右1本、合計2本のマフラーだ

搭載されるエンジンは、どちらも2リッターの直列4気筒DOHCインタークーラーターボのEA888型と呼ばれるユニット。ただしチューニングが異なり、ゴルフGTIが最高出力162kW(220PS)/4500〜6200rpm・最大トルク350Nm/1500〜4400rpm。ゴルフRが最高出力206kW(280PS)/5100〜62500rpm・最大トルク380Nm/1800〜5100rpmとなっている。よりパワフルなゴルフRのユニットは、ゴルフGTIからシリンダーヘッド(エキゾーストバルブ、バルブシートおよびスプリングを含む)、ピストン、高圧インジェクションバルブ、ターボチャージャーが変更されている。燃費性能は、ゴルフRがJC08モード燃費13.9km/l、ゴルフGTIが16.0km/lとなる。

ゴルフR に採用される、2リッターの直列4気筒DOHCインタークーラーターボのEA888型エンジンは、最高出力206kW(280PS)/5100〜62500rpm、最大トルク380Nm/1800〜5100rpmを発生する

ゴルフGTIのエンジンも同型のEA888型だがチューニングやエンジンヘッドが異なり、最高出力162kW(220PS)/4500〜6200rpm、最大トルク350Nm/1500〜4400rpmだ

組みあわされる6速MTは、どちらもDSGと骨格を同じくする軽量コンパクトな3軸方式のもの。フォルクスワーゲンでは通常2軸方式のMTを、DSG化するにあたって3軸化しており、その結果、全長を短くすることに成功。またハウジングケースをマグネシウム化するなどして軽量化も実現。フォルクスワーゲンの自慢のMTなのだ。

ゴルフ RもゴルフGTIもともに、DSGをベースとする6速MTを搭載。小型化と軽量化の両方を実現している

ゴルフ RもゴルフGTIもともに、DSGをベースとする6速MTを搭載。小型化と軽量化の両方を実現している

駆動方式はゴルフRが4WDでGTIがFF。ここが2台の大きな違いといえるだろう。ゴルフRに搭載される4WDシステム「4MOTION」には、電子制御の油圧ポンプで作動する第5世代のハルデックスカップリングが採用されている。このシステムは、常に4輪に必要な駆動トルクを監視しており、負荷の低い状態ではFF走行として燃費性能を高め、後輪に駆動トルクが必要なときは、湿式多板クラッチの接続圧力を調整して理想のトルクを後輪に供給する。また、電子制御ディファレンシャルロック(EDS)を前後車軸に搭載。片輪が空転すると、すぐさま空転を抑えるブレーキが片側だけに作動して、駆動抜けを防ぐ。そして、ゴルフRでは、その機能をさらに拡張し、高速コーナーでのライントレース性を高める「XDS」を搭載している。また、電子制御ディファレンシャルロックに関しては、ゴルフGTIも同じく「XDS」までが採用されている。

FFのゴルフGTIに対して、ゴルフRの駆動方式は、第5世代のハルデックスカップリングが採用された4WD。4輪のトルク配分を常時監視し、最適化する

サスペンションは、どちらもフロントがストラットで、リヤが4リンク。それぞれにチューニングされた専用の足回りとなっている。専用のデザインとなっているホイールは、ゴルフRが18インチでタイヤは225/40R18。ゴルフGTIが17インチの225/45R17だ。
また、ボタンひとつで、エンジンレスポンスやステアリングの手応え、サスペンションの減衰力を変化させる「アダプティブシャシーコントロール“DCC”」(ゴルフGTIはオプション)という機能も用意。車両重量は、ゴルフRが1500kgで、ゴルフGTIが1390kg。

いずれもサスペンション形式は、フロントがストラット、リヤが4リンクで共通。ただしセッティングはそれぞれに最適化されている

ゴルフ Rには専用デザインの18インチホイールを装備。タイヤサイズは225/40R18

ゴルフ Rには専用デザインの18インチホイールを装備。タイヤサイズは225/40R18

ゴルフGTIのホイールは17インチ、タイヤも225/45R17と、ひと回り小さい

ゴルフGTIのホイールは17インチ、タイヤも225/45R17と、ひと回り小さい

装備面での2台の大きな違いはシートとナビだ。ゴルフRはレザーシートとカーナビゲーションが標準装備。ゴルフGTIは、そのどちらもオプション設定となる。

安全装備は互角だ。どちらも衝突被害軽減自動ブレーキである「フロントアシスト」とレーンキープアシスト、ブランドスポットディテクション(後方死角検知機能)、リヤトラフィックアラート(後退時警告・衝突軽減ブレーキ機能)を標準装備としている。

