“弾丸”試乗レポート
3種のボディや新ディーゼルエンジンを採用。魅力的な内装も魅力

イメージ一新! メルセデスの大型ミニバン「Vクラス」3世代目試乗レポート

メルセデスベンツからリリースされる唯一のミニバンである「Vクラス」がフルモデルチェンジした。ラージクラスのミニバンとしての実力はどのようなものなのだろうか? モータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏がレポートする。

メルセデスベンツのミニバン「Vクラス」のデリバリーが、2016年1月から始まる。国産ミニバンとのキャラクターの違いなどに迫ってみよう

歴代のVクラスは、累計販売2万台を達成する実績を持つ隠れた人気モデル

メルセデスベンツのミニバンであるVクラスが第3世代にフルモデルチェンジした。日本での発売は2015年10日より開始され、2016年1月からデリバリーとなる。

Vクラスは、全長約5mのボディを持つラージクラスのミニバンだ。初代モデルが1998年に日本に上陸してから、2003年からの第2世代とあわせて、これまで日本国内で通算2万台を販売。メルセデスベンツの高いブランド力とスクエアでスタイリッシュなルックスが好評で、一定数のファンを獲得してきた。しかし、日本ほどミニバンが好きな国はない。軽自動車からラージまでのそれぞれのクラスに、さまざまな個性を持ったミニバンたちがひしめきあう。その中でVクラスの存在感は、メルセデスのセダンたちと比べると、ささやかなものだ。

思うに、その理由は室内の雰囲気にあった。商用車をベースにしていることが、あからさまに分かってしまう。日本車でいえばアルファード/ヴェルファイヤではなくハイエースカスタム。そんな雰囲気であったのだ。別に商用車ベースが悪いわけではない。実用車をベースとするGクラスのような成功例もあるからだ。しかし、ミニバンの過当競争が行われている日本市場では、その雰囲気はプレミアムなメルセデスのイメージと一致しなかったのだろう。

スクエアでスタイリッシュなフォルムは新しいVクラスにも受け継がれている

スクエアでスタイリッシュなフォルムは新しいVクラスにも受け継がれている

全車がクリーンディーゼルエンジンを搭載。ラージクラスとしては燃費性能も上々

新しくなったVクラスには、日本の厳しい規制「ポスト新長期規制」に対応したクリーンディーゼルエンジンが搭載されている。2.2リッター直列4気筒BlueTECエンジンだ。最高出力は120kW(163PS)/3800rpm・最大トルク380Nm/1400〜2400rpm。これに7速ATを組みあわせることで、JC08モード燃費は15.3km/l。このサイズのミニバンとしては、非常に優秀な燃費性能を達成している。光化学スモッグの原因となる有害な排出ガス中のNOxを無害なものに還元するために、尿素水溶液「AdBlue(アドブルー)」を吹きかける方式が採用されている。つまり一定の距離を走ると尿素水溶液を補充するという方式だ。

駆動方式はFR。サスペンションはフロントがストラットで、リヤがセミトレーリングアーム。走行状況に合わせて減衰力を変化させる「アジリティ・コントロール・サスペンション」を用意し、ベーシックな「V220d TREND」を除く全車に標準装備としている。

日本の環境基準に適合する、2.2リッター直列4気筒BlueTECディーゼルエンジンを搭載。最高出力120kW(163PS)、最大トルク380Nmを発生する

トランスミッションは7段AT「7G –TRONIC PLUS」を搭載。上記のエンジンと組み合わせて、JC08モード燃費15.3km/lを実現する

尿素水溶液「AdBlue」を使い、SCR触媒コンバーターで化学反応(還元作用)を発生させ、有害なNOx(窒素酸化物)を除去する

駆動方式はFR。サスペンションはフロントがストラットで、リヤがセミトレーリングアームという乗用車に準じる形式だ

ボディは3種類をラインアップした。標準ボディ(全長4905×全幅1930×全高1880mm)と全長5150mmのロング、そして全長5380mmのエクストラロングだ。グレード編成は、ベーシックな「V220d TREND」(535万円)、基本の「V220d」(620万円)、ロングボディの「V220d AVANTGARDE long」(695万円)、エクストラロングの「V220d AVANTGARDE Extra-long」(730万円)という4モデル。すべて右ハンドル仕様となる。