スペックを見比べてみれば、やはり大きな違いは駆動方式とパワーだ。最高出力280馬力で4WDのゴルフRと、220馬力でFFのゴルフGTI。これだけを見ると、ゴルフRがトップモデルであり、ゴルフGTIは手頃な価格のセカンドラインのようにも思えてしまうだろう。しかし、本当のキャラクターは走ってみないと分からないもの。続いては試乗した印象をレポートしたい。

ゴルフRはレザーシートが標準装備

ゴルフRはレザーシートが標準装備

ゴルフ GTIのシートはクロス素材が標準。柄は伝統のチェック

ゴルフ GTIのシートはクロス素材が標準。柄は伝統のチェック

ゴルフ Rはカーナビも標準装備になる

ゴルフ Rはカーナビも標準装備になる

ゴルフRとゴルフGTIには、それぞれの魅力があった

試乗は箱根の勾配のきついワインディングが中心となった。結果から言えば、2台はまったく異なったキャラクターであり、上下の関係ではなかった。ゴルフGTIは「プアマンズゴルフR」ではなかったのだ。

まず、ドライバーズシートからの眺めは、あまり変わらない。メーターの針がゴルフRはブルーで、ゴルフGTIがレッド、スピードメーターの上限が異なるという程度。150万円もの価格差ほどの違いはない。

ゴルフ Rのメーター周辺は青がモチーフ。スピードメーターは320km/hまで

ゴルフ Rのメーター周辺は青がモチーフ。スピードメーターは320km/hまで

ゴルフ GTIは針など部分部分に赤のアクセントが入る。スピードメーターは280km/hまで

ゴルフ GTIは針など部分部分に赤のアクセントが入る。スピードメーターは280km/hまで

いざ発進! とクラッチを踏み込むと、さっそく違いに気づく。クラッチの踏み応えがゴルフGTIのほうが重いのだ。ステアリングの手応えもゴルフGTIががっちりしている。逆にいえば、ゴルフRは、「ハイパフォーマンスカーに乗るぞ!」という意気込みを肩すかしするかのような軽さ。端的にいって「運転が楽」なのだ。

スポーツモデルらしくガッと加速! とやれば、意外と差が小さい。ゴルフRはパワーもあるけれど、重量も110kgも余分にある。厳密にいえばゴルフRのほうが速いけれど、パワーと重さの相殺で、ゴルフGTIとの差は縮まっていたのだ。

ゴルフGTIは、ステアリングやクラッチに手応えがあり、運転している実感が強くエキサイティング

ゴルフGTIは、ステアリングやクラッチに手応えがあり、運転している実感が強くエキサイティング

2台の重量の差は走りだしてすぐに分かる。ゴルフGTIはキビキビとした軽快さが楽しめるし、ゴルフRは重量の分だけ重厚感がある。フラットな乗り心地という点では、ゴルフRが上。ただし、ホイール&タイヤの質量もゴルフRのほうが上なので、荒れた路面では、重い足元がバタバタする感もあった。

ゴルフRの走行感覚を端的に言えば「ラク」。パワートレインの違いもあり重量感も感じられる

ゴルフRの走行感覚を端的に言えば「ラク」。パワートレインの違いもあり重量感も感じられる

まるでレールの上を走るようなコーナリングの安定感はどちらからも感じことができる。これがゴルフシリーズ全体の流儀なのだろう。4輪ががっちりと路面をつかんでいるという安心感の高さは、狭くツイスティな箱根のワインディングでは非常にありがたい。そんな高いシャシー性能があるからこそ、200馬力を超える強烈なパワーを怖くなく引き出せて、スポーツモデルに相応しい走りを楽しめたのだ。

4輪ががっちり路面をつかむコーナリングの安定感は共通。強力なパワーを安心して存分に味わうことができる

4輪ががっちり路面をつかむコーナリングの安定感は共通。強力なパワーを安心して存分に味わうことができる

そうやって、ワインディングを上ったり下ったり、2台を乗り比べてみて最終的に分かったのは、2台のキャラクターの違いだ。リアルな速さではゴルフRが上。けれどもエキサイティング度はゴルフGTIが勝る。ゴルフRは、ステアリングもクラッチも軽く、ゆったりとした気分で走れるのが美点。ゴルフGTIは、運転している実感が強く、目の前を赤いメーターの針がビュンビュン回るのを見ているだけでも気分が高揚してくる。

つまり、スポーツマインドを満足させるアイテムとしてならばゴルフGTIがおすすめ。高速道路を余裕のパワーで長躯するという使い方であれば、もう少しラクシュリーなゴルフRがよい。ハイパフォーマンスのGTがゴルフRであり、ピュア志向のスポーツモデルがゴルフGTIなのだ。同じような2台でも、しっかりとキャラクターわけができている。こうした幅の広い選択肢を用意できていることも、ゴルフシリーズが世界中で愛される理由のひとつなのだろう。

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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