上が標準ボディで全長4905mm。中央がロングボディで全長5150mm。下が5380mmの全長を誇るエクストラロング

上が標準ボディで全長4905mm。中央がロングボディで全長5150mm。下が5380mmの全長を誇るエクストラロング

3列シートは、2列目が独立式、3列目がベンチシート。2列目を後ろ向きにセットして、後席の乗員5人が向かい合って座ることもできる。また、2列目と3列目シートはそれぞれを取り外すことも可能。3列目を取り外して、2列目だけにして広々と利用することもできる。また、すべての座席を取り外して広大なラゲッジスペースにすることも可能だ。スライドドアやテールゲートは電動(V220d TRENDを除く)。ロングボディのモデルには、ドライバーの音声をマイクで拾い、後席のスピーカーから出力することで、乗員同士の会話を助ける車内通話機能が備わっている。

2列目シートは独立式、3列目シートはベンチシート。2列目シートを回転させれば、写真のように向かい合わせることもできる

安全装備は歩行者検知機能を備えた衝突被害軽減自動ブレーキを含む「レーダーセーフティパッケージ」を用意。前走車を追従するACC機能や、斜め後ろの死角をカバーする「アクティブ・ブラインドスポットアシスト」などの最新の安全&運転支援機能が用意されている。

長大なボディの死角をカバーするアクティブ・ブラインドスポットアシストも用意される

長大なボディの死角をカバーするアクティブ・ブラインドスポットアシストも用意される

乗用車の雰囲気に生まれ変わったインテリア。“なんでもござれ”までは行かないが実用性は高い

試乗がかなったのは、最も大きい「V220d AVANTGARDE Extra-long」。ドライバーズシートにおさまって、あっと驚いた。インテリアが完全にセダン同様の雰囲気になっている。タッチパッドを備えたナビゲーションシステムも標準装備。インパネだけでなく、ドア回りまでしっかりと乗用車クオリティになっている。まさにイメージ一新である。

ドライバー席から後ろを振り向けば、さすがに5mクラスだけあって、室内の広々感は格別だ。2列目/3列目のシートが移動できるようにフロアがフラットになっているのも気に入った。電動スライドドアやナビなど、必要な装備類がしっかりと揃っている。“至れり尽くせりなんでもござれ”とまではいかないが、しっかりとミニバンとしてのニーズに応えている。

インテリアの雰囲気はセダンと変わらない。従来のVクラスに漂っていた商用バンらしさが完全に払拭されている

オーディオ、ナビ、電話など各種機能や車両設定をタッチパッドで直感的に行える「COMANDシステム」を標準装備

走りだすと、また驚いた。ステアリングもアクセルも相当に重い。ぐっと力を入れてアクセルを踏み込んでスタートする。走り出してしまえば違和感は、ほとんどない。ディーゼルエンジンの振動と独特の音は、しっかりとミュートされ、不快感はない。パワーは必要十分。車両重量2490kgに380Nmのパワーと考えれば、スペック以上によく走る。可変ダンパーを使うサスがしっかりと働いているのだろう、過大なロールもなく、乗り心地はフラット。全体を通して穏やかな動きで、数多くの人を乗せるMPVとしては、よくできているという印象だ。

ステアリングやアクセルはかなり重め。操作感を軽くしていることの多い国産ミニバンとは異なる印象

ステアリングやアクセルはかなり重め。操作感を軽くしていることの多い国産ミニバンとは異なる印象

インテリアの雰囲気をしっかりと乗用車レベルにして、日本で必要とされる装備類をカバー。室内の広々感は、和風ミニバン以上。走行性能にも不満はない。乗用車の雰囲気を獲得しつつも、実用性の高さは、そのままキープ。日本市場に、より広く受け入れられやすい内容に仕上がっていたのだ。

とはいえ、やはりVクラスは、それでも和風ミニバンとひと味もふた味も違う。まず、運転の操作系が重い。そしてシートの作りはがっちりしており、その分、重量もたっぷり。シートアレンジを変更するには、それなりの力が必要だ。一瞬で3列目シートが床下に収納できてしまう、和風ミニバンのようなカラクリは、Vクラスには存在しない。3列目シートを外すのは、力自慢のお父さんの仕事だ。つまり、Vクラスは “お父さん”のクルマなのだ。そこを格好よいととるか、不便ととるかで、Vクラスの価値は変わってくる。しかし、こうした個性の強さこそ輸入車の魅力。そしてVクラスは新型になって、相当に魅力を増していたのだ。

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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